魔法少女ユエ~異世界探険記~   作:遁甲法

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皆さん、応援ありがとうございます!

前回の才人視点はちょっと不評だったですが、ちゃんと意味があるものだったと、思えるよう書いて行きます。
気付かれないよう、いつの間にか違う人の視点に変わっているとかやってもいいかもとか思ってたりもしますが!

でわ、第五話いきます


ゼロの旅5

 ふぅ、さっきの爆発は凄かったですね。

授業自体は大爆発の大パニックで教室が使えなくなったので、別の教室を使ってやりました。

シュヴルーズ先生はあの後すぐ目を覚ましたですが、その後一度も錬金の魔法を使う事はありませんでした。トラウマにでもなってしまったのでしょうか。

 麻帆良の教師と違って軟弱ですね。彼らなら、あれくらい参った参ったなんて言うだけですぐ授業を通常通りに行うでしょう。

 

 「ユエ、災難だったわね?怪我はしてないみたいだけど」

 

 「えぇ、障壁で大体防げましたから。

もっとも、それは飛んで来た石つぶてだけで、爆風はほぼ素通りレベルでしたが」

 

 吹っ飛んだ机の破片は止まりましたが、あの爆風は一瞬で障壁の耐久力を押し切りました。私の魔力でも、早々突破されるようなヤワな物じゃないはずですが。

 威力のほどが伺えるです。

 

 「障壁?」

 

 隣のタバサさんが不思議そうに首をかしげて聞いてくるです。

動きが小動物みたいで、少し可愛いですね。

 

 「えぇ、魔法障壁です。常時二枚張っているですが、それを一瞬で抜かれました。

物凄い威力です。あれを攻撃に使われたら大変ですね」

 

 錬金と言う魔法の失敗による余波であれです。攻撃に使われたらたまったものではないです。

 

 「魔法障壁・・・って、何?聞いた事ないけど」

 

 キュルケさんがそんな事を言い出しました。

こちらでは魔法障壁は無いのですか?いつも生身、というか無防備に魔法を使っていると?それはまた危険ですね。

 

 「魔法障壁は攻撃等を受け止めて、威力を減少させるものです。

強力な魔法使いだと、障壁だけで全ての攻撃を無効化させる事も出来るです」

 

 フェイトさんの障壁は相当の物でしたしね。私も参考にさせてもらって障壁の配置等をいじってみました。ですが、私の魔力容量ではあの曼荼羅の如き障壁を再現する事は出来ませんでした。

 まぁ、その代わり最大五枚の障壁を一枚一枚単独で動かし、攻撃等を"さばく"事ができるようになったです。まだまだですが、そのうち障壁を使って柔術の様に受け流し、その隙に魔法を撃ち込む何て事も出来るのでは。と、思ったりしてるですが、障壁を操作しながら魔法を使うのは難しく、まだまだ実用性に欠けるです。

 

 「そんなの聞いた事ない」

 

 タバサさんが胡散臭そうな目で見てきます。しかし、その目の奥に貪欲に知識を求める光が灯っているです。

 いつぞやの私と同じ、いえ、今もですね。何かの為に力が欲しいと言う欲求が強く見られるです。

いいでしょう。私が説明出来るだけ説明するです。一緒に強くなりましょう。

 

 私は障壁の事を出来るだけ細かく説明しました。

しかし、やはりこちらでは存在しない技術のようで、理解し切れていないようです。

張ってある障壁を触らせてみたりして、どんなものかを教えていくです。

 

 「これ、私でも出来る?」

 

 タバサさんが障壁をペタペタ触りながら聞いてきます。

多分出来るのではと思うですが、如何せんこちらの魔法技術をまだしっかり理解していないですから、障壁の術式をこちらの魔法に合うように加工する事が出来ないです。

 

 「多分出来るとは思うですが、今すぐ出来るかは分からないです」

 

 「今度教えて」

 

 そう言ってタバサさんは歩きを再開します。

それに従い私達も歩き始めます。授業が終わって昼食に向かう途中でずっと立ち話してたです。歩きながら障壁を触ったりとかは難しいですから仕方ないですが、肉眼で見えない障壁を触っている所は、女同士でイチャついているように見えるのか、通り過ぎる人達の目線がとても痛かったです。障壁もその視線は防いでくれません。うぅ、なにかヒソヒソ聞こえるです。

 

 「うぅ、私には正直難しすぎたわ。私には使えそうにないわね、頭がこんがらがるもの」

 

 キュルケさんがそんな事を呟きつつ頭を振っています。

言葉だけで説明してると確かに分からなくなるですね。

 

 「でも・・・」

 

 少し真剣な顔でキュルケさんがこちらを見るです。

 

 「でも、なんです?」

 

 「あなたの魔法が私達から見て異質だと言う事は分かったわ。

あまりおおっぴらに使わない方がいいかもね」

 

 「どういう事です?」

 

 「ここ、ハルケギニアにはブリミル教って言うのがあってね?」

 

 そう言ってキュルケさんは詳しく異質と言った事の意味を教えてくれたです。

 

 宗教ですか。査問委員会とか、厄介ですね。

ここハルケギニアはブリミル教によって成り立っていると言う訳ですね。

その他は全て異教として排除されると。まんま昔のキr、おっと、言うべきではないですね。

 

 「つまり、私の魔法はこちらの宗教理念だと罪とされるのですか」

 

 始祖ブリミルなる人が作り伝えたこの世界の魔法。系統魔法が全てで、その他一切は邪教、または邪悪な技術として、使う者を厳しく罰しているそうです。

 

 「東方独自の魔法ということで見逃してもらえませんかね」

 

 「そんなに頭が柔らかかったら、今まで何百人の人が助かったでしょうね」

 

 そ、そこまでですか。これはまずいです。

 

 「教えてくれてありがとうです。この事は内密にお願いするです」

 

 「当然よ。そんな簡単に友人を売ったりしないわ。

たとえそれが今日出来たばかりの友人だとしてもね」

 

 ウインクしながらそうキュルケさんが言います。

 

 「いい友人に出会えたことをブリミルに感謝するですよ」

 

 「どういたしまして」

 

 そう言い合ってから、私はキュルケさんに手を引かれて食堂に入って行きました。

 

 

 

 

 「ジュースにするのはありきたりですかね?」

 

 「これだけでサンドウィッチも捨てがたい」

 

 「やめてよ、ほんと」

 

 食堂でタバサさんとハシバミ草の新しい食べ方を話し合っていると、シエスタさんがケーキを持って来てくれました。

 お盆自体を、あのヴァリエールさんが呼び出したと言う平民の男性に持たせて大量のケーキを配っていたです。

 

 「シエスタさん、ご苦労様。ありがとうです」

 

 「いえいえ、これが私の仕事ですから」

 

 「そうですね。洗濯物を放り投げるのが仕事の訳ないですね」

 

 「ユエさん、ヒドイですっ」

 

 そんな感じにからかい半分の会話をしていると使い魔だと言う男性が会釈してきたです。

 よく分からないですが、反射的に会釈を返してしまいます。日本人の習性ですね。

 

 そのまましばらく話をしてから、シエスタさんはまた仕事に戻って行きました。あの男性と仲良く話しながらケーキを配って行くですが、楽しそうで何よりです。

 

 「さっきのメイドと随分親しげだったわね?」

 

 「こっちに来て最初の友達と言った所です」

 

 基本庶民の私には、こんな豪勢な食事は合わないです。あの時のシチューとかで十分なのですが、どうにかなりませんかね。

 

 「ふふぅーん。昨日来たばかりでもう一人引っ掛けた訳ね。なかなかやるじゃない」

 

 「引っ掛けたって、私は同性愛者ではないですよ?」

 

 ハルナもコレットや委員長(エイミー)の事で似たような事を言ってたですが、私はそんなに同性愛者に見えるですか?

 私はネギ先生一筋ですよ。って、振られたと言うのにまだ吹っ切れてないようです。

 情けない、髪まで切ったというのに。

 

 「そう?あのメイドを見る時の目は、なかなか熱かったわよ?」

 

 この人はどうもハルナと同じ人種のようです。人をからかうのが好きと言うはた迷惑な習性を持ってるですね。

 

 「まったく、キュルケさんにはこれをあげるです」

 

 私は亜空間倉庫から出した麻帆良ドリンクの一つ、黒酢トマトを渡します。

珍妙ジュースを異世界へ。珍妙ジュースを知らしめて異世界の珍妙ジュースを誕生させるです。

 

 「ん?なによこれ?」

 

 紙パックは見た事ないですね。一旦受け取ってストローを刺してあげます。

倉庫にはそれこそ商売出来るほど珍妙ジュースを確保してあるです。アリアドネーにも、珍妙ジュースに分類されるものはありますし、ミキサーを使って自分で作る事もしますが、麻帆良にある珍妙ジュースはやはり別格です。

 

 首をかしげてジュースを見ているキュルケさんに先に飲み方をみせます。

一口飲んでみて、やっぱり麻帆良ジュースはいいですね。

 飲み方が分かったのか、ジュースを再度受け取りストローを咥えます。

キュルケさんが飲もうとしてる時と、タバサさんも興味があるようなので彼女にはアボカドマキアートを渡します。気に入ってくれるですかね。

 

 ぶほっ!!

 

 「キュルケさん、汚いですよ」

 

 いきなり吹き出したキュルケさんにハンカチを渡すです。もったいない。

 

 「な、なによこれ!?すっぱ生臭い、変な味したわよ!?」

 

 黒酢とトマトのコラボです。健康にも良い優良ジュースですよ。

 

 「聞いていい?東方の人は皆こんなの飲んでるの?」

 

 「えぇ。こちらでワインを飲むのと同じくらいの頻度で飲むですよ」

 

 さらっと嘘をつき、そう言うものと思わせて受け入れやすくするです。

何事もそれが普通だと思えば普通になるのです。

 

 「東方に行く時は、自前で飲み物を持って行く必要があるわね」

 

 そんな事を言いながらジュースを返されたです。残念。

返されたジュースを飲んでいると、タバサさんも持ってる事に気付いたキュルケさんが、

 

 「タバサも貰ったの?ダメよ?死んじゃうわよ?」

 

 何て事言うですか。

 

 「ん。おいしい」

 

 「うそん!?」

 

 流石同士です。無表情ですが、美味しそうに飲んでいるタバサさんを見て、キュルケさんが興味を持ったのか、タバサさんからジュースを貰って一口飲みました。

 

 ぶほぁっ!!

 

 「キュルケ、汚い」

 

 吹き出したキュルケさんに冷たく言い放ち、彼女の持っているジュースを取り返すタバサさん。すかさず飲み出す所を見ると気に入って貰えたようです。

 

 「ジュースにするのは有効」

 

 こういう飲み物があると知ったタバサさんは、ハシバミ草の新しい可能性を見い出します。自分の好物をジュースにして持ち歩く事を夢想して、目を輝かせているです。

 

 「タバサ、ダメよ。そっちは悪魔の道よ?」

 

 何て事言うですか。

 

 あとでハシバミ草を分けて貰って作ってみようと話していると、食堂の一角が騒がしくなって来ました。

 

 「んむ?何やら騒がしいですね?」

 

 騒がしさの中心には、胸元に薔薇を差した男性がポーズを取りつつ周りの人と話しているとのがみえます。

 

 「なんです?あれ」

 

 思わずあれ呼ばわりしてしまいましたが、妙なポーズを取りながら話す人物です。問題ないでしょう。

 

 「ん?あぁ、あれはギーシュね。また変な自慢でもしてるんじゃない?」

 

 自分がモテると思ってるナルシストで、時々あーやって自慢話をするんだとか。

こちらではあーゆー人がモテるのですか。

 

 「やめてよ。あれを好きになるのは、大抵顔しか見ないバカな女だけよ。

一応女には優しいからそれに騙されるのもいるけど、私に言わせれば中身のない宝箱よ」

 

 開けてがっかり。そう言いたいようです。

 

 声が大きいので、彼らの会話は丸聞こえです。

 

 「あれは本気で言っているですか?」

 

 「純度100%の本気よ、残念ながらね」

 

 自分を薔薇に例えて女性を楽しませる為に存在するとか言ってるです。

 

 「私の友人が言うには、薔薇とは男性同士での恋愛を例える言葉だそうです。

彼は今、自分が同性愛者だと公言してると言う事に気付いているですかね」

 

 ハルナのおかげでそんな知識も身についてしまったです。女性同士なら百合だそうです。どうして百合なんでしょうね?

 

 「ブフっ!そ、それはまた面白いわね!こっちでは言わないけど、東方ではそう言うの?」

 

 「こちらでも一部の人達のみですが」

 

 おや、さっきの使い魔さんが声をかけてるです。

そういえば彼の名前を知りませんね。シエスタさんと髪色が同じですし、出身地が同じなのでしょう。まぁ、機会があったら聞いて見ますか。

 

 どうも何かを拾ったから渡そうとしているようです。しかし、受け取りを拒否されているみたいですね。

 

 「んー?あれは、もしかして香水かしら?」

 

 「分かるですか?」

 

 目を細めて見ているキュルケさんがそう言うですが、香水を受け取らないのは何故ですかね。

 

 「まぁ、そんな形に見えるわね。ギーシュならカッコつける為に香水を使う事もあるかしら?・・・って、ユエなにしてるの?」

 

 指で輪を作って覗き込んでいる私の行動に疑問を持ったようです。

 

 「望遠の魔法です。離れた所を見るには最適だったもので」

 

 指で作った輪の中が、望遠鏡で見るように拡大されて見られる魔法です。

簡単な物なので、魔法をかじっただけのまき絵さんにも使えて、しかも便利という優れものです。

 

 「不用意に使うなって言ったばかりなのに、この子は。

ちょっと私にもみせて?」

 

 そう言って顔を寄せてくるキュルケさん。

指の輪を彼女の前まで持って行きますが、肩に彼女の胸が乗ってきます。

重いです。こんなものを常時装備してるですか。女としては羨ましいですが、少し考えものですね。身体強化をしてれば大丈夫ですかね?

 

 「へぇー。これは面白いわねぇ。あ、やっぱり香水だったわね。

あの色は、確かモンモランシーが自分用に作ってる奴のはずよ。彼女の香水って前に作ってもらったけど、いい出来なのよ。ユエも一つ作ってもらう?いい女は香りも良くないといけないわ」

 

 香水なんて使った事ないですが、あまりイメージは良くないです。

電車の中のオバ様達は凶悪です。

 

 急に近くに座っていた女性が立ち上がり、ギーシュさん?の所まで歩いていくです。

 

 「あーらら。これは修羅場になるかもね」

 

 キュルケさんがその女性に気付いたのか、そんな事を言い出します。

 

 「修羅場ですか?」

 

 「あんなんだからね。いろんな女の子に手を出しててね?

何人かと同時に付き合う何て事もあるのよ。その度にあーやって・・・」

 

 バチンと大きな音を立ててギーシュさんが殴られたです。

 

 「振られるわけよ。それでも引っかかる子が居るのはどうしてかしらね?」

 

 それは私には分からないです。しかし、

 

 「あれくらいで済んで良かったですね」

 

 「ん?どういう事?」

 

 「私の国には、パンチ一つで岩を粉砕したり、飛び蹴りで十数メートル吹き飛ばす、なんて事を軽くやってのける女性も居るです。もし、先程の彼女がそうだったら、彼は今頃血塗れでしたね」

 

 「それ、本当に人間?」

 

 「えぇ。貴方より華奢ですよ。見た目は」

 

 明日菜さんとかクーフェさんとか。まぁ、存在が規格外な人達ですが。

 

 「私、東方が怖くなってきたわ」

 

 何か変な想像してそうですがほっとくです。

あ、また別の女性が近づいて行くですね。金髪を縦巻にした絵に描いたようなお嬢様です。あんな髪型、毎朝大変でしょうね。

 

 「彼女がさっきの香水の製作者のモンモランシーよ。二つ名はそのまま香水。

どうやら彼女も当事者のようね」

 

 見てるとまた変な事を言ってるです。

 

 「怒らせたのは自分なのに、怒るなとはなに言ってるですかね」

 

 「言い訳にもなってないわ。流石ね」

 

 彼女は、ギーシュさんにワインを頭からかけて出て行ってしまいました。

 

 「あのまま殴っちゃえばよかったのに」

 

 「大怪我するですよ、瓶は思いの外硬いのですから」

 

 火サスのような展開が目の前で起こるのは勘弁です。

 

 

 さて、突然の修羅場ですっかり静まった食堂の中、ワインをかけられた方はと言うと、ハンカチである程度拭いたのち、また妙なポーズをしながらおかしな事を言っています。

 

 「まったく反省の色がないです」

 

 「一種の才能ね。女をアクセサリーか何かだと思ってるのかしら?

二人はあーゆーのに引っかかっちゃダメよ?」

 

 「私は今の所興味無いので大丈夫です」

 

 ネギ先生の姿がチラッと浮かんで来たです。我ながら未練がましいですね。

 

 「ん。同じく興味ない」

 

 ケーキを頬張っていたタバサさんも答えます。まだ色気より食い気ですか?

 

 「タバサはいつも通りだけど、ユエもなの?女なら恋しなきゃダメよ?」

 

 「破れたばっかりなので、今は無理です」

 

 私は望遠の魔法の解除に気を取られポロっと本音を漏らしてしまいます。

 

 「あら、そうだったの!どんな相手だったの?」

 

 しまったです。食い付かれたです。

 

 「あなたもタバサと同じで、興味ないって言うからまだ初恋もしてないと思ったら!うふふ、楽しくなってきたわ!さぁさっ、簡単にでいいから教えなさいよ」

 

 肘でうりうりしてくるキュルケさんにどう答えるべきか悩んでいると、向こうではあの使い魔さんが喧嘩をふっかけ出したです。

 それをいいことに話題変換を試みるです。

 

 「メイジ相手になかなか強気ですね」

 

 「ん?あらほんと。ギーシュとは言え、メイジに平民が勝てる訳ないのに」

 

 まぁ、真正面からでは難しいでしょうね。彼が気や魔力を使えると言うのなら分かりませんが。

 

 「ギーシュさんの腕前はどの程度なのですか?」

 

 「彼はドットだもの、そんなに強くないわ。でも、平民が勝てるほど簡単な相手でもないわね」

 

 ドット、ですか。いい機会です。この辺りの事を詳しく聞いてみるです。

 

 「私はこちらのランク付けをよく知らないです。聞いてもいいですか?」

 

 「あぁ、そうだったわね。いいわよ、詳しく教えてあげる。

でも、その前にケーキを食べながらあなたの恋のお話をしましょ。って、あら?ケーキはどこ行って・・・」

 

 キュルケさんがケーキの皿を捜すと、未だにケーキを食べているタバサさんが居るだけで、ケーキが見当たりません。

 

 ん?まだ食べてるですか?

 

 「あ!タバサ?あなたのお皿が二枚重なっているのは何故かしら?」

 

 あ、ほんとです。いつの間にか二枚になっているです。

 

 「あなた、私のケーキ食べたわねぇ?」

 

 「早く食べないと悪くなる」

 

 「そんなに早く悪くなったりしないわよ!もう、この子はっ!」

 

 そう言ってタバサさんの頬を左右に引っ張るキュルケさん。仲いいですね。

そんな二人のじゃれ合いを見ていたら、厨房の奥へと走って行くシエスタさんが見えたです。かなりの速度で走って行ったのに、持っているお盆のケーキを一つ足りとも落としません。なかなかのプロ魂です。

 

 「どうもあの二人が決闘するようですよ?」

 

 ふと見たら使い魔さんに食ってかかっているヴァリエールさんが見えました。

勝手に決闘の約束をした事を怒っているようです。

使い魔さんは気にも止めず決闘会場のヴェストリの広場とやらの場所を聞き、そのまま出て行ってしまいました。

 

 「うりうりうり・・・って、そうなの?でも、そんなの結果が見えてるじゃない」

 

 「十分と持たないと思う」

 

 二人はそう評価します。私もそう思いますが、魔法使いでもない少女が魔法使い以上の戦闘力を発揮する事もあると知っているです。

 彼もあの自信です。何かしらの能力か、魔法使いに対抗出来るアイテム、もしくは作戦があるのでしょう。

 

 「あれだけ自信たっぷりなのです。何かしら特別な力でも持っているかもしれないですよ。偶然とはいえ、使い魔として呼び出されるくらいなので、もしかしたらメイジを圧倒する何かを持ってるかもです」

 

 「うーん、確かにね。何かのマジックアイテムとか持っているなら、見てみたいわ。

今から行って見る?」

 

 「ケーキも無くなったし、行ってもいい」

 

 二人がそう言って立ち上がりました。タバサさんは結局二個食べたですか。

 

 「ほら、口。付いてるわよ?」

 

 キュルケさんが口に付いてるクリームを拭いてあげてるです。

同級生と言うより親子です。見た目もギリギリそう言っても不思議に見えないですしね。

 

 「今不穏な事考えた」

 

 「何かいけない事考えたわね?」

 

 おっと、察知されたです。やるですね。

 

 「なんの事です?さぁ、早く行かないと終わってしまうかも知れないですよ?」

 

 そう言ってさっさと先に進むです。場所は見取り図で分かるですし、何より他の生徒達も向かってるので、その波に乗れば簡単に辿り着けるです。

 

 「あ、忘れてたけど、あなたの恋、後でちゃーんと話してもらうからね?」

 

 自分でも忘れてた話題を蒸し返してきたです。

どうにか逃げなければ。

 

 「置いてくですよー?」

 

 話題を切り上げる為に、すったか広場へ向かいます。キュルケさん達も後ろからやいのやいの言いながらついて来るです。

 広場での決闘騒ぎが終わる頃には忘れてくれるといいですが。

 

 

 

 

 会場であるヴェストリの広場には大勢の生徒達が集まっていた。

ユエとキュルケの三人できた時にはかなりの人数になっていて、中央に陣取るギーシュを指差しながら話をしたり、止めに来た教師を追い払ったりしている。

 

 ギーシュが決闘開始を宣言すると、集まった生徒達が歓声を上げた。

彼と対峙するのは、あのルイズが呼び出した平民。なかなか堂々とギーシュの前に立っているけど、どう考えても平民が勝てるわけが無い。

 

 「賭けでもしますか?」

 

 不意にユエがそんな事を言い出した。

 

 「ギーシュが勝つに決まっているのに、賭けにならないじゃない」

 

 私もそう思う。平民がメイジに勝てないのは決まってる事。

 

 「私の所ではこういう時、適当な賭けをよくしてたです。

儲けが狙いではなく、盛り上がり重視で賭けるです」

 

 なるほど。

 

 「ただ見てるだけよりは盛り上がるですよ?」

 

 そう言うものなのかな。いつもは余り興味無いから関わらなかったけど、ここまで来たし少し乗ってもいいか。

 

 「じゃあ、平民に賭ける」

 

 「タバサ、平民にするの?」

 

 「皆ギーシュに賭けたら、成立しなくなる」

 

 特に損をする訳でもないから、どっちでも構わないと思う。

 

 「では、私も使い魔さんに賭けますか。キュルケさんはギーシュさんに?」

 

 ユエも平民に賭けてきた。

 

 「まぁ、そうなるわね。因みに何を賭けるの?」

 

 「そうですね。では、私はこの抹茶コーラを三つ賭けましょう」

 

 またユエが何処からともなく四角い見た事ない物を取り出した。

あれが飲み物だと言うのはさっき知ったけど、どこから取り出しているのか。

あれも東方の魔法?何でも出せるのか、どれだけ出せるのか、凄く気になる。

 

 「まっちゃこーら?また変な味の飲み物?え?罰ゲーム?」

 

 「何故罰ゲームですか。」

 

 さっきのは美味しかった。あれも美味しいのかな?ギーシュに賭けて勝ち取る方が良かったかな?

 

 「私はどうしようかしら?

そうだ、今度トリスタニアで甘い物でも奢るわ。二、三個くらいで我慢してね?」

 

 先に個数を決めて来た。残念、奢りで沢山食べられると思ったのに。

 

 「タバサはどうする?」

 

 「私も何か奢る。渡せる物がないから」

 

 本とか貰っても困るだろうし、元々あまり物は持ってないし。

 

 「じゃあ、これで決まりね。って、話してる間に平民ボロボロじゃない」

 

 目を向けるとギーシュが作り出したゴーレムに殴られて這いつくばっていた。

 

 「あれがこちらの魔法ですか。金属製の人形を操作して戦うのですね。

動きは遅いですが、一般人にはなかなか脅威です」

 

 ユエがゴーレムを見てそう評価している。

普通の人間と比べて随分速いと思うけど。

 

 「あれで遅いの?私にはかなり速いと思うけど。あれは避けるのも大変よ?」

 

 「いえ、私の国では軽く避けられます。むしろただの案山子扱いされるです」

 

 驚いた。東方は一体どうなっているのか。岩を砕き、十数メイル吹き飛ばし、ギーシュのゴーレムを案山子扱い。

 

 もし戦争になったら、相当苦戦するだろう。

 

 「もう私、東方の事で驚くのをやめるわ。キリがないもの」

 

 本当に。でも、一度行って見たい。

それでその強さを身に付けられたら、私の目的にも少しは近づけるはず。

 

 そんな風に東方の事を考えていたら、ルイズが平民の前に立って庇い出した。

確かにもう勝てるようには見えないし、ここで終わりでいいと思う。

 庇われても平民は引こうとしない。ルイズを押しのけギーシュに向かっていく。殴られても殴られても立ち上がって向かって行くのを見るのは少し心苦しい。

 

 「真正面からばかりでは勝てません。体のダメージも酷いですし、作戦を変えなければこのまま嬲り殺しです」

 

 ユエがそう冷静に評価している。この子、やけに冷静。

キュルケは怪我の酷さに息を飲んでいるけど、ユエは怪我の具合よりも全体的な状況を見ている。あれくらいの怪我は見慣れてると言った様子。

 

 「ひっ!今何か変な音がしたわ!」

 

 「ふむ、折れましたね。まぁ、金属製のパンチを無造作に受けてはそうなるです」

 

 「折れ!?ちょ、もしかしてヤバイんじゃないの!?」

 

 もうボロボロだし、これ以上は危険。もうやめさせるべき。

 

 「まだまだやる気のようですね。いい根性です」

 

 平民はもう立てなくなっていて、それでもギーシュを睨みつけ立ち上がろうと頑張っている。

 

 「まだやる気なの!?だってもうあんなに!」

 

 キュルケはそれでも立とうとしてる事に驚いている。

ユエはそこまで取り乱していない。でも、さっきより目が鋭くなっている。やはり思う所はあるらしい。

 

 「もうやめて!」

 

 ゴーレムが平民を更に殴ろうとするとルイズが飛び出して平民に覆い被さった。

 

 危ない!あれに殴られたら、怪我では済まない!

 

 「ルイズ!?」

 

 キュルケがその光景に声を上げる。いつもは仲が悪いけどそれでも心配なんだろう。いや、もしかしたら本当は仲よくしたいのかも。

 

 って、それよりも今はあれを止めなければ!

殴りかかっている所に飛び出して来たから止めるのが間に合わないようで、ギーシュも顔を強張らせている。もう、魔法も間に合わない!

 

 ガキィィン!!

 

 物凄い音が広場に響いた。まるで金属同士がぶつかったような大きな音だった。

見ればいつの間にかユエが大きな剣を片手に持って、ゴーレムの拳を受け止めていた。

 いつの間に!?

 

 「な!いつの間に!?」

 

 ギーシュもいつの間にか現れたユエに驚きの声を上げる。

キュルケや庇われたルイズも目を見開いて驚いていた。私もついさっきまで自分の隣に居たはずのユエが十数メイル離れた所にいる事に驚いている。あと、あの身の丈よりも大きな剣を何処から出したのか。ジュースから剣までなんでも出すね、ユエは。

 

 「ハッ!」

 

 気合いの声を上げると、その大剣でゴーレムを吹き飛ばした。

あの大剣を軽々振り回すのも驚く事だけど、金属製のゴーレムを数メイル吹き飛ばしたのにも驚いた。東方の人は皆あんな事出来るのだろうか。

 

 「ふぅ。危なかったですね、ヴァリエールさん?

気持ちは分かりますが、少し無謀ですよ?」

 

 何事も無かったかのように軽い調子で無事を確認するユエ。聞かれたルイズは未だにポカンとしてて答えられないよう。

 

 「み、ミス・ファランドール?決闘の邪魔はしないで貰いたいのだが?」

 

 驚き、戸惑いながらユエに抗議するギーシュ。

一瞬で自分のゴーレムを吹き飛ばされて動揺してるのだろう。少し声が震えている。

 

 「貴方と使い魔さんだけだったら、手を出しませんでしたよ。

しかし、ヴァリエールさんが巻き込まれたならば手を出さざる得ません」

 

 そう言ってギーシュの方に目を向けるユエ。その姿はかなり堂にいっていて隙がなかった。あの姿だけで彼女の実力の一端が伺える。

 

 「咄嗟に止める事が出来ない様なら、力を人に向けるべきではないですね?」

 

 そう冷ややかに言うユエ。

確かに力を制御出来ないのはいただけないと思うけど、さっきのは仕方ない気もする。

 

 「さて、使い魔さん?まだ戦う気ですか?どう見てもボロボロですが」

 

 「当然だ。こんなの擦り傷さ」

 

 強がるけど、手も足も震えていてもう戦えそうには見えない。

早く治療しなければ危ないかもしれない。

 

 「おや?あなた・・・」

 

 何かに気付いたようにピクリと眉を上げるユエ。基本私と同じように表情が出ないユエだけど、パーツが所々で動くからそこで判断出来る。

 

 「いえ、今はいいです。まだやると言うのならこの剣をお貸ししましょう。

大切な剣ですから、本来は人に貸したくはないのですが、今回に限り貸しましょう」

 

 そう言ってユエは平民の前に剣を突き立てた。

 

 「さぁ、どうぞ。日本人の意地、見せてやるといいです」

 

 「日本人って、あんた!」

 

 「今はそんな事は気にせず、さぁ」

 

 どうも何かを知っているみたいだけど、なんだろう?

ユエは剣をそのままにルイズの手を引いて後ろに下がる。ユエは喰ってかかるルイズに何かを言っているみたいだけど、流石に聞こえない。

 言われたルイズは次第に大人しくなってきて顔から怒りの表情を消して行く。

 

 そして一つ頷くと一歩前に出て、腰に手を当てて胸を張り、平民に向かって大声を張り上げる。

 

 「サイト、命令よ!勝ちなさい!」

 

 「いわれなくても!!」

 

 ユエの剣を手にして、ルイズに答える平民。

ニヤリと笑いながら剣を構える平民に、ギーシュも杖を構える。

 

 「剣を取ったか。武器を持ったのなら、手加減はしないよ?」

 

 そう言ってゴーレムを二体作り出すギーシュ。今度のゴーレムは剣を持っている。ここからは、本当の決闘だ。

 

 「いくぞ!」

 

 動き出したゴーレムに向かって、先程とは比べ物にならない速さの動きで斬りかかって行く。

 一瞬で二体を切り倒した平民に驚いたギーシュは、さらに四体のゴーレムを出した。それぞれが同時、もしくは少し遅れて斬りかかって行く。普通に相手にすると苦戦する難しいタイミングの攻撃だが、平民はそれをも軽々斬り裂き、一瞬でギーシュに近付き、杖を弾き飛ばして、更に足を払って転ばせてから首に剣を突き付ける。

 

 「まだやるか?」

 

 「いやまいった、降参だ。僕の負けだ」

 

 ギーシュの敗北宣言が広場に響くと、見物していた生徒達も声を歓声を上げた。

 

 ゆっくりと剣を下げ、ユエ達の所に歩きだし、あ、倒れた。

 

 「サイト!」

 

 ルイズが声を上げ平民に駆け寄っていく。

ユエはそれを見ながら倒れた際に放り出された剣を拾い上げこちらに歩いてくる。

剣を見て首をひねっているけど、それよりも聞かないといけない事がある。

 

 「ユエ、その剣にはどんな魔法がかかっているの?」

 

 急に速くなった平民の動きは普通じゃなかった。何らかの魔法が使われたのではと考えられる。是非その魔法を教えて貰わないと。

 

 「それは僕も聞きたいね。言い訳はしないけど、魔法剣のお陰で負けたと言うのは納得し辛いからね」

 

 「いえ、それなのですが。この剣は確かに杖としても使える魔法剣ですが、使用者の動きを速くするような機能はないはずなのです。正直、急にあんな動きが出来る様になった事に驚いているです」

 

 それで剣を見て首をひねっていたのか。でも、

 

 「さっき、ユエも目で追えない速さで動いてゴーレムの攻撃を止めてた。あれは剣にかかっている魔法じゃなかったの?」

 

 「えぇ、あれは魔法じゃなく技術。体術の一つですので、剣は関係ないですよ」

 

 あれは魔法じゃなかったのか。体術、って事は私も出来る様になるのかな。

あれが使えれば、色々な状況で優位に立てる。目標を達成する事も容易になるかも知れない。

 

 「ユエ、良かったらそれ教えてほしい」

 

 「それ?瞬動を、ですか?」

 

 瞬動って言うんだ。あれほどの物だし、東方の秘技とかだったりで断られるかもしれない。その時にはどうにか説得しなくては。あんな魔法でも早々出来ない移動法を学べる機会滅多にない。ロマリアとかが邪法とか言ってくるかもしれないけど、ただの技術なら文句も言えないはず。剣を振るのと同じ事だし。

 

 「まぁ、構いませんが」

 

 「ありがとう。近いうちにお願いする」

 

 「えぇ、いつでもどうぞ。そういえばキュルケさんは何処に?」

 

 辺りを見回し、キュルケがいない事に気付いたユエが聞いてくる。

 

 「ミス・ツェルプストーなら、さっき小躍りしながら帰って行ったよ?

何故踊ってたかはわからないけど」

 

 小躍り?またキュルケの病気が出たのかな?

 

 「何故に小躍りですか?」

 

 「多分、キュルケの病気」

 

 「病気ですか?一体どこが悪いのです?」

 

 「そう病気。彼女は惚れっぽい」

 

 キュルケはよく色々な人を好きになる。一度に五人とか、よくある事で女版ギーシュと呼んでも間違いじゃないと思う。

 

 「私達も行きましょうか、タバサさん」

 

 促すユエの言葉に頷き、一緒に帰る事にする。

 

 「えっと、ミス・ファランドール!」

 

 その前にルイズに呼び止められた。誰かがかけたらしいレビテーションで浮いた平民を押しながら、ユエに向かって頭を下げる。

 

 「さっきは助けてくれてありがとう。あと、サイトに剣を貸してくれた事もお礼を言っておくわ」

 

 いつもは素直じゃない彼女だけど、今日は割と素直にお礼を言ってくる。

大怪我しかねない状況を救ってくれた訳だから、いつもの威張る様な態度を取る事は出来ないようだ。彼女は公爵の令嬢なのだし、そう言う礼儀は他のコッパ貴族とは一線を画している。

 

 「いいえ。少々出しゃばり過ぎたかと心配してたですが、結果良かったようで何よりです。それにどうも彼とは同郷のようですし、今度話を伺ってもいいですか?」

 

 「え?えぇ、全然構わないわ!そそそうだ、私の事はルイズでいいわ!

わ私も、その、ユエって呼んでもいいかしら?」

 

 少し顔を俯かせながら、少々赤い顔で名前で呼んでもいいか聞いている。

そんなに恥ずかしいだろうか。

 

「えぇ、構いませんよルイズ。近いうちにお茶でもご一緒しましょう。

東方の飲み物をご馳走しますよ」

 

 東方のって事は、またあの四角いのを出すのかな?私も一緒にお願いしたい。

 

 「えぇ、お願いするわ!じじゃあ、サイトを看病しないといけないから失礼するわ!」

 

 そう言ってルイズはサイトというらしいあの平民を押して帰って行った。

倒されても倒されても立ち向かう姿に少し心が揺れた。一度話をしてみたい。

 

 「さぁ、タバサさん。私達も行きましょう」

 

 思いも掛けない体験をした決闘騒ぎも終わり、そういえば、と賭けの結果がどうなるのか気になった。平民が勝ったけど、ユエが手を出したから無効なのかな?

 

 「結果は使い魔さんが勝ったんですから、賭けは私達の勝ちですよ」

 

 勝ちで押し切る気らしい。キュルケには悪いけど、何を食べるか考えておこう。

 

 楽しみ。

 

 




なんかまとまりが悪い気がする第五話でした。

もうちょっと考えて書くべきかもしれないですねぇ。
どうにかうまく妄想を変換して、辻褄が合う話にできるようがんばります。

では、次回をお楽しみに。
どこから書こう…?



こっそり誤字などを修正。ばれないようにこそっとね。

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