魔法少女ユエ~異世界探険記~   作:遁甲法

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誤字脱字が多い今日この頃、いかがお過ごしですか?

前回の恥ずかしい誤字を受け、慎重に読み直しての投稿です。

 もう、もうあんな事はさせないっ!という気分で見直しました。

きっとない、多分ない、そう思いながら第六話れっつごー


ゼロの旅6

 決闘騒ぎの翌日、日が出て間も無い学院を散策します。

顔を洗いに井戸まで行き、その後遠回りしながら部屋まで帰るです。麻帆良もそんなに車が通りませんが、ここは車自体がないので空気がとても綺麗です。

 まぁ、魔法世界にも車はないですが。

 

 アリアドネーに居た時はこんな事している余裕などなかったので、こうやって排気ガスを浴びた事のない空気を満喫する事もなかったです。あの時は、自分が誰だか分からず、更に魔法を覚えるのに必死だったので気にもしてませんでした。魔法世界の人間だと思っていたのも、こんな散歩をしなかった理由の一つかもしれないですね。とても勿体無かったと今にして思うです。

 そうやって朝を満喫しながら部屋に戻る途中お盆を持ったシエスタさんをみつけました。

 

 「シエっ」

 

 っと、いけません。急に声をかけてまた持ってる物を放り投げられたら困るです。今は杖を持ってないのでフォローも出来ません。

 

 「あ、ユエさん。おはようございます」

 

 「おはようです、シエスタさん」

 

 声をかけるのを躊躇してたら向こうも気づきました。実用的なメイド服で身を固めた彼女の隣まで行き、持っているお盆を何気なしに覗き込みます。

 

 「これは、朝食ですか?何故こんなものを持ってるです?」

 

 「昨日、ミス・ヴァリエールに頼まれたんです。看病するから朝食にいけないので部屋まで持ってくるようにって」

 

 なるほど。

朝食摂る時間くらい離れても問題無いと思いますが、結構義理堅いのですね。昨日あれから治癒魔法が使える教師に頼んで治して貰ったそうですが、それも応急処置くらいの出来でしかなかったようで、今日またかけて貰う予定だそうです。

 治癒魔法を使うには水の秘薬と言う魔法薬が必要で、それがとても高価なんだそうです。平民のシエスタさんにはまず出せない金額だそうで、貴族の中でも位が上らしいルイズでも、完治させるまで秘薬を買うと懐が寒くなるほどなんだとか。

 

 「ミス・ヴァリエールも、ちゃんとサイトさんを大事にしてるみたいでよかったです」

 

 貴族と平民なので、死にかけていてもそのまま放って置かれるのではと心配してたそうです。いえ、流石にそんな非人道的な事しないでしょう。

 そういうと、とんでもないと言ってどれだけ貴族と平民の立場が違うか、一般の貴族がどう平民を扱うかをこんこんと説明されました。身分がどうのと言う物が殆ど無い日本で生きてきた私には今ひとつピンと来ないですが、この身分の違いによるものは相当のようです。この分野で話を合わせられるのは刹那さんくらいですかね。いつもこのかさんと明日菜さんとの身分の差がと嘆いていましたし。身分さえなければ二人とも自分が!と、教室で叫び出して皆にからかわれていました。刹那さんはどこに向かっているですかね。

 

 「では、私はこの階ですから。失礼しますね」

 

 「えぇ、分かったです。

あぁ、そうです。どうせなら私もルイズの部屋にお邪魔するとしますか」

 

 「え?どうしてですか?」

 

 「昨日、私も焚き付けたですからね。治療薬の節約に一役買うです」

 

 あの時剣を貸さず、すぐに治療をすればそこまで酷くならなかったかもしれません。あの怪我であれだけ動いたので、折れた骨などが内臓を傷つけた可能性もあるです。私の治癒魔法でも細かく診察したのち、ピンポイントで治して行けばそれほど時間もかからず治せるでしょう。

 

 「ユエさんは水のメイジなんですか?」

 

 「いいえ?」

 

 治癒魔法が使えるのは水のメイジだけなんだそうです。

こちらでは自分に合う属性以外の魔法は使えないらしいですから、そう思ったそうです。不得意な属性では発動し難いのは私達の魔法も同じですが、完全に発動しないと言う事は無いですね。威力がかなり落ちるくらいで。

 練習しないと確かに使えなかったりしますが、それはどんな魔法でも同じですし。

 

 んむ?治癒魔法は属性魔法なんですかね?

 

 「私はどちらかと言うと、風ですね。雷や光も得意です。ここ最近訓練してくれていた師匠とも言うべき人が氷だったお陰か、少しですが氷も使える様になったです。その人と比べたら、いえ、比べる事すらおこがましいレベルでしかないですが」

 

 ちょっと氷属性の[魔法の射手](サギタ・マギカ)が撃てる程度ですからね。使えると言うのも少し恥ずかしいくらいです。

 せめて [氷爆](ニウィス・カースス)[氷神の戦鎚](マレウス・アクイローニス)とかが使えれば胸を張って言えるですが。多分使ってみても本来の威力には程遠い物しか出ないでしょう。

 

 「とりあえず杖をとって来るですから、先行ってて下さい。

あぁ、ルイズに後で行くと伝言をお願いするです」

 

 「分かりました。ミス・ヴァリエールのお部屋はここから四番目の扉ですから」

 

 「分かったです。それでは後で」

 

 シエスタさんと別れて私は自分の部屋に戻ります。

五階にある部屋へ戻って来た時にちょうどタバサさんが出て来ました。

何やらフラフラしてますが、大丈夫でしょうか?いえ、あの感じはただの寝不足ですね。私にも身に覚えがあるです。遅くまでスタンドの光で本を読んでいて、気付けば外が明るくなっていたり。あと一ページ、あと二ページ、なんてやっている間に時間が過ぎているのです。なんともおそろしいです。

 こちらではスタンドが無いのでそう言う事にはならないでしょう。いえ、[光よ](ルークス)を使って明かりを確保すればそうでもないです。魔力効率アップの修行にもなっていいかもしれません。今度やってみるです。

 

 「おはようです、タバサさん。眠そうですがどうしたです?」

 

 「んん、おはよう。遅くまで本を読んでた。なかなか止められなくて、つい夜更かしした」

 

 おぉ、夜更かしの理由がまさかのかぶりです。

 

 「本ですか。私もよく読むです。次のページでやめようと思ってても、なかなか止められないのですよね」

 

 「うん。出来れば一日中読みたい」

 

 よもやこんな異世界で同じ趣味の人に会えるとは。

こうして世界は違えど趣味の話が出来るのは楽しいです。今度、持って来た本を貸してみましょうか。厳選した哲学書、思想書、小説などそれだけで部屋が一つ埋まる程持って来てますから、きっと気に入るものがあるはずです。

 

 「おっと、そうです。ルイズの部屋に行く約束をしてたんでした」

 

 このままずっと本の話をしていたい所ですが、予定があるのを思い出しました。

非常に残念ですが、一旦話を切り上げなければならないです。

 

 「ルイズの部屋?」

 

 「えぇ。昨日、使い魔さんを焚き付けましたからね。怪我が酷いらしいので、少し治療の手助けをしようと思いまして」

 

 「治癒魔法が出来るの?」

 

 「えぇ、少しですが」

 

 「ついて行ってもいい?」

 

 「構いませんが」

 

 まぁ、ついて来るぐらい構わないでしょう。ルイズが嫌がったらダメでしょうが、それでもと言う程タバサさんも非常識ではないはずです。このまま話していると朝食の時間が無くなってしまうので、急いで部屋から杖を取ってきて、タバサさんと一緒にルイズの部屋に向かうです。

 1フロア降りて、先程シエスタさんが言っていた四番目の扉の前まで行きます。表札などがないので自信がないですが、タバサさんは全く平然としているので、多分合っているのでしょう。その扉をノックするとすぐ返事があり扉が開けられます。

 

 「あぁ、ユエさん。待ってたんですよ」

 

 「すいません、少々話し込んでしまっていて。

実はタバサさんも一緒に来たですが、入っても大丈夫ですか?」

 

 「少々お待ち下さい。……はい、大丈夫だそうです。どうぞ」

 

 そう言ってシエスタさんが扉を開いて招いてくれ、私とタバサさんはそのままルイズの部屋に入ります。部屋の作りは私の部屋とほぼ同じです。しかし、置いてある家具は雲泥の差です。12畳ほどの広さの部屋に置いてある家具はアンティークなのでしょうか、かなりの高級感です。全部揃えるのだけで普通の人は一生働かなければならないでしょうね。ちなみに私の部屋は備え付けのベットと、テーブルが一つだけです。他ものは全部亜空間倉庫に入っているので必要無いのです。オスマンさん、お爺様が揃えてくれると言ってくれるですが、丁重にお断りしたです。そんな家具の一つ、大きなベットの上で使い魔さんが寝ています。包帯でぐるぐる巻きになってなんとも重傷そうです。

 

 「どうも、ルイズ。おはようございます」

 

 「お、おはよう。ゆゆゆユエっ」

 

 なにやらスクラッチしてますが大丈夫ですか?

そんなに慌てて挨拶しないといけないほど、私は短気ではないですよ?

手で軽く髪を梳き、居住まいを正すルイズ。なんともアンティーク人形を思わせる可愛らしい見た目ですね。知り合いに同じく見た目だけは綺麗な人形を思わせるエヴァンジェリンさんが居るですが、纏う雰囲気は全然違います。例えるなら、子猫と戦車です。勿論前者がルイズで、後者がエヴァンジェリンさんです。

 

 「おぉう!?急に寒気が!」

 

 「え!ユエさん、大丈夫ですか!?」

 

 急に来た寒気に身を震わせるとルイズ達が驚いて目を白黒させます。

 

 「いえ、大丈夫です。それよりもルイズ、すぐ来るつもりが遅れました。すいません」

 

 遅れたのは無駄話してたからですからね、ちゃんと謝っておかないといけません。

 

 「べ別に構わないわ。朝食はここで食べたし、今日は授業を休むつもりだったからのんびりしてられるしね」

 

 「おや?そんなに悪いのですか?この使い魔さんは」

 

 「まぁ、まだ応急処置した程度でしかないからね。せめて目が覚めるまでは見てないと」

 

 まったく、とでも言いそうな目で使い魔さんを見るルイズは、それでも優しげな雰囲気を醸し出しています。良いパートナーとなりそうですね。

 

 「こっちのメイドが代わりに見てるって言うけど、自分の使い魔を他人任せにはしたくないのよ。怪我した使い魔の面倒を見るのも主人の仕事だからね。主人のいう事を聞かない生意気な使い魔だとしてもね」

 

 むん。と胸を張ってそう言うルイズ。シエスタさんは少し物足りなそうです。そんなに世話したいのですか?メイドですから、世話出来ないのが物足りないのでしょう。職業病というやつですね、きっと。

 それとも、この使い魔さんに?ほほぅ?

 

 それから少し世間話をして行きます。治療の具合や、秘薬の代金がやはり懐を圧迫する事など迷惑そうに言っていますが、惜しみ無く買い揃える所を見ると言う程嫌ってはいないようです。嫌っているなら、そもそも治療なんてしないでしょうし。

 

 「やはり秘薬は高いのですか?」

 

 「まぁ、ね。一つだけなら兎も角、今のこいつを完治させる程の数を揃えるとなると、少なくても平民では手が出ないでしょうね。私も今までそんなに使ってなかったから余ってたお小遣いが、今回のこれでほぼ飛んでっちゃうわ。しばらく不自由するわね、これは」

 

 聞いた通りでした。そんなに高価な魔法薬とは一体どんなものなのでしょう。

ルイズにそう聞くとまだ手に入れただけで使ってない秘薬を見せてくれました。

見た目は水薬そのままですね。ちょっと青みがかった液体で、中で時々青い光がうねるです。その光るものが、混ぜ込まれている魔法なのだとか。

 治癒の魔法を混ぜ込み、飲むだけでも効果を表すこの秘薬、もう少し詳しく知りたいですね。魔法薬と言うのは私達の所にもあるですが、大体が媒体としての役割りしかないものです。飲むだけでも効果が出るよう魔法を混ぜる。つまり、薬に遅延魔法(ディレイスペル)を仕込むという事ですか?

 この術式を解明すれば、いろいろな事に応用出来そうです。後で、これを作れる人に教えてもらうとしましょう。もしかしたら遅延魔法(ディレイスペル)を飲むだけで補充出来るようになるかもしれないです。そんなことが出来れば、詠唱時間を節約出来るですし、使い切ってもすぐ補充出来るです。これはなんとしても覚える価値があるです。補充のための呪文詠唱は時間がかかるですし、戦闘中に使い切ってしまうと私の戦闘力は激減しますからね。それで反応が遅れて、何度氷漬けにされたか分かりません。

 

 「そういえば、何しに来たの?話するだけなら、こんな朝早くからくる必要ないわよね?って、そこの青いの!サイトの怪我を突つくんじゃないわよ!」

 

 タバサさんが包帯の上から杖の先端で怪我を突ついてます。

まだ完治どころか応急処置だけだと言ってたので、余り触ると傷口が開く可能性があるです。

 

 「タバサさん、何してるですか。怪我人をオモチャにしてはいけませんよ?」

 

 「あの動きがどうして出来たのかと思って。この左手にあるルーンが怪しい」

 

 突いて遊んでいるわけではなく、昨日のあの素早い動きの秘密を探っていたようです。突つく必要はない気もするですが。

 

 「昨日のあれはユエの剣のおかげじゃなかったの?」

 

 ルイズには説明してなかったですから、そう思ってしまっていたようです。

私が一から説明しますと、ふんふんと頷きながら聞いているルイズとシエスタさん。

この二人、結構気が合うのではないですか?身分の違いなどを度外視すれば、度外視出来れば良い友人になる気がするです。

 

 「今朝来た理由は、昨日焚き付けたお詫びに、魔法薬の節約に役立とうと思いまして」

 

 今回何度目かの説明をルイズにします。治癒魔法が使える事から高くて懐がピンチと聞いた事まで全部喋ります。

 

 「いや、確かに懐がピンチなのは認めるけど。誰よ、そんな事漏らしたのは」

 

 横でシエスタさんが目をそらしてソワソワしてるです。

そんなリアクションしてたらすぐバレるですよ。って、ほらルイズがじとっとした目で見てるです。

 

 「まったくこのメイドは口の軽い。普通なら手打ちにしてる所よ」

 

 「す、すいません!」

 

 こう聞いていた身分違いのアレコレがあまり感じられないのは、ルイズのせいですかね。普通に友達と接するような軽いノリで心地良いです。シエスタさんの方は本気で恐縮してるようですが、それは仕方ないのでしょうね。

 

 「余りゆっくりしてると、私達の朝食の時間がなくなる」

 

 くいっと服を引っ張るタバサさんにそう言われ、かなり時間を食っている事に気付いたです。

話し込んでばかりだったので、予想外に時間が立ってました。豪華な食事は困りますが、全く食べないのもお昼まで持たないくて困ります。授業中にお腹が鳴ったら恥ずかしいですからね。

 さっそく治療にかかりましょう。

 

 「じゃあ、さっそく治療して、私達も朝食に向かうです」

 

 「ユエは水のメイジだったのね。この秘薬使うなら渡すわよ?」

 

 そう言って先程見せてくれた魔法薬を取り出すルイズですが、私の治癒魔法に魔法薬は使わないのです。使うようならわざわざ私がやる必要がないですし。しかし、使わない治癒魔法ではあまり治らないとルイズとタバサさんに言われます。こちらの治癒魔法はどんなものなのか、今度見せてもらいたいですね。

 それより今は治療に専念です。

 

 「では、始めるです。少し下がってて下さい」

 

 まずは怪我の具合はどんなものかを見てみます。

魔法を使って全身をスキャンし、どこが怪我しているのか、どのような状態なのかを見て行きます。使う魔法は以前アリアドネーの保険医の先生が私の頭の怪我の具合を見る時に使った魔法です。出る結果を判断するのには、多少の知識が必要ですが、怪我の具合を見るだけですからそこまで難しくないです。

 

 検査中だよー(エクサミナームス)! 検査中ですわー(エクサミナームス)

 

 小さい人型の精霊が、使い魔さんの周りを廻って細かく検索していきます。

骨折箇所、裂傷箇所、その他打撲等、数十項目の結果が出てきます。保険医の先生は結果を紙媒体で出力してましたが、処分に困りますしカルテをつける必要もないので、アーティファクトを経由して結果を空中に投影します。

 ちなみにこの精霊、見た目はコレットと委員長(エイミー)が小さくなった感じです。どんな見た目でもいいのですが、試しにやって見たらなんかしっくりきたので、そのまま使ってます。委員長(エイミー)は顔を赤くして怒ってましたが。

 

 「ふむふむ、本当に酷い怪我ですね。特に右手は粉砕骨折してるです。

金属の塊をそのまま受けた訳ですから、そうなっても不思議ではないですが」

 

 「ちょちょちょ、なによそれーー!?」

 

 「わぁ、可愛いです!メイジってやっぱり凄いですねぇ!」

 

 「な、なんです皆さん?」

 

 出た結果をスクロールさせて読んでいたら、ルイズ達が一斉に私に詰め寄ってきました。あ、シエスタさんは、精霊の方に行き委員長(エイミー)形の方を頬ずりしてます。手をパタパタさせて嫌がるチビ委員長(エイミー)は、何だか可愛いですね。

 

 「ユエ!なによこれ!? こんな魔法見た事ないわよ!?」

 

 「これが東方の魔法?一体どんな効果が?」

 

 「え!?東方の魔法なの!?なんでそんなの使えるの?っていうかこれって一体・・・!」

 

 何やらルイズ達が騒ぎますが、なぜでしょう?って、そうです。そう言えばこちらではこの手の魔法は宗教上タブーになるのではなかったでしょうか?それでルイズ達は騒いでいるのですね。誤魔化すのもいいですが面倒です、普通に話して口止めするにとどめましょう。

 

 「落ち着くですよ、二人とも。これは私の国で使われている治癒魔法の一種です。体の怪我等の状態を調べるのに使ったです。今怪我の状態を見たので次は治療に入るです。もう少し待って下さい、終わったらちゃんと質問に答えるですから」

 

 「これ、東方の治癒魔法なの?なんか凄そうね」

 

 ルイズがコレット型を興味深そうに突きながら聞いてきます。

 

 「えぇ。体の状態を見るだけの物ですが、かなり細かく見れるです。

知識さえあればどんな病気や怪我でも見つけられます。原因が分かれば、あとは治す魔法を探すか作ればいいので、診察によく使われるです」

 

 まぁ、呪文を作る何て事はそうそうしませんが。大抵の呪文はアーティファクトですぐ見つけられる私にはとても便利な魔法です。そんなに治癒魔法使いませんが。

 

 「え?どんな病気でも分かるの?」

 

 「完全に分かる、とは言えませんがどこが悪いのかくらいは分かるです。悪い場所が分かったらあとはそこを注意深く検査して治して行けばいいので手間がかなり省けるのですよ」

 

 説明すると、ルイズは何やらブツブツいいながら考え込み出したです。

一体どうしたのでしょう。まぁ、私もよく考え込むので人の事は言えないですね。自分で再起動するまで放って置きましょう。

 

 「ユエ、この魔法は病気の原因とかも分かる?」

 

 「まぁ、大体の物は分かるですよ?」

 

 「なら例えば、何かの魔法薬を飲まされておかしくなっても治せる?」

 

 何か具体的ですが惚れ薬などの効果がかかってるかとかも調べる事が出来るですから、大丈夫じゃないですかね。他にも、ネギ先生の故郷の人達を助ける為に、このかさんとアーティファクトでいろいろな解呪や解毒の呪文を調べていたので、大半のものは治せる自信があるです。

 私自身にも、遅延魔法(ディレイスペル)を使い、常に20種類近くの解呪解毒呪文を埋め込んでいますから、ちょっとした状態異常は即座に解除出来るです。

 

 そう言うと、今度はタバサさんまで止まってしまいました。

まぁ、きっと込み入った事情があるのでしょう。無理に聞くのも野暮ですし、さっさと治療に戻るです。

 怪我の箇所はほぼ分かったので、あとはそこを治すだけです。このかさんの様に全身一気に出来るほど魔力がないので、まずは右手から行くです。

 

  [治癒](クーラ)

 

 呪文に反応して、右手の怪我が光出します。治り切るまでゆっくり魔力を流し込みながら制御を続けるです。下手に大量の魔力を流し込むと、その魔力が体の中で暴れて熱が出たりするので慎重にやらねばなりません。

 

 「ふぅ、次です」

 

 何箇所もある怪我を同じ要領で治していきます。いつの間にか復活したルイズとタバサさんも何か食い入るように見てくるです。ちょっと緊張するですね。

 一人、まだ解除してなかった精霊達を胸に抱いてクネクネしてるシエスタさんはどうしたらいいでしょう。まぁ、それも後にするです。

 

 三十分ほどで、大体の怪我を治して息をつきます。こういう怪我は、いつもこのかさんが治すので、余り手際良くとは行きませんでした。もっと精進しなければならないです。

 

 「えっと・・・、治ったの?」

 

 「大体は、ですね。まだ寝てますが、しばらくすれば起きるのではないですか?」

 

 呆然とした様子で尋ねてくるルイズにそう返して、凝り固まった背中を伸ばすです。こんな大物を治す機会そうそうないですから、いい勉強になったです。

 人の不幸を教材代わりにしたようで少し心苦しいですが、そこは諦めてもらうととするです。

 

 「わぁ!凄いです、ユエさん!もう、全然怪我が無くなってます!」

 

 シエスタさんが、未だに精霊を抱きしめながらそう褒めてくれます。

なんか精霊がぐったりしてるですが、何したですか?

 

 「私でもどうにか治せて良かったです。思ったより時間がかかったので、急いで朝食に向かいましょうタバサさん」

 

 まだ再起動してなかったタバサさんにそう声をかけ、精霊達を解除します。

 

 「あぁ!もっと撫でたかったのにっ」

 

 シエスタさん、また今度出して上げますから我慢して下さい。

 

まだボーッとしているタバサさんの手を引いて扉まで行きます。本格的に時間が無くなってきたので、ちょっと[扉](ゲート)で飛んでしまいましょう。

 

 「それでは、後はよろしくです、シエスタさん。私達は朝食に行くです」

 

 「あ、はい。分かりました。サイトさんの事はお任せください」

 

 「ッハ!?ユ、ユエ!!」

 

 急にルイズが振り向いて叫びました。そんな大声出さなくても大丈夫です、一体なんでしょう。

 

 「えっと、あの、治してくれてありがとう。これだけ治れば、水の秘薬ももう使わないで大丈夫そうよ。お礼を言うわ」

 

 「お役に立てたようでなによりです」

 

 「そ、その、もしよかったらでいいんだけど、いつか私の姉様も見てもらえないかしら?姉様は病気でずっとベットから出られないでいるの。治そうといろんな水のメイジに見せたけど、誰にも原因すら掴めなかったのよ。今の東方の魔法ならもしかしたら分かるかも知れないの、だからお願い。一度でいいから、頼まれてくれない?」

 

 さっき考え込んでいたのはそれですか。私は治癒を専門とする魔法使いではないので、治せない可能性もあるのですが、それでも良いと言うのならそのうち試してみましょう。

 

 「ありがとう!こ、今度時間があったら、ついて来てもらえるかしら!?

ここからはちょっと遠いけど、馬車や旅費は全部私が出すから!」

 

 「えぇ、いいですよ。では、その時は教えて下さい。できる限りの事はするです」

 

 治せるかは分かりませんが、ルイズの頼みを了承すると、彼女は満面の笑みを浮かべてお礼を言いました。整った顔の人の笑みは強力ですね。同性とはいえ、くらっと来たです。

 輝く笑顔で手を降るルイズに挨拶して、私はタバサさんを連れ、食堂まで飛びました。一瞬で食堂に着いた事にタバサさんが目を白黒させているですが、構わず手を引いて入ります。かなり遅刻してますからね、急がないと食べられなくなるです。

 

 「あんた達遅いわよ?二人して何してたの?」

 

 キュルケさんがようやくやってきた私達に文句を言います。

確保してくれていた隣の席に着き、出された豪華な朝食を食べ始めると、先程までの事をキュルケさんに話します。

 

 「そんな事してたの。酷いわ!私を除け者にして二人で楽しんでたのね!?」

 

 「なんのノリですか、それは」

 

 わざわざハンカチを出して噛み締めながら妙な演技をするキュルケさんにツッコミしながらパクついていると、横からタバサさんがなんとも言えない目で見てくるです。

 

 「えーっと、タバサさん?どうしたですか?」

 

 「ん、なんでもない。いつか頼み事をするかも知れないから、その時に言う」

 

 「はぁ・・・?」

 

 何かあるんでしょうが、今はいう気がないようです。

すでに朝食しか見ていないタバサさんですが、その目の奥に見覚えのある光があるのに気付きました。見覚えはあるのですが、一体どこで見たのでしょうか?

 喉の奥に小骨が引っかかっているような、妙な違和感が拭えません。いつも見ていた気がするその光の正体を考えていると、いつの間にか殆どの人が居なくなっていました。

 

 「もう皆行っちゃったわよ。もうすぐ授業だし、急がないと遅れるわよ?」

 

 来るのが遅すぎたですね。折角早く起きたと言うのにその殆どを世間話で使ったからでしょう。後悔するつもりはないですが、次からは気をつけるです。

 遅れたとしても走って行く必要はないですから、まだマシですね。麻帆良では、寮から学校まで遠いのでかなり走らないといけないですが、ここはすぐ隣の塔で授業をするのでそこまで急ぐ必要はありません。まぁ、だからと言ってゆっくりもしていられない時間ですが。

 

 「タバサももう行くわよ?」

 

 「あとこれだけ」

 

 最後に食べる為に残していたらしいハシバミ草のサラダを一気に頬張り、ようやく彼女も食べ終わりました。いえ、まだモグモグとやってるですね。ハムスターの様に頬が膨らんでいるです。そのままキュルケさんに手を引かれて食堂を出て行きます。

 後ろからついていく私は、その後姿を見ながら先程の光の正体に思いを馳せます。

彼女の私より小さい身体と、それに似合わぬ大きな杖。メガネの奥で輝く・・・あぁ、思い出したです。どうしてすぐ思い出せなかったのですか。あれほど見ていたはずなのに、忘れるとは。

 

 「どうしたのユエ?早く行かないと遅刻するわよ?」

 

 「さっきの奴を使えばすぐ」

 

 「さっきのって?」

 

 「ルイズの部屋から、一瞬で食堂に来た」

 

 さっきの[扉](ゲート)の事をキュルケさんに教えるタバサさんを見てると、やはり少し似てる気がするですね。低い背丈とその背以上の杖。年齢と反比例するその落ち着き。そんな所が少しネギ先生に似てるです。あの光も、先生が故郷の人達を思い出している時に見せる光と同じでした。七年立った今でも、あの雪の日から抜け出せないネギ先生。強くなり、世界を一時的にでも救うほどの力を手にしても、未だ消えることのない探求の光。彼と同じ光を灯す彼女は、一体何を失ったのでしょう。もし私で役に立つなら、是非頼って欲しいです。

 

 「ユエ、不用意に使うなって言ってるのに、もう。

でも、私も体験したいわ。教室まで行ってくれる?」

 

 キュルケさんがそう言って私の手を握ります。反対側からはタバサさんが杖を振れるように、手ではなく服の裾を握って準備します。まぁ、そう言うなら行きますか。

 

 「分かったです。しっかり掴まっていて下さい。行きますよ?」

 

 [扉](ゲート)を発動させて、一気に教室まで飛びます。初めての魔法に興奮気味のキュルケさんに振り回されているタバサさんを見ていると、不意に目が合いました。

 

 "私程度で良かったら、いつでも力になるです。遠慮なく言って下さいね?"

 

 こんな私でも白き翼(アラアルバ)の一員です。少しくらいの助けにはなるでしょう。

 

 突然頭に響いた私の念話に驚くタバサさんを尻目に、教室に入るです。

入った瞬間、ザワっと皆が騒ぐですが、気にせず席に着きます。

 

 さぁ、この世界の魔法をいち早く覚えて、誰かの力になれる魔法使いになるです。そう、ネギ先生のような立派な魔法使い(マギステル・マギ)に。

 

 

 




と、いうわけで第六話でした。
なんともいろいろ強引な感じになっちゃいました。
もう少しキャラの落とし込みをしないと、自然に動かせないようです。
両方の原作を読み直して、キャラのイメージを固める作業をしなければ。

でわ、次回頑張ります

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