「比企谷君、まだまだ食べなさい。男の子なんだから。」
「そうよ。遠慮しないで。食べてくれる人が増えると私も作りがいがあるわ。」
「……はい。」
「モグモグ」
どうしてこうなった。
…………。
神社で稲城と出会う。
↓
駅前で稲城が泣いて野次馬が来る。
↓
その場から逃走する。
↓
自己紹介をする。
↓
店でご飯を食べる。
↓
時間が過ぎて帰れなくなる。
↓
稲城が家に部屋が余っているからと提案する。
↓
…………。
あれ?
店から出た記憶も会計した覚えもないぞ。
「さあ、遠慮しないで食べなさい。口に合わなかったかな?」
「け、決してそう言うわけでは……。」
「比企谷君、そんなに硬くならなくても良いんだよ。ハハハ!」
「そうよ。コンのお友達なのだから。ふふ。」
「……はい。」
何でこの人たちは一人娘が知らない男を連れてきて何も言わないんだよ。
普通…………なんかするだろ。
「モグモグ。」
「……。」
稲城さーん、さっきから食べてばっかりですよね?
少しくらい会話に入ってもらっていいですかね。
ご飯を沢山食べるように勧められても胃がキリキリして食べられないんですけど。
「金比羅……。」
稲城のお父さんが稲城に話しかける。
会話に入ってこないから何か言うのか。と期待したが違った。
「コン、口にケチャップが付いているぞ。」
金比羅だからコン……普通だな。
ヒッキーよりも良いな。
「フキフキ。付いてない?」
「もう付いてないぞ。比企谷君に拭いてもらった方が良かったかな。ハハハ。」
な、な、な、何言ってるんだこの父親は!
普通に頭のネジ数本抜けてるんじゃ……。
「拭いてみる?」
稲城がわざと口元にケチャップを付ける。
「……遠慮しておきます。」
「コン!」
おっ!やっと期待した答えが……「食べ物をお粗末してはダメよ。」来なかった。
確かに食べ物を粗末にしちゃいけないんだけど……何か違うよな。
「メインの餃子できたわよ。」
餃子がメインなのか……。
「やった~。」
「比企谷君、妻が作る餃子は美味しいんだよ。私が取ってあげよう。」
「あ、ありがとうございます。」
……と言いつつ正直、いろいろありすぎてお腹一杯です。
まあ、出されたなら食べますけど……。
「いただきます……パクッ。……う、うまい!」
「それはよかった。なあ、母さん。」
「お世辞でも嬉しいわ~。」
お世辞じゃないんだけどな。
このうまさならお店に出てもおかしくはない。
「ふぅ~、ご馳走さま~。お腹一杯だよ~。」
「……。」
店にいるときにも思ったが何でそんなに食べられるんでしょうかね。
胸の大きさは違うがアイツと同じくらいかそれよりも細く見える。
「比企谷さん、今日はどうするの?泊まるところ無いんでしょう?」
「おお、そうだったな。コンが迷惑をかけたようで。」
「い、いいえ。むしろいつもよりゆっくりできて良かったですよ。」
この家に来た記憶が無いけど。
それは言わないでおこう。
「そう言ってもらえると助かるよ。詫びとしてはあれだが今日は家に泊まっていきなさい。」
これ以上施しを受けるのはまずい。
「ご飯を食べさせてもらったのにそこまでしてもらうわけには……。」
「まあ、良いじゃないか。今日くらいは人に甘えてもね。」
稲城の父親が俺の何かを見透かしたかのように言う。
「今からだと部屋が取れないわね~。」
母親が追撃をしてくる。
……野宿でも。
「泊まらないの?」うるうる
「……よろしくお願いします。」
稲城さーん、それは卑怯ですよ。
「それなら母屋に帰ろうとしよう。」
ん?母屋に帰ろう?まさか……。
「ここが母屋じゃないんですか?」
「ははっ、比企谷君、なかなか面白いこと言うね。ここは離れだよ。」
「……。」
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
……………………………………………………
「「「お帰りなさいませ。浩志様、ミエ様。金比羅御嬢様。」」」
「ご苦労様。」
「お疲れ様。」
「ただいま~。」
俺がこっそり中に入るが……。
「「「比企谷様。」」」
「……お、お世話になります。」
メイドによりステレスヒッキーが無力化された。
「ははっ、比企谷君。ビックリしたかね?」
「まあ……。」
近くに似た人がいましたけど……。
「そうか……夜はまだ長い。男同士でゆっくり話そうじゃないか。」
「…………。」
「風呂の準備をしてくれ。」
「既に出来ております。」
「それじゃあ、比企谷君行こう。」
ズルズル
稲城の父親が俺を引き摺っていく。
「……。」
ドナドナドナドナ~。
アホ毛が揺れる~。
……
…………
………………
ガラガラ
「今日も素晴らしい!」
「……。」
これ何人用?
普通に10人は余裕で入れるぞ。
「よし、比企谷君、背中を流してあげよう。」
「結「そう、遠慮するな。そこに座ってくれるか?」」
「……。」
俺はそれに従い座る。
「ではいくぞ。」
ゴシゴシ
ゴシゴシ
「痒いところはないか?」
「特には……。」
「そうか……。」
ゴシゴシ
ゴシゴシ
「「……。」」
「では流すぞ。」
「はい。」
ジャアアー
「よし、私もお願いしよう。」
「はい。」
ゴシゴシ
「大丈夫ですか?」
「もう少し強くてもいいな。」
「はい。」
ゴシゴシ
ゴシゴシ
「痒いところは?」
「特にないな。」
ゴシゴシ
ゴシゴシ
「ふむ、流してもらってくれるか?」
「はい。」
ジャアアー
「よし、浸かるとしよう。」
「……。」
チャポンッ
「ふぅ~。疲れがとれる。比企谷君はどうかね?」
「気持ちいいです。」
普段は家の浴槽で我慢しているからな~。
俺はポキポキと首を鳴らす。
「……比企谷君。」
「はい。」
「今日はコンの我儘に付き合ってくれてありがとう。」
稲城の父親が頭を下げてくる。
「あ、頭を上げてください!」
「いや、私がしたいからこうしているんだ。」
「……。」
そして、頭を上げて俺に言う。
「コンがあんなに食べている姿を久しぶりに見たからね。」
言っている意味がわからなかった。
普段はあそこまで食べないと言うことか?
俺が疑問に思っていると答えてくれた。
「……普段は少食だよ。」
「えっ……。」
俺は信じられなかった。
だってそうだろ。
店で、家でも沢山食べていたのだから。
「何か理由があるんですか。」
「……知っているけど私の口からは言えないよ。コンが隠しているからね。コンが言ってくれるのを待ちなさい。」
「……はい。」
今の俺がこれ以上聞いても何も答えてはくれないだろう。
「私はそろそろ上がろうと思うが比企谷君はどうする?」
「もう少し浸かっています。」
「ゆっくり考えなさい。君の今後のこともね。あと私のことは浩志さんと呼びなさい。あと妻も含めてね。」
「いや「い・い・ね」」
「は、はひ!」
やっぱりこういうひとが怒ったら怖い。
浩志さんが頭を洗って風呂から出る。
「……。」
今後の俺……か。
俺はどうしたらいいんだろうか?
千葉に帰るか……帰らないか。
学校も……。
…………わからない。
ブクブク
ブクブク
「比企谷くーん、まだ~?」
稲城!?もうそんな時間か!?
「も、もう少しで出る!」
「それなら私も入ろうかな~。」
「!!!!」
ジャバッ!
ドテーン!
バターン!
「ひ、比企谷くん、大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ。」
ギャグみたいに転けたな。
疲れがとれたはずなのに全身が痛い。
「本当に大丈夫?」
ガラガラ
「だ、大丈夫だから!出るの待ってて!」
「……わかった。何かあったら言ってね。」
「ああ……。」
ガラガラ
きっと湯気で見えてないはず。
たぶん……。
「…………結構筋肉あった/////」
「さっさと頭を洗って出るか。イテテ。」
………
………………
………………………
メイドが案内してくれる。
一人だったら迷子だな。
「比企谷様、お部屋はこちらになります。」
「あ、はい。」
「何かありましたら内線電話で088と押してください。私がすぐ行きますので。」
「は、はい。」
「それでは失礼します。」
「あ、あの~。」
「何か?」
「ト、トイレの場所は?」
「この廊下の突き当たりの右側とそこの階段を上がった場所にあります。」
「他に何か?」
「いいえ。」
「それでは、改めて失礼します。」
シュンッ
き、消えた!?
キョロキョロ
「比企谷様、消えたわけではございません。天井に通り道があるのです。」ドヤ
先程のメイドが天井から顔を覗かせる。
「……。」
凄いですけど、ドヤ顔しなくても……。
「それでは、失礼します。」
ガチャッ
天井にある蓋を閉める。
……部屋に入るか。
「広すぎだろ。うちのリビンクぐらいあるぞ、ってあの家に帰るかはわからないけどな。」
俺はベッドの上で浩志さんに言われたことを再び考える。
縁を切ったあと俺はどうするつもりだったのだろうか。
あの神社に行ってそのまま千葉に帰ろうとした……。
誰も助けてくれないあの場所に……。
もしかしたら『死』を選んでいたのかもしれないな……。
……もう寝るか。全身が痛いしな。
俺は電気を消そうと立ち上がりスイッチのある場所に向かう。
バーン
突然ドアが開く。
ビクッ!
「い、稲城!?」
「遊ぼう!」
「学校は?」
「今は……行ってないんだ。」
「あ……「き、気にしないで。それよりなにして遊ぼうか?テレビゲーム?トランプ?」」
箱から色々出してくる。
って風呂から出たばかりなのかかなり色っぽい……ゴクッ。
…………八幡の八幡落ち着け。
こう言うときは深呼吸だ。
スーハースーハー
よし……。
「二人でトランプは……。」
「と言っている比企谷くんは一人でトランプしたことあるんでしょ?」
「ウッ!」
確かにしたことはあるが、あれはしない方がいい。
複数でしたときに序盤で上がれなくなる。
トランプのピラミッドは別だが。
「う~ん、これしよう!」
稲城が配管工やら黄色いネズミなどがでてくるソフトを見せる。
「はぁ、少しだけだぞ。」
「やった~。」
両手を上げて喜びを表現している。
大袈裟すぎる。
「俺はこれだな。」
「私はこれ。」
「ってランダムじゃねーか。」
…………
……………………
………………………………
……………………………………………
「稲城、強すぎだろ。」
「比企谷くんもね。」
「俺、3勝7敗だぞ……。」
動画とか見て研究してたんだけどな……。
動画以外の動きをしてくると対処しきれない部分も出てくる。
「あ、もうこんな時間だね……そろそろ寝る?」
「ああ、そうだな。」
俺たちはゲームを元の位置に片付ける。
「じゃあね、楽しかったよ。おやすみ~。」
「おう、おやすみ。」
稲城が部屋から出ていく。
………元気そうだけどな。
見た目だけではわからない……か。
ガチャッ
ドアから稲城が顔を覗かせる。
「忘れ物か?」
「違うよ。」
「じゃあ何だよ。」
「言い忘れたことがあったから。」
言い忘れたこと?
何だ?
「……風呂から出たばかりだとどうしても色っぽく見えるよね!おやすみ~。」
バターン
稲城が勢いよくドアを閉める。
……な、な、な、何言ってるんだよアイツは!
折角ゲームで忘れかけていたのに思い出しちまったじゃねーか!
忘れるために俺は電気を消して布団に潜る。
心頭滅却―――。
「……寝れねー。」
湿った髪に火照った表情……。
「…………。」
俺は何かと格闘し眠りについたのは朝方だった。