『俺の名前は比企谷八幡。
先日、リア充(仮)になりました。
なんと!
相手はあの稲城金比羅さんです!はい、拍手!』
パチパチ
………………。
何で俺なんだよ。
「なー「んー、初デートどこにいこうかな~。」……。」
「あの~、稲「こ、ん、ぴ、らでしょ♪あっ、コンちゃんでもいいよ♪エヘヘー。」いや、何でもーーーー。」
「あ、わかった!八幡も初デートだから一緒に決めたいんだね。私ばっかり考えちゃってゴメンね。エヘヘ。」
「………。」
可愛いから許す。
「それでね―――――。」
「というわけで、結局街を適当にブラブラすることに決まりました!イエーイ!」
ピース
「まてまて、十何冊も雑誌を見て決まらないってどういうことだよ。」
「行きたいところがあり過ぎて決まらないんだもん。」
デートスポットのリストを見ると、京都以外にも大阪、神戸の観光名所が書いてあり、既に旅行となっていた。
「それはデートと言うのか?もう旅行だろ?」
「そうなのかな~?そう言われると1日で全部回りきれないかも。」
「………………。」
これ全部1日で回る気だったのか………どう考えても無理だろ。
ガラガラ
「比企谷さん、ラブラブしているところ申し訳ないけど、昼御飯の時間よ。」
あの看護師さんが昼御飯を持ってきたようだ。
※前話を参照してね。
「今日の昼御飯はなにかな~と。」
「稲城さんのは無いわよ。」
「エッ(゜д゜)!」
「それはそうでしょ。入院しているのは比企谷さんなんだから。」
稲城………その表情は止めておいた方がいいぞ。
俺の経験上、間違いなくネタにされるから。
「私にゅ、八幡とご飯食べたい!」
あ、稲城が噛んだ。
うん、噛んだ。
「それならさっさと買ってくればいいじゃない。その間に私が食べさせておくから。」
「ムウウ………八幡!絶対食べちゃダメだからね!」
シュパッ!
どっちの意味でだ?
ご飯か、看護師さんか。
「………。」
「比企谷さん………じゃなくて、は・ち・ま・んと呼んだ方がいいかしら?ウフフ。」
「いや「とおぉぉ~。」」
「八幡!大丈夫!?貞操とか貞操とか!?」
「ちょっ、まっ「チッ!」」
チッ!って何でそこで舌打ちするんですか!
今度から二人きりになるの怖いんですけど!
あと、帰ってくるの早すぎ!
「そこは大丈夫よ。私がリードしてあげるから。」
そういう問題じゃない!
「八幡!多分リードはできないけど、私の初めてをあげるから!それで許して!」
アウト。
完全にアウト。
誰がどう見てもアウトだ。
うん………………………………………………………………………稲城って初めてだったのか、良かった。
………じゃねーよ!
何、考えているんだよ!
安心しているんだよ!
そんなのただの変態野郎と変わらねえよ!
はあー、疲れた。
「「それでどっちにする(の)?」」
『出ていけー!』
俺は二人を部屋から追い出した。
グゥゥ
「食べよ。」
モグモグ
「………………うまい。」
………………
………………………………
………………………………………………
「はぁ~、追い出されちゃった………恭子さんのせいだからね!」
「良いじゃないの。あの事がバレずに済んだんだから。あと、彼には本当のこと言うの?これは絶対にバレることなんだから。」
「八幡には悪いけど、私は今を楽しみたい。」
「そう。ところで昼御飯は?」
「あ、病室に忘れたー!あの袋には限定のアイスが入っていたのに~!」
「それは残念ね。きっと今頃比企谷君に食べられているわよ。」
「八幡はそんなことしない!」
「でも部屋には戻れないから溶けるわね。比企谷君が個室にある冷蔵庫に入れない限り。」
「スッー、はちまーん入れておいてねーーーー。」
バシンッ!
「痛い。」
「病院で大声を出さない!近くにいる私も怒られるでしょ!」
「斎藤さん、どうされましたか?また何か問題でも起こしましたか?」
ビクッ!
二人の後ろから話しかけられる。
「い、いいえ。してません!」
「そうですか。」
「あと、稲城さん。」
「はい!」
「元気なことは良いことです。それでもあまり無理はしないようにね。」
「はい…。」
「それと比企谷さん、明日から敷地内までなら外出していいわよ。」
「本当に!」
「えぇ。」
「帰って準備しないと!」
シュパッ!
「廊下は走らない!もう。」
「斎藤さん、今日くらいはいいと思いますよ。」
「そうですね。今日は優しいですね。」
「………暇ならこちらの仕事を手伝ってもらいましょうか。」
「比企谷君に伝えないと「先ほど言いに行きましたよ。」」
「では行きましょう。」
「イヤー。」
………………
………………………………
………………………………………………
次の日
「ルンルン~♪」
車椅子を押してくれるのは有り難いが、速い。
ドンドン車椅子を押してくる。
まるで一人用のジェットコースターに乗っているかのようだ。
「危ないから少しスピードを落とせ。」
「嫌だよ~。そういう子にはこうだ~!」
ビューン
「ちょっ………まっ………。」
稲城が更にスピードを上げる。
「お客さ~ん、喋っていると舌を噛みますよ~♪」
ビューン
暴走している車椅子(押している稲城)に周りが上手く避けている。
それは老若男女関係無く。
「間も無く終点、終点 。終点の温室です。入り口は右側~、右側です。入る前は歩いている人に注意してください。」
注意するのはお前だ。
周りが上手く避けてくれたから良かったものの、一歩間違えれば他の人に怪我をさせているところだ。
この真似をしたら駄目だからな。
「こんなところがあったんだな。」
「ここ良いでしょ!」ニパー
「中はまだ見てないけどな。」
「早速入ろー!」オー
稲城が右の拳を上げる。
そして、大きくもなく小さくもなく程好い大きさの胸が微かに揺れた。
「ほら八幡もオーしようよー。」
「ほら、早く!オーって!」オー
再び揺れる。
素晴らしい。
これ以外の言葉が出てこない。
男に生まれてきてよかった瞬間でもある。
「ォ、オー。」
俺は少し拳を上げた。
「声に元気がないな~。でも………。」
でも、なんだよ。
「八幡のアレは元気だね!」
「ちょっ。」
ば、馬鹿な!?
そんなはずは!?
チラッ
下半身
特に目立った変化は無し。
「八幡一体どうしたのかな~?下を見て~?」ニヤニヤ
は、謀ったな!
「私が言ったのはアホ毛の事なんだけどな~。」ニヤニヤ
「………帰るわ。」
コロコロ
「ちょっ、八幡!?」
俺は来た道を引き返す。
「待って~。」
ギュウッ
稲城が車椅子のハンドル(握り)の部分を掴む。
「うぉ!」
あぶねー。
もう少しで前に転ぶところだった。
少し進んで戻るつもりでいたが、直ぐに掴むとは思わなかった。
「ごめんなさい!」
稲城が頭を下げて俺に謝る。
「!」
謝ってくるのは予想していたが、頭を下げるのは予想外だ。
普段がアレだからな。
「そこまでしなくても「でも!」まあ、こっちも帰ろうとしたのも悪かったしな……。」
ポリポリ
こういうときの対処が一番困る。
今までの経験上な。
「八幡が素直だ。」
失礼な。
嫌なことは嫌だと言うタイプだぞ。
土日は外出したくないとか、面倒なことはしたくないとかいろいろある。
「……行くぞ。」
「逝くぞ?」
「違う!」
助かったのに死んでたまるか!
まあ、飛び降りたのは俺の意思だが。
助かったのなら生きる。
「イクぞ?」
「論外だ!」
「出る派だった?ド○ツて。」
「ワーワー聴こえないぞー。」
「……これがずっと続けばいいのにな、無理だけど。」ボソッ
ん?
稲城があの流れから違うことを言ったような?
気のせいか。
「しゅっぱーつ!」
稲城が勢い良く進み出す。
「い、入り口は!」
「私たち以外いませーん。」
「……。」キョロキョロ
俺たち以外がいないのではなく、周りが距離を取っているのが正しい。
「おぉ……。」
「凄いでしょ!」
「あぁ……。」
テレビやネット、本でしか見たことがない植物がある。
時々、こういう体験もいいかもしれないな。
千葉村以外で……。
もう二度としない。
あんなことは。
「八幡、まだ外出は無理だった?」
稲城が心配そうな顔でこちらを見てくる。
「いや、大丈夫だ。少し昔のことを思い出しただけだ。」
やはり縁を断ちきるのは無理なのか。
神ですら俺の運命は変えられないらしい。
「稲城、あそこに行ってくれないか?」
俺は温室の中央にある噴水を指差す。
「わかった。」
稲城が先程とは違いゆっくりと進める。
普通はこれが正しい。
噴水に近付くと、俺は目を閉じる。
今は水の流れる音で忘れよう。
暫くして目を開けると稲城がいなかった。
俺は周りを見渡す。
キョロキョロ
直ぐに稲城を見つけることができた。
噴水の近くにあるベンチに座って、時より頭がこくりと上下している。
「……たまには良いか。」
…………
……………………
………………………………
「んっ?」
「起きたか?睡眠不足は体に悪いぞ。」
「あれ?夢じゃない?」
「夢じゃないぞ。現実だ。」
バッ!
「カァー////」
稲城の顔が紅潮する。
かわいいな、おい。
「な、な、な、何でひ、膝枕してるの!?」
稲城が言ったように俺は今、膝枕をしている。
何でって。
「なんとなく?」
無性にしたくなった。
今思えば恥ずかしいことだが、後悔はしてない。
「女の敵……。」
「嫌ならもう二度としないぞ。」
「……また、お願いします。」
「了解。」
「「…………。」」
「ぐぅー。」
稲城のお腹が鳴る。
時計を見ると昼御飯前だ。
「帰るか。」
「よし、帰ろう!今日のご飯は何かな~?楽しみ~。」
こいつ、昨日のこと忘れてないか?
用意されてないから買いに行って、それを持って帰るのを忘れ、今頃冷凍庫の中で眠っているはず。
まあ、無くても昨日のがあるし、きっと大丈夫だろう。
「……。」
何故二人分ある。
流れからしてここは一人分でいいだろ。
「八幡食べないなら食べてあげる。」
パクパク
俺の返答なしに食べ始める。
「食うな。」
「えー。ケチ。」
もう半分しか残ってないぞ。
仕方がない、我慢しよう。
俺は残りを食べ始める。
パクパク
うん、うまい。こま……あーダメだ。
まだ味を覚えてる。
頼りすぎたな。
はあー。
「どうしたの?」
「稲城が買った限定のアイスを食べたいなと。」
「あっ!」
こいつ、忘れていたな。
「病人が食べたら駄目だよ!」
「大丈夫だろう。」
パカッ
ヒラヒラ
冷凍庫を開けると一枚の紙が落ちてきた。
『アイス食べました。代わりにお金を置いておきます。恭子』
「「…………。」」
「ちょっと行ってくる。」
フラー
「い、行ってらっ……しゃい。」
止めたら殺される。
バタンッ!
『ちょ、稲城さん!?』
『食べ物の恨みは―――――!!!』
『お金置いていたでしょ!』
『最後の1個だったのにー!!』
『ネットで――』
『全国共通で店頭販売のみ!そして、昨日まで!』
『うっ…………』
『うがーーーー!!』
『誰かー!』
『『『…………』』』合掌
と、ドアの向こうから聴こえてくる。
「寝よう。」
俺の久し振りの外出は終わった。
はずだった。
「起きろー!!!!」
バサッー
「!?!?!?」
突然、掛け布団を剥がされる。
「何、寝てるの!?まだ面会時間は終わってない!」
「…………。」
寝起きで頭が回らない。
「起きて!」ユサユサ
「…………。」ボー
「もう!」
ツネリ
「……痛い。」
「起きない八幡が悪い。あと、金比羅で呼んでよ。」
「それは無理。」
「ブーブー。って八幡、起きてるでしょ。」
「ツネリで起きた、起こされた。それで何するんだよ。」
俺が起きたところで、何も面白くないぞ。
「う~ん、何しよっか?」
「……寝よう。」
「それは駄目。」
「…………屋上でも行くか?」
「行く!」
「ヨイショ。」
「あれ?車椅子は?」
「朝、調子が良かったから試しに松葉杖で行くわ。」
担当医から許可を貰ってないが大丈夫だろう。
痛くないし。
「一応、持っていくね。」
稲城が車椅子の準備をする。
「悪い。」
「これくらい任せて!」
「任せた。」
歩くのはここからエレベーターがあるところまでだが、時間がかかってしまった。
原因は負荷の時間が長ければ痛みは出てくるから。
「やっと屋上に着いた。」
「お疲れ様。座る?」
「いや、あそこにあるベンチに座ろう。」
「了解。」
…………
……………………
………………………………
「寒いが、気持ちいいな。」
「そうだね。」
「寒くないか?」
「大丈夫。こうして手を繋げばね。」ギュウッ
「…………。」
ヤバい、ドキドキで心臓が破裂しそうだ。
稲城の方は……チラッ。
紅潮している。
きっと俺も紅潮しているに違いない。
「「…………。」」
俺たちはしばらくの間、あの看護師さんが呼びに来るまでこの状態のままでいた。
そして、次の日。
俺たちは仲良く風邪を引いた。
以上、八幡