【完】ジョジョは奇妙な英雄   作:ふくつのこころ

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おはようございます、法王の緑です。
皆さんがこれを見てくださっている時間が恐らく、朝ぐらいでしょうから挨拶は此方にしておきました。
三連休なのに予定がないよ!
やったね、ハイエロ!三話連続投稿だよ!
・・・さて、原作の赤いあの人を出すか出さないかについて、なんとなくそれっぽい描写を出してやろうと思います。
コイツの、千寿の力に対するストイックな性格とかやけに真面目な所とか、その辺を赤いドラゴンさんはどんな評価を下すんでしょうか?
・・・冥界でのテレビ放送は免れないと思いますがね!
ウェルシュ・ドラゴンと言えば、仮面ライダーカブトやファイズを思わせる高速戦闘!
影響されて作っちゃいました、そーゆー変身設定!
バッタの怪人(人型も可能)が変化したアイテムで生々しい感じのヒーローになる、ってやつですけど。

さぁ、前半は千寿の夢からですね!


Part.2:BattleTendancy
赤き鼓動その①


グレモリー先輩がジジイやお袋に俺の家に泊った際、聞いていたのを盗み聞きしていたんだが、俺にはあまり父親の記憶がない。

お袋によく言われる台詞はジジイと変わらないもので、「父親そっくり」だった。

どんな風に考えたのか、ジジイ自身は自分に似て欲しかったらしく、小さい時の俺によく「おじいちゃんのような男になるんじゃぞー」と言い聞かされた。

あんまり小さい頃の記憶が無いが、これを覚えているのはきっと俺に洗脳レベルで言い聞かせていたんだろう。

 

「おとうさんっ!」

 

「よう、クソガキ。元気してっか?」

 

遠くから傍観者として眺めている現在()でなく、夢の中の4歳くらいの“過去の自分()”が駆け寄ったのは今の俺とあんまり背丈が変わらない、マフィアのボスを思わせる黒いシャツに黒のパンツの金髪の大柄な男。

どことなく俺の面影があって、お袋と同じ緑色の目をしている。

小さな俺の頭を乱暴にクシャクシャするように撫でながら、金髪の大柄な男――――オヤジは俺と目線を合わせた。

 

「おや、彼がひょっとして君の息子の?」

 

「よう、サッジー兄ちゃんよ?あァ、おれの息子のジョードだ。日本に住むことがあるかもしれねえから、虐められねえように日本名として『千寿(センジュ)』って名前も付けてる。お養父(とう)さんとしちゃ、こいつのことをジョード、って名前のまま日本で暮らすんなら、そうしろって言ってたけどよ。なにがあるかわかんねえじゃねえか?」

 

小さな俺がオヤジだろう男に撫でられていると、そのすぐ隣で中腰になった赤毛の背の高い男が俺に視線を向ける。

俺がグレモリー先輩とする会話のようにオヤジもまた俺にそっくりなんだろう、少し不機嫌そうにも見える。

 

「君がサッジー兄ちゃん言うのは……それは、君にはちょっと……。ちゃんと父親してるんだね、譲寿(ジョウジュ)は」

 

「……シスコンのテメェに言われたかねえよ。なんだよ、お前の妹談義は。長過ぎる」

 

「ええっ!いいじゃないか、別に!ジョジョにもしって欲しいんだよ!妹の素晴らしさを!君ぐらいなんだよ、私に遠慮なくタメ口を聞いてくるのは……」

 

オヤジの言葉を聞いて食って掛かる赤毛の背の高い男。なんとなくグレモリー先輩にそっくりなのは気のせいか。

そうか、オヤジも『ジョジョ』って呼ばれていたのか・・・。

このこと、ジジイは知ってんのか?チェザーレに俺が『ジョジョ』って言われたのを聞いて反応しちまってシーザー先生に突っ込みいれられて喧嘩していたけどよ、俺のオヤジのことをそんなに気に食わなかったようだし、スージーQおばあちゃんの話によると渋々認めていたらしいし、オヤジとお袋の結婚。

 

「そいつはテメェが俺にそれで良い、つったからだろうが。今更訂正はさせねえぞ、我が(キング)よ?」

 

「全く、我が最高の戦車(ルーク)には手を焼かされるね。君は何処までも私の予想を超えてくれる。それが君の美点であり、短所なんだけれどね」

 

この二人は……、この赤毛の男とオヤジは俺とチェザーレ、ジジイと先生に通ずるものがある。

ちゃっかりとこうして恥ずかしげもなく、互いを最高だとか言い合えるのがそれを示している。

俺は、俺はグレモリー先輩とこんな風に信頼しあえるだろうか?

 

「あら、ジョジョ。お客さんが来てたのね。こんにちは、主人がいつもお世話になっています」

 

「おや、ホリーじゃないか。こんにちは、こちらこそジョジョには世話になってるよ。こちらが世話をしなきゃいけないんだけどねぇ……」

 

玄関から出てきたお袋が俺の肩に手を置いて赤い髪の男に挨拶をする。男は人当たりの良い笑みを浮かべ、小さい俺の頭に触れながら笑った。

 

「いや、笑い事じゃねえよ。お前の部屋にある戦隊モノのフィギュアとビデオ、ジョードのモンより多いってどういうことだ」

 

「はは、良いじゃないか。そのおかげでジョードと話せるんだからね。な、ジョード?」

 

「うん!サッジー兄ちゃんがせんたいものにくわしいから、あそんでてたのしいよ!」

 

俺の頭を撫でながら赤い髪の男、“サッジー兄ちゃん”とやらは俺の手に何かを握らせた。

それはその当時流行っていた赤いヒーローの人形であり、今もなお俺の部屋の机の上にただ一つだけ飾られている代物。

コイツが俺にくれたのか、あの人形。

ふと、手のひらを見てみると俺の手には小さな俺が持っているものと同じ新しい人形でなく、古い人形が握られていた。

当時には珍しかった、武器を使わずに己の力だけで戦うヒーローだった。ストーリーはよく覚えていないが、あの強さと“サッジー兄ちゃん”が俺にそのことを話してくれるのが楽しくて面白かった。

同年代の友人がいなかった、あの頃の俺にとってはあの人は兄弟のいない俺の兄貴であり、一緒にいて楽しい友人だった。

 

「えっと、サッジー兄ちゃん、これは……?」

 

「前に欲しがっていたじゃないか。誕生日にあげられなかったし、お父さんがいなくても良い子にしていた君へのご褒美だよ」

 

「……!?おい、お前、それって凄い大事にしてた奴なんじゃないのか!?」

 

俺の手に握らされたその人形を見てオヤジはサッジー兄ちゃんに対して目を丸くした。何の作品でどんな内容かも定かでないが、戦隊モノといったヒーロー系の特撮が好きなコイツが何故?と疑問を持っているようだ。

 

「ん?悪いかい?そりゃ勿論、君の埋め合わせを代わりにやったんだろう?君が、ジョジョがジョードにあげられなかったんじゃないのかい?プレゼント」

 

「いや、買ってやったが?その辺はホリーのオヤジが五月蝿くてな、きっちりしなくてはおれが小言を食らっちまう。な、ホリー?」

 

「えっ?」

 

「ええ、ジョジョに頼まれて買っておきましたよ。毎日、それで遊んでるものね?ジョード?」

 

予想外のオヤジの返答にザッシー兄ちゃんが呆気に取られ、お袋の方を見るとお袋は口元に手を添えて笑っている。何も分かっていない小さい俺はザッシー兄ちゃんに貰った人形を握り締めたまま、首を傾げるだけだ。そんな俺に微笑みながら、ザッシー兄ちゃんは苦笑いを浮かべながら小さな俺に言った。

 

「……全く、手を焼かせる眷属だ」

 

その場に、談笑が広がった。

平和な光景だ、ここだけを切り取ったのなら。

この中の誰が知っているんだろう、オヤジが死んじまうなんてことが。

お袋はこの平和な時間が続くと信じたはずだ。

オヤジもこの平和な時間が続くと考えていたはずだ、このときは俺も分からなかったが。

サッジー兄ちゃんだって、そう考えていたはず。このときは戦車だとか王だとか分からなかったけど、今は分かる。

俺のオヤジも悪魔だった(、、、、、、、、、、、、、)

それも、グレモリー先輩と同じ赤い髪でそっくりな人の。

 

《ったく、コイツの持つ神器(セイクリッドギア)には苦労させられちまったな。・・・っと、はじめまして、ってところか?“今代”の使用者よ》

 

声がした方向を振り向くと、そこに居たのは何処までも大きく、そして赤い翼を持ったドラゴンだった。

そのカラーリングは俺がかつてザッシー兄ちゃんに貰った、今ではすっかり塗装が剥げてしまったヒーローの人形と同じ紅蓮色。

 

その巨体。

その赤く大きな翼。

その鍵爪。

その牙。

その四肢。

 

それは、赤いドラゴンだった。

 

「テメェは……っ!?」

 

俺はスタンド・『石の薔薇』を顕現させる。集中してAct.2でなく、Act.1の状態に出せるよう、意識を集中させるとAct.1の状態で顕現させた。

正直なところ、パワー不足が否まれるAct。2では心持ちが悪い気がしたが、俺の意思に応えてくれたのか、単体でも使えそうな鍵爪ロープと鉄球を構えて。

 

《そんなに血気づくんじゃない。取って食ってやろう、ってんじゃないだ。それに、俺はお前を食えないだろうさ。あの神器(、、、、)を持つ男の息子なんだ、食っちまったら俺が逆に乗っ取られちまう》

 

「……オヤジを知っているのか?」

 

この言い分だと、このドラゴンは俺のオヤジのことと神器について知っているようだ。

ドラゴンと言えば、ファンタジーでは強敵に当たる存在。既に非日常(ファンタジー)に足を突っ込んでいるような俺が言って良いのかわからねえ。

悪魔や天使がいるなら、ドラゴンがいてしかるべきとどうして気がつかなかったのか。

知らないぞ、俺の中にドラゴンが住んでいるなんてよォ、誰も教えてくれなかったじゃあないか。

 

《ああ。忘れるはずもないさ、俺はなんせ……。おっと、そろそろ時間が来たようだ。また会おうじゃねえか、今度はきちんとお前と話してみたい。なんせ、龍殺し(ドラゴンスレイヤー)をもその気になれば可能とする物を持っていた男、そんな男の息子が皮肉にも今代の使用者となるだなんてシャレにしかならんからな。お前が自分の神器を顕現させられねえのも、お前が『頼ろう』としていないだけだ。お前はあくまでも、『自分の力』で立ち向かおうとしている。それは確かに良い事だ。力に、それも強大な力に溺れないのにはそれが一番なんだからな。だがな、センジュ。忘れるんじゃないぞ、お前は一人じゃない。お前には仲間がおり、そして、この俺がいる》

 

勝手に語り始めたが、こいつは本当に大丈夫なのか?グレモリー先輩や副部長、それに祐斗の奴やチェザーレ、塔城も簡単に要点を纏めて説明してくれたんだが……。

巨体で眠っているようにも見えるし、意外にも会話するのが好きなのか?この赤いドラゴン。

 

「……テメェの名は?」

 

《ん?俺か?》

 

赤いドラゴンはやけに間を保つ。

小さい頃から特撮物を見てきたが、名乗りまでの溜めをカッコいいと感じていたが、いざ現実で名乗られる際に一々こうして名乗られるたびに間を置かれるのはじれったいし、早く言えとつくづく思う。

 

《俺は赤い龍の帝王、ドライグ。お前の左腕の中に住む者だ。センジュ、勿論、お前が幼少時代にしていたヒーローのポーズまで全部知っている。お前の夢を覗くことは流石にできないが、もしかしてお前……》

 

「……そうか、ドライグと言うのか」

 

俺は一呼吸置いて、

 

「ドライグ」

 

《どうした、センジュ?》

 

「……それを誰かに言おうものなら、俺はテメェの話を聞かない」

 

ドライグが後に俺に食って掛かったが、その後は良く覚えていない。

 

 

「はい、ジョジョ!私を背負って全力疾走しなさい!もちろん、祐斗も協力してくれるけど、手加減はしなくて良いわよ、祐斗!」

 

「了解です、部長!」

 

朝。

駒王学園の校庭でまだ運動部が誰も来ていない早朝、オカ研の面々は朝練に興じていた。

なんでも、リアス曰く、「まだ目覚めないジョジョの神器の覚醒を促す為もあるけど、いつでも使いこなせるように鍛錬よ!」とのこと。

夢の中に赤いドラゴンが出てきて、そのドラゴンが自分の父親を知っていて、なおかつ名前も知られていた、なんて話が千寿には出来ず、学校指定のジャージの上着を肩にかけ、その背中に腰掛けるように座るリアスを乗せ、クラウチングスタートの体勢をとる。

隣には木場がおり、なんでもリアスが言うには背中に何があってもバランスを取り落とさないようにする、と言うが、まさかリアス本人が背中に乗ると思わなかったため、千寿の推測としては自分を落とせば後でお仕置きするんだからね!という意思が見えた。

遠くではアーシアと共に部員の練習後、茶を飲むために魔法瓶の水筒から紙コップに注いでいるレイナーレの姿がある。

近くでは朱乃が小猫がストレッチする横で、「頑張って下さい、センジュ君!あとでご褒美上げますからねー!」という声が聞こえ、むすっと頬を膨らませたリアスが上にいることに顔を上げられない千寿は背中の上の状況が分からなかった。

何故か、朱乃がこちらにうふふ、と笑いかけている理由が分からないことと少し機嫌が悪そうなリアスの雰囲気と関係があるのでは、と推測を立てた。

 

「木場君もセンジュ君も位置について!」

 

近くに来た朱乃がリレーの審判をする教師のような笛を首からかけ、手で千寿と木場に手で動作を示す。

すっかり慣れっこ、しかし上にいるリアスを支えたまま千寿は木場と共に走る体勢をとる。

 

「よーい、ピューッ!」

 

笛が鳴るのと同時、千寿と木場が同時に走り出した。

リアスとしては、この勝負は木場が勝つのではないか、と予測した。自分では軽い、と考えているが背中には重石をつめたリュックサック代わりに自分が乗ることでちょっとした鍛錬の為、このような修行をしたことないでないであろう、千寿が騎士でありスピードのある木場に勝てない、と考えた。

しかし、リアスは少し誤算していたことがある。

不良、不良と呼ばれながらも体育祭にはちゃんと出場していた千寿は毎年リレーのランナーに選ばれるほどの速さを誇り、更に幼いときから『回転』の技術の師たるシーザーの元で修行を行なっているし、祖父のジョセフからは『波紋呼吸法』を学んでいる。

そのため、ちょっとしたことでは息を荒げないし、自分のペースを保って速度を落とさずに走れる。

波紋呼吸法は意識して呼吸するのでなく、自然と常に呼吸していなくてはならない。

これは大の大人にも難しいことで『強くなる』と決めた千寿が幼い頃、『回転』の師であるシーザーや不動産王のジョセフに暇がある時に稽古をつけてもらっていた他、実生活で実行しているのだ。

 

それも、今に至るまで。

 

準部員のチェザーレも千寿と同じように『回転』と『波紋呼吸法』が可能だが、あくまでもチェザーレは準部員の為、この朝練には参加していない。

彼の名目はあくまでも、『準部員』。

人数が足りなくなったときや、正式な場の際に呼び出される仮初の部員だ。

 

(凄い、騎士の祐斗と互角……。)

 

リアスは驚愕した。

運動部で剣道部に所属している、木場と互角かつ全く遅れ取らないで、むしろそのスピードに合わせている千寿に。

 

二分の一。

息切れせず。

四分の一。

未だに息が切れず。

八分の一。

全く息切れせず。

そして、ゴール直前。

 

「(やっぱり、千寿君は凄い。でも、僕は負けない……ッ!)」

 

「……」

 

「!?」

 

ゴール付近になり加速し始めた木場。

それに気がついたのか、突然吹いた追い風を加速として少し先を行く木場と並んだ。

ゴールのところまであと少し、と言ったところで千寿が地面を強く踏みしめると、一瞬、ほんの一瞬だけだったが、木場は時が止まったように感じられた。しかし、それは何秒止まったとかそういうものでなく、ただ『そんな気がした』だけ。

 

結局、この競争は二人が同時にゴールして引き分けとなった。

 

他の部員達も木場に軍配が上がると思っていた分、これは意外だったようである。

 

 

放課後、部活を終えてアーシア、レイナーレ、リアスと共に千寿は帰宅した。

祖父は既にイギリスにいる祖母の元に帰ってしまったようで、家の中にはホリー、レイナーレ、アーシア、千寿、リアスの五人だけだ。

リアスは夕食後、ホリーに皿洗いを手伝う、と言ったが、ホリーはその申し出に対して「そういうわけにも行かないわ、リアスちゃん。お客様にさせるわけにはいかないし、レイナーレちゃんやアーシアちゃんが手伝ってくれるみたいだもの。センジュには兄弟がいないし、私は貴方をレイナーレちゃんやアーシアちゃんのように娘に思っているから、センジュのお姉さんとして振舞ってあげてね?この子、こう見えても、かなり恥ずかしがりだから。」との台詞にレイナーレは意外そうな表情を浮かべ、アーシアは微笑み、リアスはクスッと笑った。

 

「お母様がそう仰られるんでしたら、お言葉に甘えさせていただきますね。行きましょう、ジョジョ。貴方の部屋へ」

 

部屋着に着替えていた千寿が少し苛立っているようにも恥ずかしがっているようにも見えたため、リアスは千寿を伴って千寿の部屋へと向かった。

 

「お母様、本当に良い人なのね。心配させちゃダメよ?ジョジョ。貴方はただでさえ無茶するんだから。アーシアを助けに行ったときなんか、特にそうなんだから」

 

「言われなくても分かっている。無茶しねえように、あんたがグレモリー先輩が俺の手綱を取ってろ、なんてな」

 

「えっ……?」

 

意外な千寿の柔らかい表情、それに少し見蕩れてしまうリアス。普段から俺に近寄るな、とのオーラが放たれているのは木場に聞いていたし、チェザーレが教室で「先週、うちの無愛想な腐れ縁がよォー」と言うのも聞く。

それだけ自分の表情を弱みを見せない、中世の日本の武士のような堂々とした男が見せた気の緩んだような笑み。

年頃の乙女として、年下の少年の、それも無愛想な様子が目立つ少年の緩んだ一面は可愛らしい、と思える。

部屋について扉を開け、「特に座るところもねえし、ベッドにでも座っておいてくれ」との千寿の言葉にはクスクス笑い、

 

「あら?女の子にベッドに座るように薦めるの?ジョジョもやっぱり、男の子なのね?」

 

「そんなんじぇねえよ、座るところがねえからそういっただけで。……なんだ、お前。怪我してんのか?」

 

クスクスと笑ってからかうリアスは制服の上着を脱ぎ、ホリーが換気のために空けたであろう窓の付近、いや机の上に千寿は何かを見つけたようだ。

見たところ、小動物くらいの大きさで翼が生えている。

 

「それは、ユニコーン?ペガサス?どっちとも言えないようだけど、どうするの?」

 

千寿が抱きかかえているのは額から一本角を生やした黒い翼を持つ、ユニコーンのようなペガサスのような生き物。

伝承によればユニコーンは処女の守護者とされ、捕まえる際には処女をユニコーンに近づけると良いと言う。逆に匂いで分かるのか処女でないとその角で貫かれるらしい。

一方、ペガサスはメデューサの血から産み落とされた存在であり、馬の神でもあるポセイドンの息子だとされ、様々な英雄の冒険の役に立っているとのこと。

とはいえ、このような英雄譚や神話は気が遠のくなるほど昔のこと。ここにいる黒い生き物はどんな生物なのか、何も分からない。

 

「決まっている。手当てしてやらないとな。……ちょっと我慢してろ。」

 

バスタオルをカーペットの上にひいて、その上に黒い生き物を寝かせる。その生き物の大きく開いた傷跡を見て、普段から喧嘩をしていて出来た怪我を自分で応急処置を施しているんだろう、救急箱を出して脱脂綿に消毒用のアルコールをつけ、そこをピンセットで摘まんで消毒してゆく。

最近はすっかり噂はなくなったが、自分たちと出会うまでは喧嘩をしていた『不良』らしくない一面だった。

消毒を終え、特にほかに大きな外傷が目立たないということで特に一番大きな傷があった右脚に包帯を巻きつけ、犬用の籠に黒い翼を生やした生き物を寝かせ、タオルケットをかけると眠りについた。

すっかり疲れきっているようだ。

 

「ねえ、ジョジョ。分かっていると思うけど……」

 

「もちろんだ。……誰かに危害を加えるようなら、こいつを処分しなきゃいけないんだろ?」

 

グレモリー眷属の仕事として、この辺りに出現する人間に害を加える“はぐれ悪魔”の討伐を負かされている。それは“はぐれ悪魔”でなくても同様であり、この町を夜にたまにパトロールするのは一つの習慣である。

 

こんなに小さくとも、それが人に害をなすなら殺さねばならない。

 

千寿の表情は窺い知れないが、きっとそれに疑念を抱いているんだろう、こんなに弱った奴が何かをしたら殺さなければいけない、ということ。

しかし、それは領地にいる人間を護る為に行なわなければならない。

 

大を取るか、小を取るか。

 

「ねえ、ジョジョ?」

 

「あ?なんだ?ようやくダニーが眠ったようだからさ、あんまり大きな声を出すんじゃねえよ」

 

ダニーと言うのは黒い生き物の名前なんだろう、千寿は籠の中で眠るダニーを撫でながら振り向く。

そして唖然とする。

 

「私の処女、貰って欲しいの。」

 

リアスが一糸纏わぬ姿で立っていた。

元々、リアスは肌が白い方だったが、それは制服で隠れていることもあり、こうして裸となると全体的に真っ白なのだ、と分かる。

元々が整った顔立ち、そしてその大きな胸である。

高身長に白く大きくて形の良い胸は見るものを魅了する。流石に千寿も年頃の男子らしく、その胸に少し視線を取られていた。

 

「は?何をいきなり」

 

千寿はすぐにイエス、とは言えない。

ここで即答でイエス、と言ってしまって警察に通報されて前科がつくのも嫌だし、元より千寿は常に心を落ち着かせて冷静さを保つようにしている。それが却って無愛想だ、とか粗暴だといわれる要因となるが、その辺を気にするつもりは毛頭ない。現在を耐え切り、その先にあるものをつかめるならば何の苦にもならないから。

だからこそ、普通の男子高校生と違い、誇りを胸に抱く戦士のような千寿は普通の男子高校生のようにリアスを押し倒さなかった。

呆然と立っている様子が、それが却ってリアスを急かす一因となり千寿の手を掴んでリアスは自分をベッドの上に押し倒させた。

 

「ねえ、私とじゃ嫌なの?」

 

掴まれた千寿の大きな手はリアスの胸に当てられている。はじめての女の子の胸の感触は柔らかく、冷静な千寿の理性がはちきれそうになる柔らかさだ。

 

リアスは、少し泣きそうに見えた。

 

「嫌じゃねえが、グレモリー先輩、どうしたんだ急に……?」

 

「ここに居られましたか、お嬢様。汚らわしいそのような者に身を委ねるなんて、お嬢様は自分の身を分かってらっしゃるのですか?」

 

空間が裂け、そこから現れた銀髪のメイド服を着た三つ編みの女性。自分たちと同じような雰囲気、そして名家のグレモリー家の生まれのリアスを『お嬢様』と呼んだことから、千寿は彼女をリアスの家のメイドと考えた。

自分の家の事実上、メイドとなっているレイナーレにあのような貫禄はあるだろうか、と少し考えてしまったが、頭を振って目の前にいる女性に敵意を向ける。

それに呼応するようにスタンド・『石の薔薇』Act.1が姿を現した。

 

「ジョジョをそんな風に言わないで。この子は私の大切な眷属なんだから」

 

態勢を立て直したリアスは近くで戦闘態勢に入っている千寿を抱き寄せた。千寿の背中に大きく柔らかなものが当てられているのを感じる。

普通なら千寿は微々ながらも喜びの一面をリアスに見せるだろうが、状況が状況だ。

喜んでいる場合ではなかった。

 

「……『スタンド使い』ですか。それも、『あの男』に何処か似て……。」

 

「ッ!?」

 

スタンドが見えていることに反応したのでなく、『あの男』のキーワードを聞くと千寿は女性に掴みかかった。

 

「ちょ、ちょっと何をなさるのですか!?自分が何をしたのか、分かっているんですか!?転生したばかりの悪魔が……」

 

「今はそんなこと関係ねぇ!『あの男』、っつったな!?テメェは何を知ってんだよ!?俺のオヤジの何を知ってるんだ!?答えろよ!あと、俺を汚らわしいというんじゃねえ……!」

 

「やめて、グレイフィア!それにジョジョも!……また、後日にお願い。今日はこれで帰るから。」

 

「かしこまりました、それではまた後日に」

 

千寿の手を女がはたくと、また来た時と同じように裂け目を通じて帰っていってしまった。

一体、何がしたかったのか、謎のままだった。

 

「ジョジョ、あんまり早まらないようにしなさい。今はあれで済んだけど、普通、上級悪魔にあんなことをしたら、ただでは済まないわ。分かっているの?」

 

グレイフィア、と呼ばれた女性が消えた後、ベッドの上に置かれた制服に着替えながらリアスは千寿の鼻に人差し指を突きつけた。

あのとき、グレイフィアに食って掛かった時の千寿の剣幕は凄かった。目に鈍い光が宿り、まるで野獣を思わせる。未だに神器が目覚めず、『スタンド』という能力を除けば普通の何も持たない下級の悪魔と変わらないというのに、その『凄み』には気圧されるものがある。自分の進む道や行なうことを邪魔する者を全て殺しかねないような・・・それでいて、目標を達成することを強く真っ直ぐな信念としているところがあり、一概に悪いと言えないのが困りどころだ。

 

木場祐斗の魔剣を作り出す神器(セイクリッドギア)魔剣創造(ソードバース)

アーシア・アルジェントの種族問わずに全てを癒す神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)

 

それに続いて千寿の神器はどのようなものとなるのか。

あくまでも千寿に悪魔としての礼儀を教えるべく、最後に「これからは気をつけなさい」と念を押してからリアスは、

 

「私はもう帰るけど、見送りは別にいらないわ。お母様やアーシアにご馳走様でした、というのを言っておいて頂戴。また、明日学校で会いましょう」

 

と立ち上がったリアスは千寿の中にスタンドが戻っていったのを見て、それからいつもの冷静な表情を浮かべている千寿を抱きしめ、

 

「……私のために怒ってくれてありがとう。でも、今夜のこのことはこれで忘れて?」

 

と右頬にキスを落とし、「おやすみなさい、私の可愛い下僕よ。」とその部屋を後にした。

アーシアとレイナーレが部屋に戻るまで、手持ち無沙汰に眠っているダニーを撫でていた千寿だったが、その手はキスされた右頬に当てられていて、何かを考えているようだった。

 

その夜、ダニーと名付けられた奇妙な生き物はこの家の一員となった。




どうもです。
この回だけ、まさかの一万文字超え・・・!
なんたる文字数・・・!
そして、どこまでも食いつかず、キレる時は静かにキレる千寿。
グレイフィアをハーレムに加え、サーゼクスの嫁は別のオリキャラの嫁にするのか。
そこが問題だ!
最初は第一印象最悪から始まり、そこから好感度MAXになったときのデレは素晴らしい。
そう思わんかね?

千寿が承太郎さんに近いような、そんなキャラだった筈なのに気がつけば『漆黒の意思』持ちに。
まぁ、ユニコーンみたいなペガサスみたいな『ダニー』がいるとそうなるんでしょうかね。
ちなみにこの生き物、ユニコーンとペガサスの合いの子のユニコーサスって種類です。
何故、怪我をしていたのか・・・それはまた伏線の一つ。
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