【完】ジョジョは奇妙な英雄   作:ふくつのこころ

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三月中にはdioをボコボコに出来ると思うの。


赤き鼓動その⑥

木造の別荘はグレモリー家の別荘だそうだ。

ジジイが立てた別荘と同じか、それより小さいくらいか。娘を溺愛し、娘婿のオヤジを露骨に嫌ってたジジイ。チェザーレんとこの爺さん、つまりは師匠も別荘を持っているそうだ。副部長や祐斗、搭城はいたって普通に入っていっている。レイナーレやダニーはすっかり、士藤邸(ウチ)に慣れきっているけど、驚いた様子を見せないから慣れきっているんだろう。こうも反応を見られないと面白くないものがある。

魔力によって普段は山内に隠れており、目には見えない仕組みになっているらしい。SF映画で言う、ステルスって奴だろうか。リビングに荷物を置き、女性陣は着替えに向かった。それについて行こうとしたチェザーレが押し返されたのを見た。塔城に。

 

「じゃあ、着替えてくるよ」

 

祐斗は手に着替えのジャージを持ち、俺ににこやかに笑いかけてくる。コイツとチェザーレくらいしか俺と交流がないせいか、一部女子の間には「木場×士藤×ツェペリ」と謎のカップリングが生まれているそうだ。まさかの俺が総受け。万物爆ぜろよ、畜生め。

 

「覗かないでね?」

 

「誰が覗くか、馬鹿。仮に俺が覗くんなら、堂々と覗きに行くとも」

 

「ややっ!?ジョジョ、お前もついにオレの言うことが分かるようになってきたか!」

 

「てめーはお呼びじゃねえ」

 

こんなとき、必ずと言っていいほど、チェザーレ・アントニオ・ツェペリというヤツは話に入ってくる。ヤツには盗聴器を仕掛けられてんじゃあないか?と思ったくらいだ。チェザーレは「お前が女だったらなァ~、オレの朝の登校時間がスッキリするってんのに。」と失礼な事を抜かしてくれたが、アーシアがウチに来て以降はすっかりアーシアにかかりっきりだ。コイツならイイ兄貴になるだろうさ。

 

「さっさと行けよ。少し休憩したら俺も着替える」

 

「おい、ジョジョ。オレが手伝わなくていいか?」

 

「くたばれ、チェザーレ」

 

その後、俺はチェザーレに制裁を下し、やつを引きずって水を飲んでからジャージに着替えに向かった。

 

 

レッスン1『木場との訓練』

 

 

「ツェペリ先輩から聞いてたんだけど、君の剣術の腕、見せてもらうよ?」

 

「剣術、つっても小さい時だけどな。チェザーレの爺さんにならったくらいだ」

 

「それでも十分さ、じゃあ、はじめようか」

 

俺と祐斗は互いに剣を構える。それぞれが手に持った木刀、互いにジャージ姿に向かい合っている。

剣を握る姿は祐斗に似合っており、グレモリーの騎士(ナイト)として様になっている。

今もなお、アイツは剣道をやっている。小さい時にやったきりな俺と比べりゃ、アイツと俺の間には明確な戦力差がある。

アイツと決めたルールは、「首に木刀の切っ先を向けられれば、その時点で試合終了、波紋の使用は良し」だそうだ。波紋がなければ俺は確かに祐斗のスピードに勝てないだろうし、アイツはそれほどの自信があるんだろう。

 

「早速、此方から行かせて貰おう」

 

地面を蹴り、木刀を振り下ろす。直接攻撃はやはり簡単に避けられてしまい、すぐに祐斗は背中に移動して横薙ぎに剣を振る。力任せに振り回す俺と違い、確かにコイツには技術がある。正確に狙われた剣は波紋で強化された俺の肉体では、やはり人間の技術である波紋では、悪魔の製造物で悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の騎士で強化されたスピードでは敵わないところがある。防戦一方の俺に為す術がないのを感じ取ったのか、刃に手を添えて祐斗の打ち込みをガードする。波紋を流した上での運動神経の増強を図るも、俺のスピードでは未だに追いつけない。小せぇ時に剣を齧った程度の俺ではな。

 

「やっぱり、ちょっと剣を齧ったくらいではダメかな?」

 

「どうやら、そのとおりかもしれんな」

 

アーシアにしか言ってなかったことだが、俺は今の状況で『スタンドが使えない』。石の薔薇がAct.2に進化したように直接攻撃形態にも進化してくれれば、あのいけすかねえチキン野郎にブチこんでやれるだろう。

また、スタンドが『使えるようになったら』の話だが。

 

防戦一方な俺はひたすら攻撃をガードし続けるだけのサンドバッグと化している。たまにコイツから剣を習っていたくらいで、いや、それが今の俺の『強み』だ。太刀筋を俺の身体は覚えている。今ので覚えた。コイツの攻撃手段は圧倒的なスピードで敵を翻弄し、疲れ果てたところに一撃を加えるものだ。

模擬戦では堕天使の軍勢を迎え撃った時のようなスピードを見せないが、こっちは波紋で強化した肉体がある。人外ほどでなくても、底上げされたスピードで反応は出来るだろう。本気のスピードでは来ないが、次も恐らく俺の死角に入って打ち込んでくるはずだ。

 

「隙あり!」

 

右腕を狙うように振り下ろされた一撃。それを俺は、

 

「勝負、あったね」

 

繰り出された一撃をかわしきれず、本能で俺は剣を捨てて真剣白刃取りをしていた。実戦で白刃取りが出来ればスカッとするだろうが、今は模擬戦だ。剣を捨てて白刃取りを決めたところで武器をもっていない時点で俺に反撃のチャンスはない。

 

「俺の負けだ、祐斗」

 

レッスン2『搭城小猫と』

 

「しどー先輩、肝心なのは力を放出することです」

 

「一撃に、か?」

 

塔城との特訓は白兵戦だ。古びた教会跡での戦いぶりのように、塔城は柱を引っこ抜いて振り回していたのもあるし、得意分野なんだろう。

 

「はい、このように」

 

塔城は言葉を言い切ると、勢い良く突進してきた。紙一重で回避するのに成功するが、波紋で強化された拳を叩き込む。塔城の目の色からして本気である。年下とはいえ、彼女の力量は俺より上だ。所詮は喧嘩殺法でしかない俺の技術。そう簡単に通用するはずがなく、呆気なくかわされて吹っ飛ばされ、後ろの大木に叩きつけられた。

 

「…え?弱い?」

 

小声で言ったつもりかもしれねーだろうが、丸聞こえだ。白兵戦なら習っている。波紋疾走(オーバードライブ)ならば、波紋疾走でなら戦力差を埋めるのは容易いだろう。俺がどのようにしてフリードを絞殺したのかを良く思い出せ。

 

「けど、すぐにその言葉は撤回させてもらうぜ」

 

右手先に波紋を練り、体重を乗せた渾身の一撃を叩き込む。ぱしっ、と簡単に塔城に防がれてしまったが僅かに顔をしかめたことから、俺の攻撃は無駄ではなかったらしい。けど、それがかえって塔城を本気にさせてしまったようで、

 

「…この調子で行きましょう。さっきのが連続で出せるようでなきゃ、実戦では意味がありません。」

 

僅かに笑みを浮かべた塔城。この後、塔城を帰ってヒートアップさせたせいで俺は先ほどより吹っ飛ばされるようになった。

 

レッスン3『姫島朱乃と』

 

「そうじゃないのよ、魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集めるんです。意識を集中させ、魔力の波動を感じ取るの」

 

黒ジャージ姿の副部長の指示通りにやってみる。波紋を練るのとようは同じ、ってことだ。これならば魔力は簡単に形を為すだろう、と集中して小さな球体を作り出してみるが、

 

「で、できました!」

 

アーシアが作り出した球体は白く力に満ち、俺が作ったものより大きい。俺が作り出した球体は同じ球体でもピンポン玉くらいの大きさでしかない。

 

「アーシアちゃんは才能があるようですね。センちゃんのそれは…ピンポン玉?」

 

アーシアが副部長に褒められて頬を赤らめている。魔力と波動…。どうやら俺にはイメージが足りなかったようだ。俺が小せぇ時にしていたことはなんだ?チェザーレとよくしていたことはなんだ?

ああ、簡単じゃないか。

RPGでパーティーの魔法使いがどんな風にして魔法を使うかも想像していたし、オヤジも良くやってくれたモノを思い出せ。

 

「後はこれに炎や水、雷に変化させます。これはイメージから動かすことも出来ますが、初心者は炎や水を動かすといいでしょう」

 

副部長は手に持った水が満杯になるまで入ったペットボトルを持ち、魔力を流し込む。たちまち副部長が流し込んだ魔力によってペットボトルが裂け、水が溢れ出した。

 

「アーシアちゃんはこれをやってくださいね。センちゃんはイメージトレーニングをして下さい。魔力を扱うにおいて、イメージトレーニングは大切ですからね」

 

イメトレ…。

俺が考えていることか。常に俺が考えていることと言ったら、なんだろう。昔は特撮ヒーローに返信する方法とか、変身したときのイメージとか。あとはゲームでの魔法を使えるように慣れればイイなぁ、ってのを想像したくらいだな。

 

「副部長、話があるんだが」

 

「あら、なんでしょう?」

 

副部長に耳打ちすると、ちょっと呆気に取られてから、「頭脳派、ってところですわね?センちゃんは」と微笑んだ。

実際に想像はしたくないが、思春期男子ならば誰でも女子の服の下がどうなってるかとか、下着はなにを着ているかとか想像したことがあるだろう。鉄面皮だとか面の皮が厚いだとか、様々なことを言われる俺でも想像する。誰だってそーする、俺だってする。

しかし、男の裸体なんてソッチ方面の趣向がないんなら、まっっったくしたくないもんだ。

ジジイは騎士道を重んじる家に生まれながらも、俺に戦闘の技術よりはむしろトリッキーな戦法を叩き込んだものだ。

ならば、ここはジジイの教えに習おう。

 

『よいか?相手が武器を持っているならば、まずは武器を奪え。激昂して冷静な判断が下せなくなったら、煽るんじゃ。先読みの台詞は覚えたかの?あとは綿密な動作と無駄のない計算、それに道具を全身に仕込むのを忘れなくな』

 

「では、こちらを全部魔力でしてもらえますか?」

 

別荘に戻っていった副部長。なにを持ってくるのかと思えば、それらは全て野菜だった。おそらく、これは夕食の材料に使われるんだろう。

なんとなく、俺には副部長が何を言いたいのかを理解した。言葉ではなく、魂で。

 

レッスン4『波紋戦士の波紋疾走(オーバードライブ)

 

「…これから、このオレ、チェザーレ・アントニオ・ツェペリが弟弟子のジョジョに波紋疾走を教えたいと思う」

 

第四の特訓はチェザーレと。前より、波紋を習いたがっていた木場は別室で波紋の基礎を学んでいる。チェザーレの祖父のシーザーによって免許皆伝を成し遂げ、“波紋戦士”を名乗るのを許されたチェザーレは嬉しそうだ。今はすっかり仕事にかかりっきりで俺たちに波紋の修行をしなくなった師範は波紋や回転に関する技術を全てチェザーレに伝え、波紋を使用する医者(免許はもちろんある)をやっているそうだ。

 

「チェザーレが師範とか考えられんな」

 

「茶化すなよ、ジョジョ。嬉しいだろ、主に俺が」

 

「嬉しそうにするんじゃねえよ」

 

素直な感想を述べたまでなのに、チェザーレは真顔で俺の言葉を否定する。が、やつの顔は緩んでおりニヤニヤしきっている。コイツ、師範ってそんなに呼ばれたかったのか。だが俺は呼んでやらない。

 

「姫島から聞いたぜ、ピンポン玉サイズの魔力の玉が作れたんだってな。俺には無理だわ」

 

コォォォ~、と波紋呼吸の声を出してチェザーレは魔力を集中させる。右手を下に左手を上にしてスペースを作り出し、そこにチェザーレが集中して気を送り込めば、先ほど俺がそうしたように球体が出来るはずだ。だが幾ら待ってもチェザーレの手の中に魔力の球体は現れず、スペースがあるだけ。

魔力の『流れ』が見えた気がするのは、気のせいか?

 

「一瞬、出来かけていたじゃあないか。もうちょっとやってみろ、俺にだって出来たんだからよ」

 

と、俺は先ほどのチェザーレのように同じ構えで魔力を手中させてみる。魔力を『渦』を巻き、黄金色の輝きを見せた物体は先ほどよりはサイズが肥大し、テニスボールサイズの大きさのものを作り出した。

 

「お前は出来が違うんだよ、この天才肌。見るだけで相手の癖や攻撃パターン、それにテクニックを盗むとか何処のジョセフ・ジョースターにも出来ねえよ」

 

「人ん家のジジイの名前出してんじゃねえよ」

 

先読みが出来る時点でジジイは『スタンド』に目覚めていてもおかしくないと思う。スタンドに目覚めた時点で俺がスタンドから感じ取ったのは、『自分と似た匂いと気配』だった。つまり、スタンドは俺の精神の現れ。神器(セイクリッドギア)は人間が持つとされ、中には神をも超え魔王をも殺すとされる神滅具(ロンギヌス)もある。…どうして、俺はこんなに詳しい(、、、)んだ?

小さい時に聞いた記憶が蘇っている…?

 

「冗談はさておき、俺はグレモリーからお前の神器を目覚めさせる義務を請け負っている」

 

俺の父親が『万喰らい(オールイーター)』なる全てを喰らい尽くしそうな神器を持っているのを知っているようだし、血筋の云々かんぬんで俺にも良い神器が目覚めると期待しているんだろうか?

 

《なぁ、小さき龍の宿主よ》

 

俺の左腕ーーその中に内包された、あの巨大な龍の声がする。小さき龍の宿主ーー俺のことだろうか?高ニになり、厨二病を卒業している今、そんな名前で呼ばれる筋合いはないが。いや、こいつの声がチェザーレに聞こえないと仮定し、試してみよう。

 

「…そうかよ。だが俺は『見せて』やるつもりはねえよ?」

 

「テメエ、その口振りだと過去に『出した経験がある』ようだな?」

 

無意識のうちに滑った言葉はチェザーレを悪人面にさせた。チェザーレは軽薄でナンパなタイプだが、決して口が軽いわけじゃあない。軽薄で口が軽くない、と言えば矛盾している表現だが、こいつは言うなと言ったことを護り、自分の言わなくていいことをしゃべって損をするタイプ。悪人ツラのまま、胡坐をかいて座る俺の正面に座り、

 

「だから、なんだってんだ?」

 

「引きずり出してやろうじゃねえか、テメエの神器ってヤツをよ。」

 

…波紋疾走の完全習得じゃねえのかよ。

 

《諦めろ、お前のスタンドが出なくなったことは気づかれていないようだし。》

 

お前までもが気づいていたのか、ドライグ。俺が強くなれるんなら、どんな機会でも利用してやる。どんな力でも奪ってやる。

そう、どんなものでもなぁ?

 

「やってやろうじゃねーか?『師範代』よぉ?」

 

レッスン5『リアス・グレモリーと』

 

「ほら、センちゃん。気をはって!」

 

グレモリー先輩との特訓は至ってシンプル。

身体の基礎トレ、筋トレである。様々な形態に(キング)以外の全てに変化する特異性を持った歩兵は練習量や体力の消費が半端ないそうで、数えるのもやるのも嫌になるほど腕立て伏せや腹筋をやらされた。もちろん、これらは波紋の修行で小さい頃からよくやらされていたもので、波紋呼吸をすることでペースを乱さず、一定を保ち続けるのを課せられているので、今までのに比べると比較的ラクだ。

 

背中には岩、それを縄で胴回りに巻き付け、その上にはグレモリー先輩が座っている。これを何十回も往復し、グレモリー先輩が良いというまでを繰り返す。なんの舗装もない山道を駆け上がるほど、波紋を知る俺にとって楽なものはない。

 

「次は腕立て伏せ、行くわよ!」

 

俺の足の速さは朝練で知っているのか、あまり長くは山道を走ることはしなかった。かわりに腕力を鍛えよう、と思ったようで俺に腕立て伏せをさせた上で岩を背中に乗せさせる。こんなに簡単に岩を乗せられるなんて、魔力ってヤツは便利だな。うまく行けば擬似スタンドを作ったりとか、(デコイ)を量産して霍乱できそうだ。

魔力の消費量が半端無さそうだが、維持も含めて。

 

スッ。

 

簡単に岩の上にグレモリー先輩が乗りやがった。そういえば、王の駒の能力を知らないな。

 

《具体的にはなかったはずだ。多分な》

 

俺の疑問を読んでいたかのように脳裏にドライグの声が響く。それに、気づけば俺の左腕が特撮ヒーロー《仮面ドライバー・ドラゴネイト》のドラゴネイトの腕みたいになっている。テメェ、ばれたらゆるさねえぞ?

 

《分かっているさ。お前ほど、異様に物覚えの良い赤龍帝はいないからな。そうそう簡単に信頼を失いたくない》

 

左様か。

 

「さて、腕立て伏せは三百回行くわよ!」

 

三百回…俺をどれだけ筋骨隆々にさせる気だ、グレモリー先輩って人は。その後、さらに腹筋を百二十回させられ、腕立て伏せよりかは回数が少なかったものの、回数の多さで腹筋している時間のほうが短く感じ、俺は静かに自分が疲弊しきっているのを悟った。

 

ドライグのことは、まだ伝えたくない。

 

 

「美味ェェェ!オレは、オレはこんなに美味ェモンを食ったことがねえ!」

 

夕食時、チェザーレは舌の上に蕩けるボタン肉に感想を漏らした。魚の塩焼きやこのイノシシ肉、これらは全てグレモリー先輩が獲ったらしい。チェザーレよ、俺はお前がシャボンソードでクマを仕留めてるのを見たんだが…、あまりお前には驚くことではないんじゃあなかろうか?

…いや、女好きなチェザーレだ。これはグレモリー部長を立てているんだろう。

 

「センちゃんもお味はどうですか?」

 

和風エプロン姿の副部長が微笑みながら聞いてくる。ダニーとレイナーレは別室で食事をしているらしく、そこに明確な隔たれた壁を感じた。ダニーは名義上は俺の使い魔、人型で言葉を話せる堕天使のレイナーレもまた同じ扱い。…殺そうとしたヤツに情が映っちまったのか?俺ってやつは。

 

「最高。嫁に欲しいな」

 

一応、ヨーロッパ生まれであるはずのお袋と味付けが似ている。こういうタイプは胃袋で将来の夫を捕まえられると俺は見た。お袋はスージーQおばあちゃん譲りの天然ぶり、料理は覚えるのが四苦八苦したらしいが、オヤジのために頑張ったそうだ。ウチの家系は、強いな。

 

「セ、センジュさんっ!スープは、私が作ったんですよ…?」

 

心配そうなアーシアが俺の顔色を窺う。言われんでもわかる。あの晩、俺に夕飯を作ったのはお袋でなく、アーシアだったというのを。俺の舌を舐めてもらっちゃあ、困るぜ?

 

「味付けで分かった。旨い、アーシア。」

 

いささか無愛想な答えになってしまったが、アーシアにとってはこれで十分だったようで、テーブルの上にちょこんと置かれたオニオンスープはシンプルでありながらも、俺の胃袋を掴んだ。女好きなダニーにも飲ませてやりたいが、馬が何を食べられるのかを俺は知らない。

 

【んな心配してくれってたのかよォ~、嬉しいぜ、ジョードの兄ィ!ちなみに俺に食えねえモンはねえ!カワイコちゃんが作ってくれたモンなら、産業廃棄物だって食うさ!ウマだけどな!…レイナーレちゃんの料理は食ったことねえが。けど、レイナーレちゃんの谷間は最高だわ。ぱねえ】

 

この脳裏に響く声、やけに甲高い声はこの場の誰でもない。チェザーレに似た軽薄な口調、レイナーレをちゃん付けで呼ぶ人間はいないし、自分で自分をウマって言うやつも知らない。ダニー、喋れたのか。

 

『ふふ、可愛い。ニンゲンがイヌネコを飼うのって、こんな気持ちなのかな?』

 

すっかり年頃の乙女のような、スイッチの入ったレイナーレのうっとりした声がする。ブルルル…と小さく鳴く声がダニーのだとしたら、これはコイツが見聞きしたことをテレパシーと共に流すのか…?電話のスピーカーホンのようだが、電話相手の生活音を聞きたくないように、ウマの生活音は聞きたくない。

 

「本当ですか!?おかわり、要りますか!?」

 

「何を分かりきったことを。くれ。欲しい」

 

「よかった、これで私もセンジュさんのーー」

 

俺のスープ椀を持ち、オニオンスープをよそおいながら、アーシアは顔を赤らめる。ニヤニヤするチェザーレと副部長とグレモリー先輩。他の面々はただひたすらに食事を続けている。あれだけ動けば腹も減るわな。

 

「センちゃん、今日はどうだった?」

 

すっかり俺のニックネームはセンちゃんで決まりのようだ。学園内で呼ばれようものなら、どんなうわさをされたものかたまったモンじゃあない。それでも呼ぶのは此処の面子とたまにお袋が呼ぶくらいか。

 

「俺が一番貧弱だった」

 

素直な感想はこれ。魔力の球体がわずかに大きかったことと、野菜を全部魔力で裂いたのは大きかったが、ドライグを隠し、スタンドが使えない今の俺は波紋と回転で乗り切るしかない。あとはレーティングゲームの会場にある物をどれだけ生かすかだ。トラップセットはジジイから譲り受けているし、トラップセットと鉄球は合わせれば使えるものと見た。

 

ワイヤーと鉄球は最強だろう。

 

「でも、センちゃんには他の皆にはない力がある。それはスタンド攻撃ね。アーシアのものは回復特化だけど、センちゃんのものは攻撃にも使用できるし、波紋を流せる形態だってある。センちゃんにはセンちゃんの長所を生かしておくこと。あとは逃げるタイミングを教えてあげなくちゃ。もちろん、立ち向かうこともね」

 

「了解した」

 

「はいっ!」

 

アーシアが元気のよい返事を返す。立ち向かう、か。今の俺にとって足りないのは『立ち向かう者』の消失。スタンドはスタンド使いにしか見えない。つまり、見えないものはどうしようもない。これがスタンド使いの強みだってのに、見えては意味がない。見えるものもあるそうだが、アーシアの場合は神器・聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)によるものが大きい。似たタイプだし、アーシアのイメージにピッタリだ。

なんらかのきっかけ、そのきっかけさえあれば。

 

俺の左腕にドライグがいるってことは、必然的なことだったのかもしれない。ダニーやお袋、ジジイやおばあちゃんをアーシアを護るには力が要る。ドラゴンと言えば強大な力を持つイメージがあるし、最後まで秘匿し続ければフェニックス戦で偶然目覚めた、ってことにすればいい。

それとスタンドの力が戻れば、俺は更なる強みを得れる。

 

「食事を終えたら、お風呂に入りましょうか。ここは温泉だから素敵なのよ」

 

 

グレモリーの言葉にオレの血の巡りが普段の五倍、良くなった。女の子、それも学園のアイドルを含めて美少女転入生と風呂が入れる。このチャンスを逃すようでは、俺の名が廃るってモンよ!野郎共の意思を今こそ、収束すべきとき!

 

「…!」

 

「悪いけど、僕は覗きませんよ?チェザーレ先輩」

 

何を勘違いしているんだ、木場の馬鹿!覗くんじゃない、混浴のチャンスなんだぞ!?ジョジョも含め、こいつらは本当に男なのか!?うまくいけば有翼美女のレイナーレちゃんとも入れるかもしれない!

 

「あれ、チェザーレ?私たちのお風呂を覗きたいの?センちゃんならいいけど、貴方はちょっと…」

 

「部長、いい事を考えましたわ。センちゃん、私たちと入りますか?」

 

「いいわね、それ。愛しのアーシアもいることだし?」

 

「!」

 

ジョジョの野郎、なにちゃっかりおいしいポジションに入ってるんだ!?二大美女に可愛がられ、それでいて金髪美少女幼馴染だと!?ちゃっかり反応してんじゃねーよ、このスカタンが!ちくしょう!悔しいのう、悔しいのう!

アーシアちゃん、顔真っ赤。

(結婚しよ)

 

「小猫はどうする?」

 

来た!小猫ちゃん!これで勝てる!

 

「…しどー先輩といえど、ダメです」

 

「ちっくしょー!現実は残酷やないの!どうしてつめたいんやー!」

 

現実は、残酷だった。しどーって、オレの腐れ縁は破壊神かなにかかよ!?そういう要素はあるけどさ!?ざまあみやがれ!しどー!………悲しいのはオレなんですけどね。

 

「残念だけど、そうなったみたいね。じゃあ、私たちは入ってくるわ」

 

「…覗いたら、蹴ります、チェザーレ先輩」

 

グレモリー先輩が着替えを取りに戻ると、一人、残った小猫ちゃんは暫くオレの方を見ていた。そして言った。オレは小猫ちゃんの目がマジだったので、何も言えなかった。

 

「背中、流してあげようか?センジュくん」

 

「祐斗、それは違うな。このドスケベ野郎の背中を流すんだ、同時にな。ゴシゴシ」

 

「いい考えだ、それで親睦を深めよう、ってことかい?」

 

無言で縦に頷くジョジョであるが、アイツが無言でもオレに何を言わんとしているのかは分かる。

 

 

『がっつきすぎだ』

 

 

 

さて、ここでデキる男・チェザーレは諸君に見苦しい様子をお見せしたようだが、いつか来るオレのカッコイイ立ち回りはまたの機会においといて、ジョジョの授業で習ったことを整理しよう。

悪魔の世界の四人の魔王、ルシファー、アスモデウス、ベルゼブブ、レヴィアタン。個人的にはものっそいレヴィアタンさんに会いたいもんだ。

あとは天使。

ウリエル、ミカエル、ラファエル、ガブリエル。これらのは織天使(セラフ)ってやつで、大丈夫だ、問題ない!のフレーズがあまりにも有名になったゲームにも確か出てきた。

それからは堕天使サイド。

アルマロス、バラキエル、シェムハザ、タミエル、べネムエ、サハリエル。ナイスガイ・チェザーレにはお茶の子さいさいだな。

 

レイナーレちゃんは復唱してそうだが。っつーかよ、昔の人って凄いよなぁ。天使も悪魔も創作かもしれねえけど、知ってんだぜ?会ったことあるのかないのかさておき。

おっ、アーシアちゃんのエクソシズム講座がはじまったな。

一個目はテレビや映画に出るタイプ、もう一個目はアンデルセン神父みたいな除霊(物理)な人たちだ。

かいつまんで言ったけど、後者は青エクを想像してもらいたい。

以上、カッコイイインフォメーター・チェザーレでした。

 

 

俺の白兵戦は所詮は喧嘩殺法、魔力は形が定まらない、剣術も最低だ。

スタンドもなく、ドライグを隠し続けるのなら、俺に残るのは波紋と鉄球だけだ。

勝てるのか?フェニックスってヤツに。

映画や漫画での知識が正しいのなら、あいつらは死ぬ間際に燃え盛る炎に飛び込み、そこから新たな生命として誕生する。

それが本当なら、フェニックスはおそろしく強敵だ。前に見た魔法使いのメガネの少年が出てくる映画の第二作では、フェニックスの涙で傷を癒していた。全快になってた。

けどよ、不死身の怪物を倒すのはいつだって不死身でないモンだ。

ワクワクしてきやがったぜ、待ってろよ、フェニックス。テメェはあんッのパツキン吸血鬼を倒すための踏み台にしてやる。

 

 

ふとした拍子で目が覚めた。

隣には木場が寝息を立てて眠っており、その隣にはチェザーレが布団を蹴っ飛ばしている。チェザーレの寝相の悪さは俺も知るところだが、それは身内の中だけでのことだとおもっていた。だがアイツはどこでも自分を曝け出すのに抵抗がない性格、他人の別荘でも未だなお直っていないらしい。

寝室を出てリビングに向かうと、ダニーがふわふわ飛んで肩に落ちた。寝ぼけて寝室から出てきたんだろう、それにしても危なっかしい飛び方だ。

ダニーを頭の上に乗せ、ソファに座るとグレモリー先輩が居た。

 

「眠れないの?」

 

「そんなところ」

 

赤いネグリジェに髪を束ね、メガネをかけている。チェザーレではないが、よく似合っていると思う。

テーブルの上に地図やら様々なフォーメーションを描いた紙がある。…一人で対策を練っていたのか。

 

「こんなもの、気休めにしかならないのよね」

 

「?」

 

「これは上級悪魔なら、誰でも出来ることなの」

 

「何が分からない?」

 

「問題は、ライザーがフェニックスだってこと」

 

それからグレモリー先輩はフェニックスについて解説をはじめた。フェニックスにはフェネクスという能力が殆ど一緒の聖獣が存在しており、その圧倒的な回復力で身体を癒すこと。かつてのソロモン七十二柱に名を連ね、命を司る者として崇められていたーー。

 

「最強じゃねえか」

 

「ええ、実際に戦績は八勝二敗。そのうちは懇意になっている家との、いわゆる接待のレーティングゲームね。これを除くと事実上、無敗よ。攻撃してもすぐ再生、その業火は塵一つたりとも残さない」

 

…ジジイもかつて、そんな敵と戦ったと言っていたな。触れるだけで食われ、波紋攻撃でないと触れることすら不可能。それに圧倒的な攻撃力、流法(モード)なんてのを持ってたとか。そんなヤツをジジイとシーザー師匠が倒したなんて未だに信じられん。しかも俺と殆ど年齢が変わらない年、悪魔でもなく普通の人間のままで。

 

「ライザーが婚約相手に選ばれた時、嫌な予感がしたわ。お父様達が全部仕組んでいたって。私が否応なしに結婚するよう、ライザーを当てたんだわ。こうして身内同士の結婚でも、ライザーなら、フェニックスなら、勝てるはずがないと。チェスで言う、スウィンドルって奴だわ」

 

不死身ならば、再生する前にブチのめすのみ。炎を使う前にブチのめす。あのスカした面はヤツを思い出させる。

余計に負けるわけには行かない気がしてきた。アイツの眷属を全部ぶちのめし、そしてあいつを焼き鳥にして料理してやるくらいの気概でなければ。念のために聞いておこう、ヤツの攻略法を。

 

「攻略法はあるのか?」

 

「ないこともないわ。圧倒的な力で押しつぶすか、何度も何度も立ち上がるたびに倒すか。前者は神クラスの精神力が必要だろうけど、後者はライザーの精神力が尽きるまでスタミナを保つこと。身体が再生しても心までは不死身じゃないしね。フェニックスを押しつぶすのには、やっぱり神みたいに一撃で相手の心も身体も奪い去る力があればいいんだけどね。フェニックスを押しつぶせば私たちの勝ち。」

 

神みたいな一撃で奪い去る力ーー。そんなものがあれば、どれほどいいだろう?あんな最低タラシ野郎でも、父親の顔を立てるためには結婚はレーティングゲームでなければ断れないし…。

ジジイならば、どうするだろう?

 

『はっはァ~、まァたまたやらせていただきましたァ~〜〜ン。降伏するまで続けるぜェ~!』

 

『や、やめてくれ!降参するッ!』

 

こんな絵か。容易に想像できるな、ボロボロになってるライザーと若いときのジジイ。あの抜け目のなさで若いときとか、凶悪すぎんだろ。

 

「そういや、聞いてなかったが、先輩、何であんたはアイツとの婚約を拒絶する?」

 

「私が、『グレモリー』だから」

 

先輩の口からは直接聞いていなかったが、その言葉で大方察せた。よくある小説で自分の家柄でなく、自分を見て欲しいヒロインが旅に出るとか。わりと使い古されたテーマだが自分が体感してみるとリアリティがある。

グレモリーでなく、『自分(リアス)』を好きになってくれる人と一緒になりたいんだろう。

 

「チェザーレから聞いたわ、貴方がかたくなに『ジョースター』であるのを認めたがらないのを。誇りは大切よ、センちゃん。自分の家に誇りを持つことは。でも、もしかしたら、貴方は見てほしかったのかもしれないわね、ジョースターのジョードでなく、『士藤千寿』としての自分を」

 

私たち、似てるわーーそういう先輩は悲しそうだった。一人の女性としてのリアスを見て欲しい。

そんな人と結ばれたい。

俺の父親は強大な力を持っていたんだろう、ジジイは人間世界では不動産王だ。そしてかつては人間を、世界を救った英雄だ。あのときのチェザーレは俺を二人と比べた。だから否定したかったんだろうか?

 

「俺は堂々としてるアンタが好きだがね」

 

気づけば俺の口からはらしくない言葉が漏れていた。鉄仮面と言われた俺が人前で感情をあらわにしている?すると、俺の左腕が赤い篭手に包まれ、緑の宝石を内蔵したものが出現した。

 

「それは…赤龍帝の篭手(ブーステッドギア)…?」

 

先輩は驚きの声をあげている。俺が神器をこの瞬間に発現させたことか?それとも、俺の言葉にか?

その辺はよう分からん、俺はエスパーじゃあないんだ。

 

「他人のことを考えるなんてのは難しいもんだ。けど、アンタやアーシアはそれが出来る。いかに俺達が勝てるのか?いかにすれば勝てるか?それを考えていた。その目は、知ってんだよな?こいつの使い方ってやつを。他人の為に、民のために考えられる王たる先輩のことは嫌いじゃあないぜ」

 

気がつけば俺は跪いていた。自分でもそういう性格ではないと知っているが、さすがの騎士の血筋。

なによりも女性優先のようだ。

と、先輩の顔を見上げてみると顔が真っ赤だった。なにか変なことでも言ったんだろうか?そういうのはチェザーレに任せておきたい。

 

「明日からは、赤龍帝の篭手を使いなさい。貴方たちを勝たせて見せる。だから、私を信じて?センちゃん」

 

先輩は俺に向かって手を差し出した。その手を反射的に取り、赤龍帝の篭手の緑色の宝玉が光る。

スタンドに代替する手段、俺のような弱いやつが上位の存在に立ち向かうモノ。

 

 

「頼りにしている、リアス先輩」

 

《ようやく、()を使いこなすつもりになったか。センジュ坊や》

 

翌日、俺は赤龍帝の篭手を使った特訓がはじまる事となった。すべてはあのスカタン野郎を完膚なきまでに叩きのめす為に。

 

 

 

 

 

 

 

 




予想外に長くなってしまった。
なんてこった。
四時間かかった。

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