自分の軍団を戦地に送り込める転送能力持ちです。
ウィキペディア先生で調べたところ、原作には登場していない様子。
というと、旧魔王派なのか?と思う今日この頃。
ブーステッド・ギアでの修行の『過程』をすっ飛ばし、修行を終えたという『結果』だけが残るッ!
キング・クリムゾン!
決戦当日。
あの後、赤龍帝の篭手での修行を行なった。魔力を溜めて放出する、いわゆる『チャージショット』をいかに簡単な動作で行なうかの修行をだ。魔力を溜め、形を形成する段階はすでにピンポン玉からテニスボールサイズのものを作り出せているので問題ではないとのこと。元からの資質か、朱乃のようにペットボトルの水を風船を内側から針で貫くように破裂させることは出来ると推測できるが、千寿が雷や炎を操る場面が想像できない。
よくて武装を無理矢理剥ぎ取って、皮膚ごと剥がして出血させる拷問的方法をはじめとする肉弾戦だろうか。
それに、遠距離攻撃はツェペリ家に伝わる鉄球の『回転』の技術ならば切断、砂塵を起こすといった大抵のことが出来るのもあって鉄球が損失するのを目を瞑れば、どうってこともなかったし、自らの身体能力を強化するならば波紋呼吸法がある。そして付加された、神をも殺す
十秒ごとに力が倍化されていく、その力は習得済みの波紋を強化できる増幅装置とされる、エイジャの赤石と同じ効果が期待できそうだ。
そういえばエイジャの赤石は波紋限定とはいえ、増幅できる効果を持つのに対して赤龍帝の篭手は“力”という物を問わずに増幅できると来た。両者の共通点は“力”を強化できるということ。
「……今、考えることじゃあないか。ダニー、用意はいいか?」
【オウ!透かしっツラのスケコマシ野郎はチェザ~レで十分だぜ!それと兄ィでな!つかよォ、つかよォ!俺とのセイシキケイヤクは結ばんでいいんですかい?】
パタパタ、とせわしなく翼を動かしながら甲高い鳴き声を上げてダニーは千寿の頭に着地した。すっかりそこが定位置となっているようで、その尻尾はアンテナのようにピンッと立っている。だんだんとダニーの口調がチェザーレを思わせるものに聞こえてくるが、そこに触れてはならない気がした。
レーティングゲームという名の通り、『
「あえて言うなら、駒王学園の制服かしらね。私達がオカルト研究部である証かしら?」
穏やかに笑い、そのときのリアスは千寿の長ランの襟を直した。どこか物憂げな様子が見て取れ、千寿はそんな彼女が気がかりでしかなかった。勝利すれば婚約は回避されるが、負ければ結婚しなければならない。悪魔と聞けば寿命は長い印象があるし、ましてやリアスは学生である。純血悪魔の血筋は悪魔サイドと『しては』大切にしなければならないんだろうが、いくらなんでも早すぎやしないだろうか?
「……センチになるんじゃねえ、戦う前から感傷に浸ってるなんてらしくねえ。」
ダニーを頭頂部から下ろし、わざわざ肩に乗せた後は小さめの籠ほどの大きさの帽子掛け用のスタンドにかけておいた学生帽を被る。駒王学園の制服のオプションとして販売されていたものだが、誰もこれを買う男子生徒はいないようだった。古いだとか、時代を感じるだとか様々な意見があったという。実際、チェザーレが突然家に来たときに被せてきた出来事で気に入らなかったら、千寿は被りもしなかったろう。
「あの、入っていいですか?」
コンコン、と数回ノックがあった後、遠慮気味なアーシアの声がした。互いが今夜のレーティングゲームに備え、バトルユニフォームに着替えるためにそれぞれ別室にいるのだ。ダニーが問答無用でドアノブまで飛んで行き、歯でガッシリ掴んで扉を開けた。
「ダニーが勝手に開けちまったが、別に構わん。修道服、って奴か?それは。アーシアには、やっぱりそれが似合うな」
再会した時に着ていた修道服はフリードによってボロボロにされていたが、ホリーの手によって繕われたので元通りの修道服の形となっている。そんなに遠く離れた位置でなくとも、継ぎ目が見えないのはホリーの裁縫技術が高いからか。長ランと学生帽、応援団長と言われても信じてしまいそうな雰囲気を放ち、唯一の違和感としてダニーを肩に乗せている千寿の腕の中にアーシアは飛び込んだ。
「センジュさん、これからも一緒にいてもいいですか?」
「俺と?……お袋はアーシアを気に入ってるし、いいんじゃねえか?ダニーもそうだろうしな」
【オウ!カワイコちゃんの腕の中に飛び込めんなら、それにこしたこたァねーぜ!なんせ、俺は女子供には優しい主義だ!敵は失せな!同性の敵は特に!】
千寿にしか『聞こえない』テレパシーを発しながら、軽薄な言葉とマシンガンな口調で軽口を叩くダニーの背中を撫でながら、開いたその手でアーシアを抱きとめる。背中に感じた、大きな温もり。
姿形は変われども、千寿本来の性格は変わらず、優しいままだった。彼の性格だったら、今回の戦いがリアスでなくても挑むだろう。
千寿が思っている以上にアーシアは千寿を優しい、と感じている。時にそれがかつて、教会の聖職者全員を皆殺しにした過去があっても。誰かのために戦え、意義を見出せるのは千寿の美点だ。だからこそ、アーシアは千寿に自分を大切にして欲しかった。大好きな人だから、尚更。
「ホントですか!?」
「ああ、んなことで嘘なんかつかねーよ。タチが悪ィにも程があんだろうが」
「ふふ、そうですね。センジュさんは自分に正直だから……」
ふと、アーシアは『しょうらいのゆめ』について語った千寿を思い出した。自分では考えられないことをしたと思っているが、どうして彼をあの時殴ってしまったんだろう、という疑問が残る。おそらく、それは自分が妬いているからだ、とアーシアは考えた。『太陽』のような眩しさが映る彼は強い。力がある、と言う意味でもなく、精神面でも。表情豊かだった、あの頃の彼はいなくなってしまったものの、時折垣間見える優しい一面はあの頃を思い出させる。
「家をでるまで、一緒にいていいですか……?」
「ああ」
甘い空間が形成される中、ダニーはそろりそろり、と擬音が出てきそうなほど慎重に精密な動きで千寿の肩を飛び立ち、アーシアの膝上に降り立った。この甘ったるい空間でコーヒーは飲めないが、不思議とブラックコーヒーを今なら樽三つ分飲み干せそうな気がした。大柄な青年が金髪の少女の肩を抱き寄せ、身を寄せ合っている様子を見ながら、ダニーは大きく欠伸をした。
【あま~い!てか、サラッと俺との契約の話を流すなんて、ジョードの兄ィってばイケズだなァァァ〜!?】
☆☆☆
深夜十一時四十分頃ーー
あの後、空気を読まずに家に訪れたチェザーレと共に千寿とダニーとアーシアはオカ研の部室を訪れた。
旧校舎の部室では、それぞれがリラックスできる姿勢で臨戦態勢を取っている。小猫はオープンフィンガーのグローブ、チェザーレがつけているソレと御そろいのものだ。チェザーレは意図して買ったんだろうが、それが発覚して足蹴にされながら、「我々の業界ではご褒美ですッ!」と叫んでいる。
木場はそんなチェザーレに苦笑いし、アーシアはあわあわするばかりでダニーは朱乃の膝上に座っていて、優雅にお茶を楽しみながら可愛がられている様子だ。
さて、と千寿は立ち上がって木場に近づいた。
「祐斗、話があるんだが、いいか?」
「士藤千寿様、開戦前ですし、この部屋から離れることは出来ませんが?」
「そういうことじゃあねえ、ちょっとした雑談って奴だ」
それなら仕方ありません、と引きとめたグレイフィアは口を閉じた。各々がゆったりとしている中、本番のことを大声で話すのは良いことではないだろう。せっかく、それぞれが英気を養っているのだ、積み上げた積み木のようなそれを切り崩していいものじゃあない。
「なんだい?センジュ君、話って?」
「ああ、それなんだがな。お前、折りたたみ式の剣を作れるか?
千寿に話がある、と言われて木場が彼から切り出された内容とは折りたたみ式のナイフのような剣を作れるかどうか、というものだった。木場祐斗の神器、魔剣創造は任意に魔剣を作り出せる。雷の剣や炎の剣等お手の物だ。しかし、千寿の言うそれは属性を一切持たないであろう代物。
「……考え無しに君が頼むとは思えないけど、何か作戦でもあるのかい?」
「お前も知っているはずだ、俺の祖父が誰だってことを。ジョセフ・ジョースター直伝の技があるのさ」
「おじいさんか。なら仕方ないね、できるかわからないけど、作っておくよ」
口角を上げて笑う、千寿からはその根拠は何処から沸いているのだ、と疑いそうな自信を感じさせる。木場以外に同級生の同性の友人がいない千寿は昼休みに屋上で語り合う際、『嘘のような本当の話』ではなく、『胡散臭い話』が飛び出す。若き日のジョセフ・ジョースターが繰り広げた戦いは木場自身も非常に興味深かったが、触れるだけで消化される細胞を持つ生命体(太陽光に似た波紋しか聞かない)との戦いは特に。その祖父のジョセフが教えたならば、技術も確かなんだろう、と木場は千寿の言葉を信用することにした。
「……とりあえず、これで一つ用件が済んだな。あとは出来を待つだけか」
即興作成といえど、木場は剣士である。剣を習っていた経験がある、千寿は自分なりの『剣士観』を持っていた。剣士は自分に合った剣を持つことで剣士本来の技術や力を引き出し、有効に戦いを進めることが出来る。その見方では木場祐斗は実に有利に戦局を進められるといえよう。そのときに合った、その時に必要な剣を作り出せる力。モンスターを携帯して戦わせるゲームのように、相手の弱点をつくにはそれに有効な技やモンスターを出して対抗するもの。チェザーレや師匠、祖父をはじめとする強力な波紋を秘める波紋戦士ほど応用力が利く能力は素晴らしいものだ。
「そういえば、リアス先輩。今回のレーティングゲームは、お偉いさんも見るのか?」
「そのことについてですが、魔王ルシファー様がご観覧になられます。魔王様が見ておられるのをお忘れなく」
リアスに尋ねた、千寿の疑問を拾うようにグレイフィアは淡々と答えた。
魔王ルシファー、と聞いて赤いドラゴンとの邂逅を果たした際に見た夢。父親の譲寿と『サッジーにいちゃん』の会話。失神する前に聞いた、父親が魔王の『
「っつーと、オヤジの元・上司が見に来るってことか」
「そっか、センジュ君のお父さんの上司は魔王様か。なんか凄いね、士藤親子は」
「だろ?コイツのことは破壊神シドーって呼んでいいぜ?」
感慨にふける千寿の気持ちを察したのか、チェザーレは木場の肩に手を回した。木場はわずかに苦い顔をしたが、すぐにいつもの爽やかスマイルを浮かべていた。木場自身がチェザーレの扱いを心得てきているあたり、オカ研の面々はチェザーレ・A・ツェペリという男の人柄を理解し始めていると実感した。
「破壊神シドー……」
一番感慨深かったのはグレイフィアだった。かつて、同僚だった『士藤譲寿』と言う男。正しいものは正しいと言い、間違っているものは間違っている。熱い男の鑑と言える、魔王の『戦車』。良くも悪くも真っ直ぐで芯が通っている。凛とした雰囲気を崩さないものの、自分の父親の名を聞いて頭に血が上った様子は千寿が彼の息子だと思わされる。内に潜ませていた神器の力といい、その名前といい皮肉にも『破壊神』のような力を持つ男は『ヒーロー』であった。
「それにしても、スゲーモンだよなぁ。兄妹に親子で仕えているんだぜ?ぱねえよ、破壊神シドー親子って奴は」
「ええ、本当にね。それにしても、お兄様が見に来られるのね」
ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウス。
兄弟、と言うと四つの名前は今では内閣総理大臣や大統領のような役職名なんだろうか。
すっかり、破壊神シドーという響きを思いつきで言ったに違いないが気に入ったんだろう。士藤だけにシドーシドーと連呼している。
「サーゼクス・ルシファー。別名を『
「凄いカッコイイ響きだな」
兄貴が魔王になったから、リアス先輩が家督を継がなきゃなんねーのか、と千寿は感想を抱いた。自分のようないわゆる、『平民』にはずっと理解できない問題だろう。家督相続とかのような単語はジョナサン・ジョースターの時代だけの話だと思っていた。
「一度、魔方陣に入れば終わるまで帰れません。準備は宜しいでしょうか?」
こうして、千寿らオカ研の面々は魔方陣に飛び込んだ。
☆☆☆
飛び込んだ先は駒王学園の旧校舎と似た、『建物内』であった。鏡が写したものは、そのままの物を
写しだす。まるで、そこは駒王学園そのものを映し出した『世界』だった。
リアスの指示で朱乃によって、オカ研の面々が配られたのはイヤホンマイク。チェザーレの姿は既になく、「ツェペリ君にはツェペリ君の役割がありますの」とのこと。
『ただいまより、グレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」を行ないます。審判役はグレモリー家にお仕えします、使用人・グレイフィアが担当させていただきます。今回のバトルフィールドはリアス様が通う、駒王学園のレプリカをご用意しました。転送先はそれぞれの本拠地となります。時間は人間界における夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』
キーンコーンカーンコーン。
戦いの火蓋は切って下ろされた。
「戦いの要はチェザーレのシャボンランチャーになるわ。太陽光と同じ効果を秘めた、波紋は悪魔に有効だからね。今回のフィールドは私たちの学校」
難しいことは千寿にはよく理解できなかったが、とにかく下される指令をこなしていくことだけだ。
こういうとき、FPSをやりこんでいるチェザーレならば戦略を簡単に鵜呑みにし、迅速に動くことが出来るだろう。機動力といい、攻撃力といいどれもが人間として最高峰を極めているチェザーレは四分の一のみ悪魔となることで進化を発揮したと思われる。
木場に渡された、折りたたみ式の魔剣。使いやすさと携帯に拘ったナイフのような武器にはすでにワイヤーが柄に結ばれており、ワイヤーを張り巡らせることで波紋を流し、動きを止める。フェニックスは炎と風の悪魔、燃やされでもしたら終わりだが、ワイヤーは遠目からでは光の加減で見えない上のこと。
作戦会議を終了し、リアスが千寿に歩み寄る。
「貴方のリミッターを少しだけ解除しておくわ、センちゃん。私が持つ、すべての兵士の駒と台無しの駒を使用したから、スタンドを発現できるほどの強い精神力を持っていても、身体が耐えられないから」
「わかった」
わずかに身体中の何かが弾ける音がした。それが『
「……あと、これはお呪いだから」
背中に感じる、柔らかく暖かい感触。リアスより背の高い千寿の表情は窺い知れないが、帽子を被って表情を被っている千寿の表情は窺い知れない。三年のリアスでも知らないような、制服販売のオプションの学生帽を被っている千寿は甲冑を纏った歩兵のようだった。どこからでも感じられない、その溢れ出す余裕や雰囲気は却って危うさを感じる。
「……行ってらっしゃい、私の可愛い赤いドラゴン」
リアスの言葉に軽く頷いた千寿を離し、木場と小猫と共に出撃する。背後から聞こえる、アーシアの応援が千寿の決意を却って固めさせる。
☆☆☆
「ぶっ飛ばしてやらぁ!」
チェーンソーを振り回す、双子とチャイナドレスのライザー・フェニックスの兵士と戦車だ。中国拳法っぽい動きはオレとジョジョがじいちゃんから習った、武術に似ている。双子の振り回すチェーンソーをかわし、全身に仕込んだシャボン液こそがオレの武器、手刀を作り、シャボン液を纏って波紋を流す。チェーンソーのような刃が高速で走り出した、この技をオレは『シャボンソード』と呼んでいる。左手のシャボンソードでチェーンソーを受け止め、右手でチャイナドレスのちゃんねーの蹴りを受け止める。
棍使いらしい、チャイナドレスのちゃんねー。
「……な…ッ!?データによれば、お前は“波紋戦士”のはず!なぜ、私の蹴りと」
「私たちのチェーンソーを受け止めてるの!?」
「データどおりにはいかねえんだよ、実戦ってやつはよ?」
この出来損ないめ、と棍使いの少女は悪態をついた。オレは四分の一だけが悪魔の『粗悪品』だ。
所詮はグレモリーのヘルプキャラに過ぎない。開戦すると、まずはフェニックス陣営の奴らがオレたちの領土を奪いに来るだろう。スタンド使いで前線担当のジョジョ、白兵戦の小猫ちゃん、状況に応じて剣を使い分けられる祐斗。なぜ、オレの名前が敵さんに知れ渡ってるのかはしらねーが、後輩どもが来るまでは“波紋戦士”チェザーレ・アントニオ・ツェペリが!足止めしてやろうじゃないか!
「クッ、波紋戦士と言うのはなんでもありなのだな!?」
皮肉混じりにチャイナドレスのチャンねーはオレの頭部に得物を叩きつける。シャボンソーに切り替えた、シャボンソードは刃に棘をつけて振動している。波紋に含まれた、太陽光と似た働きが双子のチェーンソー使いの動きを止めるが、それがチャイナドレスのチャンねーの狙いだったらしい。
万能の波紋といえど、触れていなくては効果を発さない。放出する能力たる波紋は手足や足先から放出され、水の上を歩けるのも足の指先から波紋を放出するからだ。
「チャンスです!」
双子の片割れがもう一本のチェーンソーを取り出した。ただでさえ、一本だけでも厄介だってってのに!
「…情けないですね、ツェペリ先輩は」
と、そのとき!小猫ちゃんの重い裏拳が不意打ちをしようと背後に回った、チャイナドレスのチャンねー(名前は確か、ミラちゃん?)を吹っ飛ばした!格闘の心得でもあるのか、すぐにでも立ち上がったソイツは激しい拳の打ち合いをしている。おいおい、まるでジョジョのラッシュじゃねーかよ。
「……よう、先走った割には酷いアリサマじゃねーか?」
キタ!腐れ縁!これで勝てる!赤龍帝の篭手を顕現させ、倍化させたんだかなんだかしらねーが、白兵戦が強くなってやがるぜ!ったくよー、フェニックスとの邂逅で失神した時は心配したじゃねーか!
「見せてやろうぜ!オレたち、」
「「腐れ縁コンビネーションって奴をよ」」
そのとき、オレとジョジョの息が合った。
☆☆☆
「行くぜ、俺の神器」
『Boost!Boost!Boost!』
『Explosion!』
三度の倍化を行い、強化されたままで千寿はそこに『蓋』をしめる。“力”がもたらされた、全身の機動力は大幅に上昇されており、今の状態ならば武術を得意とする小猫ならば、形とされた技を使わない奇襲攻撃ならば上だろう。チェザーレと背中合わせにチェーンソーの双子と戦う傍ら、ポケットから取り出したナイフにつけたワイヤーを張り巡らす。『終点』となるところはゴム製のリングを三つつけた右手に填められ、波紋を流す用意は出来ている。
「隙あり!」
わざと隙を作る行為こそ、隙をわざと『見せている』状態を侮った相手はまさにカモ。移動しながらもワイヤーを三本つけた折りたたみ式の木場特製ナイフを天井に張り巡らせ、迫ってきたチェーンソーの双子の傍ら。チェーンソーのような、常に回転している刃は少しでもワイヤーに触れれば切裂いてしまう可能性は高くなる。一方のチェザーレは、シャボンカッターの応用版のシャボンソードをチェーンソーのように『回転』させる技術に倣い、チェーンソーのような棘を生み出して回転させている。手刀としている状態を崩せばすぐに瓦解するほどに脆い耐久力だが、ひとたび回し出してしまえば使用者の手を怪我させてしまいかねない、シャボンソー(仮名)を簡単には止められない。
なぜなら、常に痺れさせるほどの波紋を放っている状態で無理に状態解除しようものならば使用者の手を負傷させてしまうのだから。
「見せてやれ!ジョジョ!」
チェザーレが千寿に一瞥すると、三つのリングを外し、人差し指、中指、薬指を三本のワイヤーに触れさせ、波紋を流し込む。壁に突き刺さった先端の折りたたみ式のナイフは魔剣創造によって作られた、魔力の塊だ。つまり、波紋と魔力がおりなす効果が期待できる。わずかにワイヤーに触れているだけでも、強い波紋を纏うワイヤーだ、チェーンソーから流れた波紋の流れがあるだろう。左腕が痺れているらしい、双子の片割れに千寿はたからかに宣言する。
「ナイフとワイヤーと波紋の応用版、
最終日にほとんど付け焼刃で習得した、波紋疾走。黄金の『気の流れの渦』が車輪のようにワイヤーを転がり、チェーンソーを手から落として壁まで吹っ飛ばす。
「撃破!」
同時、轟音と共に雷の巨大柱が降り注いだ。雷が降り注いだ後、体育館は消失していた。
『ライザー・フェニックス様の兵士三名、戦車一名、戦闘不能!』
「“雷の巫女”、それが朱乃さんの別名だよ」
「姫島、おそるべし……」
自分で選んだとはいえ、わざわざ手間隙かけて作ったトラップでようやく動きを封じた千寿と簡単に止められないが威力はある、諸刃の剣たるシャボン・ソーを用いたチェザーレ。木場の爽やかな説明と共に一発の雷だけで簡単に敵をノックアウトさせてしまう、姫島朱乃という“女王”に戦慄したチェザーレだった。
洋服破壊なんてものはなかった。いいね?