【完】ジョジョは奇妙な英雄   作:ふくつのこころ

19 / 27
ギャスパー、可愛い。


赤き鼓動その⑨

「ふぅ、今日も疲れたの~」

 

シーザー・A・ツェペリが自宅に帰宅すると、家内はまだ明かりがついている様子だ。孫のチェザーレは『決闘』がある、と言って家にはいない。チェザーレの父親でシーザーの息子のユリウスは大人しい男なので、あまりシーザーが怒鳴ることはなかったが、戦友(ジョセフ)曰く「若いときのシーザーちゃんそっくりだな」と評された孫は家でも騒がしい。駒王学園ではジョセフの孫のジョードより人気があるという、チェザーレは確かにそんな気がしないでもなかった。

 

「あ、おかえりなさい、シーザー。お風呂にします?お食事にします?それとも、私?」

 

「おいおい、ワシらはもうそんな年じゃあないだろう?もちろん、お前じゃとも」

 

ニッコリと微笑みながら、流暢な日本語を話す長年連れ添ってきた妻の言葉に苦笑いしながら、靴を脱いで玄関に上がる。故郷のイタリアで妻と知り合ったが、仕事の都合で日本で暮らすようになった。

どういう縁か、ジョセフの娘が嫁いだ士藤家の屋敷が近所にあるのだが、引っ越して来た際は都市も忘れてジョセフと喧嘩になった。娘が心配なのは分かるが、過保護すぎやしないかと思ったものだ。

 

「……父さんと母さん、なにやってんだよ。そんなんだからチェザーレが囃し立てるんだ、年齢考えてくれ」

 

ひょっこりと顔を出した、大人しそうな顔つきの男性こそがシーザーの息子でチェザーレの父のユリウスである。両親がいちゃつくとこなんて見たかねえ!と言わんばかりに露骨に不快感を露にする息子が語る、帰宅次第、祖母との間に甘い空間を作りだす祖父を囃し立てる孫が浮かんできた。ジョセフの孫は幼少期からすっかり変わってしまい、幼少はよく笑う少年だったのに無愛想な青年に成長してしまったが、幼少からまるで変わらないチェザーレはどうかと思う。

 

「あら、ユリウス。お嫁さんが実家に帰ったからって寂しそうにするんじゃないわ、ほら、お母さんの腕の中に飛び込んでもいいのよ?」

 

「い、いや、別にそう言うのを言っているのではないんだ。母さんも考えてもみてくれ、四十代の男が母親の腕の中に飛び込む様子を」

 

母親が腕を広げ、飛び込んできなさい、と言うのをユリウスはイヤイヤ!と手を振って拒絶した。

自分の息子ならばノリノリで祖母の腕の中に入っていくんだろうが、父親のノリや性質を持たないあくまでも『普通の男』のユリウスには恥ずかしく、到底出来ないことであった。

 

「なら、ワシがはいろうかの~?」

 

そんなユリウスと対照的な(シーザー)は老いてなお精神(こころ)は若く、あらあらと夫のアツい想いを受け止めて抱きとめる。年齢にしては背が高いシーザーの後頭部に妻が手を伸ばす形で互いを抱擁する。この場に誰も味方がいない、と悟ったユリウスは『決闘(、、)』に出向くと行って留守にしているチェザーレの帰宅を求める反面、静かな暮らしを楽しみたいと言う葛藤に揺れていた。

 

(ありがとう、ジョセフ。何度も言うかもしれんが、お前のおかげでオレは夢を叶えられた)

 

暖かな家庭を作る、という夢を叶えた二人の人間の英雄の一人は星を継ぐ年下で共に師匠に師事した男にこうした幸せな時間を過ごすたび、表面では悪口を叩きあいながらも感謝しているのだ。

 

「……」

 

傍ら、かつての戦友が幸せそうな表情を浮かべているのを見た、カウボーイハットを被ったインディ・ジョーンズ風の服装をした大柄な、その“戦友”は己の家のかつての仇敵の“覚醒”に伴い、目覚めた特異な能力に目覚めたものの、同じく、その戦友の祖父もまた石仮面で吸血鬼へとなった家の仇敵の男との戦いをジョセフの祖父のジョナサンと挑んだものの、その戦禍の中で命を落としたこともあり、ようやく掴んだ幸せを失わせるわけには行かなかった。

ジョセフやおそらく、(ジョード)が目覚めたであろう『スタンド』は一般の人間には見えない。

つまり、今、祖父を殺したとも言える仇敵の目覚めをシーザーに伝えるのはシーザーの孫のチェザーレを彼と同じ目にあわせることとなる。石仮面の製作者、カーズが地球上からいなくなった以上、シーザーには普通の人間としての暮らしを享受させてやりたかった。

 

「……さて、ワシもスージーとホリーの元に戻るとするかのう?」

 

ジョセフが踵を返し、娘と孫の住む屋敷に戻っていくと、なにかの気配を感じ取ったのか誰かが家の近くにいる気がした。だが気配はすぐに消失し、気のせいだと決めたが、その気配の正体がなんとなく『戦友』に似ている気がした。

その後、ジョセフ・ジョースターは自らの娘に『脅威』が迫ることを知る事となる。

 

☆☆☆

 

「……貴方の傍にいるのは、なに?ライザー」

 

「“これ”が見えているのか?リアス」

 

屋上ではライザーとリアスが対峙していた。戦線を一瞬にして一変させる、フェニックス一族の炎とライザーが“先生”から賜った、目覚めた“力”。千寿のソレはリアスにも視覚出来たのに対し、ライザーの傍にいるソレからは高温を発せられ、この空間はまるで活火山の火口付近にいる感覚だ。

士藤千寿のソレは大きな力と脈動を感じるものの、未熟なもので肉眼視できるのに対し、ライザーのソレは“悪意”のようなものを感じられ、肉眼に捉えることが出来ない。

 

「“先生”から賜り、頂いたものだよ。君のところの兵士が“赤龍帝”となったようだが、目覚めたてでは使い物にならないだろう?小癪な手を使ってオレの可愛い下僕悪魔を倒してくれたようだしな?なァ?“魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)

 

ライザーに従うスタンドーーマジシャンズ・レッドはライザーの纏う、炎の衣から出現し、メラメラと周囲に火花を散らす。だが燃え盛るところや姿を顕すところはリアスには見えず、ライザーの炎の衣がわずかに形が変化したようにしか見えなかった。

リアスやその兄のサーゼクスの持つ、『滅びの力』は強力だ。一瞬にして場にある物を消し飛ばす強力な能力だが、兄のソレは熟達しているのに対し、リアスの能力はまだ発展途上にある。発展途上と言えば聞こえはいいが、それはまだ彼女が未熟な証拠だ。

 

「『スタンド』も見えていない、そちら側がマジシャンズ・レッドとオレを倒すことが出来るかな?」

 

「やってみなきゃ分からないわ、そういうところは。それに調べたところでは、『回転』の技術はスタンドに関与したとされる物。チェザーレとセンちゃんが来てくれれば、逆転のチャンスもあるわ」

 

うっとうしい“波紋戦士”とイラつかせる原因となっている、スタンド使いで赤龍帝というデタラメな婚約者の兵士。

かくして、王同士の戦いがはじまろうとしていた

 

☆☆☆

 

「どうやら、あの兵士を、ブーステッド・ギアを、そして発想を見誤っていたようだ。あの珍妙なポーズで打ち出される……『スペリオン光線』だったか?」

 

カーラマインは呆気に取られた顔を整え、凛とした表情を作ってみせる。珍妙なポーズから発せられる、『スペリオン光線』の威力は発射前の事前動作は幼稚な物に思えるが、凝縮した魔力とカーラマインの知らない黄金色の『なにか』と合わせ、ミックスされた濃度の高く肉眼で見えるほどの『光の柱』。珍妙な構えから発せられるソレは、事前動作もあり、動きを止めるには持って来いだろう。

 

「コイツはジョセフ・ジョースターの孫だからな、敵を欺くのはオハコなのさ」

 

「なにッッ!?ジョセフ・ジョースターだと!?」

 

語らない千寿の代わりにチェザーレが代答し、ここぞとばかりにその祖父の名前を出すと、やはりこんな反応が返ってくる。人間の身でありながらも、人外の存在で強靭な肉体を持つ“柱の男”を策略で打ち克ったからか、より評価が高いのだろう。

 

「なんかこう、センジュ君が特撮好きってはじめて知ったんだけど」

 

木場は苦笑いしている。付き合いはそこそこ長かったとはいえ、特撮好きだと知らなかったのだ。

それにしても、あんなに熱くなるのはアーシアを救出に行った時以来だろう。士藤千寿は冷ややかな性格の割にアツくなりやすい男だった。

 

「奇妙な剣を付け替える、か。奇妙な剣士と出会う運命でもあるんだろうか?」

 

カーラマインは木場のような剣士に出会った事があるという。波紋コンビは木場の表情に陰りが見えた。普段の爽やかさは一体、何処へ行ってしまったのか?

 

「魔剣使いでもいるのかい?今まで戦ってきた者の中で」

 

「いや―――魔剣じゃない、聖剣だ」

 

「―――ッッ!?」

 

木場からゾワリ、と殺気が放出される。チェザーレはその殺気がなんなのかは小さい頃からよく見ていた。中学生時代の千寿が上級生には向かったときや、事情をよく知らない教師に煽られたときのようだ。

 

「落ち着け、木場後輩!」

 

「ツェペリ先輩、今は貴方が口出すすべきではない。黙って見ていてください」

 

「なるほど、剣士らしく剣で語り合おうということか?」

 

木場はチェザーレに習った波紋を思い出し、呼吸を集中させる。カーラマインの狙いは木場の本来の力を引き出そうとしているようだ。木場の波紋の色は白銀色(シルバー)。波紋の色は人それぞれ、千寿は黄金色、チェザーレはオレンジ色。指先から放出される、白銀色の波紋が刃を包み込む。

周囲にはフェニックス眷属の残党が集結する。残党と言う言い方が適切なほどの数だったが、この場にグレモリーサイドの『兵士』は騎士が一人、四分の一だけが悪魔の“波紋戦士”一人、そして兵士が一人。

最強の力を誇る、女王の姫島朱乃は現在、フェニックスサイドの女王と交戦中。

 

「あのねー、そこの制服のイカツイお兄さんとチャライお兄さん。そっちのお姫様とライザー様が一騎打ちするんですって」

 

チェザーレと千寿が屋上を見上げると、黒い翼を羽ばたかせる影と炎の翼が見える。その傍らには……大きな炎の『集合体』が一つ。

そのとき、波紋コンビに通信が入る。

 

『き、聞こえますか!?ツェペリ先輩、センジュさんっ!』

 

連絡をしてきたのはアーシアのようだった。敵サイドの『兵士』から連絡を受けた後だったので、そのあわてぶりは大体想像できる。戦闘能力を持たないアーシアの持つ手段は『聖母の微笑』とスタンド・『ハウツー・エンジェルズ』。

もしも、この予想が悪い方向に向かうのだとしたら……回復要員のアーシアを敵の女王が倒す前に回りこんで助けなければならない。

 

「「無論、聞こえているッ!」」

 

『よ、よかったですっ!部長さんが、相手のライザーさんに一騎打ちを申し込まれて、それに応じて……。あと、私のスタンドが反応しているのでもしかしたら……』

 

アーシアの声は波紋コンビの応答に安心した様子を見せながらも、状況を改めて再確認すると上ずった声に変わる。アーシアはスタンド・『ハウツー・エンジェルズ』に目覚めたとき、それは『必ず直す』との覚悟に生まれた力だと確信した。それをフリードが『視認(、、)』できたのが何よりの謎だったが。

 

「お兄様ったら、予想以上にリアス様が善戦するものだから高揚してしまったんでしょうね?お兄様が新たに得たという、力……。その力は何もないところから私たちフェニックスが持つ、フェニックスの炎のそれより大きな威力を持つ」

 

レイヴェルは嫌みったらしく二人に笑みを向けた。彼女がもしも特別ゲスト、という扱いを受けていなかったら?二人は同時に彼女の顔面に拳を叩き込んでいただろう。二人が気に入らないことは舐められること、そして勝利への可能性を否定されること。

あの炎の集合体のような、おそらく『スタンド』に対抗するにはスタンドが必要だ。けれども、スタンドは本体と繋がっている。ならば、本体を叩けば済むこと。

 

「『紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)』?『雷の巫女』?波紋疾走、でしたっけ?それを使われる『波紋戦士』?『魔剣創造(ソード・バース)』?聞くだけでしり込みしてしまう名前ですわね。それに……赤龍帝の篭手。いくら貴方方が強くとも、お兄様の力、フェニックスには敵わない。貴方方には最初から勝ち目がないんですのよ?」

 

お分かり?とレイヴェルは表情を緩める。『不死鳥(フェニックス)』である誇りを誇らしげにレイヴェルは語る。グレモリー眷族を貶めて。ギュッ、と左手に力を込めて拳を作る。もしもスタンドが使えていたなら、もしもスタンドが……。

 

【オラ、なに諦めてるんでぇい!】

 

空から黒欲が舞い降りる。海洋生物のイッカクのような角、ギリシャ神話に登場するペガサスを思わせる容貌。シリアス(絶望)の中に舞い降りた、その声はギャグ(希望)だった。

 

「ダニー!?」

 

「その生き物はなんですの?いまさら、どんな物がいたところでフェニックスの炎を前にしては勝てない。貴方達はチェスのルールを知っていますかしら?今の状況はその「チェックメイト、だろ?」」

 

レイヴェルの声を遮ったのはチェザーレだった。腐れ縁の使い魔で居候の奇妙な生き物、ダニーからは希望を感じる。どういう理由があるんではないが、ダニーはこの状況を覆すほどの可能性を見た。

 

「人の話は最後まで聞くもんですわよ!?」

 

「おっと、可愛い顔が台無しじゃねーか、レイヴェルちゃんよ。お前らはフェニックスだ。確かにオレ達はチェックメイトの状況に立たせているだろう。それはあくまでもチェス盤でのことだ。現実は、違うんだよ、御嬢ちゃん」

 

チェザーレの口調は軽いままだが、その祖父譲りの双眸は力を帯びている。無限大の防御(ライフ)を誇るフェニックスを前にした、チェザーレのブラフ。レイヴェル・フェニックスはチェザーレ・アントニオ・ツェペリの力を見ている。シャボン玉をモチーフにした、その技の多様性はテクニックではこれまでの誰よりも技術が上だ。だが、それだけだ。技術が幾ら高等でも無限大の防御力を前にすれば、その体力はいずれ潰える。

 

「だからって、貴方方は勝ち目はありませんの!」

 

「さぁて?そいつはァ、どうでしょうな。チート主人公も真っ青な我らが赤龍帝が戦場に舞い降りるぜ?黒馬と共に」

 

チェザーレとレイヴェルのやり取りの間に千寿はダニーの背中に跨り、屋上へと向かう。その背中やひらめく長ランの裾とダニーの巨大な翼から溢れるラスボス感。

 

が、そんなとき無慈悲なアナウンスが響く。

 

『リアス・グレモリー様の女王、一名リタイア』

 

「ほぉら、貴方方の女王がいなくなりましたわよ?さぁ、みなさん!あのユニコーサスの背中に乗った兵士を打ち落としなさい!」

 

「ツ、ツェペリ先輩!?」

 

「任せろ、木場後輩!頼りになる、オレが焼き鳥共を喰らい尽くす!しばらく鶏肉は見たくねえな!」

 

ダニーと共に飛び立った千寿が去った後、魔力が飛んできたことで受けた傷を負い、肌を裂けながら血を垂れ流し、傷口が開くのを気にしないで高らかに挑発の言葉を述べる。フェニックス眷族は自分達の悪口を叩いた、まともな悪魔ではない男に狙いを定める。カーラマインは木場との交戦中のようだが、殺気はチェザーレのほうにも向いている。

 

「いいましたね、半端者が……!私たちをよくも侮辱しましたね……!」

 

あらゆる方向から攻撃が入り乱れる。木場はカーラマインと交戦中、鋼の音が入り乱れる。素手で特に大した武器がないのに危険性は泡頭の兜のせいで応用性や戦局を一変する、万能の波紋を持つことからチェザーレの全身にローキックやドロップキックが入れられる。一つ一つを波紋でダメージを最小限に抑えると、それがかえって隙を生む。

大柄な身体ゆえ、目標として的として良い働きをするのか、そして因果応報。自分が煽ったことでかえって強くなった、フェニックス眷族の火力に押され気味になっている。

ふと、屋上を見上げると角を生やした翼を持つ黒馬とともに(リアス)とともに敵将(ライザー)に挑む腐れ縁の姿がある。Boost!の声と共に強化された、拳がライザーを襲うものの、それをひらりとかわして自分には見えない『なにか』が千寿の空いた腹に拳を突き出し、血を吐かせる。

 

「ツェペリ先輩!持ちこたえられますか!?」

 

「おいおい、オレは生まれる時は口からできたとさえ言わしめた男だぜ?白銀色の波紋、使い勝手はどうだ?」

 

「ええ、最高ですよッ!力が漲ってくる……!」

 

木場の握る剣はこれまで使ってきた属性を持つものではなく、ごく普通のファンタジーでよくある鍛冶屋が鋼を打って鍛えたものだ。波紋は自然のものをよく通す。木場の持つ白銀色の波紋を剣先に流し、それが木場を中心に波紋の『鼓動(ビート)』を生み出す!

 

「行けッッ!オレに師事したんだから、口上は言ってもらうぜ!」

 

「すっっごく、恥ずかしいんですが……」

 

白銀色の波紋が木場の剣を覆い、太陽光にも似た波紋の働きがカーラマインの動きを鈍くする。

群がるフェニックス眷族をシャボン・カッターで蹴散らし、シャボン・カッターを割ろうとするならばシャボン・カッターは分裂して数を更に増やしていく。接近戦を得意とする、ローキックを食らわせてきたフェニックス眷族にはシャボンを纏う手刀、シャボン・ソーを持って撃退した。

 

「それでは、弟子と師匠でご一緒にッ!」

 

「「震えるぜ(ぞ)ハート!」」

 

「「穿つぜ(さ)トルネード!」」

 

「「刻むぞ、マイソウル!」」

 

白銀色の波紋装着剣(シルバー・オーバー・アーマード・ソード)!」

 

「弾けろ、シャボン・ボンバァァァァァァ!」

 

口上を謳いあげると共に木場の握る刃は完全な『白』へと変化する。雪のような白さでもない、全てを消しつくす白さでもない。その『白さ』すなわち、太陽光の如き熱さと太陽光の如き『暖かさ』。

波紋による痺れの働きはカーラマインの手の動きを止め、隙が出来たことで完全に力で押し切る。

最後は技術関係無しの力押しの勝負だったが、身体が光となって消えていくことで木場はカーラマインとの勝負に勝利したと確信した。

 

『ライザー・フェニックス様の『騎士』二名、『僧侶』一名、『兵士』二名、リタイヤ』

 

同時刻、シャボン・カッターをシャボン・ソーで割ったことで完全に最大限まで広がりきって増殖しきったシャボン玉を完全に破裂させ、続々と姿を消していくフェニックスの眷族。

思いつきで得た発想を元に編み出した、シャボン玉の技の数々。ぐったり、と膝を曲げて座り込んだ木場は力なく笑った。波紋は応用力が高く、そんなに威力があって広範囲ならば先に使ってくれないか、と表情に押し出して。

 

「やりましたね、ツェペリ先輩。……あと、口上、先輩ノリノリじゃないですか?」

 

「師匠と呼べ。……来る時はずっと考えていたからな、合わせていてくれてありがとう、祐斗」

 

無茶振りは大変ですね、と苦笑いを浮かべて彼ら二人の友情を高めあっていた時、何かがはじけるような爆発音が響き、木場の体から一気に鮮血が噴出して煙が包み込む。

チェザーレは突然の出来事に理解が遅れたが、こんな『無茶振り』は祖父もしたことがないし、同級生からもされていない。礼を言った時に、こんなことなんてあるんだろうか?

 

『リアス・グレモリー様の騎士一名、リタイア』

 

がっくり、と地面に倒れこむ。起きなければならない、と言う一念がチェザーレを突き動かし、波紋を寝る前に響くのは――

 

『リアス・グレモリー様の台無しの駒(フリー・ピース)一名、リタイア』

 

グレモリーサイド:王一名(健在)、兵士一名(負傷)、僧侶一名(健在)。なお、女王、戦車、騎士、台無しの駒はリタイア。

 

☆☆☆

 

「……ドラゴンの小僧、どうした?仲間がいなくなったことに動揺しているのか?」

 

千寿の耳から離れない、チェザーレのリタイアと木場のリタイア、そして朱乃のリタイア。

こうして完全にグレモリー眷族はリアスを含めなければ、アーシアと千寿の二名だけだ。非戦闘員のアーシアを戦力に数えなければ、ダニーと千寿とリアスだけが戦闘要員。

向こうはあの爆弾女王といけ好かないゴールデンチキン、それに金髪鬣ロールが残り。

だが、どうしても引っかかることがある。先ほどからライザーは『炎』と肉弾戦で千寿の肉体に怪我を負わせてきているが、不死鳥と言えばなんだ(、、、)

 

《……気になることでも、あるのか?》

 

(ああ。俺、よくゲームはやるほうなんだがな。その中でRPGってのでは、フェニックスはいつでも強敵なんだ。だから、小さい頃から考えてたんだ。リアルファイトするときは回復する隙を持たせず、ブッ飛ばすって)

 

カラン、と長ランのポケットの中で音を立てる二つの鉄球。ブーメランのように戻ってくるのはいいが、あの炎を前にして溶けずにいられるかは試せない。鉄球とは木場祐斗が剣を必要として戦うように、千寿にとっては鉄球は木場にとっての剣と同じなのだ。

 

《アクティブなガキだったんだな……》

 

(だろ?)

 

「センちゃん、今はライザーに集中しなさい。確かに、みんな全滅してしまったけど、手はあるはず……」

 

リアスは僅かに残った下僕悪魔の士気を下がらせないように千寿を鼓舞するが、その手は震えている。いかにして戦闘中でもジョークを飛ばすチェザーレの存在が大きいか理解させてくれる。彼は緊張しきった味方陣営をほぐそうと努力していたのだと。

何か大切な事はないか?何か……。

 

「ライザー様、私が兵士の坊やと僧侶のお嬢さん、それにその変な生き物を相手にしましょうか?その兵士はやっかいなトラップを張りますし……」

 

舞い降りたライザーの女王、アレがきっと朱乃やチェザーレ、木場を倒したものだろう。この状況で余裕を隠せない様子らしく、ボロボロになった千寿をほくそ笑んでいる。

 

【兄ィ!方法はありますぜ!】

 

張り詰めた糸を横から突っ切るように、首ではなく角を突っ込んでテレパシーを送ってきたのはダニーだった。

 

(……一応、聞かせてくれ)

 

こんな状況でも明るさを前面に出して不安にさせまい、と主を気遣う様子は見習うものがある。自信満々な様子で寄り添い、アーシアとリアスの前に立つ姿は処女の守護獣たるユニコーンを思わせる。

 

「この状況でトラップ、だと?なんでもさせてやれ、その方が完全に絶望した時にやりやすくなるだろうからな」

 

自分の女王の言葉を否定し、ライザーは口端を吊り上げる。傍に従う、マジシャンズ・レッドは腕組みをして自らの炎に絶対の自信を持つように傲慢な主を思わせるような生意気な表情を見せている。

 

【ダニー・ネットワークによると、フェニックスはフェニックスの涙なるものを持っているそうですぜ!そいつを使うだけで超回復!噂ではソレで馬鹿儲けしているとか……】

 

(リアル・ベホマズンってか?……ありがとよ、ダニー。手段を見出せたぜ、最ッ高のな?)

 

【へへ、兄ィの役に立てたんなら、最高でさァ!……王様の胸元で眠らせてもらえませんかね?】

 

(頼んでみよう)

 

わずかに余裕が戻っていく。自分を慕い、可能性を見出してくれる者がいる。期待してくれる者がいる。守るべきものが背後にある。だからこそ、この不死鳥を打倒せねばならない。

 

「今更、作戦会議ってかァ!?オイ、そこの馬!」

 

急接近したライザーがダニーを下顎ごと蹴り上げる。リアスとアーシアを守る以上、ダニーはかわせなかった。

 

「ヒ、ヒヒーン……!(オレはまだ諦めッちゃいねえ!ブチのめすッ!幻獣としての意地、ジョードの兄ィに救われた者としてッ!)」

 

「キャッ!?」

 

アーシアの動きを女王が止める。あの指先から光るソレは……、動きを止めるタイプの魔方陣だ。

 

「悪いな、君の『僧侶』の動きを止めさせてもらった。オレの女王を倒すまでは、身動きできない。それに、その目だ!それが気に食わないんだよ、士藤千寿と馬!」

 

蹴り飛ばされながらも、ダニーは角を『回転』させるように空気を震わせ、ライザーへ攻撃を仕掛ける。ライザーの『傍』のマジシャンズ・レッドがその腕で回転を無理矢理停止させ、ダニーを叩きつける。

それでも、ダニーは戦意を失わない。

 

「……センちゃん、落ち着きなさい。私たちでライザーを倒すのよ!」

 

わずかに絶望の色が見えた、千寿の明るい緑色の目。リアスは自らの手が震えているのを押さえ込み、千寿のその手をそっと重ねる。ひんやりとあの激闘の中で燃え上がっていた炎がくすぶり、火種をも消失して消えかかった戦意に再び火が灯る。

守るべき王の命令を前に、兵士は再び吐血しながらも赤龍帝の篭手に『魂』で呼びかける。

 

《……死なせねえよ、お前を。だが力を欲するようになったんだ、自分から。『今』のお前の身体のレベルに調節してやる》

 

装飾が変化した赤龍帝の篭手。

より豪奢なものへと変わり、千寿の身体を『緑色の光』が癒す。

 

「な、なんだと……!?お前、赤龍帝の篭手の反動で身体を疲弊していたはずじゃ……!?」

 

その『緑色の光』は『護りたい』とはじめて意識した、異性の魔力。動きを封じられていたはずのアーシアから発現した、己の身を削ってでも『助けたい』と願った時に現れた『立ち向かう者』ーー『ハウツー・エンジェルズ』。

 

「動けなくったって……、『ハウツー・エンジェルズ』なら!傷を癒せます!今の私にはこれくらいしか出来ませんが……。頑張って下さいね、私の大好きな……」

 

ばたん、と地面に伏せたのと同時に光がアーシアを包み、消えていく。

 

『リアス・グレモリー様の僧侶一名、リタイア』

 

「アーシア……?」

 

リアスの身体の傷もまた、アーシアが『ハウツー・エンジェルズ』の力で傷を癒されたようだ。

魔力で動きを封じられながらも、スタンドを動かせたのはスタンドがただの能力ではないからだ。

スタンド、すなわちソレは『精神力』が生み出した力。『成長』することで力は伸び、アーシアの場合はそれは『もっとも勝機を作り出せる者』へと託したために発現した能力を使ったからだ。完全に回復し、体力も満ちて頭が冴える。

 

「……我が王よ、今は目前の敵に集中すべきだ」

 

言葉にならなくともリアスはとっくに分かっているつもりだった。悪魔は持たない、その『スタンド』。人間から転生悪魔となった、千寿とアーシアが持つスタンド能力。ただ、アーシアの行動の意味を考える前にリアスは絶望しかけていた。

ライザーと女王、そしてライザーの隠し持つ『力』。

それにどのようにして立ち向かうのか?

 

千寿は強がって見せたものの、赤龍帝の篭手による反動の疲弊はアーシアの能力でも誤魔化せなかった。一歩動いて波紋を練ろうとすると、鳥のような頭部を持った逞しい肉体を持つ怪人のようなスタンドヴィジョンに殴られ、そこにライザーの拳が加わる。倍化させられた赤龍帝の篭手はセーフティリミッターをドライグ自らがかけたことで命に別状はないものの、このままではジリ貧だ。

ボロボロになった帽子は吹き飛び、長ランは既にズタズタ。

一撃一撃に殺意が篭っており、「ムカつくからブッ殺す」と簡単に口にする不良を相手にするときと勝手が違う。

あのときは『十字架の戦士』が『奇怪現象』として守護霊の様に千寿を守り、その辺に落ちていた鉄パイプでも勝てた。

 

今は違う。

その辺のチンピラや不良と違い、スタンドを持っている。遠い土地でスタンドに祖父のジョセフ・ジョースターが目覚めたのを不思議と理解するが、こうして分かったように祖父にもこの痛みが通じてしまっているんだろうか?マジシャンズ・レッドの拳のラッシュとライザーの蹴りと突き。殺意を増していくのと同時にマジシャンズ・レッドの炎の威力が高まる。

波紋で立ち向かおうにも、内臓を酷く損傷している今は波紋を練れない。悪魔の身であったからマシだったものの、人間の身だったら死亡していただろう。

どれくらいの時間が経ったか、全く分からない。ゆったり動いているようにも、急速に早くなったようにも感じられる。

スタンドは、出ない。呼びかけても呼びかけても呼びかけても、現れない。

 

【あ、兄ィ……、諦めっちゃダメっスよ……。兄ィがオレを助けてくれたんだ、今度はオレが兄ィの大切な人を護らなくちゃ……】

 

「何度も立ち上がるとは、全くしつこいヤツだ。今度こそ、お前の動きを止めてやる」

 

ダニーが力を振り絞り、その角でライザーの喉元を狙おうとするも、マジシャンズ・レッドがそれを許さない。再び、ダニーを殴り、ライザーが蹴り飛ばした。

視界が悪くなる、口内は鉄の味がする。こんなものを味わいたくない、こんなところで終われない。

 

「セン、ちゃんっ……!もうやめて、貴方、死んじゃう……!」

 

誰だ、この主を泣かせるのは。

王たる者、堂々としていなくてはならない。

彼女は笑顔が似合っている、きっとそうだ。女の子は笑っているほうが可愛い。アーシアがそうであるように。

様子のおかしいライザーを止めるには、手は残されていない。

 

練らねばならない、波紋を。

考えねばならない、ゴールデンフライドチキンをブチのめす方法を!

勝たねばならない、期待してくれる少女の為にも、美しき主のためにも。

 

「リアス、先輩……っ。あんたは……、笑っている顔の方が似合うからさ、泣くんじゃねえよ。俺は笑ってるリアス先輩が……」

 

意識は途切れ、まるで後世に伝えられている武蔵坊弁慶の最期のように……ダニーを(リアス)を護る為に兵士(千寿)は立って意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 




一方的に主人公が殴られていた、今回。
一万文字以上を突破し、感想に書かれていた通りにダニーが殴られました。

スタンドが見えていても、スタンドの力を前にしてボロボロになった身体で立ち向かってもボコられる主人公。

最強じゃねーか、と思うライザー+マジシャンズ・レッド

そしてdio。

次回、間章。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。