【完】ジョジョは奇妙な英雄   作:ふくつのこころ

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お久しぶりです、皆さん。
気がついたら総合評価がすごいことになってました。
みなさん、これからも本作を宜しくお願いします。



千寿、転生悪魔になるの巻②

学校に着いてからリアスと別れ、「それでは、また放課後に会いましょう」と言われて千寿は下駄箱で靴を履き替えた。

学校指定の制服ではなく、古い長ランを着ている千寿は何処に行っても目立つ。

それは駒王学園でも変わらない。

制服を着崩す生徒や不良は何人もこの学校にはいるが、千寿のような所謂『分かりやすい不良』というのは居なかった。祖父から遺伝した大柄な肉体がそれに更に拍車をかけ、木場祐斗を除けば気を許せる友人は今のところいないと言えようか。

 

ただし、()を除いて。

 

 

「よう、()()()()。相変わらず暑そうなのを着ているね?」

 

大柄な肉体を持つ千寿の肩に手を置いたのは同じく大柄な帽子を被った青年、チェザーレ・A(アントニオ)・ツェペリ。

祖父の友人の孫らしく、『腐れ縁』のような間柄である。ただ、日本の文化(、、)に詳しいというチェザーレ曰く、「お前は幼馴染じゃない。」と言うが、千寿自身にはどうでもいいことなので気にしないことにしているが。

長ランを着ていることが多い千寿に常に絡んでくることが多く、アロハシャツを制服の下に着ていることが多いのでお前が言うな!と以前は突っ込んでいたが、

 

「黙ってろ、チェザーレ。俺がどんな格好をしていようと誰かに迷惑を、それもお前にかけていないんなら関係ないじゃあないか」

「んだとォ……!?せっかく、オレが声をかけてやってんのに!その態度はないだろう、ジョード!」

「だから、余計なお世話だ。うるせーぞ、このクソ野郎ッ!」

「なんだとォ~ッ!?いくら、幼馴染でも言って良いこと悪いことがあるだろうが!?」

「テメェ、この間は『腐れ縁』つったじゃあねえか!」

 

冷静な千寿と憤るチェザーレの間にバチバチ!と青と赤の火花がぶつかる。

駒王学園での二大イケメンに数えられているという、チェザーレと駒王学園が誇る最強の男(チェザーレ調べ)が口論する光景。

それがよくあることだからなのか、女子生徒はそれを引くのでなく逆にこんな反応があった。

 

「キャー!チェザーレ君と士藤君よー!」

「今期は……チェザーレ×千寿×木場ね・・・!もちろん、千寿くんが総受けよ!」

「チェザーレ君と木場君の金髪コンビが士藤君を取り合うのね・・・!アリだわ!」

 

これは流石に日本在住の高校生でそれも長く住んでいる、千寿とチェザーレはまわりで騒ぐ女子学生の僅かな会話で全てを理解した。

―――――――――――こいつら、俺達を使って脳内でBLしてやがる……!

こればかりは喧嘩ばかりしている、小中高と全て同じ『腐れ縁』の二人はそれを自分達で想像して吐き気を催した。

チェザーレは木場が誰であるかを分かっていないから木場まで想像が出来ていなかったが、自分と千寿が濃いBLのシーンを実際に行なっているのを想像しただけで吐きそうになった。

しかし、ツェペリの名に誇りを持つチェザーレはツェペリ家に生まれた男として、そんなカッコ悪い真似が出来ないわけで。

横で同じように顔が青くなっている腐れ縁の大柄な同級生を見て、二人は即座にアイコンタクトだけで意思を疎通しあう。

 

その間、僅か0.5秒。

 

祖父のジョセフやシーザーほどではないが、幼い頃からお互いを知る彼ら二人にとっては簡単な事。まさに、阿吽の呼吸。

 

「(この件については、)」

「(昼休みに屋上の上で、)」

「(お話しする必要があるようだ、ジョジョ。)」

「「(今回はこれだけで許してやるぜ)」」

 

ドドドドドドドドドドドドドドド……!

 

互いに何を言いたいのか、喋らずとも『言葉』ではなく『心』で理解できていた。

その後、二人が去った後に互いが見詰め合って無言で意思疎通をしている様子を見ていた彼ら二人をBL本の題材にしようとしていた女子学生達が昼休みの時間、購買部で昼食のパンやお握りを取り合うのを見て歓喜したのはまた別の話・・・・。

 

 

 

 

昼休み・屋上。

 

「ったく、あのときジョジョが割り込んでこなかったら。お陰でオレは大嫌いなツナマヨオニギリっていうのか?それを食べなければならなくなったじゃないか。」

「食事中は喋るもんじゃあないぜ、チェザーレ。ママンに習わなかったか?」

「なんだと~ッ!?この、スカタン!」

 

フェンスに凭れて町の景色を一望しながら、大嫌いな昼食(ツナマヨオニギリ)を食べながら文句を言うチェザーレとそれを嗜めるチェザーレと反対方向を見てベーコンレタストマトサンド、BLTサンドを頬張る千寿。

一見、仲の良さそうに見える二人が交わす会話は普通の男子高校生が交わすもの。

しかし、その外見はそう見せなかった。

一人は長ラン+大柄ながっしりした体型(187cm。今でも成長中)。

一人は金髪+白人+制服の下にアロハシャツ+大柄ながっしりした体型(189cm。成長は止まったと見られる)。

威圧的な態度を醸し出す二人が屋上に居るだけで誰も屋上に入ってこようとしなかった。

それでも、祖父はイタリア人で父親も同じくイタリア人、母親が日本人のハーフで祖父の面影を残していて大柄であっても気さくなチェザーレとハーフであっても無愛想な千寿ではやはり友人の多さはチェザーレが上だ。

威圧的に見える千寿とチェザーレが喧嘩を繰り返しながらも、二人でこうして昼食を摂るのはやはり、小さい頃にお互いの祖父が戦友で友人だったことが大きいだろう。

 

分かりにくく、不器用な一面がある冷静な千寿にも冷静さの中に隠れた優しさと熱い心と正義感を持っていることを、チェザーレは理解している。

 

 

「……お前は変わらないな、ジョジョ。ずっと変わらないな。」

「なにがいいたい、チェザーレ。テメェが昔話とはまた珍しいもんだ。どうした、腹でも壊したか?」

 

此方に顔を向け、少し懐かしそうな様子で千寿をチェザーレは見る。

チェザーレは昔話をあまりするようなタイプではなかった。

というのも、修学旅行や過去の出来事をあまり気にせず、話題に出すことを嫌う。彼にとって家の伝統を未来に残したい、と思う中に時代に合わせたものを取り入れる、というのを座右の銘にしているようで現在に合ったものを模索していく中、思い出話を好まない性格となってしまった。

中学生の頃、一つ上の学年のチェザーレの同級生が話していたのを聞いたことがある。その同級生の顔には痣があり、どうやら殴られたらしい。

聞いたところによると、チェザーレの過去の話をしきりに聞きだそうとしたらしく、それがチェザーレの怒りに触れたようだ。あとでチェザーレに尋ねてみてもチェザーレは誤魔化した。

 

あの日のラーメンを食べるチェザーレの箸が止まっていたことを千寿は忘れない。

 

「いや、オレだって振り返りたい時だってあるさ。ジョジョ、どうして、お前はそんなにジョード・ジョースターであることを恥じるんだ?小さい時のお前なら、自分の家に血筋に誇りを持っていたじゃあないか。」

「……そのことなら、喋ることはねえよ、チェザーレ。」

 

どうやら、チェザーレは『今』の千寿の精神状態について気にかけているようだ。

 

チェザーレ・A(アントニオ)・ツェペリは祖父から波紋呼吸法と言うものを習っている。

それは幼い頃、自分より一つ年下の千寿に運動神経で負けたことが詳しくて、そのときの悔しさを祖父に話したとき、チェザーレの祖父のシーザー・A・ツェペリは彼の両肩を持って次のように言った。

 

『良いか、チェザーレ。今はジョセフのところのジョードに負けているかもしれんが、チェザーレはあの子より年上じゃろう?焦る必要はないんじゃ、チェザーレ。じゃから、ジョードを護ってやるんじゃ。』

『でも、おじいさん。ジョードはオレよりはしるのはやいし、およぐのもうまいんだぜ?まもるひつようないんじゃあないか?』

『このスカタン!今の言葉でわからんか!?今はチェザーレが負けていたとしてもッ!幼い子供に過保護になりがちな母親ほどでなくったって良いんだッ!年下の子供には優しくしてやれッ!ジョードはお前にとっての弟のようなモンじゃろう?』

 

自分の言葉を良く理解していない孫のチェザーレに対し、その祖父のシーザーは全盛期、それも若い頃のように孫を一喝した。

そのときの祖父のことを祖父を見るたびに嫌でも思い出してしまうことがある。

アレが、人類に害なす存在の柱の男を倒したツェペリ家の男なのか、と。

 

その日から、チェザーレ・A・ツェペリは決意した。

わけあって士藤千寿と名乗っている祖父の友人の孫、ジョード・ジョースターの力になろうと。

その為に力を得るべく、祖父から祖父の祖父が修行していたとされる、波紋呼吸法の厳しい修行だって乗り越えれた。

祖父はそれこそ、身内だからかといっても甘い対応をせず、厳しくしごかれたものだが潜在的な最能、つまりは天才であると褒めてくれた。だけど、それは違うとチェザーレは思う。

この力は、弱きものを護る為の力なんだと。

天才と言われても、この力を完全にものに仕切れていない。

祖父のシーザーや祖父の友人のジョセフ・ジョースターのようには上手く扱えていないのだから、歩みを止めれないのだ。

 

だから、力になりたい。

 

父親がいて母親がいて、祖父がいて祖母もいる。

そんな恵まれた環境にある自分と違い、ジョードには父親がいない。

野球のやり方を知らず、サッカーを知らない彼が友人の輪に入る為に自分に教えを乞いに来たことを思い出した。

あのときのように、チェザーレは自分に頼ってほしかったのだ。

 

「以前に話してくれた金髪の女の子のことかッ!?それは、ジョジョは悪くないぞッ!もちろん、女の子も悪くない!悪いのはその」

「……黙れよ、チェザーレ。」

「え?」

「だから、黙れって言ってるんだ!あれはどう考えても俺が悪かったんだ。もし、俺にあの時力があれば。アイツは酷い目に遭わなかった。迫害されずに済んだんだよッ!知ったような口を聞くな、チェザーレ・A・ツェペリ!」

 

静かながらも激昂の兆しを表面に見せる千寿は自分よりも若干背が高い、チェザーレの胸倉を掴む。

同級生の唯一無二の親友、木場祐斗にすら話したことがない小さな頃の秘密。母親や祖父母を騒がした事件で、この時に何があったかをチェザーレ意外には知らせていないし教えていなかった。

チェザーレとしては、この事件を話してもらったことを頼りにされている、と考えて秘密は遵守する、と頷いたがそれはどうも簡単なものではなかったようだ。

話の内容を聞く限り、そして思い出す限り。

その金髪の少女が千寿にとっての初恋の女の子であったことは間違いない。

 

当時の状況を聞くとチェザーレ自身、そのようなことを行なった教会側に怒りを覚えたが、いくらなんでも皆殺しはやりすぎるだろう、と思った。

教会にとって、神以外の物が『奇跡』を起こし、神に『祝福』された物が力を持つのに嫌悪感を覚えている。

それはつまり、教会にとっての『正義』である。

 

その当時の千寿が自分を助けてくれた少女を『正義』とするなら、教会の『正義』を皆殺しにすることで否定した。

チェザーレは温厚とはいえないが、そこまで何かに固執する男ではない。というと、普通の人間レベル程度の固執しかしないのだ。つまり、感性は普通。皆殺しにはしなくとも、直談判をしてまず話し合い。チェザーレという男は血生臭いものをあまり好まなかった。

千寿(かれ)はもちろん、自分が『悪魔かもしれない』というのはバラしてはいないが。

 

「だから、それがどうしたというんだ?ジョード・ジョースター」

「なんだとッ!?だから、その名を呼ぶなと言っている……!」

「自分に力がないから?だったら、それがどうしたと言うんだ。無いなら、それを『反省』することで力をつけろッ!その子がどうなったかは知らない!少なくとも、オレならそうするだろう!ツェペリ家の男は常に『何か』を護る為に、『何か』を伝える為に力をつけてきた!おじいさんのおじいさんだって、おじいさんのお父さんだって、そしておじいさん自身もだッ!お前の家、ジョースター家もそうだろう?この際だから、オレはあえてお前をこう呼ぶ!ジョード・ジョースター!お前の祖父だって先祖だって何かのために戦い、何かを護る為に戦ってきたんだッ!そして、その為に力を『得た』んだよッ!ジョジョ!お前は『受け入れる』べきなんだッ!弱い自分も!負けた過去も!全て、『受け入れる』んだッ!そうして、その上で力を手にしろ!今度は、何もお前と言う食器の上から何も零さないようにッ!」

 

体制が変わり、チェザーレは千寿の胸倉を逆に掴んだ。

そして述べるは自分が言ってやりたかったこと。

勇敢で勝ち目の戦いにも何かを護る為に向かっていく男、士藤千寿ことジョード・ジョースター。

負けられない戦いに臨むのは『無謀』と言う人がいるかもしれないだろう、しかし譲れないものはあるものだ。

いいたい事、伝えたいことを良い終えてチェザーレは千寿の胸倉から手を離した。

喋りすぎて口の中がカラカラになったせいか、自販機で買ったペットボトルの飲料を飲もうとペットボトルに触れる。

まだ休み時間に余裕はあるが、すっかりと温くなっているようだ。

チラリ、と千寿を見ると返す言葉が無いのか、それとも無言で怒っているのか、いつものように何も言わずに昼食をとり終えたらしく、購買で買ってきたミルクティーを飲んでいる。

 

「あ、居た居た。部長が呼んでたよ、センジュくん。あれ?そちらの人は?」

 

このタイミングで二人を除いて誰も居ない屋上にやってきた、木場祐斗にグッジョブと言うべきかそれともKYと言うべきかチェザーレは迷った。

しかし、このまま二人で一緒に居ても彼が喋ることは無い。ならば木場(コイツ)に連れて行ったほうが良い、と思ったのだ。

 

「腐れ縁のチェザーレだ」

 

千寿は上着の長ランのポケットに手を突っ込みながら、手首にゴミ袋を通し、チェザーレの方を示す。

すると、チェザーレは木場に会釈をして、

 

「三年のチェザーレ・A・ツェペリだ。弟分が世話になっているな、後輩くん」

「あ、ツェペリ先輩でしたか。部長から話は聞いています」

「そうか、グレモリーから聞いているのか。じゃあ、つまり……」

「おい、さっきから祐斗と何の話をしているんだ?チェザーレ」

「それは、オカ研に行ってからのお楽しみだ、ジョード。そろそろ行かなくて良いのか?あ、祐斗とオレが呼んでもかまわないかな?」

「はい、大丈夫です。それでは、時間も時間ですし行きましょうか」

 

チェザーレと木場の会話内容が何が何だか分からぬまま、千寿は二人の後をついていくことにした。

だが、一つ気がついたことがあるというのなら、チェザーレと木場が今朝、家から共に学校に投稿してきたリアス・グレモリーと共に何かを三人が知っているんじゃあないか、ということだ。

脳裏に浮かんだのは『傍に立つ者』、黒い翼を生やした元カノ・夕麻、そしてあの日に助けられなかった金髪の少女のこと。

 

「……やれやれだぜ」

 

 

 

オカルト研究部。

 

駒王学園オカルト研究部と言えば、生徒から見て憧れの的となる。

二大お姉さまのリアス・グレモリーと姫島朱乃、学園のマスコットの塔城小猫、イケメンの木場祐斗。

そして準部員に当たる同じくイケメンのチェザーレ・A・ツェペリ。

こうして改めて周りを見てみると、どうもこの部屋の連中は輝いている。こう、オーラが出ているような、そんなところか。

 

「改めて挨拶するわね、私はこのオカルト研究部の部長のリアス・グレモリーよ。息をつく暇を与えてあげたいんだけど、先に説明させてちょうだい」

「ああ、頼む」

 

それからリアス・グレモリーの説明が始まった。

自分は有名なソロモン72柱の悪魔の中で名門に当たるグレモリー家の出身であること、悪魔、天使、堕天使の三大勢力のこと、大きな戦争があってたくさんの悪魔が死んだこと、レーティングゲームなる悪魔の娯楽、そしてレーティングゲームにおいてのチェスの駒の役割の説明のこと、あとはどうして此処にいるのかと。

 

「つまり、俺は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で眷属悪魔に転生したのか……」

「そういうことよ。手元にあった歩兵(ポーン)を全て使い切って、まさか台無しの駒(フリーピース)まで使うなんて……。よっぽど、希少価値があるのね」

 

ネコを猫可愛がり、といえば分かってもらえるだろうか?

リアスの状態はまさにそれだ。千寿の様子にも省みず、背伸びをしてわしゃわしゃと少しボサついた黒髪をわしゃわしゃと撫でている。普段、人の色恋沙汰にお節介気味なチェザーレが囃し立てたり、まわりの部員達が何かを待つように此方を見つめる。

 

「それでは、自己紹介をしてもらおうかしら。朱乃」

「はい、部長」

 

リアスに呼ばれたとき、黒髪ポニーテールで二大お姉さまの一人の姫島朱乃は立ち上がって丁寧にお辞儀をした。

 

女王(クイーン)姫島朱乃(ひめじまあけの)、三年ですわ。オカルト研究部では副部長をやらせていただいています。裾の長い学ランですのね?・・・ここ、ずれてますわよ?」

 

自己紹介の後、朱乃は手で口を押さえて微笑んだ後、片方だけ横になっていた長ランの襟を直した。

終始、母親を思わせる微笑を浮かべていた。背後からチェザーレの嫉妬の視線が突き刺さるが、それは今は無視しておこう。一人でも早く部員の顔を覚えなければ。

 

騎士(ナイト)木場祐斗(きばゆうと)、二年だよ。センジュ君はもう知っているよね?」

 

金髪イケメン、木場祐斗。彼は既に知っているので軽く会釈をした。先日の出来事を気にしていたらしく、目の下に隈がある。一晩中、眠れなかったんだろう。

 

 

「……一年、搭城小猫(とうじょうこねこ)戦車(ルーク)です。宜しくお願いします、先輩」

 

テーブルに座っていた小柄な白髪の少女がぺこり、と自己紹介の後にお辞儀をする。なるほど、こうしてみると学園のスターばかりだ。

 

 

「そして、私は(キング)。全体の司令塔で私が負けると試合は終了してしまう。将棋は知っているかしら?」

「ああ。歩兵、飛車、金、角、銀、桂馬、香車、王、だっけか」

「そう、あれと同じようなものかしら。その中に何か一つでも足りなかったときの予備にあたる駒」

 

いわゆる、サブメンバーか、と千寿は思った。

トランプにも言えることでトランプの中には何枚か空白のカードが入っている。それはトランプが数が足りないときに使用するカードでそこに使用するときは書くんだっけか、と思い出そうとするけれど思い出せなかった。

祖父(ジジイ)が教えてくれた、数々のトランプのイカサマ。

使うことは滅多になかったが、隣町のヤンキーとトランプをして小遣いを巻き上げたことがある。

この場合、これは関係ないか、と目の前のことに集中することに決めた。

 

「ちょうど、それに当たるのがチェザーレ。チェザーレ・A・ツェペリ。私と同じ三年よ。みんな、仲良くしてね」

 

リアスがチェザーレを紹介した際、忘れられたかと不安がっていたチェザーレの顔に明るさが戻った。

一人取り残されるのが嫌な奴だったな、と千寿はいまさら思いだした。

 

 

「グレモリーと同じクラスで学年のチェザーレ・A・ツェペリだ。緊急事態や正式な場でしか部活に来ることは無いんだが、今回はジョジョの顔見せと言うことでオレは来ている。そしてオレのお披露目、だな」

 

パチパチ、とその場に居た全員が拍手をした。

やはり、チェザーレ・A・ツェペリ。

祖父のシーザーと同じく、人望は軽薄ながらもかなりある男だ。

 

 

「そうそう、センジュ。二つほど言いたいことがあるんだけど、いいかしら?」

 

ポン、と手のひらをたたいてリアスは思い出したように言う。大体こういうときの他人はろくでもない事を言うんだろうな、と経験で千寿は理解してたが様子からして期待は裏切られそうに無いらしい。

 

「ひとつは、貴方のことを“ジョジョ”と呼んで良いかしら?」

「……知っているのか?全て」

「ええ、調べさせてもらったの。その……“スタンド”について調べる為にね?」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドド……!

 

このとき、チェザーレは理解した。

一つ年下であり、高校二年生の幼馴染の男から高校生らしからぬオーラが放たれていることを。

スタンドとは何か理解はしていないが、この幼馴染は頑なに家庭事情に触れられたくないのを『言葉』でなく、『心』で理解した!

波紋呼吸法を修行して常人よりは強くなったものの、自分ではまだまだ千寿に至らないのはこの『スゴみ』なんだろう。

ジョースター一族が持つ爆発力、勇気、機転。

他にもたくさんあると祖父からチェザーレは聞いているが、すべてがすべて目を見張るものだという。

最初に聞いたとき、悪魔とは何かと考えたが、関わっていくうちにそれがなにかはわかってきたつもりだ。

だが、千寿には予備知識が無い、とチェザーレは考える。

太陽が照らしつける日常から日陰の世界を理解するにはどうしても、それなりの『覚悟』が伴う。

 

「スタンド……」

 

自分(千寿)の傍にたたずむ者の気配を認識したのは最近のことだ。

つい最近までその存在を知らなかったし、あの十字架に手首を挟ませていたが、十字架が割れたとたんにスピードが早くなった。

それも踏まえて傍に意識を集中させてみたが、そこには小さな気配が一つ。

 

「ジョジョ、これから話すのは重要な事。よく聞いて欲しい」

 

それからリアスは神器(セイクリッドギア)について話し始めた。

己の中に内包するものであること、堕天使に千寿が襲われた原因が千寿自身の神器(セイクリッドギア)にあるのを……。

 

「以上が説明よ。質問はあるかしら?」

「ない」

 

説明の間中、ずっとチェザーレが気まずそうにしていたのはチェザーレが神器を持っていなかった、と予測する。

そうでなかったら、少なくともチェザーレの性格ならそれを知らせる。

チェザーレとの経験上、「腐れ縁には何か役立つかもしれないから、秘密を作らない!」と明言している。

ばらしたらどうするつもりか、と尋ねたらお前にはその心配がないから安心だ、と言われた。

全く、対した信頼だ、と呆れたが千寿自身も悪い気はしない。

 

 

「神器の発現の仕方を教えるわ。自分の中で最も強いものをイメージしてちょうだい」

「……ああ。」

 

正直、今は全てを飲み込め切れていない。まだまだ知らないことが多いわけだが、これからそれをあかるみにしていけば良い。

理解していけばいい。

もしも、この力で助けられたのなら、あの子は今はきっと――。

 

 

千寿は目を閉じて脳裏に“最も強い者”をイメージする。

 

 

――――――――『力』を正しく使うにはきちんとした『気持ち』と『目的』が必要になる。君が力を求めるなら、ぼくは君を助けてあげたい。でも、今の状態じゃ少し難しいんだ。君の力が必要な時は力を開く手助けをしようと思う。

さぁ、その目を開けて、ジョード。その力が君にとっての『はじまり』で『きっかけ』となる。

それが、君の始まりの力だ――。

 

 

周囲の時間が止まった気がした。

 

「ストーン・ローゼスッ!」

 

《キュルチビイッ!》

 

千寿が目をカッと見開いて発現させたスタンドは・・・大きな目、長い手と短い足、それに小さな身体を特徴とする黒い霊長類の胎児を思わせる“(ヴィジョン)”。

はじめて見た際の大柄な戦士のようなのは幻だったのか、と疑ったが・・・・。

 

「……おい、テメーら?なにを笑ってやがるんだ?」

 

千寿を除いたオカ研の部員全員が笑をこらえていて、ただ一人だけ青筋を浮かべたままストーン・ローゼスをプカプカと傍らに浮かばせていると、キュルチビイッ!と甲高く鳴いているだけ。

千寿本人が怒りを示している中、何も分からないストーン・ローゼスはずっと首を傾げて浮かんでいた。

 

 

 




どうも、皆さん。
本日に登場したオリキャラは、他作者さんが書いておられた「星の白金と黒い太陽」なる作品にてシーザーの孫が主人公として出ていたんで、「これは出すべきじゃあないか!?」っていうのが大きな理由でしょうか。
無限にある並行世界でのディオとジョースター家の因縁。
本作にオリジナル展開のタグを入れているのはそれが大きな理由となるでしょう。
原作におけるキャラクターが死亡してしまっていたり、生存していないはずのキャラクターが生きていたり。

さて、次回もお楽しみに!
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