【完】ジョジョは奇妙な英雄   作:ふくつのこころ

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ファントム・ブラッド編最終章。
三連休最終日に投稿してるわけですが、来週にも三連休あるから気にしてません、投稿するまでは。
ワイルド・チャレンジャー聞きながらの執筆は捗りますね。
さて、この「物語」は「運命」を捻じ曲げる物語である。
死ぬはずの者が死なず、死なないはずの者が死ぬ。
奇妙な縁あってリアス・グレモリーの眷属となった、ジョースターの血を引く士藤千寿。



アーシア・アルジェントは恋をする

「……案の定、ここにもいやがったか」

 

「そのよう、だね。小猫ちゃん、準備は良い?」

 

「……バッチリですよ、木場先輩。センジュ先輩、臆病風に吹かれてやしませんか?」

 

廃墟の教会に辿り着くと千寿、木場、小猫は三人で背中を合わせた。

教会の中に先ほどと比にならないくらい、大勢の堕天使がいたからだ。事前連絡として受けていたのか、それとも先ほどの千寿の“回転”による波紋攻撃を受けた仲間について連絡が入っていたのか、千寿の手の中にある鉄球に視線が注がれる。

 

「……さて、センジュ“後輩”。準備は良いですか?」

 

「え?小猫ちゃん?」

 

「チェザーレの影響を受けたんだろ、メシに連れて行ったとき、ずっと俺たちに言ってたからな」

 

木場の神器(セイクリッドギア)、剣を生み出す“ソードバース”でアイスソードを作り出して一度に何体かの堕天使を相手にしながら身軽な動きを披露し、小猫の言葉に仰天する。物静かで軽口を叩く印象がなかったからだろう、千寿はそれなりに木場のことを知っているつもりだったが、これほどまで呆気に取られた表情を見たことがない。

常に爽やかな笑顔を浮かべている男、そんな男が口をあんぐりと開けていたら誰でも驚くだろう。

 

「……そうです、ツェペリ先輩のせいです。そして、センジュ先輩。中華、美味しかったです、また連れて行ってください。今度はツェペリ先輩抜きで」

 

小猫は少し表情に喜色を浮かべ、その小柄な身体から想像できない膂力を発揮して教会を支える柱の一本を引き抜き、センジュや木場に当たらないように配慮しながら、それを大きく振り回す。

バットで素振りをすると発生するブンッ!という鈍い音。

バットの何倍もある柱でやるとどうなるか、想像できるだろうか?振り回すたびに風が巻き起こり、中に飛翔している堕天使が反射的に手を交互にクロスさせてガードする。

風が巻き起こる際にカマイタチが起こる可能性を考えた上での行動だろうが、それはあくまで()だった。

偽物、フェイクである。

小猫が柱を振り回し、その時に生じる風。もちろん、その際に小猫は柱を槌のように用いて何体かの堕天使に叩きつけるわけだが、大きなものを持っていると動きが鈍るように、振り下ろされた一撃が大きかろうとスピードが、当たらなければ意味がない。

戦車(ルーク)の能力は、その力にある。

小猫が持つ怪力と戦車が持つ怪力が合わさり、柱ですらもただの棒切れのように軽々と扱えてしまうが、そのかわりにスピードが足りないのだ。

隙を狙い、相手にしていた堕天使を全員倒した木場が小猫の背後から急襲をかける堕天使に持ち前のスピードで切りかかる。

片手には炎を纏う剣、ファイアソードを。

片手には氷の剣、アイスソードを。

アイスソードで切りつけて凍らせた後、ファイアソードで切りつけて解凍する。凍えるような寒さから一転、全身が燃え盛る熱さに襲われる。まさに地獄の連続攻撃。

 

石の薔薇(ストーン・ローゼス)』Act2に進化した千寿と言えば、Act2の能力であろうと推測されるカギ爪ロープを引っ掛け、『引き寄せる力』を用いて周辺の堕天使にスタンド・カギ爪ロープを引っ掛け、グルグルに巻きつけた後引っ掛けてそれらを勢い良く引く。

引き寄せられたそれをシュルルルル!と駒を回す要領で離し、回転している堕天使を小猫の重い一撃と木場のファイアソードとアイスソードの一撃が騎士(ナイト)の特徴である、『スピード』と木場自身の速さが加わり、正確な狙いを定めていることと剣術をしていることから覚えた動きで激しい攻撃が叩き付けられる。

 

はじめての三人の戦闘、はじめてのコンビネーション。

ここまで息が合うのは士藤千寿の持つ、『人を惹き付ける魅力』のおかげ、と木場と小猫は考えた。

粗暴な所と冷たい印象を明るく話しかけやすい雰囲気を放っている、チェザーレ・A(アントニオ)・ツェペリと違う、別の雰囲気を持っていると考えた。

もしかしたら、これも『ジョースター家』の血筋の特徴なんじゃないか、とも。

 

「どうした?お前ら。ここらの敵は片付けたみてェだし、先を急ぐぞ」

 

「あ、ああ」

 

「わかりました、先輩」

 

此方を、千寿の方を顔を二人してみている木場と小猫に不審そうな表情を浮かべることなく、落ち着いた様子で冷静な口調で尋ねる。

そこから読み取れた意味は、こんなところでグズグズしている暇はない、先を急ぐぞ、という千寿の急かし。

しかし、二人は顔を見合わせ、次のように提案した。

 

「センジュ先輩、提案があるんですが、良いですか?」

 

「実は先ほどみたいに援軍が来るかもしれないだろう?だから、僕らはここで待っていよう、と思ってね。もちろん、ただ待つわけじゃない。君がお姫様を連れてくるのを待つんだ。なにか変化があれば、部長を呼べるようにしておかないとね。」

 

「そういうわけです。」

 

千寿は木場のいうことにも一理ある、と考えた。

この先に向かえばアーシアだけ、という保証はないだろう。レイナーレ、というアーシアを連れ去ったあの堕天使はアーシアを使って何らかの目的があると見た。二人の前に表情こそ出してはいないものの、千寿自身は怒りに震えていた。

あの場所で、再び再会できた時はまるで夢のようだった。もう、二度とその手を離したくなかった。

二度と泣かせるわけにはいけなかった。

太陽の下で映える笑顔をまた、見たかった。

 

だから、士藤千寿は決意する(、、、、、、、、)

 

もう一度、あの笑顔を見たいから、助けて見せると。

そして、木場や小猫(悪魔の先輩)の提案に乗って賭けてみる事を。

 

「……任せたぞ、お前ら。ったくよォ、あとで俺と一緒に怒られる気か?」

 

二人は溜息をつく、目の前の大柄な千寿(後輩)を眺め、自信に満ちた笑みを見せて頷く。

ここを任せて欲しい、と。

二人のその様子に圧され、何も言わずに去ってゆく千寿の背中を見送った。

 

木場祐斗は友人として士藤千寿を知っている。

この友人は無駄な事を語らず、教室では常に沈黙を護っている寡黙な男だ。こちらから喋りかければ鬱陶しそうな様子を見せながらも、きちんと返してくれる。やれやれ、だとかうっとうしいと多用していても、彼はお人好しなところが見受けられるため、面倒くさかったとしても、仕方ないから俺がやろう、とその問題解決に取り組んでくれる頼りがいのある男だ。

 

塔城小猫は士藤千寿を良く知らない。

ただ、この男はチェザーレ・A・ツェペリのように騒がしいのでなく、むしろ大人しいというより沈黙を護る男で、その様子が放課後に奢ってもらった中華料理店でも分かった。

こちらに対して特に質問をぶつけるでなく、ただ黙々と食事を続ける。

逆に二つ上のチェザーレが五月蝿かったくらいでジト目で見つめていても、それに気づかず一人で喋っていた。

店主とは顔なじみでチェザーレの顔も知っていたから、迷惑がられている様子でなく、「元気だねぇ」の一言で片付けられた。

眷属悪魔としての実力は非常勤、といったところのチェザーレであるが、それは非常に高くオカ研副部長の姫島朱乃に匹敵するらしい。

その存在が最近まで知らされていなかったので、武道の達人のようなイメージをしていたが、その予想は大きく裏切られることとなった。

暇さえあれば、小猫のクラスにやってきて話しかけてくることもあり、学校内での面識は既に終えていた。

その鬱陶しく騒がしい性格から小猫は良い印象を抱いていないが、千寿の幼馴染・・・腐れ縁であると聞くと自然と納得できる。

 

どうにも、相性ピッタリだから。

 

少し急いだ様子で駆け足になりながら、長ランの裾をひらめかせ、千寿が先を急ぐのを見送ると、二人はその場で千寿がアーシアを連れ帰るのと、番をし始めた。

 

 

「ア・-・シ・ア、たーん?君は何をしたのかわかっちゃってますかー?」

 

「うう……」

 

磔にされた金髪シスター、アーシア・アルジェントの頬に得物の剣の刃を当てる、神父風貌の少年。

フリード、と言った神父風貌ははぐれエクソシスト、と言うものだ。

悪魔を必要以上に殺し続け、追放されたことでこうしてレイナーレの元に下っている。

レイナーレの目的上、悪魔が邪魔となるだろうから、その悪魔を排除しなくてはならない。

そのため、悪魔を殺すことに快楽を覚えるフリードを自らの傘下に置いて殺させているのだ。

現在はレイナーレの行なう計画の進行上、アーシアが逃げないように番をしている。

逃げられない、と言っても万が一に備えて、だ。

 

「聞いてませんよー?あの聖女、とまで言われたアーシアたんがクサレ悪魔と関わってるなんてさぁ。いやぁ、カミサマ、オレサマ、ビックリよー。はずかしくない?汚いと思わない?悪魔と関わること。ねー、堕天使様の約束、破ったってわけ?・・・じゃあ、ヤッてしまっても仕方ありませんよね☆きゃはっ」

 

無邪気な、そして残酷なまでなフリードのはしゃぎっぷりにアーシアは恐怖を覚えた。

自分がこれまでに救ってきた人間の中にこのような狂っている人間は見たことがなかったし、それに困っている人間を助けたいと思っていた。

なのに、今のこの気持ちはなんだろう?誰かの役に立ちたい、と思ってレイナーレに最初に出会った頃、「その力を私のために役立ててくれないかしら?」と言われたときは教会のことも踏まえると、良く考えてみるべきだっただろう。

そんなことがあろうと、人を助けたい、護りたいと願う『信念』を抱く修道女、アーシア・アルジェントは細かく考えている暇はなかった。

その言葉が聞けて嬉しくて、頷いたのだ。

それらを思い出すのと同時、大好きな青年を思い出す。

久々に出会った幼馴染。

背丈はすっかり自分を抜かしていて、顔つきも端正でカッコよくなった。

明るさや軽口はすっかり抜けてしまったが、過去のことを悔いて自分は気にしていないのに謝った。

昔、童話で読んだ中で出てきた白馬の王子様みたいだった。

目つきが悪くて、少し明るい色をしているけれど、アーシアはあの教会の近くで出会った思い出を忘れない。

 

「や、やめてください・・・っ!」

 

「んー、なにいってんのか聞こえないなー?……おっ、破けた破けた♪んー、美乳なんだね、アーシアたん」

 

抵抗空しく、アーシアの言葉をフリードは無視してビリッとその服を引き裂く。形の良い乳房を包み込む、シンプルで清楚なデザインのブラが若干、見え隠れしている。

声が出ない。

叫びたいのに、声が出ない。

いや、叫べないのだ。今、この場で叫んでしまえば、その得物の剣で殺される確率が上がる。ここで死んでしまっては人を助けられない、それと大好きな人の近くにいられなくなる。

 

それだけはいやだ、それだけはいやだ。

 

アーシア・アルジェントは自らが常に祈る神に願う。

この願いを、士藤千寿の傍に居たい、との『願い』を叶えて欲しい、と。

 

「な、なぁ……?アーシア、たん?なんだよ、それッ!?」

 

フリードは勢い良く飛びのいた。

しかし、フリードには見えていない(、、、、、、)

アーシアが発現した、『傍に立つ者(スタンド)』を。

困難に『立ち向かう』、力の(ヴィジョン)を。

ただ、なんとなく気配で察したのだ。

神聖でありながらも、それでいて只者ではない、と感じさせる『凄み』を。

 

「えっ……?」

 

アーシアは自らの傍に立つ、その存在がいるであろう方向に目を向ける。

最悪の可能性を考えていたが、それは突如発現した聖母の微笑とは違う能力のおかげで払拭された。

確かに、昔、千寿を治療した時には『既に』視えていたが、自分にそれが発現すると想像は出来なかった。

印象は純白の乙女と天使、というところか。

祈りを捧げるような、慈愛の表情を浮かべた女神像に天使のような翼が生えている。

アーシア・アルジェントはこの(ヴィジョン)から力を感じた。

そして、この能力の使い方が瞬時に自らの中に像から流れ込んでくるのを感じ取った。

この名前は、

 

「……『天使達の手段(ハウツー・エンジェルズ)』」

 

「ク、クソがっ!この、クソったれが!いい気になるなよ、馬鹿女!」

 

それが、この像の名前だった。

力が膨れ上がり、それが発現するのをフリードは感じ取り、アーシアから離れたが、実際には戦闘力は何も感じられない。

このアーシアが持っている、神器と同じく戦闘能力を持たないのだ、と確信すると恐れおののく表情で得物の剣で切りかかった。

アーシアの『天使の手段』は何のパワーも持たない。強い癒しの力を感じるが、これは目の前のこの神父と戦うための力ではない。

このまま切られるのかな、と涙を流して瞳を閉じてアーシアは覚悟を決めた。

 

「あ、が……はっ」

 

「セ、センジュさんっ!?」

 

後ろから突然、千寿がフリードが剣を振り下ろす前にその首を大きな手で掴み、思い切り握り締めながら高く上げる。

カランッ、と地面にフリードの剣は落ちた。

 

「ご……ごの、あぐまぢゃんが……、おれざまを……、がっ……」

 

フリードは息も絶え絶えだ。

そのままでは、フリードは間違いなく千寿に殺される。

傷だらけの身体、裾の破けた上着。

その様子から千寿が戦っていたことが分かるが、今の様子は尋常じゃない。

無愛想であっても、かならずこちらに反応を見せてくれていた千寿からの反応がないのだ。

これじゃあ、まるで、あの日のようだ。

アーシアは思い出した。

自分とこれでも全く年が変わらず、それも同年代の青年が教会で大量の聖職者を殺戮した日のことを。

ギリギリ、と千寿の爪がフリードの首の中に食い込んでゆく。首と言えば細かく細い血管が入り組んでいる、と聞いたことがある。そんなところを千寿の強い力で思い切り爪を食い込ませてしまえば、どうなってしまうのか?

 

「センジュさんっ!聞こえてますか!?」

 

だが、その叫びに千寿はこたえない。

その代わりにアーシアの『天使達の手段』に応えるように少年のような姿をした『石の薔薇』Act2がアーシアを拘束していた、拘束具をカギ爪ロープで器用に剥がしていく。

わっ、と衝撃で座り込んでしまったアーシアを『石の薔薇』は見つめている。

少年、という所からかつての千寿をアーシアは思い出すが、目の前にいる人物と重ねられなかった。

これじゃあ、まるで悪魔(、、)だと。

助けた時は確かに悪魔のような姿をしていたが、千寿の優しさに触れたことから、悪魔に優しい者もいるとアーシアは信じていた。

でも、今の千寿は全然違う。

このまま、自分も殺されるんじゃないか、と思ったとき、プチッ、という破裂音が聞こえた。

ぷしゅうう、と血液が溢れ出てきて、まるで噴水のようにフリードの首から血液が溢れている。

ドサッ、とフリードの身体を千寿は投げ捨てた。

 

なにも、感慨を抱く様子もなく。

 

それから、アーシアの方を見た。

 

「センジュさん、センジュさんっ!」

 

アーシアは抱きつくことしか出来なかった。

新たな力、『天使達の手段』に目覚めたとはいえ、目の前に居たのは千寿でなく、千寿の姿をした別の何かだったから。

もしも、元に戻っていなくて殺されるとしても、千寿なら良い、とアーシアは思ってしまった。

極限状況、精神をすり減らしていたのだった。

 

「……フ、フリードッ!?」

 

その部屋に入って来たのは、レイナーレだった。

アーシアを無言で宥め、落ち着かせながら千寿はフリードの死体を見て、そしてこちらに視線を移すレイナーレは光の槍、それも悪魔を浄化させる効果を持った物を手にしていた。

 

「あああああああああっ!」

 

言葉にならない叫び声を上げ、レイナーレは千寿に襲い掛かる。

それは、親の仇を目の前にしたナイフを持った子ども、と表現できるが、対する千寿の視線は『石の薔薇』を傍に戻し、カギヅメロープでレイナーレの首を巻きつけ、レイナーレが此方に来る前に引き寄せた。

首が絞められ、苦しむレイナーレは千寿を恨みを込めた視線で見つめているが、それを上回るほどに千寿は憎しみを込めた視線でレイナーレを見ていた。

 

「ジョジョ!」

 

「センジュ君!」

 

「ジョード!」

 

リアス、朱乃、チェザーレが到着した。

朱乃は現場に訪れた際、残っていた堕天使を退治していたようで、その手には雷を纏っている。

後には小猫や木場が三年生組と合流したらしく、オカ研全員が揃った。

 

「ジョジョ、貴方、何をしたのか分かっているの!?今回の行為は、チェザーレが知らせてくれたから良かったものの、一歩間違えれば、グレモリー眷属(私たち)全員に命が関わることとなってたのよ!?」

 

「チェザーレが勝手に知らせたんだろ?……なら、アンタには関係ねェじゃねえか。俺はこのレイナーレっつー女を連れ帰る。こいつらみたいな下衆な行為はしないが、償ってもらわないとな。」

 

そういう千寿の言葉を聞いていると、千寿の目には『光』が無くなり虚無となっているわけではないが、代わりにそこには明確な憎しみが見えた。

千寿の意思でレイナーレの拘束を首でなく、『石の薔薇』が身体を巻きつけるようにすると少し官能的な光景となったが、レイナーレの瞳には恐怖の色が見え、震えている。

 

リアスは千寿に近づいてその頬を叩いた。

自分が一番強い、と言う自負が千寿には無いが、これが不意打ちでさえなければ避けられた自信はあった。

 

「そういう問題じゃないのよ!教会側に関わっちゃいけないの!貴方は何も分かってない!ことの重大性が!なんにも……っ!」

 

「なら、俺を眷属から外せ。そして、はぐれ悪魔として殺せ。それで満足だろ?アンタの力でなら、もみ消せるだろうし、他にも有能な奴らがいるじゃねえか。俺一人に拘る必要はない。違わないか?」

 

全員がその言葉に、その口調に言葉が出なくなった。

士藤千寿は、この言葉を本気で言っている。

アーシアは眷属やらの意味が分からなかったが、千寿が死のうとしていることを止めようと何か言おうとしたが、朱乃がそれを制した。

 

そしてリアスはまた、千寿を殴った。

今度は平手でなく、グーで。

 

「次、それを絶対言わないこと。なんで貴方は……、ジョジョはそんな事を言うの!?バカっ、ばかっ……!」

 

一瞬、真剣な目で激昂した様子を見せたが、それはすぐに潜み、千寿を抱き寄せた。

自分の眷属に自殺で死なれるのが嫌だった。

リアスにとって、眷属は家族に近い思い入れがある。

誰一人たりともかけて欲しくない、そして、自分をもっと大切にして欲しい、と囁いて涙ぐみながら千寿を抱きしめた。

 

その場の全員が、ただただそれを見つめているだけだった。

なにも、言えなかったのだ。

 

その後、早めに教会を離れないと後々拙いことになるので、すみやかに離れた。

そして、リアスは自分たちの事を説明し、これからどうするのかについてアーシアに尋ねた。

眷属になる、という道についてはアーシア自身、最初は渋ったが、チェザーレが叱りつけるのを無視してベンチに座っている千寿を眺め、それを苦笑しながら眺める木場と近くであらあら、と見守る朱乃と小猫の方を一瞥し、ちょうどいなかった僧侶(ピショップ)として転生することとなった。

理由はリアスにもすぐに分かった。

アーシアは、あの危険な所のある彼を護りたいのだ、と。

レイナーレの処遇は千寿に一任された。

すぐにでも、その場で殺しかねない剣呑な雰囲気をレイナーレに浴びせていた千寿を終始、怯えた目でレイナーレは見ていたが、チェザーレが慌てて仲裁に入ったことにより、千寿の家で住み込みで働くこととなった。

 

メイド、である。

 

「じゃ、じゃあ、センジュさんと一緒に居たいです!」

 

アーシアが千寿の長ランの袖を握りながら言うと、リアスは暫く考えた後、それを許可した。

翌日、帰宅して千寿はホリーには心配され、帰ると早々に抱きしめられたが、祖父のジョセフにはかなり叱られたものの、美少女二人の同居が決まるとジョセフはコロッと代わり、機嫌を戻した。

リアスの力によって、レイナーレは「天野夕麻」として、アーシアは千寿と同じクラスに駒王学園に編入することとなった。

アーシアの希望により、千寿と同じクラスにアーシアはなれたが、レイナーレも殺されかけた相手で殺した相手である千寿、という複雑な関係になったのに同じクラスを選んだ。

「お仕えするのなら、お傍にいなくてはならないでしょう?」とのこと。

普通にしていれば、千寿はただ無愛想なだけの後輩だが、あのように静かにキレた時はナニヲスルか分からない千寿。

なにも語らない千寿を、これから導いていこう、とリアスは密かに決意した。

 

チェザーレは、帰宅してすぐに家を抜け出したことをバレて祖父に叱られたらしい。

 




これにて第一部終了です。
千寿が『黄金の精神』というよりは『漆黒の意思』に近いものとなりそうですね。
本日、フリードが千寿の怒りに触れて死亡しました。
殺害するほどまでにアーシアを護れなかったことに悔いており、そこに更にアーシアが乱暴されそうになっていたので感情が抑えきれなかったんでしょうね。
リアスや他のオカ研のメンバーが今後、本性に近い一面を見せた千寿にどう関わるかが鍵となりますが、フェニックス編ではスタンドバトルになりそうです。
ただ、どうしてもライザーは死なせたくないですね。
貴族なのもありますが、千寿のその後の処分を考えますと。
最後に千寿の神器の必要性に考えていましたが、神器なんていらないですね、これじゃ。
白龍皇がどうなるのか、それが気になってきますが、赤竜帝の篭手はどうしようか・・・。
ヤンデレとも愛情表現と言うより、今回の千寿は強迫観念に近いものを描いたつもりです。

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