ダンジョンを血で染めるのは間違っているだろうか。   作:焼きカレー

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今回も駄文です。自分も啓蒙高かったらよかったのですが・・・


狩人

狩人はいささか飽きていた。今の自分の現状に。 

 

上位者を狩りつくし、悪夢の主であろう月の魔物を屠りやがては狩人自身も上位者となり幼年期を迎える。だが未だ夜は明けず。幾度様々な結末を迎えてもまた悪夢に目覚めることの繰り返し。

 

ヤーナムには未だ獣の成り果てた住人達が跋扈しており。聖杯ダンジョンに向かい深層の存在を倒しても現状は変わらず。自身の考える限りの手を尽くしてみたが何も変わらなかった。ならば、としばらく考えた狩人はというと。

 

「狩りを楽しもうじゃないか。」

 

意気揚々と彼は武器を片手に自身の赴くままに獣を狩りつくす。現状を打破するため工房で考えるのもいいが、ここは一度啓蒙を空っぽにするがごとく心の赴くままに狩りをしよう。

 

そう決めた狩人は時にノコギリ鉈を使い獣をこれでもかと切り刻み、また時には爆発金槌や教会の石槌で叩き潰したり、と様々な仕掛け武器を用いて狩りを楽しんでいた。だがその過程で火力が物足りなくなってきていた。人形に血の遺志を捧げ自身を強化していたっがそれも限界を迎えたのだろう。こうなれば後は、と狩人が赴いたのは聖杯ダンジョンであった。

 

そう、血晶石だ。あれを使えばより自身の武器を強化できる。より狩りを楽しめる。そう考えた狩人はまたしても聖杯ダンジョンに挑む。

 

だが工房にて聖杯の儀式の途中、不可思議な現象が起こった。アメンドーズが狩人を悪夢へといざなった時のように宇宙を映すような黒い渦が巻き起こり、体がその中へと引っ張られる。抵抗しようかと考える間もなく、黒い渦は狩人を飲み込んだ。

 

「行ってらっしゃいませ。狩人様。」

 

誰もいなくなった工房にてただ人形が狩人のいた儀式の墓標の前にて、一人呟いた。

 

 

~~~

 

 

狩人が目を覚ました場所は薄暗い洞窟であった。周囲を見渡しても聖杯ダンジョンのように遺跡のような雰囲気もなく。どちらかといえば自然にできた物であると感じた。

 

武器や道具、装備も問題なくある。姿もあの幼年期の時とは違い人のままだ。それを確認した狩人は松明を取り出し、探索を始めた。

 

 

 

 

まもなくして、狩人は不思議な獣と相対した。人のかたちをしていながら額には角が生え、肌が緑色の小人のような獣であった。

 

「げぎゃぎゃぎゃ!」

 

と狩人をみた小人の獣は笑っているのか、いささか不快ともとれる声をあげ狩人に襲いかかる。 未知の獣ではあったが狩人から見ればそれはひどくノロマで、まだヤーナムの暴徒達のほうがずっと素早いと思えるほどに。狩人はつまらなそうに、だが油断はせずに手にしていた千景を振るう。

 

 

首を一瞬にして断たれた獣は憐れにも悲鳴をあげることすら許されず、死ぬるもここでまたしても狩人にとって不思議なことが起こりはじめる。

 

「ん?」

 

狩人が首のない死体に目を向けた瞬間、獣の死体が黒い霧となり消えてしまったのだ。さらに、不思議な宝石のような物を落として。狩人はその石を拾い、観察し始めた。

 

「血晶石か・・・?そもあんな雑魚が落とすような物とも思えんが。」

 

「ふむ。何かしら神秘にも近い力を感じるがやけに弱いな。」

 

狩人はそのまま石をポケットに入れ、またしても探索を開始する。興味深い事が多いが今はここからの脱出に専念したほうがいいだろう。せめて灯があれば狩人の夢に戻り、この不思議な石について調べられるのだが。

 

狩人が出口への道を探している時、人の叫び声のようなものが耳に入った。

 

「ダンジョンにきた狩人か?せめて出口でも聞いてみるとしよう。」

 

狩人はそのまま声のするほうへと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

いざたどり着くとそこには白髪の少年がナイフ一本を手に獣と戦っているのが目に入った。狩人は少しばかり驚愕した。少年の狩人も存在していたのか、ということと彼が手にしているのはとても仕掛け武器には見えないのだ。今自身がもつ千景のような物も見受けられず、彼がもつものは唯のナイフであることが推測された。

 

また彼が相対している獣も獣だ。蛙が巨大化したような見た目のモノ、全身が黒い影のようであり、指先がナイフのように鋭いモノ。どちらも見たこともない敵だ。それだけで狩人は興味がそそられる。未だ未知は多く、だがこの獣達、とくに片方の黒い異形から上位者的な気配を少なからず感じ取りながら、この世界がどこか自身の世界とは違う場所であると狩人は理解した。

 

「う・・・ぐあ・・・!」

 

思考にふけっていた狩人は気づけば目の前の少年が倒れている事に気づいた。そして未だ残る獣達に今まさに殺されそうになっていた。

 

(ここで死んでもらっては出口を聞き出すことは不可能だな。)

 

狩人は千景を手に少年を助け出すため駆け抜けた。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

「まいったな。まさか気を失ってしまうとは。」

 

狩人は顎に手を掛け考える。自身が思考にふけっていたこともあり、少年を助け出すのが遅れてしまっていた。助けることは人の勝手とはいえ、彼が非常に不味い状態に陥ってしまっているのは自身にとっても情報が得られないため問題である。さらにだ。

 

(この少年は普通の狩人とは違う・・・いや正確には狩人ではない、な。)

 

少年は仕掛け武器ももたず、また血の臭いが薄すぎる。駆け出しの狩人、といえばそれまでだが彼から感じる神秘に近い何かに違和感を覚えた。

 

「輸血液での治療が可能かもわからんな・・・聖歌の鐘が効くか?」

 

無論、狩人達には輸血液での回復が可能だ。だがヤーナムの血が入った輸血液でこの少年に輸血を行った場合、何が起こるかは不明だ。聖歌の鐘によって傷は回復しても、失った血が戻るわけでもないが何もしないよりかはマシかと思い、小さく鐘を鳴らした。すると少年傷は塞がったようだ。

 

とはいえこのままでは血を失いすぎたことにより衰弱死する可能性も高いこともあり、彼は仕方なく少年を運び、出口を探すことを考えたが結局彼から出口も聞けずじまいである事で探すのに時間がかかる可能性も考える。いっそ彼に一か八かで輸血を考えていたその時であった。

 

「・・・・あなた、誰?」

 

「どうしたアイズ?・・・これは。」

 

後方より2人の女性の声が聞こえ狩人が振り向くとそこには金髪の少女と長い耳の緑の髪の女性が現れる。

 

(彼女らも・・・狩人とは違うな。嗚呼、興味が尽きぬ、だが。)

 

「すまない、君達はこの少年の知り合いかね?」

 

狩人は警戒心を少しでも解くため敢えて口元のマスクを外し彼女らへ語りかける。

 

「ううん・・・よく、知らない。」

 

「私も彼のことは知らない。だがそんなことよりも、その少年かなり傷を負っているように見えるが。」

 

「ああ、私が駆けつけた時には既に満身創痍と言った所か、傷は塞いだのだが血を失いすぎているようでね。すまないが治療を頼めるかね?」

 

狩人は手持ち無沙汰で困った様子で両手をひらひらと動かす。彼の言ったこと、彼の様子から訝しげな視線を送る耳の長い女性であったが、一度ため息をつくと少年の元へ行き、彼の前に手をかざした。すると彼女の手が白く光り、少年の顔に生気が戻っていった。それに狩人は内心かなり驚愕するが顔は無表情を取り繕っていた。

 

「これでいいだろう。しばらくすれば意識も戻るはずだ。」

 

「おお、すまない。助かったよ、私ではどうにもならなくて困っていてね。」

 

狩人は女性にお礼を言うと、少年へと近づき彼を心配するように、だが先ほどの女性が行った治療行為がどのようなものであったのかを調べるためにしゃがみよく観察する。そしてその背後で2人のが話し合っていた。

 

「いや、かまわない。それでどうしたんだアイズ?少年を追っていきなり飛び出していったが。」

 

「・・・この子に謝りたかったから。」

 

「?・・・あぁ、もしかしてこの少年がベートの言っていた件の冒険者か?」

 

「うん・・・・私達がミノタウロスを逃したのが悪い、から・・・。」

 

「成る程な、だが今はそれもできそうにないし後の機会にするとしよう。」

 

「わかった・・・リヴェリア。」

 

リヴェリア、と呼ばれた女性が狩人の方を向く。あの少年のことも気がかりではあるが、彼のことにも少しばかり警戒していた。この迷宮都市オラリオの最有力ファミリアである【ロキ・ファミリア】に所属するリヴェリア・リヨス・アールヴはこれまで様々な冒険者を見てきた。そしてその彼女にとって、目の前の男はどこか違和感というか、自身の勘が警告しているのを感じた。全身ほぼ黒にまとまった外套の防具、腰に添える剣。そして高ランク冒険者と思われるような強者の雰囲気を持っている。

 

少なからずこの男はかなりの実力を持った冒険者であることが伺えるが、少なくともこのような格好の冒険者をリヴェリアは知らない。彼女は観察するように、狩人をジッと見つめていた。

 

「リヴェリア・・・?」

 

アイズによって名を呼ばれ、意識が覚醒したリヴェリアは一度視線をアイズに戻す。

 

「いや、なんでもない。さぁアイズそろそろ戻るとするが・・・。」

 

「ん?ああ、すまないがもしよければ私達も同行して構わないだろうか?少年を運ぶために手一杯でね。これで襲われればひとたまりもない。」

 

「わかっている。モンスターは我々2人で対処する。貴方は私達の後ろをついて来てくれ。」

 

狩人はこれまたラッキー、と彼女達の話に乗って出口への脱出をここにて達成することになる。少年を担ぎ上げ、彼女たちの後をついていく。だがそれとは別に頭では別のことを考えていた。

 

(冒険者、モンスター・・・そして先ほどの秘儀。嗚呼、私の知的好奇心を抑えるのが精一杯だ・・・。)

 

狩人は未だ見ぬ奇跡に啓蒙を高ぶらせ、またこれからの現状を考える。

 

(だがこれからどうしたものか。灯もまだ見つけられていない上、彼女たちからもまたこの少年のような神秘の気配を感じるが・・・。)

 

この世界にも上位者は存在するのだろう。灯を見つけるかそれを狩らなければこの不思議な場所からの脱出は不可能に近いと見てもいい。このダンジョンにも階層という概念があるようで、今も上へとあがり続けているが、どこまでも洞窟続きで聖杯ダンジョンとは違うのだ、ということを思い知らされる。

 

(さて、そろそろ出口か。)

 

歩き続けてるといくつかの光が見え、その先が出口であるとわかる。そしてその先を過ぎると狩人はこの日何度目かもわからないほど驚く。

 

人だ。人々が愉快そうに酒を飲んでいたり、忙しそうに働いていたりとここで営みを築いているのがわかる。狩人になり、過去の記憶を失い、いまや獣でないマトモな人など指で数える程でしか知らなかった狩人にとって今の景色はどこか懐かしく、だが自分にとってひどく合わないと思うほど、この街はにぎやかであった。

 

「さて、我々は此処でお別れだ。」

 

「おお、助かったよ。ありがとう。」

 

リヴェリアは狩人のほうへ向き、おそらく元いた場所へと戻るのだろう。そう察した狩人は改めて礼をする。

 

「あの・・・・。」

 

「ん?」

 

「彼を、助けてくれて・・・ありがとうございます。」

 

アイズ、と呼ばれていた金髪の少女が小さく頭を下げる。いささか感情を出さない娘だな、と感じたが根は優しいようだ。

 

「いや、こちらこそ助けてもらって感謝する。君達がいなければこの少年が危険であったのでね。」

 

そう言って狩人は彼女たちから離れる。それを見送りながら2人は酒場へと戻っていった。

 

「・・・リヴェリア、あの人のこと知ってる?」

 

「いや、私もみたことがないな。」

 

「・・・あの人、かなり強そうだった。」

 

「・・・ああ。」

 

酒場へ戻るまでの間二人にそれ以上の会話は無く、あの少年と男のことを考えていた。

 

 

 

~~~

 

狩人はこれ以上いるとあのリヴェリアという女性というのは自身の異常性に気づくだろう。こちらは此処のことを知らなさ過ぎる。長時間いるとボロがでる可能性も否定できないし何よりあちらも既にこちらを疑っているようであった。

 

(さて・・・この少年を預ける場所は・・・と。)

 

彼は周囲を見て、この少年や彼女らのように似た装備を持つもの達を見て彼らが集まっている場所を見定める。そこには【ギルド】と表記されていた。

 

(知らぬ字ではあるが、読めるか。まぁ彼らと会話できている時点で分かっていはいたが・・・。)

 

かれはドアをあけ、ギルドの中に入る。もう夜も遅いのだろう、人もまばらの状態だ。そしてカウンターらしき場所へいき。茶髪のメガネをかけた女性へと話しかける。

 

「すみません、先ほど傷を負っていた彼を保護したのですが。」

 

「え?・・・あ、はい分かりました。ではそちらのってベル君!?」

 

「あぁ良かった、彼のことを知っているのですか。」

 

「え?あ、はい彼は私の担当アドバイザーでして・・・。」

 

(担当アドバイザー・・・?まぁいい、彼の事を知っているのであれば話は早い)

 

「あ、あのどうかしましたか?」

 

「ん?ああすみませんね。彼をどこかに寝かせてあげたいのですが・・・。」

 

「あ、すみません!こちらへどうぞ。」

 

そういわれ狩人は女性に案内された部屋へ入り、そこにあったベッドに少年を寝かせた。

 

「すみません、ベル君を助けていただいて・・・。」

 

「いえいえ、当然のことをしたまでですよ。でわ私はこれで失礼するとします。」

 

「あ!ちょっと待ってください!よければ貴方のお名前とファミリアを・・・」

 

「申し訳ない、私も急いでおりまして。」

 

「そ、そうですか・・・。」

 

「では、失礼しました。」

 

狩人は話を早めに切り上げ、部屋を出で行った。行く宛てはないが今は色々と聞かれるのは不味い。そう思ってこの時は出て行くのが一番だと判断した。それに彼女の行っていたファミリア、という言葉。その単語からとして名前とはまた違ったものであると思われる。恐らくは何かしらの組織のことなどを指しているかもしれない。

 

「分からない事だらけだが・・・しかしどうしてか、興味深い事だらけだな、此処は。」

 

まずはこの世界での情報収集をしなければならない。そう感じた狩人は夜の街へと消えいていった。

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