TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
「紅椿のエネルギー残量大幅に低下中…これでは!」
花月荘内の作戦司令室は絶望の空気に包まれていた。
戦力と言える専用機はもう紅椿1機しか残っていない。そしてその紅椿ですら限界であった。
そんな時山田先生の前にあるIS用レーダーに二つの点が生まれた。
「…何…これ…」
一つは南方から接近する機影であったがそのコア・エネルギー反応は従来のISの数倍の量を持つ。
対して、もう一つはこの旅館から向かったものだった。
「どうした!?」
「分かりません…でも、これって…」
黒薊と白式、相反する二つの色の名を持つ二機の識別コードが機影に表示されていた…。
~~~~~
目覚めた時私は海の上にいた。
「ここは…そうだ。戻ってきたんだ…」
腹を見るとプラズマナイフによってできた「穴」はなくなっていた。
眼前には一次移行を完了した旨を示すポップアップが浮かび上がる。
「黒薊…うん、行こう。皆を助けに!」
私がそう言うと機体は紫炎に包まれる。その黒い装甲は各部でスライドし内側からは深紅の装甲がむき出しになる。
ハイパーセンサーには数十キロ先の銀の福音を捉えた。そして機体は加速する。
以前の比ではない。一度キャノン・ボール・ファスト用のシュミレーターを使ったことがあったがそれよりも遥かに速かった。
しかし、それを操ることはまるで赤子の手を捻るより容易い。
「速い…でも、行ける!私と黒薊ならッ!」
加速する機体の中、機体のインターフェイスに新たなポップアップが浮かび上がる。
「これって…」
後方に浮かぶ
そして両腕部には対IS用刀『
固定武装は今までとは全く変わって直接的な射撃武装はない。
しかし、今銀の福音を屠るには射撃武器は必要なかった。
「見えたッ!」
冬桜を抜刀―
「ハァァァァァ!!」
放った一撃は銀の福音のシールドを削り取る。
「デリャァァァ!」
そして時を同じくし織斑一夏もまた、零落白夜による一撃を福音へ加える。
「織斑くん!まずはその子を!」
私がそう伝えると一夏はエネルギー切れ寸前の紅椿を抱きかかえる。
「悪かったな箒、遅くなって。」
「嗚呼、一夏…一夏ぁ!」
「なんだ、泣いてるのか?」
一夏の手は優しく箒の頭をなでる。
「心配かけたな。もう大丈夫だ。」
「心配など…していない!」
強がりを見せる箒。まだまだ素直になるにはかかるらしい。
「これ、持ってきてよかった。」
一夏はそう言うとリボンの切れた箒の髪をポニーテールに結いなおす。
「これ…は」
「誕生日、おめでとう。箒」
赤いリボンに結ばれたポニーテールは夏の空に揺れる。
「ありがとう…一夏…。」
「ああ。それじゃあ―行ってくる!」
左手に『雪羅』を備えた白式が私の隣へ並ぶ。
「やろう。織斑くん。」
「ええ。終わらせます!」
一気に加速した二機に対して銀の福音は雨あられと光弾を吐き出す。
「そう何度もくらうかよ!」
白式は雪羅から展開される零落白夜のシールドで光弾を受け止める。
「私だってぇぇぇ!」
黒薊は光り輝く膜につつまれていた。しかし唯のシールドではない。
アブゾーブ・シールドと表記されたソレは逆に光弾を取り込み、
光弾の雨をやすやすと突破し冬桜を振り下ろした。福音はレーザーブレードを振り、つばぜり合いに持ち込む。
「ならッ!いけッ白夏!紅箒!」
キュィィィィと黒薊の『声』が頭に流れ込む。
それは―未来。
「見えたッ!」
機体を離れた白夏と紅箒は其々の
エネルギーの刃を纏った白夏は福音の左翼を奪い去った。
そして紅箒は残った右翼に向けレーザーを放つ…がエネルギー翼のシールドに阻まれる。
『Laaaaaaaaaaaa!』
福音は甲高い鳴き声をあげ飛び去ろうとした。その先には―紅椿がいた。
しかし、福音が向かうことを予測するかのように荷電粒子砲の直撃を受ける。
「逃がすかぁぁぁぁ!」
一夏の駆る白式が雪羅による射撃をしつつ、急速に接近。
「喰らえ!零落白夜ぁぁぁぁ!」
しかし、その一撃は右翼を破壊しただけであり、再生した左翼までも奪い取ることはできなかった。
『Laaaaaa!』
「ぐあッ…!」
そして白式へ向け急加速した福音はシルバーベルによる射撃とレーザーブレードによる斬撃を白式に加えた。
雪羅のシールドは連撃を受け止めて十分の戦えるエネルギーを残すほど器用ではない。
「くっ、エネルギーが…!」
「一夏ぁぁぁ!」
斬。白式へ追撃を加えようとする銀の福音へ一撃が加えられる。
金色に輝く粒子を纏った紅椿。
「箒!大丈夫なのか!?」
「ああ。それよりも、これを受け取れ!」
紅椿は白式に触れ、そのエネルギーを回復する。
「これは…エネルギ-が回復…?いける…いけるぞ箒!」
「ああ。やってこい一夏!」
白式は加速する。
「織斑くん!トドメを!」
私は銀の福音の注意を引き付ける。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
そして白式は最大出力になった零落白夜の一撃を―振り下ろした。
~~~~~
「うぉぉぉぉぉぉ!」
「え?きゃぁ!」
メールに書いた通り千冬さんにお叱りをもらおうと歩いていると「とっとと出てけー!」と言う声が聞こえた。
と思ったら部屋から一夏が飛び出してきたのである。
どんがらがっしゃーん!と古風な効果音が出そうなほどにぶつかった私たち。
「痛たた…ふぇ?」
ここで問題。ぶつかって下敷きになったのは私+ラッキースケベ王織斑一夏=?
A.一夏君 私の胸に フルダイヴ
落ち着け、落ち着け私。ここで暴力に訴える行為を決してしてはいけない。
「痛ってぇ…って、おわぁ!」
そうこうしている間に一夏はガバっと飛び起きる。
「す、すいません!」
そういった瞬間ダァァァァンと襖が開いた。
「「「「「いぃぃぃぃちぃぃぃぃかぁぁぁぁぁぁ?」」」」」
おぉぉっと!ここでヒロインズが入場!
「わ、私と言うものがありながら…破廉恥な…!」
「ほんッとにバカじゃないの!?」
「許せませんわ!」
「一夏…そういうとこ…だよ?」
「嫁よ…この国では不倫は文化だそうだが…ドイツでは違うぞ?」
「あ、ああ。待て、待て待て待て俺は悪くないだろぉぉ!!」
「「「「「問答無用ォォォ!!!!」」」」」
ISを展開したヒロインズは一夏へ向け断罪の一撃が振り下ろされる。
それを見た私は…すでに体が動いていた。
「「「「「「なっ…!」」」」」
私は黒薊を部分展開し一夏を護る様にフィールドを展開した。
「大丈夫?」
「あ、ええ。」
「じゃあまたね!」
何か言われる前に逃げる。うんまさに一撃離脱の基本!
先ず目的地は別館のトイレ。あそこに着替えを全部置いてきたので回収。そして私が昨日寝ていた部屋で着替えてから千冬さんに説明すれば問題は―
「待て。」
角からヌッと出てきてガッっと腕をつかまれてしまった。
「ち、千冬さん…」
「全く…アイツらもそうだがお前はもっとひどい。勝手な行動という言葉で済む問題ではないぞ。」
私の肩をつかんだ千冬さん。やばい。これは私死ぬかもしれない。
「本当に…本当に…心配したんだからな!」
そういった千冬さんは…体を私の胸に埋め泣き始めた。声こそ上げないもののその腕で私を離さないように強く抱きしめる。
「千冬さん。大丈夫です。私は…絶対貴女の前からいなくなったりしませんから。」
そう言って私は千冬さんを抱きしめ、頭をなで続けた…。
~~~~~
星が輝き夜風が二人の髪を揺らす。
「どういう事だ。」
先に口を開いたのは―千冬だった。
「どっちのこと?」
「白式なんぞとうに見当は付いている…冬香のほうだ。」
「だよねぇ~。どこまで知りたい?」
「全部―と言いたいところだが、どうせお前ははぐらかす。」
「おっ言うねぇ。―そうだな。前にちーちゃんに教えたことが全部って言えばいいかな?」
「………」
以前束が言ったこと…織斑計画の産物を全て消す。その為に黒薊は生まれた。そう言っていた。
「ねぇちーちゃん。」
「なんだ?」
「ふゆちゃんの事―好き?」
「………ああ。」
「そっか。私もね…ふゆちゃんの事大好き。」
そういって彼女は手すりから飛び降りる。
そしてくるくる一回転し…千冬の真隣りに降り立った。
「絶対渡さないから」
岬に強く吹き付けた風と共に、束はそう言って消えた。
臨海学校編これにて終了。
ちなみに冬桜は最初は雪片参型って名前にする予定でした。
その意味―分かるな?
一応福音への最後の一撃は冬香にしようと思ったのですが…彼女のワンオフアビリティは少しお預けです。
よろしければ感想お願いします。
追記:設定回の情報更新しました。