TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴る。
国際色豊かなIS学園だがやはり運営や生徒の比率が日本人に傾いていることから日本式のチャイムが取り入れ得られている。
「明日から夏休みか…」
そう今日は7月29日。明日の土曜日から夏休みが始まる。今ちょうど一学期最後のホームルームが終わったところだ。
「ふゆふゆ~」
机に身体をぐでっとさせているとのほほんさんが近づいてきた。何やら紙を持っている。
「ん?どーしたの?」
「あのね~織斑先生がふゆふゆにって。」
千冬さんが?なんだろ…?
ええと、何々…ホームルーム終了後一人で生徒会室まで来てね。楯無お姉さんより…?
「は?」
え?どうゆうこと?私何かしちゃいました?ってマジで心あたりないんだけど。
臨海学校の後はいたって普通に過ごしていたはず…いや待てよ。
臨海学校から帰ってきた日に久しぶり過ぎてつい簪ちゃんに抱き着きたくなったから真顔で抱き締めて良い?って聞いたらちょっと引かれた件の事か…?
いやしかし、アレは最終的に簪ちゃんがOK出してくれたから問題はないはず…。
「なんだったの?」
そう言ってのほほんさんがのぞき込んできた。
「おじょーさま…?ああそっかぁ!」
「何か知ってるの?のほほんさん」
「うん!でも言えないや。」
そう言ってのほほんさんは去っていった。一体何なのこれ…?
~~~~~
「と、言う訳で」
「いや、どう言う訳なんですか?」
生徒会室に入ると楯無さんにいきなりそんなことを言われた。
「貴女を生徒会書記補佐に任命しま~す!」
バッと開いた扇子には大きく『任命』と書かれている。
「へ…?な、何で私が…?」
「もう、知ってる癖に~」
「いや知ってるくせにとか言われても真面目になんでか分からないんですけど…」
「私の監視下に置けるからよ。」
(めちゃくちゃドストレートに言ってくるなぁこの人)
…まぁ確かによくよく考えれば至極真っ当なことだ。臨海学校の時、オータムは明らかに私を認知したような言い方だった。
つまり私が、いや『角谷奈津美が私であること』がどこかしらか漏れている…。
亡国企業は私のような存在を放っておきはしない。織斑一夏に仕掛けるタイミングで―いや、もっと前に来る可能性だって捨てきれない。
ここで彼女の監視下に入るというのは紛れもなく彼女の助力が得られるということ。私にとってもメリットは大きい…。
「まぁ、それ以外もあるんだけど…。」
「ん?何か言いました?」
「ううん~。なんでもないわ~。」
心配無用と書かれた扇子が開かれた。
「…で、勝手に任命しちゃったけど、受けてもらえるかしら?」
「はい。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げる。と、いきなり後ろのドアが開いた。
「やったぁぁ!ふゆふゆと一緒だぁ~!」
その声と同時に身体に衝撃が襲い掛かる。
私の体に抱き着き嬉しそうにしているのはのほほんさんだった。
「の、のほほんさん!?」
「わーい!わーい!」
「こら、本音。」
と、のほほんさんは虚さんに引っぺがされた。
「あら?簪ちゃんだけじゃなくて本音ちゃんとも仲がいいのね。」
ちょうど良かったわと楯無さんは付け加える。
(ん…?そういえば私生徒会書記補佐って言われたよね…。)
「本音ちゃん。冬香ちゃんは貴女の補佐だから、よろしくね?」
「えへへ。ふゆふゆよろしく~。」
…そういえば原作だとのほほんさんがいないほうが仕事がはかどるとか、初めて生徒会室で一夏と会ったとき深夜まで仕事してて寝不足とか言ってたような…。
楯無さん…もしかして私に雑用係押し付けるつもり…?
~~~~~
そんな成り行きもあり、私は生徒会執行部の一員となった。
書記補佐が正規の役職かは分からないけど。
「あ、お帰り。冬香。」
部屋の扉を開けると、簪ちゃんがいた。このところずっと打鉄弐式の開発で整備課に入り浸っていたのでこの時間に自室にいるのは珍しい。
「ただいま。珍しいね。専用機、ひと段落付いたの?」
「うん。最近は倉持のほうからもデータが送られてくるから。」
どうしたこっちの倉持。本来なら白式の事で手一杯のはずじゃないのか…?
「そっか…ちなみにそのデータってどんなの?」
「あ、えっとこれ良いのかなぁ…じゃあ、ちょっとだけ見せるね。」
彼女はそう言って手元のデバイスから空中にディスプレイを展開した。
そこに映されたある映像。それは…
そう、そのISはまごうことなく…
「黒薊。えっとこのISの名前…」
簪ちゃんが
よく見ると私も少し映っていた。そういえば千冬さんから臨海学校前にデータの提出と、そのあと私の映像の使用許可とかいろいろ言われたけど…
使い道これだったの…?と言うよりも、私だって簪ちゃんにバれてないのが幸い過ぎる。
「パイロットは…角谷奈津美って人。知ってる?」
良く知っています。
「うーん…知らないなぁ。インフィニット・ストライプスとかに載ってる?」
と、私は精一杯の誤魔化しをする。
「アーカイブとか見てみたけど…いなかった」
「……どう思う?その人の事」
(あああああ!何言ってんだ私!?ここは適当に流すところでしょ!?)
簪ちゃんは神妙な顔持ちで考え込む。
「あ、ごめんね?変なこと聞いて…」
「ううん。でも…かっこいい…と思う。」
簪ちゃんは頬を赤らめ答えた。
「かっこいい…?」
「うん…誰かがピンチの時に助けに来る、まるでヒーローみたいだなって。」
ヒーロー…ヒーローか……。
正直、他人から『角谷奈津美』の事を聞いたのは初めてだった。
…まさかそんな風に思われるなんて考えてもみなかったけど。
「冬香…?」
「あ、うん。なんでもない。」
と、突然コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「あ、私出るよ。」
そう言って私は扉を開ける。
「箒?」
開けた先にいたのは箒だった。普段は私の部屋に来ることは殆どないのだが、いったいどういう風の吹き回しだろうか。
「やあ冬香、アドレス…交換してもらえないだろうか?」
「アドレス…?ああ、メルアド!」
そういえば箒とはアドレス交換していなかった。
「ああ。それと夏祭りに来てほしくてな。予定とかも聞こうと思ったんだが交換してなかったからな。」
「夏祭り?」
「ああ。篠ノ之神社の境内で毎年花火大会と一緒にあるんだ。よかったら来てほしい。」
「分かった。じゃあケータイ出して。」
モノはスマホなのだが何故かこの世界ではケータイと呼ばれている。
ピと赤外線を受信した音が鳴る。ガラケーの象徴、赤外線も未だ現役なのだ。
「うむ。ありがとう。詳しいことはいろいろ決まったら教える。」
そう言って彼女は戻っていった。
夏祭りか…。原作だと一夏と二人で居たような気がするんだが、私がお邪魔してもいいんだろうか。
まぁ成り行きに任せるというのもいいだろう。
さて…夏休みかぁ…。そろそろ12巻の封印を解いてもいいかもしれない。
ちなみにマドカとスコールのほうは冬香はまだ思い出してないです。
原作四巻とか二次創作書きには鬼門なんじゃないんですかね…?
ちなみに次回いきなり夏祭りの話に飛びますので、夏休み編はすぐ終わる予定です。
あとのほほんさんって楯無さんのことなんて読んでるんですかね…?
評価感想お待ちしています。