TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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夏休み編②-裏

夕方になって帰宅すると一夏が何やら出かける準備をしていた。

 

「あ、千冬姉。お帰り。」

 

いつものように汚れない笑顔で迎えてくれる。

 

「ああ、ただいま。」

 

ただいまと言えるのは一年の間でほんのわずかしかない。盆と年末年始、この家に帰ってきた時だけだ。

 

帰り道買ってきたビールを冷蔵庫に入れると先ず、スーツを脱ぐ。

 

「千冬姉、これから箒のところの夏祭りに行ってくるけど、千冬姉は?」

 

「ん…そうだな。後で行こう。」

 

「じゃあ、千冬姉の浴衣出しておくから。」

 

そう言って一夏は隣の部屋のタンスを漁りに行く。

 

(そうか…もうそんな季節か…)

 

かつて一夏と通った篠ノ之剣道場。今となっては懐かしい思い出だった。

 

アイツと会ったのもそこが初めて…。いつもだったら家にいるが、久しぶりに顔を出してみるのもいいだろう。

 

リビングのテーブルにはチラシが置いてあった。8時からは花火が打ち上がるらしい。

 

「千冬姉ー!俺は夕飯あっちで済ませるけど、千冬姉は?」

 

「ああ。私もそうする!」

 

そうこうしている間に一夏が浴衣を持ってきた。

 

「じゃあこれ…ってもう時間!?千冬姉、自分で着付けできるよな?」

 

「ああ。急いで行って来い。」

 

そう言うと一夏は勢いよく扉を開け外へ出てゆく。

 

「とりあえず風呂に入るか…」

 

そう言って汗を流しに行く。今年の日差しは一段と強かった。

 

 

 

~~~~~

 

「やはりここだな…」

 

売っていた焼き鳥と缶ビール、それとプラカップの生ビールを持ち戻ってくると既に花火は始まっていた。

 

ここは昔、花火が良く見えるが人が来ないポイントとして見つけたところだった。

 

一応、知ってるのは私と一夏のはずだが一夏が誰かに教えてるかもしれない…とそんな心配があったが杞憂だったようだ。

 

買う前にシートを敷いていったが誰も着た様子はない。カコっとコップホルダーにビールを置き、晩酌を始める。

 

焼き立てをもらった焼き鳥はまだ暖かい。甘じょっぱいたれの絡まった焼き鳥を含むと一気に生で流し込む。

 

マスターのところで呑むカクテルも美味いがこういうのもなかなか乙なものだ。

 

既にプラコップの中にビールはない。そこで缶ビールを開け、コップへ注いでゆく。

 

そうして焼き鳥を食べようと手を伸ばすと…もうパックの中になかった。

 

 

「むぅ…もう焼き鳥がなくなってしまった。後五本くらいは買っておくべきだったか…」

 

 

そう呟くと横からスッと手が伸びてきた。その手には焼き鳥が二本ほど握られている。

 

 

 

「どうぞ。千冬さん。」

 

 

振り返ると―少女がいた。その黒く長い髪と眼鏡のふちが花火の光に照らされ、艶めかしい雰囲気を醸し出している。

 

そして青いワンピースと麦わら帽子が何より似合っていた。

 

「……冬香?」

 

その少女の名を呼ぶ。とりあえず差し出された焼き鳥を受け取ると彼女は私の隣にシートを敷き始めた。

 

(……おかしいな。私はこんなに酒に弱かったか…?)

 

呑んだのは生と1缶分のみであったが、まさか()()()()()()()()()()思ってもみなかった。

 

「奇遇ですね。」

 

少し私に身体を寄せる彼女―天利冬香。

 

「あ、ああ。そうだな。」

 

…どうもおかしい。何故酔いからの幻覚を見ているはずなのにこんなにはっきりと彼女の姿が見えるんだ?

 

「食べます?」

 

さらにそう言って皿に盛った焼きそばを渡してくる。その皿を手に取ると確かに触感が存在した。

 

ポンと隣で音がした。彼女はラムネを飲むようだった。

 

「千冬さん、乾杯しましょ?」

 

「ん、ああ。」

 

そう言って私のプラコップに瓶を当てる。

 

そして皿と一緒に渡された割箸で麺をすすると…きちんと触感と味がする。と、するとこの冬香は…本物?

 

「……なんでお前がいるんだ!?」

 

「ふぇ…?」

 

 

 

~~~~~

 

 

その後しばらくたい焼きを食べたりしながら花火を見ていると一夏から電話がかかってきた。

 

「すまん」

 

と冬香に言って立ち上がり木の陰のほうに行く。

 

『あー、もしもし千冬姉?』

 

「一夏、どうした?」

 

『あの…今日箒の家に泊まっていくことになった。』

 

「……は?」

 

『剣道場とか見てたら子供のころの夏合宿とか思い出して…箒の叔母さんもいいって言うからさ?』

 

「はぁ…分かった。ただし、そっちに迷惑はかけるなよ。」

 

そう言って電話を切る。

 

「はぁ…まぁアイツの事だ。篠ノ之に手出しなんてしないだろう。」

 

そう呟く。ふと時計を見ると既に九時は回っていた。

 

「そういえば冬香の家はここから結構距離があったな…」

 

以前、と言っても入学前だがここから1時間以上はかかったはずである。

 

「………あ」

 

ふと、頭に妙案が浮かんだ。今日一夏は帰ってこない。つまり家には私一人なわけだ。

 

「冬香」

 

すぐさま彼女の元に寄り声をかける。

 

「なんですか?」

 

「今日は私の家に泊まっていけ。」

 

そう言った。少々強引でも今日は彼女に泊まっていった貰おう。

 

 

 

 

………いずれ毎日寝泊まりする時が来るかもしれないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

私の家に泊まっていけ―そう言った後の千冬さんの行動は早かった。

 

すぐさま私にお母さんの番号を聞き、見事な手腕で説得したのである。

 

まぁ聞いていた話の内容を鑑みるに、夜遅く返ってくる今日のスケジュールは両親ともども心配はそれなりにあったようで、お父さんとお母さんは快諾気味だったのだろう。

 

と、言う訳で織斑家へ泊まることになった私。

 

「お邪魔します。」

 

「まぁ、そう気を遣うな。自分の家みたいに楽にしてくれ。」

 

扉を開けると綺麗に靴が並んでいる。少し少ない気もしたが、まぁ二人分なら普通だろう。

 

しかし、普段は二人ともIS学園の寮で生活しているとは思えないほどきれいに掃除されていた。

 

「とりあえず、風呂に入れ。夜でも汗かいただろう?」

 

「良いんですか…?」

 

なんだか他人の家の風呂に入るのは気が引ける…というかそもそも親戚以外でよその家の風呂に入ったことがないのだ。

 

「ああ。もう沸いてるから…脱衣所はそこだ。着替えは私の寝間着をそこに置いておく」

 

「えぇ!?悪いですよ…。」

 

「いや、客人をもてなすんだ。ずっと同じ格好させられないさ。」

 

そう言って私から帽子とカバンを取り、強引に脱衣所へ連れていく。

 

とりあえず、服を脱ぐ。

 

「冬香、脱いだものはそこの籠に入れておいてくれ。」

 

扉の奥から千冬さんの声が聞こえた。とりあえず言われたとおりに籠に脱いだ衣服を入れる。

 

そしてスライド式の扉を開け、浴室へと入る。内装は木目柄の壁、シャワー関連は黒で塗られており高級感が漂っている。

 

反面、ボディーソープやシャンプー等はよく特売で売られているもので私も何回か使ったことのあるものだった。

 

とりあえずシャワーで全身を洗い流す。そして、ボディーソープを…

 

 

―ガラッ

 

 

手に取ろうとした瞬間だった。後ろの扉が急に開いたのだ。

 

「ち、千冬さん!?」

 

「私も汗をかいたからな。せっかくだから一緒に…な?」

 

そう言って千冬さんはボディタオルにボディーソープを付け泡立てる。

 

「洗ってやる。この前のお返しだ。」

 

「ひゃっ!」

 

少し冷たいボディーソープと共に千冬さんの手が私の背に触れる。最初からボディタオルでくるものだと思っていたので少し変な声を出してしまった。

 

「……きれいな肌だな。」

 

私の体を洗いながら千冬さんがそう呟いた。

 

「そうですか?」

 

臨海学校の時の傷はいくら見てもきれいさっぱりなくなっていた。黒薊の特殊なナノマシンが完全に治癒させる―と束さんが言っていたのでそこは完璧なんだと思う。

 

「ああ。私よりずっとな。」

 

「…そんなことありませんよ。ずっと一夏君を護ってきた素敵な肌です。」

 

そう言うと千冬さんの手が止まった。振り返ってみると顔が少し赤い。

 

「あっ…いやすまん。」

 

そう言ってまた手を動かす…。

 

 

…そのあと私は髪までしっかり洗ってもらった。

 

 

 

~~~~~

 

 

「晩酌だ」

 

風呂からあがり、千冬さんのチェック柄のルームウェア(胸元が少し緩い)に着替え、リビングへ行くとそう言われた。

 

「まだ飲むんですか?」

 

「ああ。今日はお前がいるからな。一人で晩酌は悲しいものだぞ?」

 

む…そう言われるとなんだか断れない。

 

「それにおまえの分もある。」

 

そう言ってドンと出されたのは良く見る缶のノンアルコールカクテルだった。

 

「良いんですか私が飲んで…?」

 

「どうせ飲むのは素面の時の私だからな。好きに飲め。」

 

ビールをそそぐ姿はなんだか絵になる。そしてポリと箸で皿の漬物をつまんでいる。

 

「じゃあありがたくいただきます。」

 

私も缶を開けて用意されていたコップにつぐ。チン―とコップ同士の触れ合う音が響いた。

 

 

「「乾杯」」

 

 

二人だけの夜はその日遅くまで続いた…。

 

 

~~~~~

 

 

完全に酔った千冬さんを部屋まで連れていくと強引に私もベッドに連れ込まれた。

 

少しアルコールの匂いがする吐息を直に感じながら私は目を瞑る。

 

正直、今でも脳の理解が追いつかないが…絶対に忘れないであろう目まぐるしい今日一日の事を想い、私はその日。眠りにつくのだった。

 

 




平均評価が5を切って若干心を痛めてるので事実上の初投稿です(謎)

今回は裏と言うことで前回の補填回です。次々回から二学期に入ろうかなと思っています。

(一夏が泊った理由はガチで昔を思い出したからなので箒とのロマンスは)ないです。

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