TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
一週間後、束さんからの吉報はなく、文化祭当日を迎えた。
「お、お帰りなさいませ。お嬢様。」
そして私は顔を赤らめながら接客をしている…。
(うぅ…なんで私が…)
本当に私を接客業務に割り当てた担当を呪い殺したいレベルだ。…まだ普通のメイド服なら我慢できた。
だが、発注ミスによって二つほど丈の短いスカートが届いたのだ。誰が履くかは公正にじゃんけんで…となってしまったのが運の尽き。
勝ち抜きスタイル(男気じゃんけんとも言う)で最後に残ったのは私と箒の二人だった。黒タイツは履いているものの、やはり恥ずかしい。
ちなみに私の姿を見た複数名から『幸薄系眼鏡黒ストタイツミニメイドとか業が深すぎる』とか言われた。
「耐えろ…耐えるんだ冬香」
私が接客をしていると後ろから声が聞こえた。悲しくも同じ運命になってしまった箒だ。
「心頭滅却すれば火もまた涼し…」
「…箒それ何回目?」
少なくとも20回はそのセリフを聞いていた。ついさっきその姿で一夏の前に出た時は死にそうなくらい顔を赤くしていたが何とか割り切ることが出来たのだろう。
「天利さ~ん!次のお客さんお願いしま~す!」
受付係である鷹月さんからの呼び出しだ。私はすぐさま入り口へ行き待っていたお客さんを…
「冬香さん!?」
「あ、蘭ちゃん…」
そこに立っていたのは私がチケットを渡した蘭ちゃんだった。
「冬香さん…なんか意外です。」
「あはは…私もなんか知らないうちにこうなってたから…」
とりあえず、彼女を席に案内し注文を取る。
彼女が頼んだのは『メイドのご奉仕セット』。内容は焼き菓子と紅茶のセットなのだが目の前で紅茶をメイドが注ぐというオプション付きだ。
…一応、お客さんに食べさせるサービスもあるのだがそこは隠しておこう。
注文はマイクを通じてキッチンテーブルへ伝えられる為、伝票や伝えに行ったり等の必要なない。
ポッドはガラス製のものにメイドが茶葉とお湯を入れお客さんの元へもっていくため焼き菓子が出来上がるまでの間に蒸らしまで済まさなければならない。
「お、蘭!」
「一夏さん!」
焼き菓子とポッドをティーカートに乗せ彼女の元まで行こうとするとどうやら一夏が蘭ちゃんに気付いたようだった。
「お前も来てたんだな。…にしても誰からチケット貰ったんだ?」
「あ、えっと冬香さんに…」
「冬香…って天利さん!?」
一夏は驚きの表情を浮かべる。そしてどういう経緯で知り合ったのかを聞き出そうとした時…
「ちょっと織斑く~ん!次のお客さん!」
「え、ああ。悪い蘭。また後でな!」
鷹月さんに呼ばれていた。流石は人気NO.1休む暇もなさそうだ。
「お待たせしました。お嬢様」
前もって温められていたティーカップに紅茶を注ぐ。虚さんが教えてくれたので手順は完璧だ。
「こちら、焼き菓子です。」
「うわぁ、美味しそうですね」
焼き菓子はマドレーヌ、フィナンシェ、サブレのフランストリオ。
一応シャルちゃんの指導で作ったもののためフランス人にも納得の品とのこと。
「では、ごゆっくりお楽しみください…」
「ん…あ、待ってください、冬香さん。このメイドのサービスって何ですか?」
ぎくり、なんで今それに気付いた?
「お、お嬢様。何のことでしょうか…?」
「あ、いやこのテーブルに貼ってある…」
(はぁぁぁぁぁ!?なんでそんなものがテーブルに貼ってあるの…)
ふぅ、と息をつきそのサービスの説明を始める。
「…メイドがお嬢様へのご奉仕をするサービスになります…」
「へぇ…じゃあ、お願いします!」
「…では失礼します。」
テーブルにあるもう一つの椅子を彼女の隣までもっていき、ティーカートに乗せてある白手袋を手に付ける。
そして彼女の真隣りとなった椅子へ座った。
「え?」
うん、そうなるよね普通。
はぁ…これあんまりやりたくないんだけどなぁ…恥ずかしいし。…まだ蘭ちゃんなのが救いだ。
「…ではお嬢様、はじめはどれにいたしますか?」
「あ、えっと…じゃあマドレーヌで…」
彼女も私が何をするか察したらしい。
「では失礼します。お嬢様、あーん…」
彼女は口を開ける。そして私は右手につかんだマドレーヌをそっと口元へ近づけた…。
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あの地獄のような時間が終わりやっと休憩時間がやってきた。
結局その後は楯無さんが来たり、千冬さんが来たり。後は黛さんがみんなの写真を撮ってたり。
ちなみに私と箒のミニはのほほんさんと矢竹さんが引き継いだらしい。のほほんさんはにこにこしながら受け取っていたが…。矢竹さんには同情する。
現在は午後二時。五時までの約三時間はフリーだ。楯無さんから
「さて…どうしようかな…。」
今は唯、廊下をぶらぶら歩いてお祭りと言う雰囲気を楽しんでいる。
…正直言うと回りたい場所がないのだ。簪がいれば四組に行ったのだが…。
悲しいことか幸いかは分からないがクラスの人たちに『文化祭は関わらずその時間を専用機に向けてほしい』と言う内容をオブラートに包んで言われたらしい。
うーん、何か差し入れでも買って整備ルームへもっていくべきだろうか。
そう悩んでいると私はいつの間にか学園の外、第六アリーナの先に来ていた。
運動部の練習場所でも屋外棟も存在しないまさに人気のない場所。そもそもほとんどの生徒が来る意味を持たないはずだ。
…しかし、しかしだ。私がここに来ることは半ば運命だったのかもしれない。
「久しぶりだな。角谷奈津美…いや天利冬香、そう呼んだほうがいいか?」
私の先には拳銃を構えた少女が一人立っていた。
「織斑…マドカ…!」
次回で一応文化祭の話が終わります。
この話を書いてる途中で(…黒薊が使えなくなったの千冬さんに言ってないのは不味くないか…?)となったので前回の話に700字程度書き足しました。
あ、ちなみに「メイド 眼鏡 鷺沢文香」で検索すればどストレートなのが出ます。
感想評価よろしくお願いします。