TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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専用機持ちタッグマッチ編①

「遅くなったけど一夏君、生徒会副会長就任おめでとー!」

 

楯無さんの声に続き、クラッカーが鳴り響いた。

 

「おめでと~!」

 

「おめでとうございます。これからよろしくお願いしますね。」

 

書記である、のほほんさんと虚さんの声も響く。

 

俺が生徒会副会長に決まったのは二週間前、文化祭の投票結果が発表された時だった。

 

「えっと…ありがとうございます」

 

「ほらほら、もっと喜びなさいよ~」

 

そう言って楯無さんは腕を押し付けてくる。

 

「いやぁ、まだ慣れなくて…」

 

副会長になってからと言うものの、今までは他の部活への『貸し出し』が主な仕事だったので何気に副会長として生徒会室に来たのは今日が初めてだったりする。

 

「とりあえず、一夏君はここの机を使ってね」

 

そう言って2つずつ、対面並べられた机の一つを指さす。

 

…そういえば生徒会は俺を入れて四人なのに、なんで机が五つあるんだ?

 

のほほんさんと虚さんの机と同じようにファイルとか、筆記用具とか置いてあるけど…

 

「さて、今日は一夏君のためにケーキを焼いてきたのよ!」

 

楯無さんがそう言ってパンパンと手を叩くと生徒会室の扉が開く。

 

「うぅ…なんで私が…」

 

そう言ってケーキをもってきたのは…メイド服姿の天利さんだった…。

 

 

天利冬香

 

彼女は俺にとって『謎の人』だった。

 

クラスでほとんどかかわったこともないし、話したことも他のクラスメイトより圧倒的に少ない。

 

それに良く休んでいる印象もある。

 

伸びた前髪は目を隠しており、なんだか近寄りがたい雰囲気があった。

 

ここまでなら中学の時も一人二人はいる様な…失礼だけど根暗な人、それで終わる。

 

でも、何だか彼女は違うようだった。

 

教室だと、良く箒やのほほんさんと話してる所を見る。

 

それで時たま見せる笑顔が…なんだかすごく優しいんだ。

 

千冬姉もなんだか天利さんと仲がいいしほんとに不思議な人だ。

 

だから、文化祭でメイドの格好をしたときは案外ドキッとしたし…正直、仲良くなってみたいと思ってた。

 

まさか、こんなところでそんな機会が来るとは、思ってもみなかった。

 

 

 

「あ、天利…さん?」

 

「…お、おめでとう。織斑くん…」

 

 

~~~~~

 

文化祭の終わった日から、今日までは生徒会休んでいいからと楯無さんに言われていたので、久しぶりの生徒会だった。

 

生徒会室に入るとのほほんさんと虚さんが飾り付けをしていたので何事かと思いきや、一夏君の歓迎会を今日にずらしてくれたらしい。

 

…いや、私が休んでる間にやってくれてバリバリ構わなかったんですけど。

 

そうしたら楯無さんにむりやりメイド服着させられて、手を叩いたらケーキ持って入ってきてなんてまた言いくるめられて。

 

それでメイド服のまま歓迎会に参加させられていた。そして今はその歓迎会もお開きになり、生徒会室にいるのは私と楯無さんの二人だけであった。

 

「ん~おいしい。冬香ちゃん、虚ちゃんに教わってだいぶ上達したわね。」

 

「…私もう帰っていいですか?」

 

「ダメよ。本題はこれからなんだから。」

 

「本題…?」

 

「ええ。今度、専用機持ちだけのタッグマッチを開催することになったの。」

 

うん、確かこのタッグマッチは原作だとキャノンボール・ファストで襲撃してきた亡国企業に対応するための訓練と言うか、スキルアップを目的に急遽開かれたものだったはずだ。

 

「…それに出場してほしいのよ」

 

「角谷奈津美として…ですか?」

 

「…そうよ。()()()()()()()()()()()()()…ね」

 

更識簪のパートナー。原作では一夏がその役割になったはずだった。

 

そこから簪は求めていたヒーロー像を一夏へ投影し…恋心を抱くことになる。

 

「私…ですか?」

 

「逆に貴女以外に誰が務まると思う?少なくとも私は貴女しかいないと思っているわ。」

 

「…分かりました。簪のためなら、私はなんでもします。」

 

「それで、問題はあと一つね。」

 

「簪の専用機…」

 

簪曰く、機体はとある黒いIS(くろあざみ)のデータで80パーセントは完成している。

 

問題はその後の機体の各干渉による調節と、武装のデータが圧倒的に足りないこと。

 

ミサイルのマルチロックオンシステムに、可変速荷電粒子砲。それに高周波薙刀。

 

通常の荷電粒子砲なら以前の黒薊のビーム・マシンガンがある程度流用できるが、彼女の二門の荷電粒子砲は小型ジェネレータを内蔵した可変速タイプ。

 

つまり粒子の圧縮率や加速率を状況によって変化、スナイパーライフルのような長射程高威力のものからショットガンのようにビームの散弾を撃つことも可能とするものだった。

 

勿論通常のビーム・ライフルやビーム・マシンガンのような連射型に変更することも可能…というものが理想だった。

 

「…私に良い考えがあります。」

 

正直、これは成功するか、というか相手が了承するかの問題になる。

 

なので確実性は全くないし、頼る相手が相手なので正直微妙なところだが…。

 

うーん、とりあえず簪から様子を聞いて…かな。

 

 

~~~~~

 

「だめ、ここのPICも干渉してる…」

 

私、更識簪は専用機を持っていない。その理由をたどれば、白式…織斑一夏に行きつく。

 

始めは彼の事を恨んだ。私の打鉄弐式のほうが早く開発が始まったのに、なんで今更…と。

 

でも、唯そのことを恨んでいても仕方がないと決心したのはあの日…。

 

 

私が初めて冬香と会った日。

 

 

私は昔からロボットとか特撮が好きだった。

 

人々の笑顔を守るために戦うヒーロー。迫りくる宇宙人から自分を犠牲にしてまで戦うヒーロー。仲間たちと共に助け合い、ライバルと競い合って世界一を目指すロボットアニメ。

 

熱く、悲しく、時には笑えるそんな輝かしい世界が大好きで大好きでたまらなかった。

 

でも、私の周りに今までそれを理解してくれる人は、誰一人としていなかった。

 

天利冬香…私のルームメイトにして一番の友達。…私が、いちばんだいすきな人。

 

優しくて、可愛くて、ついつい甘えてしまう。

 

そんな冬香に、凄いって言ってほしくて、頑張ったねって頭をなでてほしくて、私は弐式を完成させると決心した。

 

二カ月ほど前まではすべて自分でやっていたが、とあるISのデータが送られてくるようになってからは大幅に楽になった。

 

黒薊と角谷奈津美。

 

黒の機体色に赤のラインと言う私が一番好きなカラーリングのその機体は幾度となく、学園のピンチを救っている。

 

数カ月前の謎のISの襲来…その時も彼女は身を挺して戦った。

 

一組の転校生、その機体が暴走したときだってそうだ。

 

黒薊は大型のバイザーを頭に装備しているため、私は彼女の素顔を見たことがない。

 

でも、その声はどこか優しく、それでいてかっこよかった。

 

理由はそれだけじゃない。

 

お姉ちゃんに少しでも近づきたかったからもある。

 

昔からずっと私は、お姉ちゃんと比べられてきた。

 

私と違って、なんでもできる、優秀な姉。勉強も、運動も、ISの操縦だって私の1つ上なのに国家代表だ。

 

それに、原型である『モスクワの深い霧』からの改修も一人で全部…。

 

私がお姉ちゃんに少しでも近づくのは、もうこれしかなかった。

 

「もう一度最初からスラスターの構成をいじらないと…」

 

ふと、時計を見るともう夜の11時になっていた。

 

六時間ほど何も食べていないが、このくらいはいつもの範囲だ。

 

…嘘、実は結構お腹がすいている。

 

確か整備室に持ち込んだ荷物の中にカロリーバーがあったはずだ。

 

それを取ろうと立ち上がった瞬間…

 

 

「…あれ?」

 

 

視界が揺れた。自分の認識できる世界がまるでマーブルのようにぐにゃりと混ざる。

 

足に力が入らない。それどこか全身から一気に力が抜ける。

 

 

 

次に私が感じたのは…衝撃だった。

 

 

 

ドサッと音を立て倒れこむ私の身体。

 

 

―簪!

 

 

声が聞こえた。私の一番好きな声。

 

 

「とう…か…」

 

私は静かに意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 




簪ちゃんメインヒロイン回を書く日を一体どれほど待ち望んだか。

と言う訳で今回は一夏&簪の視点が主です。

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