TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
「とりあえず、問題はスラスターの位置がPICと干渉してPIC側に障害が発生してるの。」
最早愛の告白にも引けを取らない、簪の告白を聞いた翌日。
私は今打鉄弐式の現状を聞いていた。
しかし、思った以上に進んでいる。この前は80%と言っていたがあと一歩詰めれば機体は完成する。
…ただ、完成したうえでの試験によって分かった問題を処理しなければならないが。
「うーん、しらみつぶしだよね」
「それしかないと思う。えっと、私が展開するから冬香はそのPCから弐式のほうにデータを送って。」
IS学園ではISの一年時の基礎講習としてISの整備、設計なども学ぶことになっている。
私の黒薊は特殊なものなので除外するとして、基本的にISは個々人によるスラスターや装甲の調整が必要になってくる。
なので、最低限の基礎として整備の知識は必要になってくるわけだ。
「来て…打鉄弐式」
簪がピットへISを展開する。
彼女の髪色と同じ、綺麗な水色の装甲が目を引く。
…そういえばこうしてしっかり打鉄弐式の姿を見るのは初めてかもしれない。
ISとリンクしている外部PCの画面をのぞくとエラーメッセージが表示されているのは約12ヶ所だった。
「エラーメッセージを吐いてるのは12ヶ所…簪、そっちに送るよ。」
干渉系の調節は外部からの接続で調整するよりもはるかに本体のコンソールからいじったほうが早い。
ただ、解析は外部で確認したほうが早いケースもある。今回がそのケースだ。
「うん…メインスラスターを変えて…これで、サブスラスターはこっち…」
簪はIS操縦者としての適性もありながらISの整備の道も進んで行けるマルチタイプである。
私は…打鉄のちょっとした調整はできるがあくまでそれはIS操縦者なら一般的なレベル。
「どう、行けそう?」
「うん、あとはシールドバリアーの干渉を確認して、テストフライトかな。」
「シールドバリアーはできるけど…テストフライトは明日にしようか。打鉄もアリーナも借りれてないし。」
正直言って『角谷奈津美』の名前で申請を通せばかなり優先して借りれるのだが、さすがにそれをするほど私は馬鹿ではない。
あとは…確か原作だと背部ブースターパックに異常が出ていたはず。
そう言えば
大型のミサイルランチャーと複合したバインダーがいっそうそれっぽさを引き立てている。
後は、バインダーつながりで『ヴァーダント』とかね。
「シールドの展開…ん、ちょっと反転してる…ここを六センチ移動させて…」
簪は展開した四枚のキーボードを巧みに操っている。
そのキーボードのタイプはどこか、優しさを感じるものだった。
ISはどちらかと言えば『パートナー』だ。単純なメカではなく、それこそ『オーバーマン』のように信頼をもって付き合わなければならない。
「…よし、冬香できたよ!」
「じゃあ、最後に機体のエラー確認ソフト走らせようか。こっちでやるから簪はいったん降りてもらえる?」
そういうと簪は機体を固定したままひょいと飛び降りる。
それを確認した後、機体のコンポーネントに異常がないか組み立てたプログラムを走らせる。
数秒するとピピッという音がパソコンから聞こえた。
表示されたのはやはりブースター関連のエラーメッセージだった。
「エラ―…あ、そこ…忘れてた。エネルギーバイパスの調整。」
そう言うと簪は再び、打鉄弐式を起動させ、全身のエネルギーバイパスを調整する。
エネルギー・バイパスはISにとっては血液。一歩調整を間違えれば大惨事となってしまう。
「…うん。これで大丈夫。ありがとう、冬香。」
「どういたしまして。」
さて、明日のテストフライトの後は…肝心の武装か…。
流石に二人だけだとかなり厄介なことになるな…。
やっぱり楯無さんに話した
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翌日の放課後、無事打鉄とアリーナの使用許可が出たので私たちは早速調整を含めた試験飛行に取り組むことになった…ところまでは良かったのだが。
「あっ…」
「おお、天利さん!それに…」
同じく使用申請を出していた一夏君にばったり出くわしてしまった。
アリーナの使用上いたっておかしいことはない。だがしかし、これは運が悪かったとしか言いようがない。
私と、簪を見た一夏は何かを察したような顔をして口を開いた。
「えっと、更識簪さん…だよな?」
「…はい」
簪は一夏君への視線をそらさずに、しっかりと見つめる。
「その…楯無さんからいろいろ聞いたんだ。…ごめん!君の専用機、俺のせいで…!」
一夏君は簪へ向かって頭を下げた。
簪は…少なくとも一夏君の事を良くは思ってはいないだろう。
原作と違い彼と接したのは、多分これが初めてだ。
もしかしたら、簪は一夏へ平手打ちをするかもしれない…そんな考えがよぎった。
しかし、それは大きな間違いだった。
「私は…以前は貴方の事を恨んでいました。貴方のせいでなんで私がって…。でも、今は違います。」
そう言って簪は私の手をそっとつかんだ。
「貴方のおかげで、こうやって冬香と一緒に
簪はにこやかな笑みを浮かべ、一夏に向かってそう言った。
「それに…私には、隣に立ちたい人がいるんです。その人との出会いも貴方がいないとなかったと思います。だから…織斑君。顔、あげてください。」
そうして顔をあげた一夏へ向かって、右手を差し出した。
「トーナメントで当たったら、私は絶対貴方に勝ちます。それまで負けないでくださいね。」
「…ああ!もちろんだ!」
一夏君は晴れ晴れした笑みを浮かべ簪と握手した。
私は…簪の事を誤解していたのかもしれない。
だって、簪は…私の思っている以上に、強くてかっこよかったから。
次回、冬香の考えるアレが何か明かされます。
自分で書いててアレだけどこれ本当に簪か…?
ああ、そういえば言い忘れていましたが打鉄弐式の荷電粒子砲。あれは一応私のオリジナル解釈です。
アニメの描写を見るに連射と通常のビームを使い分けていたので勝手にそう解釈しました。
感想、意見、評価、よろしくお願いします。