TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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専用機持ちタッグマッチ編④

「皆さんも知っての通り、来週から専用機持ちによるタッグマッチトーナメントが行われます。」

 

 

壇上では楯無さんがスクリーンを背にして話をしている。

 

 

「現在、専用機を保有しているのは全学年合わせ11名…タッグにすると一人余ってしまうわ。」

 

 

―そこで、と言ってパッと手をあげると、スクリーンにとあるISが映し出された。

 

 

「みんなの中にも見たことある人はいると思うけど、まだきちんと紹介してはいなかったわね。」

 

 

黒い装甲に赤いライン。薊の名を関したIS…。つまりそこに映っていたのは…私の姿(角谷奈津美)だった。

 

しかし、そこは楯無さんも考えたようで、ヘッド・ギアやバイザーを付けているIS装備時の写真しかない。

 

つまり私の顔は隠れていると言う訳だ。

 

 

「角谷奈津美。彼女はIS学園と非所属代表候補生との交流の一環として今回トーナメントに参加してもらうことになったの。」

 

 

そう言えば全く気にかけていなかったのだが、二年には『アーキタイプ・ブレイカー』が初出のグリフィン・レッドラムが在籍している。

 

コメット姉妹やヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー等は見受けられなかったため、彼女がいることは全く考えもしなかった。

 

 

「そしてそして!」

 

 

パンと手を叩くとペア表と書かれた一枚のシートが映された。だがもちろんそこにペアの名前は書かれていない。

 

 

「彼女を入れて14名。今回のペアは()()()()()()!慣れていない相手とペアを組むのもまた重要よ。」

 

 

ん…えっと…私聞かされてないんですけど…?

 

 

ちらりと一夏君のほうへ視線を移すと、彼も彼でで驚きの表情を浮かべている。

 

どうやら決めたのは私たちを除く三人で決めたようだった。

 

 

「ペアの発表は4日後!出場する皆、頑張ってね!」

 

 

トーナメントまであと一週間か…。

 

 

~~~~~

 

 

「うーん…」

 

 

IS学園の整備ルーム。そこで声をあげたのは簪だった。

 

結果から言えば『機体』は完成した。しかし、武装システムの構築が新たな壁として立ちはだかったのである。

 

荷電粒子砲は現在応急的な処置としてモードの切り替え不可のモノを取り付けている…が。

 

マルチロックオンシステムは当然未完成の上、高周波薙刀にも手がついていない。

 

 

「…簪」

 

 

「何…?」

 

 

正直、もう道は一つしかなかった。

 

 

「整備課の人に…頼ってみない?」

 

 

正直、私もこれは言いたくなかった。あれだけ意を決して私と機体を完成させたいと言ってくれた、簪を…裏切ることと同じだったから。

 

しかし、このまま二人で続けたところであと一週間でできることなど、たかが知れている。

 

嫌なんだ。私だって簪と二人で打鉄弐式を完成させたい。けれど…けれど…完成しなきゃ意味がない。

 

 

「………」

 

 

簪は茫然とした表情でこちらを見つめる。

 

多分、心の中でいろんな感情が渦巻いているんだろう。私への失望も…あるかもしれない。

 

 

「冬香は…怖くないの?」

 

 

そして、簪はとても不安そうな表情を浮かべ、口を開いた。

 

 

「怖い…?」

 

 

「うん…。誰かを頼るのが怖くないの…?」

 

 

「怖くない…かな。私は信じてるから。」

 

 

「信じる…?」

 

 

「うん。人間は絶対先入観で物事を見ちゃうから。私もそうだけど…でも、その人の本当の姿は必ずしもそうじゃないからさ。だから私は、相手を信じてる。」

 

 

束さんだって、あの人は私をモルモットみたいにするけど、でも彼女はたまに嬉しそうな笑顔を見せる。

 

私は…臨海学校の時に見せた笑顔、それが…彼女の本心だとそう信じてい…信じたい。

 

 

「信じて…いいのかな…」

 

 

簪と打鉄弐式に対する倉持技研の動きは…間違いなく裏切りに近い。

 

でも…ああやって黒薊の映像とデータを送ってきてくれた。

 

彼女が考えていた姉の像だって、実際は大違いだった。

 

唯、勘違いを勘違いと教えてくれる人が傍にいなかっただけ。それだけなんだ。

 

ヒーローは…孤独に戦う姿もかっこいいけど、やっぱり、助けを呼ぶヒロインがいるから、より輝くんだ。

 

 

「うん。簪、もう抱え込まなくてもいいよ。私だけじゃない…皆で受け止めるから。」

 

 

『二人だけで完成させる』そう言ってくれた簪を私は受け止めたかった。

 

でも私だけに頼ってたら簪は前に進めない。

 

一人が、『二人と言う一人』に変わるだけ。

 

 

「ありがとう…冬香」

 

 

簪は笑った。涙を流しながら、笑っていた。

 

そこに、私への失望があったかは…私には分からなかった。

 

 

~~~~~

 

兎にも角にも人がいる―と言うことで楯無さんと話し合った『ある案』を実行するときが来た。

 

楯無さんに連絡を取ったが今、『彼』は生徒会室にいるという。

 

なら手間はかなり省ける。そう言って私は生徒会室に足を進めた。

 

 

「織斑くん…ちょっといいかな…」

 

 

「天利さん?おお、良いぜ」

 

 

一夏は備え付けのパソコンに向かって何やらにらめっこしていた。

 

他にいたのは虚さんだけ。楯無さんは私にメールを返した後、用事で出ていったそうだ。

 

 

「できれば、二人で話したいの…」

 

 

「あー、じゃあ空き教室のほう行くか」

 

 

別に生徒会室で言っても良かったのだが、虚さんがまじめに仕事をしているところで頼みごとを言うのは少々気まずい。

 

彼の言う『空き教室』は生徒会室からそれほど遠くない。たまに生徒会で大きく図面を広げるようなときに使っている教室だ。

 

人通りも少なく、知らない生徒も結構いるだろう。

 

 

「それで、話って?」

 

 

「えっと…ちょっと織斑君に協力してほしいことがあるの」

 

 

「協力?」

 

 

「うん。人集めの…」

 

 

「おお、それくらいだったら別にいいぜ。それで、何すればいいんだ?」

 

 

「えっと…新聞部の黛先輩の力を借りたいの。だから、被写体…かな?」

 

 

黛先輩に関してはほぼ面識がないといっていい。だから楯無さん伝いで頼むわけだ。

 

流石に原作通りデートとの引き換えと言うのは少々無理がある。だから被写体になってもらうことにした。

 

 

「分かった。じゃあ、日時とか決まったら教えてくれ」

 

 

「うん。ありがとう」

 

 

一先ず人材の確保は成功した。後は…ギリギリまで粘るだけである。

 

 

~~~~~

 

 

「かっんちゃぁぁぁん!」

 

「わっ、本音!」

 

IS学園内にある整備ルームには私と簪を含め約8名。

 

のほほんさんは早速簪に抱き着いていた。

 

「やぁやぁ、君が冬香ちゃんね。」

 

そう言うのは新聞部部長黛先輩だ。

 

「あの、今日はありがとうございます。」

 

「たっちゃんからの直接のお願いだし、それにあんなものを条件に出されたらねぇ。」

 

日を改めて黛先輩を含めた三人で話し合った結果、一夏君がなんと手伝ってくれた全員と2ショット写真を撮ってくれることになった。

 

まぁ、その分私が一夏君にするお礼が『なんでも言うことを一回聞く』と言うことになってしまったのだが。

 

あの鈍感の事だ。どうせ変なことはしないだろう。

 

 

「じゃあ始めましょうか!京子、フィー!二人は荷電粒子砲を頼むわ。」

 

 

「あいあい!」

 

 

「おっけぇ~!」

 

 

そう呼ばれた二人は展開されていた荷電粒子砲を弄り始める。

 

 

「本音ちゃん、貴女は妹ちゃんのサポートをお願いね。他は私と一緒にプログラム組むわよ!…と、そういえば冬香ちゃんは整備の知識はどのくらい?」

 

 

「一応最低限はできますけど…」

 

 

「ん~、じゃあ雑用に回ってもらえるかな。買い出しとか、工具のセットとか。」

 

 

む、一夏君と同じポジだ。じゃあ、図書室への返却とかシャンプーの買い出しとかも言われるんだろうか。

 

 

まぁそれは置いておいて、この人数ならなんとか間に合いそうだ。

 

 

~~~~~

 

「ふぃ~何とか仕上がったわね。」

 

 

時計の針は既に夜の10時を差していた。

 

各々食事は簡単に済ませ何時間もぶっ続けでやり通した結果、()()()()()()()()()()()()()()()、打鉄弐式は完成した。

 

 

「基本動作系は九割五分出来てたから何とかなったわね。」

 

 

「あ、あの…ありがとうございます…」

 

 

そう言う黛先輩に対し簪はお礼を言う。

 

 

「いいのいいの。お礼なら私たちだけじゃなく冬香ちゃんにもね。」

 

そう言ってる合間に、私は絶賛片付け中である。

 

 

「さぁて、私たちも片付けるわよ!…っとそうだ。冬香ちゃん、冬香ちゃん」

 

 

「はい?」

 

 

黛先輩に手招きされ、整備室の端のほうへ連れていかれる。

 

 

「今日の報酬の話なんだけどさぁ…、もう一個追加してもらってもいいかな?」

 

 

「追加…ですか?」

 

 

「そう、織斑君の撮影の日にちょぉっと手伝ってほしいだけなのよ。ね?いいでしょう?」

 

 

「まぁ、それなら…」

 

恐らく機材運びとかだろう。よくあるライトとか後ろの幕とか。

 

「じゃあ決まり!ごめんね!時間取らせちゃって!」

 

そう言うと黛先輩は片付けへ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この時のこの会話が、私を地獄に導くことになるとはこの時、微塵も思っていなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




数ヶ月ぶりに戻ってまいりました。

今まで投稿しなかった理由、まぁ簡単に言えば、忙しくなったからなんですけど。

とりあえずちょこちょこ更新していきます。多分月一くらいになると思います。


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