TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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専用機持ちタッグマッチ編⑦

眼前にそびえるISは、私の知る(原作の)ゴーレムⅢとはかけ離れている。

 

 

不気味に赤く光る一つ目に、その漆黒の装甲。そして全身に流れる赤のライン。

 

 

間違いない。その姿は、間違いなく黒薊を模したものだった。

 

 

「さっきまでのゴーレムとは…多分違うよね」

 

 

私がここに来る途中で撃破した数機のゴーレムより、はるかに強い。

 

 

そう思わせる威圧感が眼前の黒いゴーレムには有った。

 

 

「冬香!」

 

 

後ろにいる簪が、安堵と歓喜が混じった声をあげる。

 

 

「簪!弐式を展開して!巻き込まれる!」

 

 

ゴーレムが振り下ろさんとする大型ブレードは今私の左手で受け止められていた。

 

 

「うん!」

 

 

澄んだ水色の装甲は華奢な簪の身体を包み込む。

 

 

「白夏!紅箒!」

 

 

浮遊している多機能ビット、白夏と紅箒へ指示を送る。

 

 

一瞬にして白夏は三基へ分裂し、その一つ一つがソードビットへ形態を変え、そして紅箒はビット本体が展開装甲を展開しゴーレムへ射撃を加える。

 

 

紅箒がビームがゴーレムのブレードへ直撃し、さらに白夏が攻撃を加える。

 

 

ゴーレムは危険と判断したのかアリーナの中心のほうへ後退する。

 

 

「ハァッ!」

 

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に加速、そして腕に装備された対IS用刀―冬桜を展開する。

 

 

黒薊の装甲から紫炎のような光があふれ、ゴーレムへ向かう光の矢となる。

 

 

冬桜の一撃はゴーレムのシールドを突き破りその漆黒の装甲を貫く。

 

 

そしてそのゴーレムの赤い瞳はゆっくりと消えていく。

 

 

動かなくなった黒いゴーレムから視線を簪のほうへ移す。

 

 

「あぁそうだ。」

 

 

そうだ。この一言を忘れてはいけない。

 

 

折角もらった変声チョーカーを付けているのだから。

 

 

「今の私は、角谷奈津美。それ以上でもそれ以下でもない。」

 

 

「…ふふ!そうだね!」

 

 

ニコッと簪の顔に笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

『…敵機は、最大限の脅威と確認。対処レベルEXへ移行…システム、リブート!』

 

 

しかし、倒したはずのゴーレムからは無機質なマシンヴォイスが放たれる。

 

 

「何!?」

 

 

漆黒の装甲は再びその赤い目を光らせながら立ち上がる。

 

 

「嘘…損傷が…!!」

 

 

簪がそう言った。同様にインジケーターにもゴーレムの損傷がまるでなかったかのように表示されている。

 

 

『戦闘用プログラムロード…S.HよりA.Tへ移行…機体装備換装…』

 

 

ガコンという鈍い音と共に、ゴーレムの装甲がスライドし機体内部から紫の炎が放出する。

 

そして背部に装備された円形のバリアユニットは放熱板のような機動兵器へ姿を変える。

 

 

『…完了。最優先目標前方の…黒薊(ワタシ)!』

 

 

そう言い放った瞬間、機動兵器(フィン・ファンネル)を周囲へ解き放つ。

 

 

そして光の翼を大きく広げこちらへ一気に加速をかける。

 

 

 

「ッ!」

 

 

先ほどとは比べられないほど、ゴーレムの動きは速くなっている。

 

 

 

「嘘ッ!!?」

 

 

眼前まで接近したゴーレムは先ほどまで大型のブレードであった右手が通常の腕になっている。

 

 

「きゃぁぁぁっ!」

 

 

しかし、その()()()()()()()()()()()が黒薊のバリアフィールドを貫通し、黒薊の装甲を切り裂く。

 

 

身体は絶対防御によって傷つくことはない。しかしその一撃によって黒薊のシールド・エネルギーは大きく減少していた。

 

 

ISのシールドとは別のフィールドである黒薊のバリアすら貫通し絶対防御を発動させる武器。

 

 

ゴーレムの右手に握られているブレードはまさしく…。

 

 

 

「雪片…!!」

 

 

二撃目をくらったら間違いなくシールドエネルギーは無くなってしまう。

 

 

そうなってしまえば、勝機はない。

 

 

黒薊のもつ全身のスラスターを一気に発動させ攻撃を回避する。

 

 

四方八方から来るビームの雨あられは紅箒の展開装甲による防御が何とか機能しているが、このままでは間違いなくじり貧だった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

「冬香…」

 

 

打鉄弐式を展開した私は、唯何もできず冬香の戦いを見上げることしかできなかった。

 

 

一度は倒したはずの黒いISが、また再起動し冬香へと襲い掛かっている。

 

 

冬香が必死になって戦いそして私のために傷ついている。

 

 

私は…やっぱり見ていることしかできない。

 

 

たとえ同じ力を手に入れ(ISを完成させ)ても…私は、弱い私のまま…。

 

 

そもそも、無理だったんだ。私が、私がお姉ちゃんや冬香みたいになるなんて…。

 

 

 

 

 

 

⦅呆れた。まさかそこまで軟弱だったとはね。⦆

 

 

 

 

 

 

声が聞こえた。

 

 

 

(誰…?)

 

 

 

そう言って周りを見渡す。先ほどまでいたアリーナではない。

 

 

あたり一面漆黒の、真っ黒の空間にいた。

 

 

そこには私と一つの光る影……。

 

 

 

⦅私が誰なんてこの際どうでもいいのよ。ただあなたが大好きな人がやられてるのを目の前にして怖気図いてる阿呆の軟弱だってことは事実なんだから⦆

 

 

 

その光る影はだんだんと形が人へ近づいてゆく。

 

 

 

(…………)

 

 

 

⦅そうやって言葉に詰まった時点で終わり。何にも成長してないのね、あなたは。ここへ来るのも()()()()()()()のに…⦆

 

 

 

最終的に光の影は、私へ変わってゆく。

 

 

⦅あなたは何のために私を作ったの?⦆

 

 

 

(それはッ!お姉ちゃんと冬香に追いつくため…!)

 

 

⦅だったら、今あなたがやることは一つだけ。あなたの夢に、あなたが追いついて追い越すために。⦆

 

 

私になった光の影はゆっくりとこちらへ手を伸ばす。

 

 

⦅冬香ばっかじゃなくて私の名前もたまには呼んで?⦆

 

 

(そうだね…ごめんなさい。それじゃあ、やろう!打鉄弐式!)

 

 

 

 

 

パッと目を開くとそこは元のアリーナだった。

 

 

状況は変わらず、冬香一人で黒いISと戦っている。

 

 

「武装チェック…機体エネルギー、バイパスリンク確認。マルチロックオンのみ使用不可…あとは…いける!」

 

 

機体の各部に装備されたマルチスラスターを一気に吹かし加速する。

 

 

背部の春雷を展開しビームを長距離高出力モードへ設定する。

 

 

「冬香ぁぁ!」

 

 

発射された二門のメガ・ビームは黒薊に近づかんとするゴーレムを的確に捉えていた。

 

 

そのまま加速しながら、近接専用の夢現へ持ち替え、黒いISへ一撃を加える。

 

 

「簪!」

 

 

冬香が叫んだ。

 

 

「遅くなってごめん…。私も、冬香の隣に並びたいから!」

 

 

夢現を構え、黒いISのほうへ向く。

 

 

『新たなる目標…敵機と認識…できず…システムエラー診断…クリア。エラー検出無し…アップデート。』

 

 

そう言い放った黒いISは私の事を無視し、真っ先に冬香のほうへ向かっていった。

 

 

「黒薊しか、認識してない!?」

 

 

冬香は一撃を受け止めそう言う。

 

 

しかし、その間にも黒薊のビットは黒いISのビットを撃墜していた。

 

 

「どういう…こと?」

 

 

私を、黒いISは敵と認識できていない。…つまり、こちらから一方的に仕掛けられるという事…。

 

 

「冬香!ちょっとだけ…ちょっとだけ引き付けて…私が…私がとどめを刺す!」

 

 

そう言うと冬香は私の意図を理解したように黒いISに対して攻撃を加える。

 

 

春雷の火力ではあのISを削り切れない。

 

 

方法は唯一つ…。山嵐を全弾命中させる!

 

 

「照準インジケーター起動、サポートシステムブート…、ミサイルシステムリンク確認…」

 

 

ガシャと六基のミサイルポッドが開きロックが解除される。と同時に普段はオート制御で行われすすべての情報が数十枚のウィンドウになって表示される。

 

 

「弾頭干渉、大気状態…、タイムラグ…オールクリア!」

 

 

すぅぅと息を吐き、全神経を研ぎ澄ませる。

 

 

「私の山嵐からは…逃げられない!」

 

 

バシュバシュバシュ!と発射管から噴煙を上げミサイルが発射されてゆく。

 

 

黒薊の引き付けによってギリギリまで回避不能を強いられた黒いISへ向け三次元の複雑な軌道を描きながら山嵐は向かって言った。

 

 

そして発射された48発のミサイルは死角を埋めるように、すべての弾頭が同時に黒いISへ着弾しする。

 

 

立ち上った爆発の煙が霧散し、さっきまでISだったモノが辺り一面に転がっていった。

 

 

「やった…やったね!簪!」

 

 

冬香がそう言う。

 

 

「冬香がいなくちゃ…ダメ…だった…。」

 

 

どっと疲れが遅い、世界がゆがむ。

 

 

「簪!」

 

 

私が最後に見たのは、そう言って私を抱きかかえようとする、冬香の姿だった。

 

 

 

 

 

 




話の都合上枠外であっさりやられる原作(カラーのみアニメ準拠)のゴーレムⅢ君可哀そう。


最初は結構あっさり倒すつもりなのにクッソ強くなってしまったゴーレム・クロアザミくんが何ではじめは簪を殺そうとしていたのに打鉄弐式を敵機と認識しなかったのか。

その理由はS.HからA.Tと言う一言にあります。この単語はイニシャルですね。

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