TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~   作:地味子好き

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修学旅行編⑤

「クソッ!」

 

 

眼前の白騎士は常にマドカを翻弄していた。

 

 

寸前で斬撃を回避し、こちらのどんなに小さい隙も的確に突いてくる。

 

 

剣と剣のぶつかり合いでは圧倒的に不利。

 

 

ここは距離を取りランサービットを用い防御するのが唯一の策であった。

 

 

(私がッ!こうも押されているだと!?)

 

 

だがしかし、その防御網を突破できるだけの力が白騎士には存在した。

 

 

『弱い……貴様には力の資格など、ない』

 

 

白騎士は二重の声でそうマドカに伝える。

 

 

次の瞬間、マドカには猛烈な数の()が襲った。

 

 

 

この子は失敗作よ……

 

 

そう。力が強すぎる

 

 

ISがこの子を受け入れないのも当然だわ。愛されていないんだもの

 

 

それだけじゃないわ。世界に愛されていないのよ

 

 

終わりのない憎しみしか、この子にはないのよ

 

 

この子を誰も愛さない

 

 

 

 

幼少の頃より投げかけられたその言葉。

 

 

それが鋭利な剣先となりマドカの心へ深く刺さる。

 

 

 

「貴様ァァァァァァ!!」

 

 

 

逆上したマドカは持てる全ての推力を集中しバスターソードを構え白騎士へ向かう。

 

 

 

『愚かな……』

 

 

 

しかし、その攻撃は難なく避けられ、逆に黒騎士は白騎士のフルパワーの零落白夜の間合いへ入ってしまう。

 

 

 

「私はッ私はァァァァァ!」

 

 

バスターソードと六基のランサービットをして、零落白夜を受けきることはできなかった。

 

 

ISの絶対防御を突破してくるエネルギー流とダメージはかまいたちの様にマドカの身体を切り裂く。

 

 

そして首にかけていたロケットも、金属のチェーンが途切れ、身体から離れてゆく。

 

 

 

(ッ!!ダメだ!それだけは、それだけはッ!)

 

 

研究所から連れ出された時より肌身離さず握っているそれは、唯一の復讐のアイデンティティだった。

 

 

数百メートルの上空から落下する中で、マドカは必死に手を伸ばす。

 

 

無数に光る星空を背景に落下するロケットへ、すべての精神と神経を集中させて。

 

 

そして、それは奇跡ともいうべき確率で掴むことが出来た。

 

 

 

しかし、安心した次の瞬間マドカは自分自身が置かれた状況を理解した。

 

 

 

既にIS、黒騎士は解除され自身がいるのは地面から数百メートル離れた空中。

 

 

もしこのままであれば地面とキスをした衝撃でただの肉塊になるだけだった。

 

 

復讐も果たせず、ただ無意味に死ぬ。

 

 

そんな最悪の結末が頭をよぎる。

 

 

 

 

しかし次に感じた衝撃は思っていた時よりずっと軽いものだった。

 

 

 

目を開けた先に会ったのは……太陽の輝き(ゴールデン・ドーン)

 

 

 

「間一髪ってところね」

 

 

一瞬考えて、マドカは自身がスコールに抱きかかえられていることを理解した。

 

 

 

「スコール!ラファールは持っているかッ!私は!」

 

 

「いいえ、エム。()()()()()()()()()()()()()()()()()()のよ。その上無人型も二機手に入った……もう譲歩の時間はないわ。即時撤退よ」

 

 

「だがッ!」

 

 

「聞き分けのない子は嫌いよ。お仕置きは嫌でしょう?」

 

 

 

我を忘れ激高するマドカに対し、スコールはそう宥める。

 

 

お仕置き、つまり彼女の体内に注入されている監視用ナノマシンが神経に作用し体中に激痛が走るというものだった。

 

 

単なる偶然か定かではないが、それは群咲がアンネイムドの隊長に行ったものと同じだった。

 

 

暗闇の中に、黄金の輝きはゆっくり消えていく。

 

 

しかし、星と街の光が交差する夜空に残された者はまだ存在していた。

 

 

 

『資格無き者に力は無用。私が戦う相手はここには……ただ一人』

 

 

 

 

金色の光を見上げる白騎士はそう呟き、倉庫群へ足を進めた。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

「あはッ!」

 

 

 

群咲が振り落とした葵の一撃はアスファルトで舗装された地面を砕き、空中に破片の雨を降らせる。

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

千冬は迫りくる斬撃を回避し、何とか群咲(冬香の身体)を傷つけずに気絶させようと隙を伺っていた。

 

 

 

だが次の瞬間、群咲は千冬の正面へと立ち攻撃をやめた。

 

 

 

(なんだ……?)

 

 

 

一瞬だけ、千冬は期待した。

 

 

小説やアニメでよくある、身体の本来の持ち主が意識を取り戻したという展開が起きているのではないだろうかと。

 

 

しかし、そう甘い話ではなかった。

 

 

 

「手加減してませんかぁ?してますよねぇ?やめてくれませんかぁ!」

 

 

 

むしろ群咲はその狂気を何十倍にも増幅させ千冬へぶつけてきた。

 

 

 

 

「そっちが本気でこないなら、私が出させるまで!」

 

 

 

今までの口調をがらりと変える。

 

 

彼女の手にあった葵は粒子の様に消失し、代わりに彼女の手に握られていたのは―

 

 

 

「雪片!!」

 

 

 

彼女の右手にはかつての愛剣であった。

 

 

 

「あはッ!()()()()でも、お前を殺すくらいなら造作もなッッッ!」

 

 

 

千冬へ雪片を振り下ろそうとした瞬間、再び彼女の動きが止まった。

 

 

先程とは違い、何かを苦しむような様子だった。

 

 

 

「何が起きて!?」

 

 

 

そう言って千冬は最後の1本となった特殊刀を構える。

 

 

 

「がぁァぁッ!ナぜダァっ。マさカッ!干渉しテいル!!?」

 

 

雑音の入ったラジオの様に、彼女の声は何かに邪魔されている、そう千冬には感じられた。

 

 

 

「マダだッ!()()()()()()()()()()()のハッ!」

 

 

群咲は千冬とは真逆の方向の空を向きそう叫んだ。

 

 

その叫びに応えるように、彼方から迫る白が千冬の目に映った。

 

 

『織斑先生!白式の反応がロスト!代わりにアンノウンが出現して急速にそちらへ向かっています!いったん退避を!』

 

 

真耶からの通信が千冬に届くよりも早く、その白は二人の前に現れる。

 

 

それは千冬が最もよく知るISだった。

 

 

 

「馬鹿な…白騎士だと!?誰が……まさか白式が!!」

 

 

 

白騎士は驚く千冬を1ミリたりとも気にもせず、地上へ降りた。

 

 

 

「がぁぁぁぁッ!クルなァッ!くルナぁッ!」

 

 

そうして、苦しそうに叫ぶ、群咲へ、そっと手を伸ばす。

 

 

 

『さぁ、目覚めろ。そしてワタシへ示せ。その力を。天利冬香……いや、絶対天敵(イマージュ・オリジス)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




弓弦先生がTwitterを再開したので初投稿です(激遅)


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