TS転生 地味子と行くインフィニットストラトス~ハーレムには入らない~ 作:地味子好き
私は今、爆発の轟音と煙が立ち込める京都の街を走っている。
空には黒いISがまるで死肉を狙う烏のように飛び交っていた。
無差別に人間を襲うような動きはしていないが、それでも上空で起きている戦闘の混乱が地上にも波及している。
その上、手元のデバイスには私たちIS学園で使用する予定だったモノレールに爆弾が仕掛けられたらしいという情報まで入ってきている。
幸い、流れ弾や破片はふゆふゆがつけてくれたこの紅白のビットが守ってくれているので私に傷はついていなかったが……。
泣き叫ぶ声、恐怖と混乱の渦は私の精神を嫌でも疲弊させる。
他の人も、助けられれば―
自分だけ守られているという罪悪感。
ビットが大きめにシールドを展開しているおかげで周りの人も少しは守れているが、街の大きさに比べれば微々たるものだ。
「私も、力が欲しい―」
そっと呟く。
今、天利冬香はこのビットを抜きにあれだけの大軍と戦っていた。
少しでも戦力が、切れる手札が欲しいときに、わざわざ私を守るために。
思えば、彼女はずっと私たちを守ってきてくれた。
楯無お嬢様の命で入学時から彼女を見守ってきたが、最初に無人機が来た時も、ラーちゃんが暴走したときも、臨海学校の時も、彼女は自分の姿を隠しながら戦っていた。
そして、私が話せなくなってしまった親友のかんちゃんとのことも解決してくれた。
私は、恩ばかりもらって、何も返せていない。
今日だって、結局こうなってしまった。
どんなことでもいい少しでも力になれれるなら、何か術はないのか。
「布仏さん!」
気が付いたら私は自由行動後の集合場所である環状モノレールの駅まで来ていた。
「まやまや!」
地上で生徒たちの受け入れをしていたのは副担任の山田先生だった。
ちらりとあたりを見回すとぽつぽつ生徒はいるが4組分にしては少なぎる。
「織斑先生や他の皆は……」
「既にご存知かとは思いますが、先発した車両に爆弾が仕掛けられていて今はそちらに。私たちもここで身動きが取れない状況です。後ろのは天利さんの…」
「はい。ふゆふゆは一人で戦っています」
「そうですか…生徒に戦わせてばかりで私も教師失格ですね。専用機が届けば…」
山田先生は苦虫を嚙み潰したような顔をする。
中学の時からお嬢様経由で話は聞いていたが、彼女の教師として姿勢は見事なものだと聞いている。
それを示すかのように、自身の安全よりも私たちや今戦っている彼女のことを想っていた。
「きゃぁぁぁぁ!」
突然あたりから叫び声が聞こえだす。
上空を見ると、無人機のビームに撃ち抜かれた自衛隊のISが1機落ちてきている。
「危ない!」
私の声に呼応して浮遊していたビットがエネルギーの膜のようなものを張り墜落の衝撃と私たちへの被害をすんでのところで守った。
しかし、操縦者は着地の衝撃で頭を打ったようで少しばかり血が流れている。
すぐに人々が駆け寄るが、混乱の中冷静に処置できるものは少なそうだった。
「私がやります!」
人々を押し分け私は操縦者の元へ進んでゆく。
(借りものだけど緊急事態!弁償もきちんとする!)
びりびりと裾を破り包帯代わりにして何とか頭部へ巻き付け出血を抑えていく。
(これで最低限は良し―)
そう思って顔を上げた矢先、
相手は無機質なフルフェイスマスクで、その中には何重ものレンズが蓮のように集合している。
ぞくり―と、私の心がその危うさを伝える。
だが、動けない。
腰から力が抜け、ぺたんと座り込んでしまった。
私を守っていたビットが後方から飛んで来ようとしているが、間合いが近すぎる。
目の前の黒い無人機の砲口にエネルギーが集まっているのが見えた。
(もう、おしまい―?)
短いながら脳内を駆け巡る思い出。
簪のこと、冬香のこと、姉のこと、楯無のこと、クラスのこと。
走馬灯とはこういうものなのかと理解する時間はあったようだ。
そしてその思い出の後に流れるのは、くやしさ。
少しでも、私に力があれば―。
悔しい、悔しい、悔しい!
ふゆふゆ、かんちゃん、おりむー…!
皆のように、力があれば…!
『その願い、受け取りました』
次の瞬間、私を眩い光が包み込んだ。
「これって…」
巻き上げられた煙が晴れる。
私はどうやら生きている。
そして私を包み込むのは巫女服のような純白と深紅の装甲。
情報が頭に流れ込んでくる感覚に少し酔いそうになる。
だけれども、湧き上がってくるこの感覚は、この力は―。
「九尾ノ魂―」
私は7基に増えたビットを黒いISの周りに取り囲ませる。
(使い方は分かる!考えて集中させるだけ!)
局所的ではあるが暗雲が立ちこみはじめ風が吹き始める。
空ではゴロゴロと音が鳴り響き力が集まってくるのを感じた。
「やっちゃえ!
―――――
「これは―」
冬香様をおびき出すための罠―。
そうであった筈だが、学園も政府も国連も、存外動きが早かった。
以前より介入し過ぎたせいかもしれないと私は想像する。
私、クロエ・クロニクルが今回束様より与えられた任は『
だが、ゴーレムⅣは多くが学園にいる専用機と思わぬ米軍の介入によって数を減らしてしまった。
数機ばかり爆弾付きの車両の方にも向かわせたが、こちらもデータにない謎のISの攻撃でロストしてしまっている。
よって現在は残存のすべてをステルスモードにし、成層圏で待機させていた。
またコントロールを奪った車両の方も、演算に特化した私の『黒鍵』にシステムハックで喰らいついてくる人間がいる。
「ここまでされてしまっては、当初の計画から大幅に修正せねばなりませんね…。不確定要素は、なるべくなら使いたくなかったのですが―」
私は束様より頂いた杖を掲げる。
『コード・
成層圏に浮かぶゴーレムたちが一斉に集まり、そして溶け出す。
どろどろと粘土のように集まるそれは、やがて一つの形をとる。
その姿は―黒い白式、そしてその中央には人の姿―。
紫色にたなびく髪に、金色の瞳。
だが、どことなく天利冬香を思わせるその姿は―。
≪さぁ、破壊と繋の輪舞を踊りましょう。
というわけでのほほんさんのイベント回でした。
原作部分が終了したらアーキタイプ・ブレイカー篇を本格的にやっていきたいですね。
また、都合合わせのため以前の回も山田先生はまだショウ・マスト・ゴー・オンを受領してない描写に変更しています。
PS:誤字報告ありがとうございます。
色々設定を変えたはいいものの、見逃してしまったところを拾っていただけるのはありがたいです。