手術も無事成功し、ただいま戻ってまいりました!
洞窟内には激しくぶつかり合う金属音が響き、至る所が崩れ今にも崩壊してもおかしくない中。
相対する者は気にも留めず、得物を振るい続ける。
「しぶといでありんすね!」
「さっきの可愛い服はもう着ないの?」
シャルティアは完全武装へと切り替わっていた。
あろまボットンが装備を変えてから、傷の治りが遅くなりスポイトランスによる攻撃から得られるHPも激減していた。
「《
「くっ」
更にシャルティアが受けるダメージも徐々に増えているときた。
どこぞの雑草に負けたと主に知られれば失望され捨てられてしまう可能性があるのだ。
下手に負けるよりは全力で叩き潰した方が良案だと思い至った為だった。
既にシャルティアの頭には持ち帰ることは頭には無く、この雑草をどう引き抜き八つ裂きにするかしか考えていない。精々死体を持ち帰りアンデットとしてこき使えばいい位だろうか。
戦況は今だシャルティアが優勢にあり、あろまボットンは防戦一方の状況である。
スキルやMPにもまだ余裕がある。
スポイトランスのおかげでHPは6割を切った程度、蘇生アイテムもある。
半面あろまボットンはスポイトランスの直撃は避けているものの、回復をした形跡は無くシャルティアの手応えから後一割と言った具合だ。
勝利を確信し頬が緩む。
この敵は野放しにすればいずれ脅威となるかも知れないのだ、ここで見事排除できれば主であるアインズ様はきっとお喜びになられる。
勝った後の妄想を膨らませ、このまま第一夫人の座へ等々妄想を膨らませる。
「やけに楽しそうだけど良いことあったの?」
「今から死ぬ雑草には関係ないことでありんす!」
「《パラライズ・バインド》」
「ちょこざい!」
シャルティアは拘束を一瞬で振りほどき、距離を取ろうとするあろまボットンへ追撃する。
「いやー強いね、負けそうだわ《
「ふん!悪あがきを止めれば楽になるでありんすよ?」
あろまボットンの手から蒔かれた墨色の種をあっさりと振り払う。
アンデットに状態異常は通じない。
ユグドラシルにおいてこれは常識の様なものだ。
それすらも知らない無知な奴だとシャルティアは心の中で嘲り笑う。
片や満身創痍に対してもう片方は元気バリバリ。
誰が見ても結果は火を見るより明らかである。
だが決めきれない。
シャルティアは再び距離を取らされる。
またもや後ろへと下げられたことに段々と苛立ちが積もっていく。
あと少しで殺せるのだと全力の突撃を仕掛ける。
「《
《
突っ込めば絡め取られ、不利になると瞬時に判断し一度止まってしまう。
洞窟という狭い空間において回り込むことは出来ず破壊する選択しかない。
視界を一時的に塞がれ、逃げられてはマズイとすぐさまスキルの《不浄衝撃盾》を使用する。
「もうイライラするでありんす!」
地面にバラまかれていた種は急速に成長し芽を出し蕾を作り花が咲く前に枯れる。
枯れた花は土へ帰り土を汚染し、黒く淀んだ毒沼を形成する。
「こんなもの飛べば何の問題も!?」
洞窟の天井を突き破り現れた巨大な透明なガラス細工の様な一本の大木が輝きだす。
神聖属性のダメージボーナスと範囲内のアンデットへの神聖抵抗ダウン。
「ちっ!狙い撃ちする気か!だが!
しかし時間が遡るようにして元の位置に戻される。
「は!?転移阻害!?そんないつの間に!?」
答えは飛び越えた毒沼である、頭上にいる者の転移阻害と暗闇の状態異常。
アンデットの為暗闇にはならない為気づくのに遅れてしまっていた。
「
巨大な大木が天井をぶち抜いて落ちてくる。
シャルティアの頭上から一撃をまともに受けてしまい問答無用に毒沼に叩き落とされる。
「こ、こんなもの!」
大したダメージはない、すぐさま巨木を破壊し立ち上がる。
シャルティアが立ち上がったときには待ってましたとばかりに次の手を打とうとしている。
手の甲の枯れたはずの花が命を吹き返し、鎌をしまい両手を前へと突き出している。
「このまま好きにさせるかぁ!《清浄投擲槍》!」
「!?」
「あろま!!」
3mもの長大な戦神槍が放たれ、あろまボットンのど真ん中に命中する。
「大丈夫」
振り返ることなく優しい声音クレマンティーヌに応える。
大丈夫なわけがない。
後ろに私がいるから避けなかったのだと直感した、身体を張って無理矢理軌道を変えたのだ。
そうでなければ今の一撃で確実に死んでいた。
この一撃だけではない、何度も何度も守られていた。
クレマンティーヌは悔しさで顔がくしゃくしゃになる。
「大人しくしてもらう
シャルティアを中心に渦巻きながら白と黒が織り交ざった蔓状の大樹が絡みついていく。
「こんなもの!なっ!?剥がれない!?」
最終的に球体状へと変わり根を張る。
拘束無効すら問答無用に捕らえることのできるスキルで、一日に一度だけしか使えず使用条件とデメリットがかなり厳しい。
対象者とのHPが一定以上の差が必要でかなり離れていないと不発に終わり、使用済みとされその日は二度目を打つことが出来ない。MPの大量消費、一定時間のスキル使用不可というおまけつき。
だが効力は絶大で対象者の行動・スキル・魔法の一切を一定時間封印し、外部からの解除はそんじょそこらのアイテムでは解除できない。
「大丈夫?」
あろまボットンは貫かれた腹に手を当てながら振り返る。
「無茶し過ぎなんだよ!」
クレマンティーヌは今にも泣き崩れそうなほど悲痛な顔をしており、あろまボットンはごめんと謝り頭を下げる。
「早く逃げないと、運よく成功したけど次は無理だかr」
意識がぐらつき体が言うことを聞かない。
そのままあろまボットンは地面に倒れこむ。
「お、おい!」
身体を揺さぶるがピクリともしない。
「ごめん、もう動けない」
「ビビらせんな!」
「守るって約束だからね」
本気で死んでしまったのではないかと青ざめていた表情は真っ赤に変わり、横たわるあろまボットンに蹴りをお見舞いする。瞳には薄ら涙を浮かべており、クレマンティーヌの顔には笑みが少しずつ戻っていた。
「お、おい」
先ほどまで腰を抜かしていたブレインがようやく立ち上がると口を開いた。
「何?まだ続きやりたいの?」
クレマンティーヌは得物に手をかけ、鋭い眼光がブレインを貫く。
「ち、違う!流石に俺はそこまで恩知らずではないからな!あろまだったか?お前さんを運ぶのを手を貸したい」
ブレインは冷や汗を滝の様に流す。
「(なんで戦ってる時より殺気が段違いに強いんだよ!?)
「下手な事したら・・・・・分かってる?」
「お、おう」
ブレインは躊躇することなくあろまボットンを担ぎ上げる。
クレマンティーヌは意外だと素直に感じる。
このブレインという男は思ったより芯があり、いくら助けてくれた相手でも見た目は完全に化け物のあろまに躊躇なく触れるのにはかなり勇気があるのではないかと。
「ふーん」
「な、なんだよ?一応助けてもらったんだ、こんくらいはするさ」
「ありがとう。えーとブレッド」
「ブレインだ!脱出経路は用意してある、おら行くぞ!」
あろまボットンはか細い声で礼を伝える。
神々の闘いに等しい光景を見て失禁し気絶する盗賊どもを尻目に走り出す。
「重くないかプレーン?」
「ブレインだ!ひょっとしてわざとなのか!?」
「ごめんね。お腹空いてるせいかな?」
「笑えないジョークはやめろ!」
洞窟がガラガラと音を立て崩れ始める。
あろまボットンたちが脱出して間もなくして、完全に盗賊のアジトであった洞窟は埋もれてしまう。
「ふぅ、危機一髪だったな」
「とりあえず回復するね」
スキルを使えない為ポーションを使用しようと手をアイテムボックスに手を伸ばす。
「「!!」」
クレマンティーヌとブレインは同時に同じ方向を向く。
何者かが近づいてくるのが分かる、ドンドン近づく気配にアイコンタクトし再びあろまボットンを担ぎ上げる。
先ほどの吸血鬼の様な奴が来たらお終いである。
「ちょ、まだ飲めてない」
「後からにして!」
「ダメだ追いつかれる!」
「ちっ」
クレマンティーヌは腰に携えてある銀の刺剣を引き抜き構えを取る。
「私から離れるな!囲まれてる!」
「早すぎる!?」
ブレインは今のうちに早くポーションを早く飲めと催促する。
木々の隙間から数人の人影が現れる。
「くそが、寄りによってこいつらかよ」
クレマンティーヌの顔は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる。
「お久しぶりですねクレマンティーヌ」
地面に届きそうなほど伸びた射干玉の髪の幼い容姿の男が立っていた。
「糞ババアまでいるし最悪」
「相変わらず口が悪いの、クレマンティーヌ」
スレイン法国の漆黒聖典の隊長とカイレの婆さんはどちらもかなりの実力者であり、一人では相手にするのはかなり厳しい。
お互い睨み合いが続く中、男は視線を後ろへと向ける。
「ふぅ、ようやく起きれる」
「もういいの?」
「うん、動かすだけなら」
あろまボットンの腹に空いた大穴は綺麗に塞がっていた。
「おいおいその魔物はお前のかクレマンティーヌ?随分変てこな奴連れてるじゃないか!」
「やっぱり居やがったよ、クソが」
クレマンティーヌの兄であるクアイエッセ・ハゼイア・クインティア。
漆黒聖典第5席次にして『一人師団』と呼ばれ、複数体のギガントバジリスクを操ることのできることができる実力を持つ。
隊長がいる時点で予想できたが、漆黒聖典の番外席次を除いた面々が勢揃いしている。
「大人しく投降しろ出来損ない」
「っ!!殺す!」
クアイエッセに怒りに任せて突撃する。
クアイエッセの表情はニヤリと笑みを浮かべ、クレマンティーヌはマズイと察するが間に合わない。
こんな簡単な挑発に乗ったことに苛立つ。
地中に潜んでいたギガントバジリスクの一撃が迫る。
「!?」
「ホントお前は出来損な「危ないなー」奴だ、ん!?」
ギガントバジリスクがなぜかクレマンティーヌはではなくクアイエッセに迫ってきている。
「まあスキル使えなくてもこん位なら」
先ほど馬鹿にした魔物が自慢のギガントバジリスクを地面ごと蹴り飛ばしていたのだ。
体長は10m以上の巨体が月夜に照らされながらクルクルと宙を舞っている。
ギガントバジリスクはクアイエッセの頭上を飛び越していく。
目玉が飛び出すかというほど見開き、顎が外れたように口を無様に開けたままになる。
「ごめん、助かった」
「無事ならそれでいいよ」
「やっぱ出鱈目だわ」
ブレインは飛び出したクレマンティーヌになんとか反応できるが、後から軽く追いつくあろまボットンを見てため息を吐く。
ブレインはグッと拳を作り、ある一つの事を決意する。
あろまボットンたちの元に素早く移動し、正面は任せ背中を預ける形で周囲を警戒する。
いらないよなと心の中でボヤキ苦笑してしまう。
「仕方ないですね、大人しくしてもらいます」
隊長が槍を構えると同時に戦いの火ぶたは切って落とされる。
先ほどの一撃でただ者ではないと認知され、一気に緊張感が跳ね上がる。
「(いやーこの辺って盗賊多いなー)」
約一名だけは緊張の欠片もない奴がいたりもする。
今回もあんまりギャグ書けてない気がします.....
申し訳ありません。
これからも週1~2程度の投稿ペースで頑張らせていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。