スレイン法国に所属する漆黒聖典が駆り出された現場で耳にしたのは森に響く衝撃音、地鳴りを起こし魔物どもが怯える姿を確認し即座にアイコンタクトを取りあう。
すぐさま漆黒聖典の面々は行動を開始し、震源地へと向けて走り始める。
先日、土の巫女を襲った謎の爆発により死亡し、同時に陽光聖典が消息を絶った。
トブの大森林奥地に封印された《
だがそこで出会ったのはかつて漆黒聖典に所属し、現在スレイン法国の秘宝である叡者の額冠を盗む罪人として風花聖典が行方を捜索中のクレマンティーヌであった。
そんな彼女に偶然かそれともこの件に関係があるのかは不明だが、見す見す逃がす訳にもいかない為包囲し速やかに無力化しようとするが・・・・・
「なんだその出鱈目な力は!?」
セドランの盾を簡単に弾き飛ばす怪力を持つ植物型の魔物にクアイエッセは意味もなく叫んでいた。
人と言葉を交わす知恵があり、動きに無駄はあるが英雄の領域に至る我々を凌ぐ俊敏性、おまけに馬鹿力といったギガントバジリスクなど比ではない魔物がそこにいたのだ。
「カイレ!使え!」
「!」
魔物の一撃を受け止め、背後に控えていたカイレに叫ぶ。
クレマンティーヌと剣士の男はクアイエッセ達が抑えている。
このままではあっという間に押し切られてしまう、既にエドガールは意識を狩られておりセドランも限界である。
舐めているのかまだまだ余力はある様に見える、ならば今のうちに早期決着を計るべきだと判断しカイレに《
カイレも頷くことなく《
カイレのドレスは光輝き龍の光を放つ、光は天に上り魔物目掛けて降り注ぐ。
六大神が残した至宝の1つである《
本来は《
それに加えこの魔物を使えば《
「うわぁぁ!?」
「あろま!!」
光は魔物に見事命中し、魔物は動きをピタリと止め力が抜けていくのが分かる。
見事成功し、ふぅと安堵し肺から息を吐き出す。
「てめぇら!あろまに何しやがった!」
クアイエッセを振り切り、クレマンティーヌがカイレに向かって放たれた矢の如く疾走する。
武技も使わずに加速したクレマンティーヌを捕まえることが出来ず、急ぎ追いかけようと踏みだすがブレインが正面に躍り出て刀を鞘から抜き放ち一閃する。
「どけ!」
「いやー人様の何たらを邪魔する野郎は馬に蹴られて死ぬぜお兄ちゃん」
不敵に笑ってみせるブレインに、クアイエッセの表情は激情で真っ赤に変わっている。
自慢のギガントバジリスクが瞬殺されており、怒りを覚えるなという方が無茶な話だった。
「いやービックリしたぁ」
「「「「「!?」」」」」
その場の空気がガチリと固まる音がする。
ありえない事態に漆黒聖典の面々は驚愕し、ブレインやクレマンティーヌも足をすくわれたような感覚に陥っている。
「ば、馬鹿な!?《
神をも超える存在だというのか!?
信じられない現実に頭が追い付かない。
確かに《
額から冷や汗が滲む。
信じがたいことだが、ある一つの可能性が浮上している。
「ま、まさかぷれいやーなのですか?」
槍を下し震える声で質問する。
喉が渇く、額の脂汗が止まらない。
「ユグドラシルでのこと?だったら、うん。そうだよ」
再び更なる衝撃が走る。開いた口が塞がらず、上手く次の言葉が出てこない。
「(あれ?もう終わりなの?なら)早く帰りたいね」
自分たちが崇める神と同じ神の存在が再誕していたという事実に脳が痺れる。
帰りたいとはスレイン法国へ?
だが六大神の中にこの様なお方はいない。
思考の海に没入し考え続けるが一向に纏まらない。
そんな自分をよそにあろまと呼ばれる方はクレマンティーヌの元に向かってしまう。
「お、お待ちを!」
「ん?」
「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!」
膝を折り首を垂れる。今ここで行かせてはならないと本能が叫ぶのだ。
「?あろまボットンだよ、これからは悪さしちゃ駄目だからね」
振り返りそれだけ伝えると再び足を進めていく。
その言葉と背中にゾクりと背筋が全身に一気に鳥肌が立つ。
だが殺意等ではなく、これは慈愛に近い温かさを感じる。
『人間の全てを見ていると、人間の悪行を正せ』という啓示をして下さったのだろう。
先ほどは感じ取れなかった力がゆっくりと感じられるようになってくる。
これが本来の力なのだとしたら、この方にとってはただの茶番だったと思い知らされる。
カイレは膝を地につけ涙を流しており、他の漆黒聖典のメンバーは茫然とし得物を手から滑り落としていた。
我々はとんでもない過ちを犯してしまったのだと。
魔物と嘲り、剰え操り
特にクアイエッセの表情は死者のように青ざめ酷く歪んでしまっている。
「あろまボットン様!どうか我が法国へ!」
「いや、行かないよ」
絞り出した言葉を一蹴されてしまう。
今までの行動を顧みれば当然の結果であるのは明白なのだ。
この方はスレイン法国の新たなる神となりえる偉大な存在だ。
【絶望】という二文字が重くのしかかる。
あろまボットン様がピタリと足を止め、ゆっくりと振り返ると手を軽く持ち上げる。
「ま、いつかね」
「「「「「!!」」」」」
その言葉に思わず顔を上げ、あろまボットン様と目が合う。
夜の闇が薄らと白みがかった青に変わり始める。
「しっかり(更生して)ね」
「「「「「はっ!」」」」」
この方を例えるなら『太陽』であろうか。
暗闇を照らす日輪は、この心の絶望を確かに掻き消したのだ。
クレマンティーヌに後は託そう、彼女は気に入られているようだ。
ただの人格破綻者としか思えない、あのクレマンティーヌがだ。
我々では見通すことのできない本質を見る力があろまボットン様にはあるのだろう。
太陽が顔を出し、長い長い夜は静かに幕を閉じた。
【太陽神あろまボットン】様が初めて歴史に刻まれた瞬間である。
豊作と慈愛の神としてスレイン法国の新たなる神として、多くの信奉者たちにより後世に長く伝えられることになる。
野盗のアジトは後々聖地としてスレイン法国により協会が建てられたとか。
次は別視点から書いくつもりです。
プロットにはそんなものないのでどうなることやら。
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まさかこんなにも色々な方に見ていただけるとは正直思ってもおりませんでした。
これからもよろしくお願いします。