10月になれば仕事も落ち着くはずなので、どうかお待ちいただければ幸いです。
太陽は沈み、人々が寝静まった静かな夜。
「つ、着いた!」
「やっと着いた......」
喜びで万歳する者と片や表情は疲れ切っている。
「どうしたのクレマンティーヌちゃん?そんなに疲れて?」
「私これ怒って怒っていいよね?ねえ!?」
道中に勝手にあっち行ったこっち行ったする相方を呼び止めては連れ戻し、道に出たはずなのに一緒に巻き込まれて道に迷うはで散々な目にあっていた。
「なんで三日もあれば余裕の距離を一週間以上もかかったのは誰のせいだと思ってるの!?」
「?」
「ぶっ飛ばせるならぶっ飛ばしたいな!もう!こんなキャラ私のキャラじゃないっつーの!」
鎧をゲシゲシと何度も蹴りを入れると、見てくれだけの鎧は徐々にへこんでいく。
「ご、ごめんってば!」
「ふん!」
この迷い道中である程度は打ち解けあえていた。
「拗ねないでくれよ、クレマンティーヌちゃん」
「拗ねてない!」
思いっきりそっぽ向くクレマンティーヌにお手上げ状態。
「これで機嫌直してください」
「・・・・・」
鎧のどこから出したか分からないが一輪の薄桃色の綺麗な花を出す。
「はぁ.....やっぱあろまと話してると気が抜けるわ」
溜め息を吐きながらも花を受け取る。
二人の力量は天と地の差がある。
服従されるのではなく、対等な関係を築けているのは主にこの男のおかげである。
この世界で間違いなく絶対的な強者であるはずのこいつはとにかく緩い。
強者のオーラはあるが、それは外面であって内面は真逆と言っていいだろう。
行動を共にし会話を続けるうちに、ただの人間と話している気分になる。
「ほらあろま行くよ!」
「はいはい今行きますよー」
何本目か分からないすぐに枯れてしまう花で許してしまう自分はちょろいのだろうか?とうんざり顔で花をしまう。
いや、あまり駄々をこねてキレられて何されるか分からないからだと、納得させ足早に歩きだした。
しばらく並んで歩く二人の影は、近寄ることも離れることもない。
・・・・・
念願の街へ漸く到着できたのもクレマンティーヌちゃんのおかげあってだ。
クレマンティーヌちゃんは自称大悪人だと供述している。
俺のことは殺そうとしたし、国宝クラスのお宝を盗んだとか。
何を馬鹿な!
こんなにひ弱な女性がそんなこと出来るものか。
ユグドラシルのレベルで言ったら50にも達していないように思える。
自分は英雄の領域に踏み込んだめちゃつよの戦士だと胸を張って言う姿は愛くるしさを感じる。
ただ、クレマンティーヌちゃんも使えるこの世界の武技という技術には舌を巻いた。
スキルでもなければ魔法でもない。つまりユグドラシルにはない力だ。
教えてと言ったら絶対に嫌と拒否られてしまったが、まさか一子相伝のとかそういうのじゃないよね?
そんな彼女とのここまでの旅はかなり充実していた。
あまり自分について話せる内容は無かったから、仲間の活躍を吟遊詩人の如く語りまくった。
その内クレマンティーヌちゃんも自分の事を話し始めた。
ならば自分も隠さずに自分は元々は人間だと言おうとするが、いつもタイミング悪く寝てしまったりするのだ。
結局伝えられず街まで来てしまったが、言う機会ならまだあるだろう。
・・・・・
そんでもって今現在
「人に会いに来たのになぜに墓地?もしかして墓参り?なんか涙出てきたよ俺」
「私がそんな良い子ちゃんに見える?」
「うん」
「即答すんなアホ!」
これまでの経歴はほとんど話したのに、何の疑いもなく首を縦に振りやがる。
「クレマンティーヌちゃんが生粋の人殺しで国宝盗む大罪人って話?」
「なんでそこまで知ってて、さっきの答えに行きつくんだよ!」
「根は優しい子だもんね」
「馬鹿にしてんのかなぁ」
「んー?」
これである。
そんな清い心など私には微塵もないというのに、根拠のない事ばかり追いかけている。
やっぱりきっとこいつは人間に近い何かなのだろう。
「やっぱめんどくさくなってきたなー」
「どうしたの急に?」
「誰かさんのせいで毒気抜かれまくってんだよ」
二人は既に目的地である霊廟の前に立っていた。
「とりあえず玄関前で立ってるのも迷惑だし、中に入っちゃおうか。」
「ご近所さんの家に来たんじゃないっつーの」
お邪魔しまーすと呑気に入っていくあろまボットンを見て、いちいち気にしてたら体がもたんと黙って後に続く。
そこそこと石の台座の下にある彫刻の1つを指さす。
「了解了解」
彫刻を押し込むと台座は動き出し、地下へと続く階段が現れる。
プルプルと震えだすあろまボットンに何事かと、二歩距離を置く。
「(なんか凄いダンジョン感あるな)これは興奮する」
「こういうとこは気が合うよねぇ」
死臭漂う地下の階段を見て興奮するとか、変態かよと笑ってしまう。
薄暗い階段を下りていくと毛根が死滅し顔は死人のように青ざめた男が待っていた。
「ん?隣の男は誰だクレマンティーヌ」
「こんちはーカジッちゃん。紹介するねー、こいつはあたしの相棒やってるあろまだよ」
「は?」
カジッちゃんと呼ばれる男の本名はカジット・デイル・バダンテールは信じられないものを見る目で、あろまボットンを上から下までみる。
裏の住人とは思えない変てこな装備を付け、強者特有の覇気は微塵も感じない。
何より信じられないのは、この女が他の誰かつるんで行動していることだ。
「えーとあろまボットンです。もしかしてクレマンティーヌちゃんの叔父さん?まさかお父さん!?」
「ふざけたことを抜かすでない!こんなイカれた女と血縁者なものか!それに私はまだ三十代だ!」
「えー!?・・・・・ご愁傷さまです。」
「貴様どこを見て言っているのだ!」
あろまボットンがカジッちゃんの不毛地帯に手を合わせる。
カジッちゃんは視線で気づき、今すぐにでも殺してしまおう殺気が漏れるとクレマンティーヌが遮る。
「まあ、こんなんでも私よりも強いからね。手は出さないでね。」
飛び火して自分まで飛び火してはかなわないという行動だったが、カジッちゃんはまるでクレマンティーヌがあろまボットンを守っているように見えてしまう。
もう一度あろまボットンへと視線を戻す。
鎧で表情は見えないが動揺などは全く感じ取れない。
「それは真か?」
「え?そりゃそうでしょ」
「ほう」
言葉に虚偽の色は見えない。
興味本位であろまボットンの背後の地中からアンデッドをけしかける。
「ば、馬鹿!」
珍しくクレマンティーヌの表情が焦燥している。
アンデットは地上に出た瞬間、どこからともなく生えた茨に締め上げられ木っ端微塵に崩れる。
「んな!?」
「はぁ」
あろまボットンは後ろを振り返ることなく対処し、カジッちゃんから視線を外すことはない。
瞬き程の一瞬の出来事に、迎撃されたことすら反応する事が出来ず固まってしまう。
「お主、
「いや違うけど」
「なんだと!?」
魔法でなければ地中に何か飼いならしているとでもいうのか!?ならば生者に反応するアンデットたちが気づかないわけがない!など頭の中で堂々巡りしてしまう。
「カジッちゃん、あろまには常識通じないんだって。考えるだけ疲れるだけだと思うよ?」
「酷いなー。これでも常識ある方だと思うよ俺は。」
「常識ある奴は、あそこまで道迷わないからね?」
カジッちゃんは冷や汗を流し、抜けそうな腰を気合で保つ。
力が分からないのはなんらかのマジックアイテムによるもんかもしれんと勝手に納得する。
「そ、それで何の用だ?」
「最初は色々手伝おうと思ったんだけどね、ここに来るまでに飽きたしね」
「何を言っているのだ?」
「もう勝手にするって言ってるの、こっちと組んだ方が楽しそうだしねぇ」
クレマンティーヌの顔は悪魔の様に歪んだ笑顔が張り付いている。
「この場所を知っていて、生かして返すと思ったか?」
「アホなの?自分が生かされてる側ってことが分かんないのかなぁ?」
くっと歯を食いしばる。
だが地の利はこちらにあるから有利は揺るがないと思い込む。
「たかが一撃防いで見せただけで調子に乗りよって!」
「全くクレマンティーヌちゃんはすぐ喧嘩するんだから。」
「覚悟!!」
棒立ちのあろまボットンたちにそこら中から溢れ出たアンデットの波が襲い掛かる。
結構短い戦いの火ぶたが切って落とされた。
頑張ってカジッちゃん!!まだ毛根がが復活する可能性はあるわ!諦めないで!そこで諦めたら試合終了よ!
次回!カジット死す!デュエルスタンバイ!