一輪の花   作:餅味

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僅かな変化

エ・ランテルとある宿にて

 

外は日が落ち部屋を照らす小さなランタンの火が、室内をぼんやり照らしている。

あろまボットンとクレマンティーヌがベットを椅子にして向かい合って座っている。

あろまボットンは背中を丸め、頭を抱え旅の仲間であるクレマンティーヌに相談していた。

 

「俺って何かしたのかな」

 

「割とね」

 

街の大通りを歩けば四方八方からの視線とそこら中から聞こえるヒソヒソ声、顔を向けると皆慌てて逃げたり知らんぷりをする。

 

「原因分かるの?」

 

「冒険者に喧嘩吹っ掛けたけど、やっぱり怖くなって尻尾巻いて逃げたヘタレとか。脅して無理矢理女を侍らしている最低男とか。触られると人生が迷走するとか・・・・・他の噂も聞きたい?」

 

「???心当たりがないなー」

 

「へーソウデスカー」

 

クレマンティーヌの顔はダメだこりゃといつもの様に呆れ返っていた。

 

「まぁ確かにこの街に居づらいっての分かるねー」

 

「モモンガさんみたいなアンデットは基本的に人の街にはいないし、このままでは情報も碌に手に入らないかぁ。行くとしたらアンデットが多発するカッツェ平野か、王都リ・エスティーゼで更なる情報を集めるか。どっちがいいと思う?」

 

「んー私は法国じゃなければ別にいいかなー。あっそうだ!ここでの情報なら私が集めようか?」

 

クレマンティーヌは貸しを作れるチャンスという思惑がある。

 

「大丈夫だよ、ありがとう。モモンガさん見つけるのも大事だけど、クレマンティーヌちゃんに無理させたくないしね」

 

「・・・・・・」

 

残念なことにこの男に思惑の類は全く効かなかった。

おまけにまたもやただの女扱いするあろまボットンに、戦士としての苛立ちの感情と名前の分からない感情が混ざり合う複雑な心境にクレマンティーヌは自分が今どんな顔をしているか分からなかった

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「私嘘ついたことないよ」

 

「うん」

 

あろまボットンにまっすぐ目を向ける。

珍しく空気を読んだのか、あろまボットンは兜を外し同じ様にこちらへまっすぐ向けられる青く燃える炎の瞳。

 

「一々守られるほど弱くないの、まぁあろまと比べたら塵カス見たいなもんだけどさ。」

 

「・・・・・」

 

「だ、だから何が言いたいかって言うと、私も少しはその・・・・・頼ってもいい」

 

恥ずかしいのか耳が赤くなっており、顔を明後日の方向へ勢いよく曲げる。

 

「ごめんねクレマンティーヌちゃん。変に気を使っちゃて、昔から過保護過ぎとはよく言われてたんだけど、中々治らないもんだね癖って」

 

「それからちゃん付やめてくんない?ガキ扱いされてるみたいでムカつく。呼び捨てでいいから」

 

「分かったよクレマンティーヌ。改めてよろしく」

 

あろまボットンから差し出された右手をまじまじと見る。

接触という接触を許さなかったあろまボットンが、こうもあっさりと握手をしてくれるとは思わなかった。

これも少しは気を許してくれたおかげなのだろう。

 

「よ、よろしく」

 

恐る恐る伸ばした手から感じる温かさは、目の前の異形の存在がまるで人間の様で思わず顔がほころぶ。

 

「やっぱ人間みたい」

 

「そうだよ?」

 

「・・・・・は!?」

 

「正確には元人間かな?」

 

「はああああああああ!!??」

 

最後の最後に爆弾をぶち込まれ、二人の長い夜が続く。

 

 

・・・・・

 

 

「油断した.....」

 

「こんなとこに人が住むんだねー」

 

「はぁ若干慣れ始めている私も成長したよね。」

 

今現在進行形で二人が立つ周囲360度を盗賊に囲まれてしまっている。

王都リ・エスティーゼに向かおうと出発したはずが、なぜだか盗賊のアジトにいる。

 

「お前ら生きて帰れると思うなよ!」

 

「あー死にたいなら掛かってきてもいいよ」

 

クレマンティーヌはどうでもよさそうに一瞥することもなく、あろまに説教を始めていた。

 

「だいたいいつもいつも先を歩くなって言ってるよね?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

自分たちの家に勝手に転がり込んできて、挙句無視しているのだ盗賊たちはますますイラつく。

 

「舐めやがって!!おら!お前らやっちまえ!」

 

「おい、待ておめーさんら」

 

奥から現れた男を見て男たちは勝利を確信する。

細身だが引き締まった鋼鉄の体に適当に切られたボサボサな髪と顎には無精髭を生やしている。

 

「ブレイン!」

 

「冒険者って感じじゃねーな、まっなんでもいい。丁度暇を持て余していてな、相手してやるよ」

 

二人を頭の天辺からつま先まで見てふむと頷く。

 

「そっちのお嬢ちゃんの方が楽しめそうだ。」

 

「ふーんアホだねー別に相手してもいいよー。あろまは手出しちゃダメだからね」

 

はいはいと答えあろまは一歩下がる。

腰に携えた一振りのレイピアを抜き構えを取る。

素材は純銀製で余計な装飾もないが確かな業物だろうとブレインは推測する。

 

「私も久々で少し興奮してるから、手加減できないかもしれないけどごめんねー」

 

目にもとまらぬ高速の突撃。

瞬きする程の一瞬で間合いを詰め、勢いよく突き出される一撃にかろうじて反応し体を反らす。

わき腹をえぐられたが致命傷を避けることに成功し、反撃の一閃を振りぬく。

しかしブレインの刀は標的に届くことなく空を切る。

 

「へー今の反応できるんだー」

 

「こりゃたまげたぜ、強いなあんた」

 

「あれ?降参しちゃうの?」

 

「馬鹿言うなよ、次はその首頂く」

 

「とっと死んじまいな!」

 

クレマンティーヌとブレインの両者とも顔には笑顔を浮かべ、相手から目を離さず睨みあう。

達人同士の対決に男たちは息をのみ、戦いの行く末を見守っている。

そんな中あろまボットンはというと。

 

(この人たちこんなとこで男だけのキャンプとか虚しくないのかな?)

 

いつも通りである。




次話も一週間以内には頑張ってあげます。
ブレインさんも頑張らせますよ。
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