パジャマな彼女。より『白井雪姫先輩の比重を増やしてみた、パジャカノ・パラレル』   作:GOHON

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第22話-2 『まくらと計佑、雪姫とアリス。「笑い事じゃないよぉっ!?あの人の場合、本当に実現しそうな未来じゃないの……!」』

<22話-2>

 

 

──その日の夜。今、計佑は自室でホタルと戯れていた。

 

 胡座をかいた計佑に、正面から抱きつくような形でホタルが座っていて。

後ろにふらーっと倒れていくホタルの背を、

計佑が途中で抱きとめて、抱き寄せられてはホタルが計佑の胸に飛び込む。

──そんな、微妙な起き上がり小法師を、飽きもせず繰り返していて。

 ホタルはキャッキャと本当に楽しそうにしていたのだけれど、

そんなまったりとした幸せ時間は、ノックもせずにドアを開けて、そのまま部屋に入ってきた少女によって終わりを告げられた。

 

「……計佑。昼間の続きの時間だよ……」

「はっはあっ!? えっ、まだあの話終わってなかったのかよ!?」

 

 いきなり現れたまくらとそのセリフに、計佑がうろたえて振り返った。が……まくらの顔は随分とげっそりしていた。

そんな、怠そうにした少女が、計佑たちの方には一瞥もくれずふらふらと歩いて。

計佑のベッドに倒れこんで、一言だけ呟いた。

 

「……キツかった……」

「なっなんだ? どうした? 晩飯の時には、お前ピンピンしてたのに……」

 

 夕食を終えてからの一時間程の間に、いつだって元気満点の筈の少女に一体何があったのか……?

 

「……雪姫先輩と電話してたんだけど……それがちょっとね……」

 

 そう答えたまくらが、ゆっくりと身体を起こして。

ベッドに座り直すと、ピシャンピシャンと自分の頬を挟むように何度か叩いた。

 

「……よしっ!! じゃー、昼間の続き、始めよっか」

 

 そして元気を取り戻したまくらが、そう言って計佑たちを見下ろしてきて。

──そこで、冷たい目つきになった。

 

「……なに、その格好……一体なにやってんの……」

「何って……ちょっとしたシーソーごっこみたいなもん?」

 

 まくらがいきなり豹変した理由がわからない計佑が、キョトンとして答える。

それに、まくらが溜息をついて頭を抱えた。

 

「ほんっと、この男は……一体どういう成分で出来てんのかなぁ……」

 

 やがて顔をあげたまくらが、

 

「とにかく、ホタルちゃんにもちょっと話があるから。その格好をやめて、こっちをちゃんと向きなさいよ」

「ええ……? 昼間の話なら、ホタルは関係ないだろ」

「それが大有りなのよね……ほらっ、ホタルちゃん早くおりなさい」

「えー、やだ~!! ハナシならこの格好でも聞けるでしょー?」

 

 ホタルがいつものようにごねたが、

 

「……ホタルちゃん。今私は、正直怒ってるから。ちゃんと言うこと聞いてね?」

 

 まくらの低い声に、ビクリと震えると。そそくさと計佑から離れて、ちょこんと正座をした。

 

「おいおい、子供に凄むのはやめとけよ……」

 

 計佑もまくらのほうに向き直って、胡座を組み直した。

そしてホタルの頭をひと無でして、慰めてやる。

けれどまくらは、そんな計佑の言葉は無視して。

 

「ホタルちゃん。昨日ホタルちゃんは、雪姫先輩に酷いコトをしたよね?」

「え? 何の話だ?」

「……忘れた訳じゃないでしょ、計佑。ホタルちゃんが先輩に送ったメールのことだよ」

 

 そのまくらの言葉に、ホタルがビクッ、と体を震わせた。その様子に、計佑の方が慌てる。

 

「そっ、その話か!? いや、それはもういいんだよ、もう終わった話で──」

「何言ってんのよ!! そんな簡単に許していい話じゃないでしょ!!」

 

 まくらが立ち上がって怒鳴ってきた。その怒声で、またホタルが震える。

 

「いやっ、まあそう怒鳴るなって!! 子供のイタズラなんだから、そんなに喚いたって──」

「本当にただの『子供のイタズラ』なら私だって怒らないよ!!

でも、これは違う……計佑にはわからないんだろうけど!!」

 

 確かに、計佑にはまくらがここまで怒る理由がわからなかった。それに戸惑った間に、まくらの怒声が続く。

 

「計佑、本当にあんたは全然わかってない!!

ヘタしたら、雪姫先輩との仲が完全に終わってたかもしれないんだよ!?

それくらい酷いコトされたのに、何あんたは簡単に許してるのよ!!」

「いっ、いや落ち着け!! オレだって、それは流石に一応わかってるよ、

だから本当に昨日ちゃんとキツく叱ったんだ!! そりゃあもう、ホタルがすっごい泣くまでだ!!

だからもう、本当に許してやってくれよ!!」

 

 必死に訴える計佑だったが、まくらはまるで落ち着いてはくれなくて。

 

「いいやっ、許せない!! どうせあんたの事だから、ホタルちゃんが泣きだしたらすぐに許したんでしょう!?」

「いっ、いや!! そんな事ない。昨日は……一応、ちょっとはガマンした」

 

 馬鹿正直にバラしてしまう少年。まくらが額に青筋を立てた。

 

「やっぱりそんな事じゃないの!! もういい!! 私が代わりにしっかり──」

「わ~~~ん!!!! まくらがコワいよ~~~!!!!」

 

 泣きだしたホタルが、ぴゅっと飛んで。あっという間に天井をすり抜けて消えてしまった。

 

「あっコラ!! も~~……っ!!」

 

 まくらが地団駄を踏んで悔しがるが、計佑はホッと溜息をついて。

それを見咎めたまくらが、今度は矛先を計佑に向けてきた。

 

「……計佑っ!! あんた、わかってるって言ったけど……!! ホントにわかってるの!?

雪姫先輩が優しい人だったからどうにか許されただけで、本当に危うかったんだよ!?」

「いっ、いや……うん、一応わかってるつもりだって……その、確かにあの後の先輩すごく……だったから。

でもさ、ホタルの気持ちも考えるとさぁ……

そうやってイタズラでもして気を引きたいって気持ちも、わからなくもないって言うかだな……」

 

 まくらの剣幕に怯みながらも、どうにか言い訳を続ける。

 

「いやっ、オレも昨日は本当に怒ったんだぞ?

……でもホタルの気持ちを聞かされて、ホタルの寂しさを考えたら……やっぱり、もう許すしかなかったんだよ」

 

 ついこの間まで、まくらも陥っていた状況。

10日もなかったけれど、それでもまくらだって随分と参っていた。

そんな状況を何十年も、それも今は6才児が耐えていると思うと──怒り続けるなんて、出来る訳がない。

 

「……それは。それは私だって、気を引きたかっただけって言うなら、ここまで怒んないよ……でもさ……」

 

 困ったように言う計佑に、ようやくまくらがトーンダウンして。

やがて、ため息をつきながら怒らせていた肩をストンと落とした。

 

「……はぁ。もういいよ……でも、計佑。

あんたの、その誰にでも優しいとこは……必ずしも長所にはならないからね?

……それにいつか、計佑自身を苦しめることだってあると思う。ホント、ほどほどにしときなよね」

 

 そう言って、まくらがベッドにまた腰をおろして。

ようやく完全に落ち着いてくれたかと、少年がホッと安心したけれど──

 

「それじゃあ、改めて昼間の話の続き、いこっか」

 

──安心するのはまだ早かった。

 

「うええ!? やっやっぱりやるのか!? ホタルの話で終わりだったんじゃ……?」

 

 また恐怖裁判が始まるのかと、狼狽える計佑にまくらが苦笑した。

 

「そんなに警戒しなくても、もう昼間みたいには怒んないからさ。

……一応、先輩にも話聞いてみたけど、まあ思ってたよりはよっぽど上手くフォローしてたみたいだしね、計佑」

 

 そのまくらの言葉に、計佑の気が緩んだ。それで、部室で抱いていた不満をつい口にしてしまった。

 

「そっそうか!? そっか、なんだよ。やっぱオレ、そこまで悪くなかったんじゃ──」

『ピシャァアアン!!』──言い終わらない内に、強烈なビンタが飛んできた。

 

「調子にのんな。フォローは一応認めてやるけど、オマエが先輩を弄んだこと自体は許してないんだよ」

 

 またも般若に変化した幼なじみを、張り飛ばされた頬を押さえながら、

 

──や、やっぱり鉄拳裁判じゃないかよ……!!

 

 震えながら見上げてしまう、哀れな子羊少年だった。

 

─────────────────────────────────

 

 やがて、般若からいつもの顔に戻ったまくらだったが、途端、溜息をついた。

 

「……まあ、計佑を改めて責める前に、一応先輩にも話を聞いておかなきゃ、

と思ってさっきまで電話してたんだけど……正直、かなり後悔したよ……」

 

 その電話の内容を思い返しているのか、まくらがげんなりとしてみせた。

 

「……後悔? ……なんで?」

 

 昨夜の、自分と雪姫との会話。それに、他人をイヤな気分にさせる要素なんてない筈──

 

「めっちゃ、惚気られた」

「ぶっ!? のっ惚!?」

 

──だと思っていたのに、思ってもみない言葉がまくらから飛び出した。

 

──ええ!? きっ昨日の話だろ!? いっ一体、何を話したんですか先輩っ!!!

 

 昨日の自分がしたことなんて、怒らせて、必死に言い訳して、

叱られて、ちょっとだけ言い返して、……最後には蕩けてしまっただけ。

──それだけしか出来ていないと思い込んでいる天然たらしを、まくらがジトリと見下ろした。

 

「ていうかさ……計佑、あんた、要所だけはきっちりフォローしてんのね……

ヘタレ鈍感王のクセに、女のコを喜ばせるツボだけはきっちり突くとかさ……どんなちぐはぐさなのよ?」

「……は、はぁ……?」

 

 そう言われても、この天然少年には、何のことかわかる訳もなく。

ただ首をかしげてみせる計佑に、まくらが、どこか恐ろしいモノを見るような目つきになった。

 

「……本当に、何もわかってないのね……なんてヤツなの。あんた、実はとんでもないタラシだったのね……」

「なっ……!? ……っ!!」

 

 まくらまで言われてしまった、"女たらし"。

思わずどういう事なのか尋ねたくなったが、硝子のアドバイスを思い出して慌てて口を噤んだ。

そして、慌てて話題を変えようと試みる。

 

「いやっ、もうそんな事はいいよ!! それより、やるっていうんなら早いとこ本題の、昼間の続きを話そうぜ!!」

 

 昼間の続きも気が重いが、自分が『本物のたらし』になりかねない話題のほうがもっとまずい──そう考えて。

……硝子に騙されているなどとは微塵も思わない、素直な少年だった。

 

「うーん、でも……ぷっ!! そうそう、もう一個話しておきたい事あったんだった」

 

 途中で吹き出したまくらが、今度は軽く笑いながら言ってきて。

 

「計佑が昼間言ってた『別口』だけどさ……雪姫先輩、アリスちゃんのモノマネして見せたんだって?」

 

「えっ!? 先輩、そんな事まで話したのかっ?」

 

 一体どこまで話したのやら──驚く計佑を他所に、まくらが身体を折って、くっくっと笑う。

 

「ぷぷっ……一昨日の晩にも思ったんだけど。やっぱり先輩、カワイイとこあるよねぇ……

ヤキモチ妬いたからって、アリスちゃんのコスプレしてモノマネかぁ……あはははは!!  私も見てみたかったかも~~!!」

 

 まくらがついにベッドに倒れこんで、ゲラゲラと笑い出した。けれどそれに、計佑はムッとしてしまう。

 

「……おいまくら!! そんなに笑うのは失礼だろっ!!」

 

 言い終わった途端、まくらにアゴを蹴りあげられた。

 

「ぶぐっ……!! ちょっ、おいぃ!? お前、今日やりすぎじゃないかっ」

 

 蹴りとは言え軽いもので、今日のまくらからの暴力としては一番痛みは軽かったが、

それでも顔面への蹴りなんて、いくらなんでもあんまりだ。

流石にこれは許せないと、床から腰を上げて反撃に出ようとした。

──しかし、起き上がってきたまくらが冷たい目で一言、

 

「自分は散々爆笑しといて、よくそんなセリフが吐けるよね」

 

 そう言い捨てて、少年の反抗の意思を見事にへし折ってきた。

 

「ぐっ……!! そっ、それは……!!」

 

 確かにあの時の自分は、今のまくらよりもっと笑い転げていた気がする。

けれど、あの時はあれが焼きもちだとは解っていなかっただけなのだ。

分かっていれば、絶対に笑い飛ばしたりなんてしなかった。

 それに、雪姫が自分の為にしてくれた事を、他人が笑うという事に何だか無性に腹が立ったのだった。

それでも、この件に関しては、自分に理がない事は理解した計佑が、

半ば腰を浮かせたまま悔しそうな顔をして黙りこむと、まくらが苦笑してみせた。

 

「はいはい、悪かったよ。

でもね、部外者の私が笑うのと、当事者のあんたが笑ったのとでは、罪の重さが全然違うんだからね?」

「……それは。まあ、一応わかるけどさ……でも、本当にあの時は分からなかったんだよ……」

 

 凹んで、また床へと座り直す計佑に、

 

「そうよね~……まあこの件に関しては、一応同情してあげるよ。

鈍感王の計佑には、いきなりのコスプレ姿はハードル高すぎだもんね」

 

 軽くまくらがフォローしてくれた。……けれど、今度は計佑も軽口を叩かなかった。

 

 今日のまくらの勢いだと、ここで下手な事を口にすれば、また鉄拳が飛んでくるだろうから。

 すると案の定、黙り込んでいる計佑に、まくらがちょっと残念そうな表情を浮かべて。

 

──やべぇ……やっぱり狙ってやがったのか……

 

 胸をなでおろした計佑だったが、

 

「……さて。それじゃあ、今度こそ『もう1つの理由』を聞かせてもらおうかな?」

 

 そんなセリフと共に、

『また変なコト言い出したら、すぐにでも鉄拳飛ばしてやる』

と言わんばかりの、サディスティックな笑みを妹分が浮かべてきて。

 

……安心するのはまだまだ早かったのだと、少年は身震いするのだった。

 

─────────────────────────────────

 

「と言われても……昼間はどこまで話したんだっけ……?」

 

 今日も、なんだか色々と慌ただしい一日だった。

もう昼間の事も遠い出来事のようで、イマイチ細かいことを思い出せない計佑に、

 

「『雪姫先輩が、計佑のコトを好きで好きでしょうがない』事を、

あんたがどうにか理解出来たってとこまでだよ。 ……ホント、私もついさっき改めて思い知らされたけどね……」

 

 答えたまくらが、酷くうんざりとした顔つきで、重い溜息をついてみせた。

 

──せ、先輩……ホントに一体、どんなコト話したんですか……!?

 

 他人の惚気話なんて、ウザイ以外の何物でもないとは聞き及んでいる。

それにしたって、このまくらの怠そうな雰囲気は一体。

果たしてどれほどスゴイ話をされてしまったのかと、計佑は気まずくて仕方がなかった。

 

……まあ、『好きな人と、自分以外の少女との惚気話』だからこそ、

ここまでまくらが憔悴する羽目になっているのだが、そんな事はこの少年に解る筈もない事だった。

 

「あんだけ弄ばれても、まだ計佑のこと『好きで好きでたまらないの!!』

状態なんだもんねぇ…… 羨ましい男だよねぇ」

 

 太ももにヒジを置いて、頬杖をついたまくらがジト目で見下ろしてくる。

 

「うっうるせーよ!! お前、話聞きに来たんじゃなかったのかよ!!

冷やかしに来ただけなら、オレはもう話なんて付きあわねーぞ……!!」

 

 居た堪れなくて、赤い顔を誤魔化すように計佑が喚いた。

 するとまくらが、ベッドから立ち上がって。改めて、床へと座りなおしてきた。

 

「わかったわかった。今度こそホントに話きかせてよ。

──ほら、こうして上から目線もやめたことだし、真面目に聞くからさっ」

 

 そう言って、さっきまでとは逆に、今度は下から計佑の顔を覗きこんでくるまくら。

その顔は、いつも通りのニパっとした笑顔になっていて。

今度こそ漸くいつもの空気に戻ったかと、計佑も気分を改めて。説明を始める。

 

「あ~と……まあだからさ。確信が持てない内は、いい加減には答えたくないってとこまで話したんだよな?」

「そうそう」

「それで……もう一つの理由は。

先輩がオレの事を……まあ、その……かなり好きでいてくれて。

……でも、オレが先輩に釣り合いがとれてなさすぎるのが、やっぱりどうしてもひっかかってたんだよ」

「……え?  釣り合いって……ホントに、雪姫先輩に自分じゃつり合わないとか考えてたの?」

 

 まくらが、不思議そうな顔になって。それでも、そのまま本音を吐き出した。

 

「……うん。オレなんかじゃあ先輩に申し訳ないって、ずっとそれがひっかかってた。

……でもさ、一昨日……先輩の気持ちの強さがちょっとだけわかった気がして。

それが、すごく……嬉しく思えて。

そしたらさ……もう、人間的に釣り合いがとれないのは仕方がない。

でもそれじゃあせめて、想う気持ちの強さだけでも先輩に負けないようになりたい。

それだったら、不可能なんかじゃないんだって、そうなってから応えたいって、そうも思うようになったんだ」

「……そんな事考えてたんだぁ……」

 

 ほあーっ、と息をつくような声を発して、感心した顔つきをするまくらに、照れくさくなって顔を逸らす。

 

「でもさぁ……計佑は、もっと自分に自信もっていいと思うよ。

まあ、鈍感すぎるとかの欠点が目立っちゃうから、そんな風に思うのかもしんないけど。

計佑にはさ、それに負けないか、それ以上に長所があるんだから。

でなきゃ、あの雪姫先輩が、好きになってくれたりなんてするハズないでしょっ」

 

 まくらが満面の笑みでそんな事を言ってくれるが、この謙虚少年が納得する訳もなく。

 

「……と言われても……お前の言うことなんて家族の欲目だろ?

それに先輩が好きになってくれた理由なんて……やっぱりよく分かんないんだよな。

最初は、たまたま助ける形になっちゃった事とか、なんか誤解だろうとばかり思ってたんだけど。

転んでみせて、ゴミ押し付けちゃったりもしての間抜けな話で、どうして『好き』なんてことになるんだ……?」

 

 心底不思議そうな顔をする計佑に、まくらが苦笑する。

 

「だからさ。昼にも言ったけど、『恋は理屈じゃなくて感性』なんだってば。

他人にはただの笑い話にしか思えないコトでも、雪姫先輩には特別な意味があったんだよ」

「ふーん……?」

 

 それでもまだ首を傾げる計佑の肩を、まくらがパンっと叩いてきて。

 

「まあ、計佑もちゃんと恋心を自覚できるようになった時には、多分わかることだよ。

理屈だけで納得しようとしてる今は、わからないかもだけどねっ」

 

 そう言ったまくらは、優しげな笑顔を浮かべていたけれど──

 

「……それにしても、また随分とマジメな事考えてたんだねぇ……

『……せめて、想う気持ちくらいは負けないようになってから応えたいんだ』

……かっこいいじゃ~ん!!」

 

──最後には、ニヤニヤとした笑みへと変えて、からかってきた。

 

「ぐっ……!! 人がマジメに話したってのに、結局茶化すのかよ……」

 

 結局、色恋の話ではどうしたって一方的にまくらにやられてしまう。

ついには不貞腐れて、まくらから目を逸らしてしまう計佑。

 その、完全にそっぽを向いた計佑に、まくらが表情を暗くして。……本当に小さく呟いた。

 

「ていうかさ……自覚がないだけで、計佑はもう雪姫先輩の気持ちに全然負けてなんか──」

「え?」

 

 聞き取れずに、計佑がまくらに視線を戻したが、もうその瞬間にはまくらは表情を取り繕っていて。

 

「まあ、計佑の気持ちは一応わかったよ。

同じ女の子としては、先輩の待たされるつらさのほうに共感できちゃうんだけど……

『お母さんにかけて誓った』事だから、ちゃんと内緒にはしておくよ」

 

 そう言って、ニパッと計佑に笑いかけてきた。

けれど計佑は、今のまくらのセリフに、昼間は断念した『指摘』の事を思い出した。

 

──そうだよ……こういう話だと、こいつやたらと上から目線だけど……本来、そんな偉そうな事は言えないハズじゃん。

 

「……『女のコとしては、待たされるつらさに共感できちゃう』ねぇ……なんでお前にそんな事が言えるんだ?」

「はあっ!? なっなにそれ!! 私だってちゃんと女のコだっての!!」

 

 まくらが目を吊り上げるが、鉄拳が飛んでくる前に畳み掛けた。

 

「だってお前、カレシとかいたことないじゃん」

「っ……!? そ、それは……!!」

 

 拳を振り上げたまま固まるまくらに、ついに反撃の時が来た!!  とばかりにトドメを刺しに行く。

 

「つーかさ。それどころか、お前だって初恋すらまだだろーに。

オレと条件同じなお前が、一方的にオレに説教とかさぁ……」

 

 ハッ、と鼻で笑ってみせると、まくらがカッと顔を赤くした。

 

「ふっふざけんな!? あんたみたいなのと一緒にしないでよっ、私は初恋だって今だって──」

 

 喚いてきたまくらが、途中で言葉を止めて。完全に硬直していた。

そしてその顔色はどんどん赤くなっていって。

──その言葉と、そんな顔を見せられたら、流石の鈍感王にもわかった。

 

「おっ……お前、好きな男なんかいたのかっ!!!?」

 

 思わず、ひっくり返った声で叫んでいた。

 

──いや、『今だって』って言ったよな……てことは、『いた』というより『今もいる』ってコトで……

 

 その事実に、唖然とする。

 

──……う……嘘だ……

 

 信じられない。

ずっとお子様だと思っていた妹分が、初恋なんてとっくで。

そして今だってどこかの男を想っている──なんて、そんな事は。

 けれど、先の言葉と、今のまくらの顔色の前には、結局は否定なんて不可能で。

 

 やがて、もう信じざるをえなくなった少年の心を占めた感情は──強い喪失感だった。

 

「……誰だよ、それ……」

 

 空虚な気持ちのまま、完全に腑抜けた声で尋ねた。

それにまくらが、思いっきり焦った顔をして、ズサっと後退りすらしてみせた。

 

「ええぇっ!!!? そっ、そんなの言える訳ないでしょっ!!!?」

 

 そう言って、耳まで赤くする幼なじみ。その姿に、今度少年が抱いた感情は──怒りだった。

 

 耳まで真っ赤で、計佑の視線から必死に顔を逸らそうとして、恥ずかしそうに身を縮こまらせている姿。

今、まくらはその男の事を考えていて、

それでそんな様になっているのだと思ったら、

熱い──雪姫の時のような真っ赤に燃え盛る炎ではなく、

ガスバーナーのような、青く、静かだがより高熱な──怒りが湧いてきたのだった。

 

「……言えよ。誰だよ」

 

 さっきと同じ質問だったが、今度の声は、さっきとはまるで違って、固く、怒りに彩られていた。

 

「だっだから言えないって……!!  ……っ!?」

 

 必死に計佑の視線から顔を逃がそうとしていたまくらだったが、

再度の質問に答えた時に一瞬視線を合わせて──息を飲んで、怯えた。

 無理もなかった。今の計佑は、滅多に見せない本気の怒りの表情を浮かべていたのだから。

 

「なんで言えないんだよ。オレのほうの事情は全部知ってるクセに、卑怯だろそれ。

それとも何だ? 言えないような、ろくでもないヤツなのか」

 

 躙り寄る計佑に、まくらが下がろうとして──すぐにベッドにぶつかった。

計佑が右手を伸ばして、まくらの左肩を掴む。

 

「……認めねーぞ。そんなろくでもないヤツだって言うなら、絶対に認めねーからな」

 

 そう告げて、少年が右手に力を込めた。

 

「いっ痛……!! 離して、痛いよ……!!」

 

 怯えたまくらが悲鳴を上げて。それでも、少年は手を離さなかった。

ただ、少しだけ力を緩めたのが、今の計佑に出来る最大の譲歩だった。

 

「おい、どうなんだよ……!!」

 

 声を荒げながら、まくらの顔を至近距離から覗きこむ。

そんな計佑の剣幕に、ついに屈服したまくらが叫んだ。

 

「そ、そんなんじゃないってば!! 好きだったけど、もう失恋してるの!!

まだちょっと気持ちが残ってるから『今』とか言っちゃっただけっ!!!」

「……なに……?」

 

 まくらの答えに、右手から力が抜けて。

その隙に、まくらが慌ててベッドに這い上がって、壁際まで逃げた。

 

「……もう、失恋してる……」

 

 呟く計佑を、まくらが壁際から不安そうに見つめてきていた。

 

──……なんだ。もう付き合いそうとか、そういう訳じゃあないんだ……

 

 まくらが今すぐ誰かと付き合う訳じゃない。誰かのものになってしまう訳でもない。

そう思ったら、心中で噴き上がっていた炎が、一気に消えていった。

 ほぅ……っと、心底安心した溜息が出て。

そうして平常心に戻った少年だったが、そうすると、次はまくらへの申し訳ない気持ちが沸き上がってきた。

 

──って、な、何なんだよ俺……!? 人の失恋を『よかった』なんて思うとか……!!

 

「あっ……!? ごめんっ、まくら!! 俺……!!」

 

 慌てて謝ったが、計佑が言葉を発し始めた瞬間、まくらはビクッと震えて。

すぐに、もう計佑が落ち着いているとわかったのか、安心したように溜息をついた。

 

「……ううん、いいよ気にしてない。

ちょっと怖かったけど、今日の私の暴行に比べたら、肩ギュッくらい全然大したことないもんねっ」

 

 計佑の謝罪を勘違いしたまくらの言葉だったが、それを訂正して、説明する事は出来なかった。

今の自分の感情の流れが、自分自身でもさっぱり理解出来ていなかったから。

 まくらに恋人が出来たりしたら、きっと腹は立つだろう──昼にまくらに語った通り、それは予想していたつもりだった。

 けれど、想像ではなく現実になりそうだと思い知らされた瞬間の、

熱すぎる感情──予想とはまるで違う、あの激しさは一体なんだったのか。

 そして、それが杞憂だったと分かった瞬間の、安堵感。

──展望台でまくらが突然消えて、ホタルから無事を告げられた時に感じたそれに劣らないくらいの──安心感だった。

 

──嘘だろっ……まさか……俺って……オレって……!!!

 

 それらの事実から、少年は、認めがたい真実を……もう、認めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──……オレって、こんなにシスコンだったのかよ……!!!

 

 

 

……少年が、その結論に頭を抱えた。

 

──マジかよ~~……まさかオレが、そんなイタイ兄貴だったなんて……!!

 

 そんなみっともない自覚に悶絶していると、まくらがそっと声をかけてきた。

 

「ね、ねえ……ホントに気にしないでってば。私なんて、今日は4発も殴っちゃったじゃん?

……まあ、あんたが先輩にした事を思えば当然の分だとは思うけど……

それでも、ちょっとやり過ぎ感はあったし……だから肩を掴むくらいの事なんてさぁ?」

「……いや、オレが今凹んでるのはその事だけじゃなくて……」

 

 まくらがもう一度フォローし直してくれるが、自分が苦悩しているのは全然違う事なのだ。とはいえ、

「実はオレ、すごいシスコンだったんだな」

……なんてセリフを、よりにもよって、当人であるまくらになんて言える筈もなくて。

 

「……ちょっと、詳しくは言えないけど。ホント、ごめん……」

 

 そんな風に、もう一度頭を下げた。

 

「……はぁ。しかしお前がまさかなぁ……夢にも思わなかった……」

 

 呟いて。ぐっと身体を前に倒し、あごをベッドに乗せた。まくらを見上げて、尋ねる。

 

「なぁ……失恋したって言うけど……詳しく聞いてもいいか?」

「ええええぇ!? いっいやっ、それはちょっとパスしたいんだけどぉ……!!」

 

 まくらが慌てるが、じっと見上げる。見上げ続ける。

──やがて、ついに根負けしたのかまくらが口を開いた。

 

「……はー。

……何でよりによって計佑に……えっと、一言で言うと。

私の好きな人には他に好きな人がいる。それだけの事」

「……そいつには、もう恋人がいるってことか?」

「ううん、恋人……ではまだないんだけど。見てれば分かるんだよね、どれだけその人のこと好きかなんて、さ……」

 

 そう答えて、まくらがフッと苦笑してみせた。

 

「なんで決め付けるんだよ……外から見てるだけで、人の心なんて完全に見透かせるワケないだろ?」

 

 鈍感で、恋心なんてさっぱりな少年が、それ故にそんな言葉を口にしたが、

 

「……まあ、計佑にはわかんないだろうね……色んな意味で、さ……」

 

 まくらが、複雑そうな顔つきでこちらを見つめて。

 

「その女の人、すごく素敵なんだよ。……私なんか、どう逆立ちしたって勝ち目ないんだ」

 

 そう、寂しそうに。諦めたように笑う幼なじみに──苛つきを覚えた。

 

──……何が『私なんか』だよ……

 

 いつも元気で、ニコニコ笑顔を振りまいて、周りも元気にさせてみせる、最高に明るくて可愛い女の子。

──コイツより素敵な女子なんて、滅多にいる筈がない。

……そんな風に考えて、

 

──……って、何恥ずかしいコト考えてんだよオレは~~~!!!

 

 シスコンだと自覚した途端にこれなのか──!?

そんな恥ずかしさに、頭を動かして。まくらから顔を隠すように、今度は額をベッドの縁に乗せた。

 

「『私なんか』なんて言うなよ。

……これは茂武市から聞いたんだけど。お前、男には人気なんだってよ。

明るくて、周りまで元気にさせてくれる、笑顔が最高にカワイイ女のコで。滅多にいない美少女なんだそうだぞ?」

 

 ついさっき自分が考えていた言葉を、茂武市のセリフだと誤魔化して、まくらに告げた。

……まくらの顔を見ながらで言える筈もなく、相変わらず顔を伏せたままだったけれど。

 

「……他の人にどう思われたって、肝心のその人にそう思われてなきゃ意味ないじゃん……」

 

 それでも、まくらから返ってきたのは、寂しそうな声で。それに、思わずベッドから顔を上げた。

 

「あ~も~!! まくらのくせに何いじけてんだよ!!

10年以上一緒にいたオレから見てもそう思えるんだから、自信もてよ!!」

 

 茂武市のセリフだと誤魔化そうとしていたのに、結局そんな風にぶちまける事になった。

そして、まさか計佑からそんな言葉が飛んでくるとは、夢にも思っていなかっただろう幼なじみが、

 

「……へ……? ……えぇえっ!! うっウソ……!!!??」

 

 首まで赤くなっていく。

自分も負けず劣らず真っ赤になっている気がしたが、もう目は逸らさずに、じっとまくらを見つめ続けた。

──やがて、まくらのほうが目を逸らして。

 

「……ほ、……本当に、……計佑も、そう、思ってるの……?」

 

 もじもじしながら、そう尋ねてくる。それに、ハッキリと答えた。

 

「ああ。お前は自慢の妹だよ。だからこそ、ダメな男なんて認められないって、さっきはキレちゃったんだよ」

 

……そう答えた途端。高揚していたまくらの表情から一気に熱が消えていった。

 

「……なんだ。結局それか……」

「え……?」

 

 計佑の反応に、もはやまくらはまるで意識を向けなかった。そっぽを向いて、

 

「……そりゃそうだよね。わかりきってたコトなのに。……なんで私、いつまでも……」

 

 そんな事を呟く。そして、はっと鼻で笑った。

といっても、それは計佑を嘲笑しているのではなく、自嘲してるようにしか見えなかった。

 

「……おい、一体何の話をしてるんだ?」

 

 さっぱり分からないまくらの言動に首を傾げていてると、漸くまくらが視線を戻してきた。

けれど、そのまくらの目は──もう完全に冷えきっていた。

 

「……自慢の妹、ね……そんなコト言うけど、あんた最近、アリスちゃんやホタルちゃんばっかりじゃない……」

「……え……な、なに……?」

 

 いきなりの豹変についていけず、戸惑う事しか出来なかった。

……そしてまくらが、ぐっと瞳に涙を盛り上げた。

 

「 "妹" としてすら、ほったらかすようになったクセに!!」

 

 そう叫んで、まくらが部屋から飛び出していく。

 

「はぁっ!? おっおい、なんだよそれ……!!」

 

 思わず腰を上げたが、……結局追わなかった。

 

──ほったらかし……? 何の話だよ。オレはいつも通りにしてただろ……?

 

 そんな風にしか思えなかったし、

完全にヒステリーを起こしたまくらは、時間を置かないと話なんて聞いてくれないのが常だったから。

気にはなるが、少なくとも一晩は置かないと、まくらの場合もっと意固地になってしまう。

 

「くそっ……珍しく褒めたんだぞ? 何で、それでキレるんだよ……」

 

 まるで訳が分からず、結局そんな悪態をつく事しか出来なかった。

 

─────────────────────────────────

 

──まくらが、『昼間の続きだよ』と計佑の部屋を訪れる少し前。

 

「あ~~~……すっきりした!」

 

 まくらとの通話を終えた雪姫が、そう独り言を口にして。椅子に座ったまま大きく伸びをした。

 まくらからの電話がかかってくるまでは、ずっともやもやした気持ちを抱えていたのだけれど。

まくらに話を聞いてもらった(……この少女には『惚気た』などという自覚は全くなかった……)

お陰で、随分とスッキリ出来たのだった。

 

 ちなみに、そのもやもやの理由は──昼間の "大失敗" イタズラのせいだった。

計佑をいぢめてやろうと、助けの求めにあんな答えをしてみせたのだけれど。

楽しい気分でいられたのは、本当に最初だけだった。

 

 確かに、口をパクパクさせながら、こちらを見つめてくる計佑の顔は愉快だった。

──けれど、やがて計佑が女子たちに群がられて、

悲鳴を上げ始めてからは……もう楽しい気持ちなんて、微塵も感じられなかった。

 

 もはや焦りしかない雪姫が、「ぁっ、ぁっ……」と小さい声を上げ続けても、

そんなものは計佑の悲鳴、そして少女たちの怒声や楽しそうな声でかき消されてしまって。

 やがて計佑がシャツを剥かれて、素肌までいじくり回されてるのに気付いた時、ようやく大声が出せて。

慌てて割り込んで、それでどうにか止める事が出来たのだけれど。

 

 結局、その後の雰囲気では『アリスを可愛がった分、私も──』なんて言い出す事も出来ずに、すごすごと帰る事しか出来なかった。

──それで結局、ついさっきまで悶々としていたところに、まくらからの電話がかかってきた……という訳だった。

 

──さて……まくらちゃんが話を聞いてくれたおかげで、随分スッキリ出来たんだけど。

  でも、話してたら……やっぱり、気になってきちゃったなぁ……

 

 携帯を手にとって。多分、今はまだお風呂にいるだろう相手──アリスにメールを打った。

 

──あのコには……やっぱりちょっと、"お説教" が必要だもんね……

 

 そう、自分に "言い訳" して。

送信するとすぐに、とっくにお風呂を済ませていたらしいアリスがやってきた。

 

「おねえちゃーん、話ってなーにー?」

 

 ノックもせずに飛び込んできて、いつものように雪姫の胸へとタックルを仕掛けてくる。

──けれど、今日の雪姫はそれを優しく受け止める事はなく、アリスの肩を押さえて留めた。

 

「……おねえちゃん?」

 

 不思議そうに見上げてくるアリスに、ちょっと厳しい顔を作って話しかける。

 

「……アリス。今日は、ちょっとお説教があります」

「え……? お説教……あっ! またノック忘れちゃったから?」

「違います。今日はそんな事どうでもいいの」

 

 雪姫の言葉に、『へっ?』という顔をするアリス。

いつもは、躾に関しては結構口うるさい自分が『そんな事』などと口にしたのが不思議なのだろう。

……少し失敗してしまったけれど、今の自分にとっては本当に『そんな事』なのだから仕方がない。

 

「……ちょっとそこに座りなさい」

 

 アリスをクッションの上に正座させて、自分も向かいに正座した。

 

「……アリス。貴方は、もう14歳よね?」

「うん。それが?」

 

 きょとんとした顔のアリス。

 

「……14歳にもなって、ああいうのはどうかな……と、お姉ちゃんは思うわけです」

「……ああいうの?」

「……つまり。もう、色々と気を遣わなければいけない歳でしょう?

今日の昼みたいな……ああいう、男の人に無邪気に絡みつくのは慎みがないとは思わない?」

 

 そう説くと、アリスは口をぽかんと開いて「……はぁ……」と気のない返事をしてきた。

 

「なんですか、その気のない返事は。いい? 男の子というものはね──」

 

──アリスへのお説教……それは、男への接し方についてだった。

どんなに幼く見えても、アリスは中学二年の14歳なのだ。

昼間のような、はしたない真似は許されない。

そう、これはアリス自身の為にも、やめさせなければいけない事で。

 

「──いい? 男の子というものはね──」

「お姉ちゃんでもヤキモチなんか妬くんだねぇ」

「いつだって──んなっ!? ア、アリスっ!!??」

 

 男の子について語ろうとした瞬間、割り込んできたアリスのセリフに、雪姫が泡を食った。

……あっさり真意を見抜かれてしまっては無理もなかった。

 

『そうよっ、これはアリスのためのお説教なんだから』

 

そんな風に、きっちり "自己弁護" した上で始めた "お説教"。

──確かに昨夜、計佑の方から構う分には仕方がないと "一応" 納得した。

けれど、アリスの方からベタベタくっついていくのは、またちょっと話が違う。

そう考えての、"お説教" ──という名目の焼きもちだったのだが。

 

──う、ウソっ!? なっなんでこんなにあっさりバレちゃうのぉ!?

 

「ちっ違います! こっこれはっ、そのっ、あのっ……!」

 

 まさかアリスに、こんなにあっさり見抜かれるとは夢にも思わなかった。

……いや、自分が甘すぎたのか。

 考えてみれば、一昨日だって自分の思惑──アリスに張り合おうと、計佑に髪を見せつけた──をきっちり見抜いてきた。

やはり、どんなに無邪気に見えても、アリスも立派な女のコだったのだ。

 そんな、今さら気付いても遅い事実に後悔して。

雪姫が余裕をなくしていると、アリスがうんうんと頷いてみせた。

 

「そっかぁ……お姉ちゃん、なんだか今日の帰りからミョーに元気ないと思ったら……そういう事だったんだぁ」

「だっ!! だから違うといってるでしょお!?」

 

──実際には全然違わないのだが、雪姫が必死にバタついて否定していると、アリスがニマ~っと笑ってみせた。

(その表情は、雪姫が計佑に見せるそれと良く似ていたりしたが、

そんな事は雪姫には分からない事だし、わかったとしても今の雪姫にはどうでもいい事だった)

 

「ふーん……ふぅう~ん……お姉ちゃんが、まさか焼きもちなんかをねぇ……」

「アっ、アリス!! いい加減にしなさい!?」

 

 ついに雪姫が手を振りあげるが、実際には振り下ろされる事などないと分かっているアリスが、

「キャー」とわざとらしい悲鳴を上げてみせてから、ニマニマ笑いを引っ込めた。

 

「あははっ、おねえちゃんカワイ~! そんな恥ずかしそうに赤い顔して凄まれたって、全然コワくなんかないよ~?」

 

 ニマニマ笑いこそやめたが、本当に愉快そうにアリスが笑い始めて。

……もはや雪姫には、俯いて黙りこむ事しか出来なかった。

 

─────────────────────────────────

 

 やがて、笑いをおさめたアリスは、足を崩すと、そのまま雪姫の太ももへと倒れこんできて。

仰向けになると太ももを枕にして、雪姫の顔を見上げる体勢になった。

 

「おねえちゃーん。そんな警戒なんかしなくても、アイツは私の事なんかコドモとしか思ってないんだよ?」

「そ、そうかもしれないけど……でもやっぱり面白くないんだもん……」

 

 ニコニコと笑みを浮かべながら窘めるアリスと、それに唇を尖らせる雪姫。

……もはや、どっちが年上かわからない。

 

「……アイツが私をコドモと思ってても、私の方はどうなのか心配……とか?」

「……っ!」

 

 ズバリ核心をついてくるアリスに、息を呑んだ。

まくらの時にも、同じように抱いた不安。あの時と同じ事を、けれどまさかアリスから切り出されるなんて。

 

──……やっぱり、子供みたいに振舞ってても、ちゃんと "女のコ" なんだ……!

 

 アリスに対する認識を、今一度はっきり改めた雪姫が顔を強張らせていると、

あの時のまくら同様、アリスがクスリと笑ってみせて。

 

「……まあ、おねえちゃんがいらないって言い出した時には、私がもらってやってもいいかな?」

「なっ!? いっ言いませんそんなコト!!」

 

 アリスの両頬を挟んで、覗きこむようにして声を上げる雪姫。それにアリスが、またコロコロと笑った。

 

「あはははっ、も~本当に心配しないでよ、おねえちゃん。

けーすけのことは……『おにいちゃん』って呼ぶことになってもギリオッケーかな、ぐらいにしか思ってないからさぁ」

「おにいちゃんって……え!? こっこらっ! いつまでお姉ちゃんをからかうつもりっ!」

 

 ニマニマと笑いながら、これまたあの時のまくらと同じようにからかってくるアリスに、雪姫がもう一度手を振り上げてみせて。

すると、アリスの方も再度「キャー」とわざとらしい悲鳴をあげて、

ぐるっと身体をひっくり返して顔を太ももの間に埋めてきた。

 それに対して雪姫は、勿論上げた手を振り下ろしたりなんてしない。

ただ、軽く溜息をついて、そっとアリスの後頭部を撫でた。

 

「……おねえちゃんにだって、子供っぽいところはあるんだよね……」

 

 またからかってくる言葉のようだったが、実際は独り言のような声だった。

 

「……私、前は、ずっとおねえちゃんみたいなオトナになりたいって、そんな風にばっかり思ってた。

でも今は、……けーすけに言われたコトで、なんか楽になった気がする……」

 

 うつ伏せのまま、半ば独り言のように呟くアリス。一体計佑に何を言われたのか、気にはなったが──

 

──……そっか、アリスも計佑くんに救われたんだ……

 

 そう気づいたら、尋ねる事は出来なかった。

 それはきっと、アリスだけの宝物で。

他人である自分が聞きだそうなんて、そんな無粋な真似は出来ないから。

 

 そして、アリスもまた、自分同様計佑に救われた人間なのだと解ったら──

もうアリスの行動を制限しよう、などとも思えなくなってきた。

 

……そう、思えなくはなってきた、のだが──

 

「……ねぇアリス。ホントに計佑くんのこと、男の人として好き、とかじゃあないのよね……?」

 

──やっぱり、そんな風に尋ねてしまう。

 

「……おねえちゃ~ん……いくらなんでも心配しすぎだってば~……」

 

 また仰向けになってきたアリスが、とうとう呆れたように苦笑を浮かべていて。

──小学生もどきに呆れられてしまった高三少女は、恥ずかしそうに身体を縮こまらせるのだった。

 

─────────────────────────────────

 

「……ていうかさぁ……

おねえちゃんは、私のコトじゃなくてけーすけの方のタラシっぷりを気にするべきじゃないかなぁ?」

「なっ!? なんてコト言うのっ!!

計佑くんは、子供には気安いっていう、ただそれだけのコトなんだからねっ!?」

 

──昨日、計佑には「女ったらし」などと言っておきながら、

他人に言われるのは面白くない雪姫がそんな風に弁護したが、

 

「だからさぁ、その気安すぎるトコロが問題なんだってば~。

『子供相手だと、なーんにも考えずに口説くような言動を繰り返す』

性格がまずいんじゃないの、って言ってるんだよ~?」

 

「……え? そ、それはまあ……

2つしか違わないアリスを子供って決めつけての、あの振る舞いはどうかと思うけど……」

 

 そのアリスの言い分には、一応同意できるので頷いたのだが、アリスが言いたい事はちょっと違っていたようだ。

 

「も~……私のコトはいいんだってばぁ。私はあんなのにひっかかったりしないもん。

そうじゃなくてね、私への対応とか見てるとさぁ……アイツって、子供相手だと全然遠慮がないでしょお?」

「う、うん……そうね、それは確かに」

 

 まくらへの対応を見ていても、年下相手だと随分強気で、遠慮がない性分なのは間違いなかった。

 

「それじゃあさあ、今から10年くらい後とかだよ?

アイツが大人になったらね、そしたら高校生とかなんて子供にしか見えないでしょう?

(実際はそんな事はないのだけど、この年頃の子供達ならそんな風に思えるのだろう)

………そうしたらどうなると思う?」

「…………」

 

 想像してみる。

 25、6歳くらいの立派な青年になった計佑が、

今の自分と同い年くらいの女の子達を、カワイイと褒めまくったり、お腹を撫でたり髪を梳いたり──

 

──いやいやいやっ、そんな!! いくらなんでも、そんなコトはありえないし!!!!

 

 そう、いくらなんでも、そんな事をやる筈はない。……と、思う。……けれど。

アリスと同じとまではいかなくても、

確かに気安く……碌な遠慮もせずに、色々やらかしそうな気はする……

 

──そう気付いた瞬間、ゾクゥ……っと、背筋を悪寒が走った。

 

──……全然ありえなくない!! 計佑くんだったら、すっごいありそうな気がする……!!!

 

 アリスの言いたい事を理解した雪姫が、恐ろしい将来にブルリと震えた。

 その震えを太ももから感じたアリスが、

 

「あははははは!! おねえちゃん本気で焦ってる!! そんな未来のコトなんてわっかんないのに、おっかし~~~!!!!」

 

 お腹を抱えて、足をバタつかせて笑い出した。

……アリスとしてはちょっとしたからかいのつもりだったようだが、心配性の乙女は本当に焦っていた。

 

──笑い事じゃないよぉっ!? あの人の場合、本当に実現しそうな未来じゃないの……!!

 

 終いには、爪まで噛み始めてしまう雪姫。

 そんな雪姫を他所に、アリスはしばらく笑い続けていたが、

やがて落ち着いてくると、その表情をニマっとしたものに変えた。

 

「……ん~?  おねえちゃん、アイツとの未来が本気で不安になっちゃった?

だったら今のウチにやめといた方がいいんじゃないかな~?

……そしたらさあ、さっき言った通り、けーすけは私がもらっといてあげるからさ~」

「なあっ!? ア、アリスっ!! や、やっぱりあなた、本当は計佑くんのことっ……!?」

 

 10年後の脅威より、今の脅威──アリスの言葉に雪姫が慌てふためくと、

 

「あははははは!! また引っかかった!! おねえちゃんホントにカワイイな~~~!!!

ぬいぐるみとかの趣味だけかと思ってたのに、ホントはこんなに子供っぽかったんだ~~~~!!!」

 

 またもアリスがゲラゲラと笑い始めて。

 

「な、なっ、な……! ……もう怒った!!  絶対許しませんからねっアリス!!!!」

 

 ついにキレた雪姫が、アリスに襲いかかる。

──とは言っても、暴力なんかには基本無縁の少女、せいぜいくすぐりにかかる程度の事だったが……

しかし、昼間の計佑の言葉からもわかる通り、くすぐりをそこまで苦手としない少女にはあまり効果がなくて。

それどころか逆襲にあい、雪姫の方こそ悶絶する羽目になってしまい──

 

……この日を境に、雪姫とアリスの関係は微妙に逆転してしまうのだった。

 

 

─────────────────────────────────

 

<22話のあとがき> 

 

 

今回、計佑×雪姫先輩はちょっぴりしかなかったけど、

全体的にはそれなりのラブコメに出来た気はします。

好みで言うなら、もっともっとコメディ寄りにしたいくらいなんですけどね……

 

そして今回、先輩の出番が少ないですが、別の方向から雪姫を褒めてみたつもりです。

『あんな仕打ち受けても好きでい続けてくれてるなんて、本当にすごい事なんだよ!?』

というのを、まくらの口から言わせてみました。

 

やっぱり硝子を書くのはおもしろい!!

いや、もう原作硝子ちゃんとは完全に別人なんだけど……

この腹黒硝子ちゃんはやっぱり書いてて楽しいなあ、と。

雪姫・計佑の性格をきっちり把握していて、

あっという間に事態を読み解いていく様が、実に二次元キャラらしい聡明さじゃないかなあと。

ヒトの心を読むという芸当に関しては、この世界の硝子ちゃんは群を抜いているんですけど、

実は雪姫に対して特に秀でているイメージです。

まあそれを、いつか書くつもりでいる硝子編? とかに活かしたいとは思ってるんですけど。

 

「高いたか~い……流石にホタルよりは重いな、お前。まあアイツは今、6歳くらいだから当たり前だけど……」

最初は、ただ『ホタルよりは重いなー』くらいしか口にさせないつもりだったんですけど、

それだと、ここの雪姫ちゃんは脊髄反射で『ホタルって誰なのっ!?』とか嫉妬しかねないので(汗)

流石に幼女相手に妬かせるのはやめとくかなーっと、ホタルの年齢まで計佑に喋らせてみました。

 

「……アリスちゃん、まくら、手を貸してくれるかな?」

「……喜んで貸すぞ、硝子センパイ」

↑ささやかな拘り。硝子にだけは『センパイ』をつけるアリス……

 

"いじられて嬉しいのは先輩だけ"  これは一応14話で言ってましたよね。

 

計佑のサプライズに、ちょっと嬉しそうな硝子なんですけど、

計佑が触れてきてくれたというのと、雪姫と(多少は違うけど)同じように扱ってもらったという

2つの理由があるんですけど……表現は出来てないんでしょうね(汗)

 

硝子の "策" ですけど、これは勿論計佑の女ったらしを修正させないというものです。

なんでそんな事をするかというと、これは雪姫との仲を妨害するためで。

計佑には今までどおり "天然女ったらし" として暴れてもらって、他の女のコを惑わせてもらって。

それで雪姫には愛想をつかしてもらおうとかそんな感じで。

──まあ、他にもライバルが増えるかもという諸刃の剣なのですが、

この世界の硝子としては、雪姫だけは、どうしても計佑の相手として認められない人物なのです。

……あ。別に、雪姫と硝子に過去になんか因縁があったとかそんな大層な話ではないんですけど。

単にコンプレックスの話です(-_-;)

 

原作の世界では、まくらからの追求に逃げ出そうとする計佑でしたけど、

まあこちらは色々こねくり回したつもりです。

一応、原作よりはヘタレてないように書いたつもり……ではいます。

──鈍感さ加減は原作以上かもだけど(^^ゞ

 

雪姫がまくらに、どんな表情でどんな惚気話をしたのか妄想すると、それはそれでまた萌えるのですけど。

……ただそれを聞かされたまくらの心境を思うとアレかもですが……

雪姫視点も書くのがここのスタイルなので、

雪姫視点でそのシーンを書くのも、まあアリかとは思ったんですが……

これは読者さんの想像にまかせるのもまた美味しいとこかなぁとも考えたので、とりあえずパスしました。

 

……しました、けど、そこら辺の雪姫が惚気まくるシーンも、結局書き殴ったりしてしまいました。

『22話のおまけ』としてアップしてると思うので、宜しければそちらの方もm(__)m

 

アリスが自分の親を悪く言った時にはすぐ許したのに、

計佑と雪姫の為にはホタルを怒り続けるまくら。

……うん、そう考えるといいコに書けた……ような? 気もします。

ていうか、ちょっとやっぱり健気すぎるような……(-_-;)

人間的にいいコっていうなら、やはりまくらが一番になってしまってますよね……

いつかの後書きで、まくらの株が上がりすぎてまずいかなぁ……みたいにグチった事があったかもですけど、

そういう訳で、今回まくらを随分と暴力的に書いてみました。

15話とかでヒステリックに書いたりしてたけど、あれだけじゃやっぱ足りない気がするんですよね。

これでいくらかはバランスとれましたかね……

 

あと、この辺は見方を変えると、一応計佑株も上げられてる……?

計佑もアリスの時にはまくらの為にきつくしかったのに、

自分が迷惑かけられた分にはすぐホタルを許してるわけで。

 

まくらの『好きな人いる』発言に、メチャギレしてしまう計佑くん……

ちょっとやりすぎた気もするんですが(-_-;)

うーん……でもここは派手にいかないとやはり盛り上がらないかなぁと思って、

結局あんなんにしちゃいました。

 

雪姫のより、まくらのにより強く妬いたって表現がありますけど、

理由の一つは、まくらエンドにする時のための保険というか。

アニメCANVAS2とか、アニメキミキスよりは自然に見える可能性は残しておきたいんですよね……

後半では一応、

15話で、『まくらに嫌われたと思うと、雪姫といても気分はドン底』というもの、

17話で、『まくらがどうにかなったのではと思うと、もう立ってるだけでも精一杯』というのを書いてきたけど、

その後はもう完全に雪姫先輩一直線で書いてきたと思うので、

ココらへんで一応、もう一度まくらフラグも建て直しておくかと。

もう1つの理由は……今はまだ秘密です……

大した言い訳じゃあないんですけど、ね……一応、ちょっとした思惑もあるので……

 

兄をぶん殴って顔面蹴飛ばすまくらに、妹を叩いたりはしない雪姫という対比になってる……かな?

そりゃまあ、相手が男とか歳の差とかも大きいかもしんないですけど、

ちょこちょこでも、雪姫は持ち上げていきたい(^^)

 

─────────────────────────────────

昨日、計佑には「女ったらし」などと言っておきながら、他人に言われるのは面白くない雪姫が

そんな風に弁護したが、

─────────────────────────────────

↑ 

この辺は、雪姫を笑うまくらに怒った計佑と合わせて、いい感じに相思相愛ぽく出来たような……?

 

そして、前回のアトガキ通り、アリスのフラグは今回のラストのとこで簡単に畳んだつもりです。

ホントは、勿論アリスも計佑に惚れてるんだけど、

計佑以上に鈍いお子様設定なので、自分の恋心は全く自覚なしってイメージです。

……まあ、部分部分では普通に鋭いんですけど、それは話作り上の都合ということでご容赦をm(__)m

うーん、一応言い訳をひねり出すなら……他人のコトならわかるけど、自分のコトは意外とわからない、とか?

 

─────────────────────────────────

「あははははは!!  おねえちゃん本気で焦ってる!! そんな未来のコトなんてわかんないのに、おっかし~~~!!!!」

──笑い事じゃないよっ!! あの人の場合、本当に実現しそうな未来じゃないの……!!

─────────────────────────────────

↑↑↑

10年後も、自分が隣にいるコトは疑っていないトコロがカワイイんじゃないかなっ(≧∇≦)/

 

アリスと雪姫の関係も、原作からはあんま想像出来ないかもな形にしちゃいましたm(__)m

でも僕としては、いじられまくる雪姫先輩とか見たかったクチなんで、

こんな関係として書いてしまいましたm(__)m

僕的には、「お子様にすら負けてしまう程、か弱い先輩……^^;」

という、またちょっと新しい魅力(?) を用意できたつもりです。

 

そして、これを書いてる現在の僕の妄想では、計佑の将来は高校教師とかです。

……だって、それだとアリスが語った通りの未来になるから(笑)

そして、毎日毎日雪姫先輩はヤキモキして、また何かしらバカな事をしでかす羽目になるのです(≧∇≦)/

 

 

 

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