まあ、この世界なら何が起こってもおかしくない。(確信)
「うーむ... こいつにするか。」
さて、今俺は武偵校にて依頼の拝見中だ。武偵高の専門科目、俺は諜報科だが、唯その科目を受けるだけでは駄目だ。民間などから寄せられる依頼をこなしていくことで、必要な単位を揃えるのも手だ。
まあ、そもそも俺は関わるつもりも無い事件に巻き込まれるわ、支援に呼ばれるわでほとんど2年分の単位を揃えてしまってるから、依頼を受ける意味はあまり無い。
だが、まあ... その、なんだ。持ってる武器の都合上、金がな...
そんな訳で、なるべく報酬のいい俺にとって楽な依頼を選んでいた。今回は、ある会社の経理プログラムの作成。これでも、前世では専門校で電子科専攻。Java,C言語はお手の物だ。
「ここを表示... そんで、こいつの結果をここに反映... こんなもんか? 後は、コメント書けばいいだろ。」
プログラムを組むこと自体はそれ程時間は掛からなかった。後は、こいつを先方に送信して... おかしいな... 電波が飛ばない。
こんな事あるのか? 無線機能が故障したのか?
「仕方ない、直接行った方が早いな。」
修理するかどうかは後にして、さっさと依頼人のとこに行って任務を終わらせようと思い、俺はバイクを走らせた。
この時、俺のノートパソコンをよく調べておけば、その異常に気づけたかもしれなかったんだがな...
「いやぁ、助かったよ。こういう事ができる人もいるんだね。」
「大した事じゃありませんよ。メンテナンスの方は大丈夫ですか?」
「えぇ、担当の者を用意していますので問題ありません。とにかく、今回はありがとうございました。」
「ええ。それでは、失礼いたします。」
特に何も問題無く依頼は完遂した。これで10万なんだから、経験者には割りが良いってもんだ。
さて、やる事も無いし戻るとするか... ん? 電話?
『やっほー! ジェイ、元気してるー?』
なんだ、峰嬢か... 峰 理子はよく依頼(強制)を頼まれる関係で、いちいち会うのは面倒臭いということで、連絡先を交換"させられた"。
普段なら血相を変えてくる彼女の取り巻きは、何故かこの時だけは全員が納得した様子だった。何でだよ。
という訳で、同学でもあり依頼人でもある、って感じの奴だ。今のところは...
「峰 理子、今回は一体どんな罰ゲームを持って来た?」
俺はもう、それは素直に直球ジャイロボールをあの現代のかぐや姫に向かって全力投球した。
いつもいつも、あいつの持ってくる無茶振りには悩まされている。
やれバックを作ってほしい、やれ女子会に付いて来てほしいと碌な事があった試しが無い。
『酷いじゃんその言い方! それに、今回はそういう事じゃないんだよ?』
「マジか? お前からそんな答えが返ってくるとは、正直驚きだ。なら、何だ?」
『別にー? ただ声を聞きたかっただけ。』
「なんだそりゃ... もういいか? 依頼の報告に行かないといけねぇんだが。」
『もう、せっかちだなぁ。そんなんじゃ、1人でお墓を用意しなくちゃいけなくなるぞ?』
「やかましい、じゃあな。」
全く何だったんだあいつは... とりあえず戻らねーと。
「・・・?」
しかし、俺は見つけてしまった。河原沿いの対岸から、こちらに向かって来る"何か"を...
「あれ、は... ドローンか?」
それは、若干既存の物よりも大きめの飛行ドローン。
そしてそいつには、本来あってはならない物が取り付けてあった。
「なっ! スティンガーだと!?」
しかも、そいつは真っ直ぐこちらへ向かってるようだ。
導き出される答えは...
「狙いは、俺!?」
即座に、エンジンを吹かしフルスロットルで引き離しにかかる。
だが、ドローンもそれに追随してくる。完全にあれは俺を狙っていやがるぞ!
「くそっ!」
まさか、こんな変則的追っ駆けっこをする羽目になるなんざ想像できるかよ。
民間への被害を考えれば、住宅街へは行けねぇ。何とかこのエリアでどうにかしなけりゃならない。
チラっと見た感じ、あのタイプは熱感知誘導型。回避は絶望的と言える。だが、この場所なら...
「賭けに出るか...」
もう何度目かも分からない生死を賭けた大博打。やるしかないんだがな!
俺は勢い良く河川敷の方へと飛び出した。おそらく、狙いをつけるなら、着地する一瞬。動きが鈍るその時!
予想通り、スティンガードローンは河川敷に着地した俺に向けて撃ってきた。
川沿いギリギリに寄って、次の瞬間!
「ふっ! ここだ!」
俺は川へと飛びのき、その瞬間に取り出したデザートイーグルでドローンの羽を、撃ち抜いた!
そのままの体勢で俺は川の中へダイブ、バイクはオートドライブ機能で離れていく。
目標を失ったミサイルが、軌道を保ったまま俺が落ちた地点を通り過ぎ、着水。
馬鹿デカい水柱を立て、水しぶきが辺りを濡らす。
「・・・・・・。」
静寂... 何とも言えない空気の中ただ1人、俺だけが佇んでいた。
例のドローンは、内部に爆弾でも仕掛けてあったのかボロボロに焼け焦げている。証拠も消えた、か...
・・・あれは、俺を殺しにきているようにしか見えなかった。武偵殺し... まさか、な...
妙な違和感も感じられたが、その真意も分からず。結局、事件として処理はしなかったが、その日はそれ以上何かが起こることは無かった。
「アッハハ! やっぱ、生き残った! ジェイの生命力はホント化け物レベルだね♪」
「大袈裟ね... たかが[C]ランクの武偵如きにそれ程価値があるの?」
「あんたも意外と見る目無いねー。ジェイだったらー、その自慢の毒でも死なないかもよ?」
「不愉快ね... 私は、私の目的を果たすだけ。あなたは何を考えているのかしら?」
「・・・まあ見ていろ。きっと、面白い事になるからな。」
不穏な影は、既に喉元まで迫っていた。それは、本来のターゲットであったアリアだけでなく、ジェイにも向けられていた。
「待っていろオルメス、ジェイ... ふ、ふふふ。」
逃れえぬ運命とは、どれ程までに彼を追い詰めるのか。それこそ、神のみぞ知るのだろうか...
こういうのが尻に敷かれる運命なんやろなぁって...
そして、幸福は訪れない!(デデドン!)