竜と麒麟 作:種馬になりたいねん…
涼州天水郡冀県に生まれ、魏から蜀へと仕えた武人。
諸葛亮の意思を継いだ蜀の大将軍であるが、後に無理な北伐で国力の疲弊を招いた
蜀滅亡を悲しみ、反逆の将鍾会と反旗を翻すが計画は失敗し死んだ。
「やっと男の順番かよ……」
ボソっと誰かが呟いた。
此処は陳留。かの有名な曹操様が太守を勤めている土地だ。
俺はある理由があって道に迷うことも、大規模な賊徒に遭遇することも無くいたって平和な旅路をすごして来たが、他の者達全てがそうだとはとても言えないし中にはたどり着けなかったものもいるかもしれない。
さて、俺達が何をしているかと言えばそれは登用試験待ちと言ったところだろうか。
噂によれば、かの有名な曹操様は人材コレクターらしく、実力主義を謳い広く人材を集めていらっしゃると聞く。今も門の前には貴族のような服装の奴らや、俺のように旅の者、びっくりすることに浮浪者のような者達までいる。この中から何人が将として登用されるのか、はたまた軍師になるのか、それとも政務官になるのか。
男性が登用されにくい世の中、この地に希望を見出す荒くれ者も多い。
始めに女性から試験を受けるらしく、列を作り門の中へと消えていった。その間、男性陣は日照りの中待ちぼうけである。俺は水を持っていたから助かったが、中にはぶっ倒れる奴もいる。温暖化は進んでいないようだが油断は出来ない暑さだった。
おっさんどもと調練場へと移動する。先導するのは楽進という武官だそうだ。
楽進といえば、董卓戦くらいに参加した武将だったはずだが、既に登用官としての地位を獲得するほど武功を立てているようだ。世界が違えば歴史も違うらしい。
男性、女性の違いはあれど大筋は俺の知る歴史に近い結末になるだろうと勝手に判断していたような気がする。油断大敵だと気合をいれる。俺は昔から詰めが甘く、大筋が見えると手を抜いてしまう癖があった。
「整列!武器を構えろっ!」
びりびりと大気が震えている気がした。
やはりこの世界の女性は凄い。男がクソ雑魚扱いされて、そのへんの石ころ呼ばわりなのも理解出来てしまう。しかし、俺だってこの世界に生まれ落ちて二十年、遊んでいた訳ではない。この世界での家族を賊徒から守るために初めて人を殺め、そしてさらに殺すために槍の腕を磨いてきた。一時は武の魅力に囚われ、辻斬りのような事を行った事もあった。
過去の俺や、友人たちが見れば嫌悪を抱くだろう。あの平和な世界で生きてきた記憶は理性を持っての対話を重んじる。しかし、この世は乱世に突入しようとしているのだ。綺麗事では済まされない事情もあるし、甘ったれた心意気で友や仲間達を失ってきた。
俺は平和な世界を見たい。
一生懸命働いて、家族に仕送りをしてやって、男性である俺を認めてくれるような女性と結婚して、生まれる子供にいろんな選択肢を残してやれるような父親になって、孫を散々甘やかして死ぬんだ。
当たり前にできるはずだった夢を望む。
「素振りを始める!後に続けっ!!」
破ァ!!っと声を上げ、己の武器である拳を突き出す。するとゴォ!という音と共に風を感じた。
やはり凄い。既に女性は男性に優る生き物だという考えを持ってしても驚く。氣という何でもありな魔法のような現象だ。外に放出するタイプは今まで見たことがなかったのでありがたい。俺はこの現象をいずれ理解し、自らの糧とすると誓った。
300回丁度で待ったが掛かった。
辺りを見渡せば、そこは死屍累々の地獄絵図。立っているものは俺を除けば誰もいなかった。
不甲斐なく思う。男は賊になって女官に駆逐されるのが仕事なのではないか?と一時期本当に悩んだことが有る。それほど男性と女性には壁が存在していた。男性で名を挙げた者もいないわけじゃない、過去の歴史をこの世界で調べれば山のように出て来る。何故かめっきり減ってしまい、女性至上主義な考えが横行している有様だったが。
前世では犯罪の大多数が男性が起こしてるから、男性を管理すれば平和になると本気で言う人間もいたのでまぁ、そうなるなと納得してしまう部分もある。昔は男性が女性を支配していた!なら今は弱くなった男性を支配しよう!!という世論が出るのも頷ける。つまり人間は愚かだということだ。
ため息が漏れるほど情けない。
女性に対してではない、男性に対してだがな。
呼吸を整えながら指示を待つ。
楽進様も同様に呼吸を整えてから、俺の前に立った。
「立っているのはお前だけだ。他のやつをどう思う?答えてみろ」
これも試験なのだろう。俺は正直に話すことにした。どう見ても武人気質をお持ちである、ひねくれた言葉など無用だと判断した。
「戦場を共にしたくない、と感じました」
ストレートに言うと弱すぎて怖い。命のやり取りをする場で、味方にいる弱い者が一番怖い。いや二番か?一番は愚かな上司だな。
「そうか。私もそう思う」
ふっと笑みを零しながら俺の肩を叩いた。
男前な女性が多すぎる。俺もこれくらい出来る男前になりたいものだ。
楽進様より服を着替えてから再度戻ってくるように言われた。
予め用意していた下着や着物を着た俺は、女性が多いこの世界でのエチケットであるニオイ対策を怠らない。香水なんかは流石にないが、臭いを消す薬草なんかはあるらしく割りと使っている人間は多いらしい。値段がそこそこにかかるので経済弱者である男性には厳しい現実ではあるだろう。
ちなみに俺は薬草を乾燥させて持ち歩き、汗をかいた時に擦り付けるタイプである。野草っぽい香りは無いので助かったと思っておく。制汗剤が欲しいと心から願った。
さて、次は文官適正だろうか?それとも二次試験になるのだろうか?
武官適正ならそこそこあると自負しているが、文官はどうだろうか?幼少より狩りや馬術をこなし、若者たちと正義感から賊退治を始め、最終的にはリーダーとして近隣の村を守ってきた。
字は書ける。書物は歴史書や兵法書をかじったことがある程度。残念なことに兵法書の大部分は、当然の事を大仰に書いているとしか思えない俺は愚か者なのだろう。
ただ、当たり前が難しいのだと言われれば、確かにそうだと思考がブレてしまうわけだけど。
調練場の日陰部分で待っていると、女性が三人歩いて来ているのが分かった。
一人は武芸者、しかもかなりの使い手だろう。意識を向けなければ気配を感じることは出来ない。あちらも俺が観察しているのに気づいたのか、少し挑戦的な気配へと変わっていく。
気配だのなんだの言っているが、前世では感じることができなかった現象だ。殺気や気配なんていうのはガキの妄想だと考えていたものの、流石にこれだけひしひしと感じてしまっては認めざるを得ない。
どうも武官よりの思考のせいか、武芸者のほうを意識してしまうが、他二人も只者ではない雰囲気である。
一人は飴なんて舐めているしな。久しぶりに見た前世の片鱗に涙が出そうだった。
少しの間思考する。俺はどういう態度を取るべきなのか?
服装を見るに…………わからん。どうみてもアニメや漫画の世界の住人のような服装。まぁこれは別段珍しいことではない。俺の故郷にも面白い服装、奇抜な髪型、とんでも装備その他もろもろ、ふざけた様に見える連中はいた。流石に見慣れてしまった。
感じる感覚は気負う必要のない空気。
と言ってもそう思うだけでそうとも限らない。ここは一つ、会社にスーツの人間が入ってきた時、誰だかわからないけど取引先の偉い人の可能性があるので馬鹿丁寧に挨拶しとこう!とする平社員を参考にしたほうがいいだろうか?
それとも突然馴れ馴れしく、おっすー!とか声を掛けてみるか?いや、冗談だけど。
この世界には無礼な人間が多い。前世もそうだった可能性はあるけれど、平民が士大夫に拱手は疎か、礼すら取らずに話していた事を思い出す。
そんなことを考えていると三人はこの場が目的地だったのだろう、俺の目の前で歩みを止めた。
軽く会釈を交わしたのだが、お前それでいいのかと不安になる気持ちを押しとどめる。
この世界、まるで日本の過去なのでは?と思うほど似通っている部分がある。例えば先程の会釈、まるで新卒同士が隣に座ったけど、どうすればいいのかわからずとりあえず会釈しとこ。という感覚に近い。武芸者のほうは相変わらず挑戦的な視線を感じるが……。
「男性の方にしては珍しい闘気ですな」
嬉々とした顔で此方を伺う女性に怒りがこみ上げる。
何処もかしこも男を下に見る奴らばかりだ。素直に良い闘気ですね?って言えばいいじゃないか。
しかし、俺が怒った理由なんて理解できないだろう。人種差別、男女差別を日常で行う世界なのだから、むしろ俺が異端に見えるに違いない。
なぜ男一人を男性という枠全てで考えるんだ。と思った所で俺も女性は男性を悪く言う者として扱っている事に気づいた。身勝手なものだ。
「あいや、失礼な物言いでしたな」
ポーカーフェイスにはそこそこ自信がある俺だが気を使わせてしまったらしい。
修行が足りない。これでは文武官どちらでも使われる人間で終わってしまう、精進せねばと戒める。
「いえ、こちらも女性に対し不躾な視線を向けてしまいました。申し訳ありません」
と視線を向けていたのもついでに謝っておく。
人間というのは見られただけで、突然烈火の如く怒る人間もいるのでとりあえず謝っておこう。というのは日本人すぎるのだろうか?
「おうおうイヤラシイ視線びしびし感じたぜ」
「ちょっと、失礼すぎますよ……。申し訳ありません、悪気はないと思いますので」
は?キレそう。
失礼すぎるだろ。確かに俺は平民に見えるかもしれない、服装は旅のために地味目だからな。だが俺はこれでも一応豪族に分類されており、不当な扱いを受けるいわれなどない。
あちらは服装の奇抜さ、生地の良さを見て良いところのお嬢さんだというのはわかる。だけど、こっちは別にジロジロと見ていたわけではない。それを言うなら相手だって俺を観察していただろ?といいたい。そしてこの場では同じ試験を受ける者同士、そこに優劣は無いはずだ。等しくライバルであり、仲間となる(予定)のだから。
あとメガネを掛けた女性に言いたいけど、男女間において初手の悪戯や冗談に悪気がない奴なんぞいない。もし本当に無いならよっぽど空気が読めない奴。
本当にイライラする。
「これは申し訳ありません、お美しいお三方でしたのでついつい視線が誘われてしまいました」
この言葉に、白い着物を着た武芸者はならば仕方ありませんな。と不敵に笑い。
金髪の頭に太陽の塔をいじったようなモノを乗せている奴は、ふーんと目を細め一言。
黒髪の明らかに時代に合わないメガネを掛けた女性にはスルーされた。
文官タイプの二人とは性格が合わないと諦める。こういったとりあえず相手の反応を見るタイプは嫌いだった。己の知恵を最上だと信じてる奴らの行動は鼻につく、これなら居酒屋で暴れてるゴロツキの相手をしてる方がわかりやすい。単純に俺は脳筋なんだろう。
こんな世の中での処世術なのかもしれないが、もう少し快活な挨拶くらいさせてほしいものだ。
「揃ったようだな」
俺たちを見守っていた楽進様が声を掛けてきた。今回の一次審査合格者はここにいる四名ということになるのだろうか。少ないのか、多いのか。
初めに見た調練場より、今はことさら大きく見えた。
「お前たちは武官、文官試験のどちらかの一次試験を合格した事になる。次は二次試験……と言いたいところだが面接試験を先に行う事になった。担当は我が陣営が誇る軍師殿となっている、嘘偽り無く望んでほしい。では着いてきてもらおう!」
ピシッと背筋を立てた楽進様が先導している。彼女はとても真面目な性格のようだ。なぜか不真面目で遊侠を気取った輩が多い中、こういった愚直な真面目さも見ていて気持ちいいものだと感じた。
清掃がしっかり行われている廊下を進む。その間、俺以外の三人はぺちゃくちゃと話まくりだった。本当にこいつらは試験を受けに来たのか?
あまりの自信と余裕の態度に困惑する。せめて名前くらい聞いておくべきだったのだろうか?
体感で言うと十分ほど歩いた所で止められた。広いなと思う。前世で言う県庁や庁舎や自衛隊基地が全てあつまった感じなんだろうか?ここが陳留の心臓であり脳なんだと思えば、なかなかに感慨深い。
「軍師殿!連れてまいりました!」
「入って」
軍師……。この時期、曹操様の陣営は誰が軍師なのだろうか?代表格で言えば荀彧・郭嘉・程昱の三名だろうか?だが歴史が変わっているならとんでもない奴が軍師だったりするかもしれん。少し弾む心を胸に、中を見ると書類に目を通しながら此方に意識を向けているのだろう女性が見えた。
猫耳だった……。
そして三人が入っていき、俺が入ろうとした時にその声は掛かった。
「あなたはもう帰っていいわよ」
ん?
ん??
此処まで呼んで頂き感謝します。
原作も三国志もにわかではありますが、自分が見たいという小説を書きたいと思っています。
初投稿故見づらい部分があったかと思います。
誤字脱字誤用等お気づきであればご協力して頂けると助かります。
需要があればヒロインたちとのR-18を目指していきたいところです。
ええ、私も男ですから多少はね?