はちゃめちゃ赤龍帝   作:...

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約束を果たすために

 規格外、奇想天外、子鬼、そう言われ畏れられている少年は、今過去に類をみない恐怖を目の前にしていた。

 

「で、何か弁明はあるかしら一誠?」

 

 そう、お姉ちゃん(お怒りモード)である。

 

「いや、あのこれは、ディーと、っていうかディーが、その……」

「ディー? その人と遊んで(喧嘩して)こんな遅くなったのね?」

「それは、間違ってないんだけど、あ、あぅぁぅぁ~」

 

 20時とは、子供にとっては十分夜である。

理由があろうとなかろうと、連絡もなしにこんな時間まで帰ってこなければ心配され怒られるのは当たり前のことであった。

ディーこと、ディオドラ・アスタロトは自分の眷属という十を超える女性に謝り倒さなくてはならなくなり、一誠の想定よりずっとずっと、ずーーっと時間がかかってしまったのである。

 流石に困った一誠だったが、一度決めたことや約束事は果たさなきゃという責任感を良くも悪くももつ彼は、手早く済ませよう!とディオドラの首根っこ引きずり回って彼のだたっ広い家に住む眷属たちを探し回ったのだ。

終わった後で、ディオドラに念話でもさせて集めさせればよかったと、そこだけ反省している。

 

「全くもう。いーい?夜遅くなる時はちゃんと連絡するのよ?」

「はぁーい」

「よろしい。じゃぁご飯あっためるから待ってなさい」

「はーい!」

「ふふ……まったく、現金なんだから」

 

 数時間にわたりお説教を受けた一誠は、晩御飯を食べ、風呂に入り歯を磨き、無事に眠りについた。

明日は何をしようか、なんて平和で平凡な少年の様な事を思い描きながら。

 

 

――

 

 

 ディオドラ・アスタロトは、今日という日を一生忘れないだろう。

人間に敗れ、眷属に謝り倒すというのは、それほどにトラウマになる出来事だった。

 やはり自分を恨んでいた眷属たちだったが、流石元シスター。冷たい視線を向けられたが、プライドがズタズタになった彼に反省の色を少しでも見出してくれた。

彼の、これから先の未来、可能性に賭けてみようというのが大体の総意だった。

勿論、数人にはぶたれたり踏まれたりしたが、その者たちも許してくれた……懺悔室にでも行った様な気持ちだった。

 

「……はぁ、ただ魔力を込めるのは止めて欲しかった」

 

 お仕置き、ということで兵藤一誠から受けた傷はアーシアの神器で癒してもらえなかったのだ。

その上で叩いたり踏んだり蹴ったり、彼の顔面と心はズタボロになっている。

 

「プッ……ディオドラ様、クっ……こちら、を」

「あぁ……」

 

 笑いをこらえる眷属の一人から手紙を受け取る。

もういっそ笑い倒れてくれないかと心を荒ませながら手紙を開く。

 

「……ふむ」

 

 内容は、ライザー・フェニックスとリアス・グレモリーの結婚式への招待状だった。

 

「…………さてさて、どうしましょうねぇ」

 

 本来、こういうのは主従が揃っていくものであるが………今現在、ディオドラは非公式ではあるが、兵藤一誠の従者である。

 

「いや、マジでどうしよう? え、これ呼ばなきゃダメ?」

「一誠様のタキシードなら、特注で既に注文済みですよ?」

「……お前ら、彼のこと好きすぎじゃない?」

「ディオドラ様、どうしてなのかはご自分がよ~~くお分かりでは?」

「ハイ、スミマセンデシタ」

 

 とてもよく分かっています、骨身に染みています!……だからその冷たい笑みを止めてください。女王(クイーン)の貴女様から受けた毒舌がある意味一番深い傷なんです、とは口が裂けても言えないディオドラだった。

 

 

――

 

 

 そういうわけで、兵藤一誠は両親にも姉にも内緒で、深夜のパーティーに御呼ばれすることとなったのだ。

 

「え、姉ちゃん呼んじゃダメなの?」

「はい、兵藤さまのお姉さまとはいえ、流石に堕天使……異種族が悪魔の巣窟に混ざるのは、まずいです」

「そっかぁ……ところで、ディーは?」

「あのくz……彼は書類始末(掃除)をしてますよ」

「へー、あんなに広い家の掃除なんて、大変だね」

「いえ、こればっかりは自業自得ですので」

 

 そう言って微笑むディオドラの女王(クイーン)を担っている女性が微笑んだ。

なんでも悪魔はチェスの駒に見立てて眷属を作っているらしく、それぞれ駒に応じた役割があるとか……でもディオドラは今までのことが事だけに、信頼がゼロの今は誰も手伝わないことになっているので、全部自分でやってるんだとか。

これから信頼が上がれば、その分少しずつ手伝っていくらしいが、まぁこればかりは彼の問題である。

 

「俺、パーティーとか何していいかわかんないよ?」

「自然にしてもらえれば大丈夫です」

「そもそも俺人間だよ?」

「私たちの主様の主様です、何かあればあの人が何とかしてくれます。というか、何とかさせます」

 

 何だろうか、綺麗な人なんだけど少し怖いオーラが出ている。一誠は少し自分の姉が怒った時を思い出していた。

あぁ、ディー大変そうだなぁと、少し同情したのは内緒である。

 

「………それに、人間であるのも時間の問題かと」

「ん??どういう意味???」

「いえ、これはまぁあまり気になさらないでよろしいですよ。私としては嬉しい事ですし」

「???」

『相棒、大変だな』

「???????」

 

 忘れてはいけない、彼は未だ色々わかっていない12歳の子供である。

 

 

――

 

 

 そういうわけで数日後、彼は深夜にこっそり家を抜け出すことにした。

誰も起こさない様に、そーっと抜け出した彼は悪魔の転移魔法で式場へと転移したのだ。

傍らにはディオドラとその眷属たちもいる……というか、一応ディオドラが招待された張本人なのだから、ディオドラが前に立っている。

 

「招待状を拝見します」

「はい」

「……ディオドラ・アスタロト様ですね、いらっしゃいませ。……そちらは、人の子のようですが?」

「あー、この子はいいんです。眷属(僕が)候補って感じなので」

「なるほど。でしたら、こちらのバッチを付けておいてください。紛れ込んだだけと思われては面倒でしょうから」

「助かります」

 

 ディオドラから渡されたバッチを胸元に付けると、パーティー会場へと入った。

今日は結婚式ではなく、正確にはそのお披露目ということらしく、正式な婚約は後日らしい。

ただ、このお披露目は事実上の結婚と変わりがないらしく、これが行われるとということは公然として夫婦になるとみられる、認められるということでもある。

 

「ふぅ。他人の婚約なんて興味はないんですけどね」

「ディオドラ様、あまりそういうことは言わないでください……子供に負けてささくれているのは分かりますが」

「うっ、一々煩いよ……で、その子供はどこに?」

「え!?」

 

 ババッと眷属達が辺りを見渡すが、そこに兵藤一誠の姿は無かった。

ほんの数十秒前まで一緒に居たはずなのに、あの子供の姿は見える場所にいなかった。

 

「………え?」

「……はぁ。もう僕しらなーい」

 

 色々と疲れていた彼は、適当に食事と酒を貰いにフラフラと勝手にすることにした。

眷属も彼も分かっていなかったのだ。

 

 

 兵藤一誠が自然(・・)にするということは、なんの枷が付いていない放し飼い(・・・・)当然の厄介事(フラグ)メイカーであるということを。

 

 

――

 

 

「……意外と美味いな」

 

 悪魔の料理と聞いて、もっとオドロオドロしいものを想像していたのだが、思っていた以上に、というか普通に美味しいものばかりだった。

そこらへんのをヒョイッとつまんでは歩き回る彼のすることは、強そうなやつ、面白そうな奴が居ないかの探索である。

 

(んー、ディー意外と強い方だったんかな?)

 

 ディオドラと戦ってから、色々視えるように……いや、観測()えるようになった。

ディオドラ基準ではあるが、他人のオーラ()の明度や量というモノが何となく分かるようになった。

翡翠色(ドラゴン)の瞳でキョロキョロしていると、ひときわ強いのを見つけた。

 

(んん?)

 

 黒髪のポニーテールの大人にも見える女性と、反対に真っ白なショートカットの小柄な少女。それと、金髪の青年だ。

強い力を持っているのだが、何故だろうか。

 

(ディーと違って、押し込んでる?)

 

 青年は力というより、感情(・・)を押し込んでいるように見えるが、その感情こそが力を発揮するということを彼は誰よりも知っている。

 

(勿体ないなー)

 

 全力ならば、ディオドラとも勝負ができる。つまり、自分と遊べるのに。

そう残念がっていると、ふと一誠は別の方向を向いた。

 

「…………」

『どうした、相棒?』

「……行かなきゃ」

『は?』

「行かないと、泣いてる」

 

 適当なテーブルに皿を置いて、一誠は走り出した。

小柄な身体を駆使して人混みをすり抜けていくと、段々人の数が少なくなっていく。

 

「はやく、はやく」

 

 廊下を疾走する一誠を急かすように、左手が熱くなっていた。

 

「もっと、早くっ!!」

 

 ぶわっと一誠を翡翠の力が覆う。

次の瞬間、一誠は廊下から全く知らない部屋に居た。

 

「え?」

「あ」

 

 観えたのは、綺麗な真っ白いウェディングドレスを着た赤髪の、泣いている(・・・・・)お姉さんだった。

 

 

――

 

 

 リアス・グレモリーにとって、今日という日は最悪の日になるだろうと予感していた。

綺麗なドレスで着飾っても、心の中までは華やかになったりなどしない。

彼女は暗い感情のまま、鏡に映る自分を見つめる。

敗者の自分、諦めた自分、惨めな自分が居る。

 あの少年に会った後、彼女なりに頑張ってみた。

ライザーに改めて拒絶の意を伝えたり、兄や両親に掛けあってみたりしたのだが……未成年とはいえ、レーティングゲームで勝敗を付けたのだから、諦めろと全員に言い放たれてしまった。

 

「……もういいわ、時間まで下がって頂戴」

「え、し、しかし」

「下がって頂戴」

「……はい」

 

 着付けていた侍女を部屋の外に追いだし、鍵を掛ける。

式が始まるまでの間、一人にしてほしかったのだ。

 

「……っ」

 

 ポタポタと雫が零れ落ちる。

そんなに深く化粧をしているわけではないが、またやり直しだろうな、なんて他人事のように思考が過った。

でも、それだけ。

結局誰にも何もしてもらえなかった。自分に出来る最善はやり尽くした。もう、これ以上のことは、彼女にはできない。

あの公園を思い出した。あの少年に会った時も、こうして独りで泣いていた。

あの時と違うのは、明確に彼女の心が折れかけているという事だけ。

式が始まると同時にポッキリと折れ、きっとその後は夫となる彼の好きにされるのだろう。

 

「……はぁ」

 

 自分が男なら、また何か違ったかもしれないなぁなんて、今度は生まれすら後悔していると、唐突に目の前が光った。

 

「え?」

 

 翡翠の色。魔力ではないが、強い力による転移だと分かった。

転移には明確な場のイメージか、座標が必要だ。

此処を利用できるのは花嫁になる者と、その侍女のみ。だが魔力ですらないこの力、これは悪魔ではない。

悪魔じゃ無い者が、ここを知るわけはない。となると、この転移は座標を元に来たことになる。

 座標(ソレ)は……きっと、この左手の熱さが答えなのだろうと思った。

 

「あ」

 

 そして、その考えが間違っていないことは直ぐに証明された。

悲しみに暮れるリアス・グレモリーの目の前に、あの少年が現れたのだ。

 

「お姉さん、また泣いてるの?」

……(うん)

「大丈夫?」

………(ううんっ)

 

 もはや悲しみと驚愕と、喜びでリアスに応えるだけの余裕は無くなっていた。

首を振るだけで少年の問いに応えていく。

 

「……お姉さんが嫌なことって、結婚すること?」

……(ううん)、ちが、ちがうの、私は」

「ゆっくりでいーよ」

「ふふ、ありが、とう……私はね、あの人と結婚するのが、嫌なの」

 

 結婚は幸せなものだ。

そうあってほしい、だから彼女は結婚を否定しない。

だから、あくまでこれは私の我儘なのだと。

 

「また心配、させたわね。ありがとう」

「……よし、お姉さん」

「なにかしら?」

 

 一誠は彼女の手を握ると、一つ決めたこと(・・・・・)を告げた。

 

「この式、ぶっ壊そう」

「…………え?」

 

 リアス・グレモリーは知ることとなる。

悪魔以上に我儘で乱暴で、どうしようもなく諦めの悪い頑固な存在がいることを。

 

「俺が、お姉さんを泣かせるモノ全部(・・)、ぶっ壊す」

 

 ドラゴンの少年が、悪魔の女性を救うための戦い(蹂躙)が始まろうとしていた。

 




ディオドラくんから一名、一誠君派に完全移行したいそうですよ?……書いてたらそんな感じに、オリキャラになっちゃうけど、まあいいかなぁと思っていたり。
ちなみに一誠がディーと言っているのは、「ディオドラ」と言おうとすると「でおどら」と拙くなってしまうからです。言い難いんです、横文字。
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