はちゃめちゃ赤龍帝   作:...

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理由(ワケ)

「『オラァアアアアアアアア!!!!!』」

 

 ズンッッと地面を踏み砕く。

只踏み抜いただけなのにも拘らず、その衝撃波は会場全体へと響き渡っていく。

 

「ふむ、流石に真正面から受け止めるのはマズイな」

 

 サーゼクスはそう呟くと、力を受け流す(・・・・)防護結界を展開した。

衝撃波はサーゼクスの目の前で収束し、彼の周囲を回転しながら上空へと流れていった。

 

「なる、ほど!」

 

 それを観測()ていたディオドラも自分の防御に組み込み、どうにか左右に逸らすことに成功する。もう今のディオドラの力では此処にいることすら限界になっていた。

本当に皮肉なことに、以前の彼なら今ので防げず、死にはしないモノの会場の外に吹っ飛んでいただろう。隷属されて今日彼は初めて良かったと思っていた。

 今の一撃で権力だけの雑魚や、力を付けている最中の若手悪魔の殆どは吹き飛んでしまっている。今この戦いを見守っているのは、一線級以上の力を持った悪魔たちだけだろう。

例外として、ディオドラが一緒に護っているリアス・グレモリーとその眷属たちだろうか。

 

「ぶ、部長、大丈夫ですか……!」

「えぇ……凄いわね」

 

 金髪の青年の心配する言葉を受けつつ、その視線はずっと一誠たちにくぎ付けになっていた。

まぁ分からないでもない。既に人間だとか悪魔だとかそういう細かい区分(・・・・・)は吹き飛んでいる。これはそういうモノを超越した領域に立つ者同士の争いだ。惹かれてしまうのは当たり前と言っても良いだろう。

 

「にしても、もう少し手加減してくれないかなぁ」

「一誠様ですから、きっと目の前の相手しか映っていませんよ」

「だよねぇ」

 

 あぁこれだから周りが見えない子供は嫌いなんだ、と肩を竦めるディオドラ。

禁手に至った……もしくは至っていた(・・・・・)一誠はどんどん力を増し続けている。

もう彼と魔王の戦いはディオドラの動体視力では観切れない速度になっており、真面目に帰りたくなっていた。殴っているのか蹴っているのか、それとも頭突きでもぶつけているのだろうか?

 

「衝撃波が怖いなぁ……」

「あの、リアスを助けていただきありがとうございます」

「ん? あぁいや、別についでというか成り行きというか……貴女はたしか彼女の女王(クイーン)でしたか?」

「えぇ。姫島朱乃と申しますわ。……あの子は、貴方が連れてきたんですよね。丁度入場の所を見かけたので、覚えています。どういう関係なのですか?」

「まぁそうなんですけど、ね」

「……眷属候補、ですか?」

 

 黒髪の長いポニーテールの女性の問いに戸惑っていると、いつの間にか近くに居た白髪の小さな少女が居た。ギリギリ、一誠より少し身長が高いくらいだろうか。

 

「あー、候補というか名目というか……ところでキミは?」

「……リアス・グレモリー様の戦車(ルーク)、搭城小猫、です」

「そっか、可愛らしい名前ですね」

「……ありがとうございます」

「あぁそれと、貴女達はもう少し下がっていた方がいい。どうにか出来ているが、キミ達の様な華奢な子は防いだ余波でも怪我をしかねないからね」

 

 正論且つ気障なことを言って朱乃と小猫を下がらせる。正論だから下がったのか、気障だから引かれたのかは定かではない。出来れば前者であることを願いながら、ふぅっとため息を溢すと近くにディオドラの女王(クイーン)が寄ってきた。

他の眷属たちは、リアス達を先導して離れすぎないように調整しつつ、少し下がらせているようだ。

 

「…………サラッとナンパ紛いで流す辺り、相変わらずですね」

「うっさいぞ。暴露するにも、相手は彼女達じゃないだろ」

 

 アスタロト家の坊ちゃまが人間にボロ負けして隷属されている、なんて今言うわけにはいかない。

戦闘音は酷いが誰が聴いているかわからないし、そもそも彼に遺されたわずかなプライドが出来れば言いふらしたくないとごねていた。

 

「『ハーッ、ハーッ!』」

「やっと疲れてきたようだね?」

「『ウッセェ!』」

 

 既に一誠のオーラは限界を超えて、彼の周囲の空間が濃密な力によって歪んでいた。

圧倒的暴力。それを同じく圧倒的な魔力と技術で躱していく。

全力全開で振るう一誠と最低限且つ最小限の力で流すサーゼクス。どちらに余力があるかなど言うまでもなかった。

 

「……少し訊きたいのだが、いいかな?」

「『アァ!?』」

「キミは、なぜそこまでするんだい?リアスの名前も知らなかったのに、どうして?」

 

 対価を求める悪魔として、そしてリアス・グレモリーの兄として、一誠の様な存在が動く理由を知っておきたかった。

こんな命をかけるような真似をして助けようとする理由(ワケ)と求めているであろう対価を。

 

「『………アンタ、何言ッテンダ?』」

「え?」

 

 攻撃の手を止めた一誠は、首を傾げてサーゼクスの問いに答えた。

 

「『頑張ッテ、頑張ッテ、ソレデモ駄目ダッタッテ泣イテタンダゾ?』」

「……生きていれば、そういう事もあるだろう?」

「『知ルカ!俺ガ(・・)放ッテ置ケナカッタンダヨ!! 俺ガ如何ニカシテヤリタカッタンダ!!俺ガ、俺自身ガ!!ソウシタイカラ、ヤッテンダ!!』」

「………ふっ」

 

 まるで子供の我儘だとサーゼクスは笑みを溢した。

だがドラゴンというのはそう言う存在だった。そうやって自分たちの都合で周りを引っ掻き回し、遂には三大戦争を無理やり終わらせるような目茶苦茶な連中だった。

 

「『何笑ッテンダ!ツゥカソノ余裕ナ感ジガイライラスルンダヨ!!』」

「いや、失礼。キミは随分と人間らしく、ドラゴンのようだと思ってね」

「『? ……アァ!!モウイイ!』」

 

 轟ッと力を放出する。だが、これではサーゼクスには通用しないだろう。

只出力を上げるだけではダメだ。だからと言って今急ごしらえの付け焼刃の技なんて尚のこと通じない。

 

「『……、』……ふぅ」

「おや、禁手を解くのかい?」

「解いてねぇよ。これじゃダメだから……」

 

 パリッと真紅と翡翠の閃光が左手の籠手から発せられた。

よく見れば籠手だけは禁手を保っている。

閃光は激しくなり、翡翠と真紅が混ざりだし、金色に近い黄色へと変貌した。

 

「――ぜってぇぶん殴る!!」

「良いだろう、おいで」

 

 最大まで光を圧縮し、籠手の色が金色になった。

背中から黄金の光を噴き出し一直線にサーゼクスへと飛翔する。

愚直に、真っ直ぐに、只々一撃に全ての力を込めた。

 

「ぶっとべこの野郎ぉぉおおおおお!!!!」

「ッッッ!!!!!」

 

 サーゼクスの展開した障壁、結界の全てを破壊していく。

まるで何もないように抵抗感などなく、それでもどうにか一瞬の間を稼いでサーゼクスは自分の呼吸に一誠の攻撃を合わせることに成功した。

 

(これ、はッ)

 

 一誠の様に両手に魔力を圧縮したサーゼクスは、その小さな拳を受け止め流そうとした。

そして―――あぁ、これは無理だ、と力を防御へ回し……。

 

「オオォァァアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

 小さな少年の拳が、魔王を確かに吹き飛ばした。

 

 

「ハァ、はぁ……どうだ……」

 

 満身創痍。完全に力が尽きた様子の一誠に、一人分の拍手が響いた。

それはサーゼクスが吹き飛んだ先、砂煙の向こう……魔王様本人だった。

 

「見事、確かに届いたよ」

「はは……はぁ。す、げぇ」

 

 気を失う一誠が最後に観たのは、微笑みながら一誠を称えるサーゼクスの姿だった。

 

 

――

 

 

「……ライザー・フェニックスをあっさり上回り、この私に傷を負わせた。ホントに、見事だ」

「っ!」

 

 ザザッと一誠の周りにディオドラの眷属が集まる。

一誠を抱きかかえた女王を除き、全員がサーゼクスに首を垂れる。

少し遅れてディオドラ本人もサーゼクスの眼前に膝をついた。

 

「……この度は、私が連れて来た彼がご迷惑を」

「あぁいいよ。頭を上げて大丈夫だ。……リアス」

「は、はい」

「すまなかったね。どうやら、色々急ぎ過ぎたようだ」

「そ、そんなお兄、魔王様?!」

 

 頭を下げたサーゼクスに対し狼狽えるリアス。

幾ら兄妹とはいえ、こんな公然……ほとんど吹き飛んでいるが……の前で頭を下げるなんて許されることではない。

 

「いや、兄として、家族として謝らせてほしい。……泣かせていたなんて、全く気付かなかったよ」

「あ、その、はぅ」

 

 優しく撫でられるリアスは戸惑い、もう頭の中が真っ白になっていた。

 

「婚約は破棄しよう……何なら、その子が育つまで待とうか?」

「――?! お、おおぉお、お兄様?!!?!」

 

 ボソッと最後に呟かれた言葉に対し大慌てになるリアス。

 

――流石に小学生の子になんて、いやでも私悪魔だし人間のこの子が育ち切るのを待ってから悪魔に勧誘を、いや待って何考えてるの私!?!?

 

「ふふふ、そんな表情は初めて見るかな? これは色々楽しみになってきた」

「な、ぁ、は、え???」

「さて……グレイフィア」

「はい」

 

 サーゼクスは自身に仕える女王(クイーン)を呼び出した。

まるで初めからそこに居たかのようにサーゼクスの斜め後ろから現れたのは、銀髪のメイド服を着た女性。

凛々しくもあり美しいその女性は、一誠の前へと移動し、座ったまま抱えられた彼の様子を見る。

 

「……随分と変容していますね。力尽きたのもあるのでしょうけど、急激な変化に耐えられなかったんでしょう。客間……いえ、寝室へと案内しますわ、こちらへ」

「いえ、失礼ながら彼は私がお運びします」

「……そうですか。分かりました、ではついて来てください」

「はい」

 

 一誠を見送る中、ディオドラは内心どうにかなったか、とホッとした瞬間。

ゾッと背筋が凍るような気当たりを受けた。殺気、ではないがかなり強い「氣」を当てられ、ディオドラは思わず身体を震わせた。

 

「――さて、彼について説明してもらおうかな、ディオドラ・アスタロト君?」

「は、はい」(今のタイミング、ぜってぇ狙いやがったなこの人!)

 

 これからいきさつ全てを説明しなければならないかと思うと、胃がキリキリし始めたディオドラ。

なにせ一誠の出会い……つまり、ボコられた経緯を話さなければならないのだ。

しかも眷属たちを連れて……その目の前で、恐らくサーゼクスだけでなくリアス・グレモリー一派にも。

 

(………あぁもう、最悪だぁ)

 

 一誠が起きるまでの間、彼は全てを話し終え……嫌悪、怒気、ホンの少しの同情等々、色々な視線が突き刺さり針の筵となった。

 

(クソガキ様一誠様ご主人様、早く起きて下さいお願いします……!!)

 

 魔王や魔王の妹、そして自分を含む眷属諸君からの痛い視線を浴びながら、彼はいっそ殺してくれと自業自得の想いをして一誠の起床を心の底から願ったのだった。




 ディオドラの眷属……せめて女王だけでも名前を決めようと思った回でした……。
後全く関係ないけどシンフォギア楽しいです。DD読みつつシンフォギア流しながら書いてますφ(`д´)カキカキ
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