はちゃめちゃ赤龍帝   作:...

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兵藤一家

「あ、起きた」

「……一誠?」

 

 夕麻が目を覚ますと、すぐ横に愛しの弟が居た。

ソファーで寝ていたらしく、少し体が痛くなっていたがそれ以上にさっきまでの光景が夢だと分かりホッとする。

 

(そうよね、弟の友達が悪魔どころか魔王だとか、幾らなんでもありえないわよね)

 

 そう、全ては夢。妄想空想想像、現実はほら。

 

「おーい、姉ちゃん起きたぞー」 

「あら、大丈夫なの夕麻ちゃん?」

「倒れたって聞いて心配したんだぞ」

 

 優しい家族が……―。

 

「えぇ、ごめんなさ―」

「本当に申し訳ないです。どうやら私たちの急な訪問のせいで驚かせてしまったらしいですから」

「まぁ仕方ない気がするけど……ん、美味しいですね、これ」

「あらそう?私の手作りなのよ、嬉しいわ」

 

 ――家族が、魔王様御一行と仲良さげにお茶をしている。

 

「なにこれ……」

 

 分かっていた、一誠夫妻はたとえカラフルな頭だろうが妙な格好(メイド服)をしていようが、胡散臭かろうがまず認めることから入る。

そう、たとえいきなり魔王一行が来日しようがしまいがあまり関係ないのは分かっていたのだが、現実を目にするとツッコまないわけにはいかなかった。

 

「姉ちゃんどうした?」

「ちょっと頭痛が……ねぇ一誠、あの人たちは?」

友達(ダチ)

「そう………」

 

 えっへんと胸を張る一誠に、どう言葉を投げかけよう(ツッコもう)かと頭を悩ませることで現実逃避をする夕麻。

 

「はいはい、逃避も良いですけど現実を見てくださいねお姉さん?」

「あ、ハイ」

 

 ディオドラの柔らかな口調によって現実に引き戻される。

ニコニコとして優男感が半端ないが、相手は悪魔だ……堕天使の彼女が言うべきではないが、とても胡散臭い。

警戒心を上げつつ、内心上げてもどうしようもないよなぁと遠い目をしてしまう。

 

(私只の堕天使だし?相手上級悪魔と魔王様だし?ホント何が何でどうしてこうなってるのかしら?)

 

 アハハと心の中の夕麻が白旗を上げて次の瞬間に消し飛ばされない様にと祈りながら会話を始めた。

 

「それで、えぇと……」

 

 始めようとして両親が居ることに気付く。この夫妻には、一応堕天使について話したことがあるのだが……。

 

「あらそうなの?じゃぁお部屋は一人用にした方がいいのかしら?」

「そんなッ!家族川の字で眠るチャンスなんだぞ母さん!!」

 

 そんな感じでまるで堪えなかった。寧ろこっちが堪えた。どうしたらいいのかと考えに考え、最終的に川の字で寝たあたりで思考停止して放棄したのを思い出した。

 

(いやいやいや、アレ別に私悪くないから。この二人がちょっとおかしいだけだから、別に私甘えん坊とかじゃないし?別に川の字とか二人の体温とかにかんどうとかしてたりしてなくもないっていうかくぁせふじこ!!!)

 

 洩れだした黒歴史(甘えん坊モード)にどうにかこうにか蓋をして、改めて会話を始める。

 

「そちらは、私のことについてはどの程度まで……?」

「彼、一誠くんからキミが堕天使だということは聞いている。彼自身知ったのはつい最近という事だが、ご両親は?」

「えぇ知ってますよ……あ、そうだ一誠!また部屋を散らかしっぱなしで遊びに行ったでしょう!?」

「げ、勝手に部屋に入るなっていったじゃん!?」

「いいから片付けてらっしゃい!」

「へーい」

 

 渋々自分の部屋に駆けだす一誠。

その様子をぽかんと見つめる悪魔一行。あの暴れん坊が此処まで素直に言うことを聞くとは、正直言って想像すらできていなかった。

 

「えぇと……それでですね、実は私たちは悪魔と呼ばれる種族なんです」

「あらそうなの?」

「そりゃ驚きだね」

 

 うんうんと頷く両親にデジャヴを感じる夕麻。

もう大体展開が読めたので、流れに身を任せることにした。

取りあえず上級悪魔や魔王様がたじたじになっているのを愉しむことにして、お茶を飲みだす始末である。

 

「悪魔というのは、人間と契約を交わして色々取引を行っている種族で……」

「アレだろう、寿命とか?」

「まぁそれも場合によっては。最近は人間と友好的な関係を重視して別のモノを徴収することもあります。魔力や氣力、生命力、大事な物など様々です」

「ほぉ、悪魔にも色々あるんですなぁ」

 

 その後も悪魔についてや、過去堕天使や神との戦争まで説明をしたのだが……。

 

「大変だったんですね……私たちはのほほんと暮らしてたわ、お恥ずかしい」

「そうだね、でもこうして話を聞くとこの平和な日々がどれだけ貴重なのかよく実感できるね」

 

 やはり頷いて超肯定的である。もう、この両親を驚かせるにはどうしたらいいのだろうか?

 

「えぇ、それで今回一誠君とのことなのですけど」

「ん?友達と聞いているが?」

「実は彼には特殊な力が宿っていまして……」

「特殊、ねぇ」

「はい。神器と呼ばれるもので……」

 

 そして来ました神器!……まぁ夕麻にはもう慣れたもので、無くなった茶菓子を改めていそいそと準備しだす。

 

「そう、一誠にそんな力が……」

「昔から元気な子だとは思っていたけどなぁ」

「………あの、驚かないんですか?」

 

 彼らの反応に流石にツッコミを入れたディオドラ。

神器の説明ではこのままでは一誠は人間や龍などの括りでは収まらない、異種族になってしまうかもしれないと、そんなことまで説明したのだ。

其れなのにこの反応、本当に理解しているのか?と疑うのも仕方ないだろう。

 

「えぇちゃんと驚いていますよ。でも、すいません。私たちにとっては、あまり気になることじゃなかったので」

「というと……?」

「種族が違うくなってしまうとか、特別な力を持っているからといって、私たち(家族)という関係が変わるわけじゃないので」

「そうそう、一誠は一誠のまま元気に健やかに生きてくれればいい。勿論、夕麻ちゃんもだ」

 

 そう言って二人の間に座っていた夕麻の肩に抱き着く様に、重心を預けるようにして手を置いた。

更に頭を撫でて可愛がり出し、流石に恥ずかしくなったのか夕麻が顔を真っ赤にしだす。

 

「ちょ、ちょっと、お父さん……!お母さんまで!?」

「この可愛い娘たちが幸せなら、私たちはそれでいいんです」

「もし、人道を背いて何かをやっていたとしても(・・・・・・・・・)。もしくは、これからそういうこと(・・・・・・)に手を染めることになったとしても、この子たちに対する態度を変えるつもりはありません。悪いことをしたら叱るし、良い事をしたら褒める。十字架を負うというなら、一緒に負いましょう」

「だって、私たち家族ですから」

 

 にこやかに、朗らかに語る二人を呆然と見つめる悪魔達。

思考の一部が目の前の光景を受け入れ難いと拒否しつつも、その綺麗な関係に敬意を覚えた。

 

「……これから何があっても、後悔はしないと?」

「えぇ、私たちの子だもの」

「本人たちが悔いることが無いというのなら、それを見守るだけです」

「………ハァ、これは参った」

 

 サーゼクスが思わず両手を上げた。

もし少しでも否定的なそぶりを見せたら、一誠を冥界へ連れていくつもりだったのだが、それどころか此処まで家族愛に溢れた関係を見せつけられるとは思ってもいなかった。

情愛を中心とした考えを持つグレモリ―家の血筋のものとして、これ以上に勝てない(・・・・)存在はいないだろう。

 

「これからも一誠君と悪魔契約が関係しない、ただの交友関係を続けたいのですが、よろしいですか?」

「ええもちろんどうぞ」

「うちの子が迷惑をかけると思いますけど……よろしくお願いしますね」

「いえいえ、大変面白いので大丈夫ですよ」

 

 あっさりと話は終わり、内容は一誠との出会いの話になった。

式場をボロボロ(廃墟)にしたことは怒られたが、リアスを救った件に関しては超グッジョブ!と、特に父親に褒めちぎられた一誠を見て、あぁこれはまたやらかすなとその場にいた全員が理解した。

この愛情はすさまじいが、若干子育てに甘いのでは……そう、思っていると……。

 

「もう、そうやって甘やかさないで!一誠の教育に悪いっていつも言ってるでしょう?!」

「い、いや、でもな夕麻ちゃん。泣いてる女の子を助けるってもう男としてはかなり誇らしい……」

「ダメです! カッコイイのには同意しますけど、やり過ぎなの! いーい一誠?今回はたまたま良かったけど、一歩間違えてたらどんなひどいことになってたと思うの!?」

「え、っと……」

 

 ヘルプを母に向ける一誠だが、その母は笑顔で手を振ってそれを拒否した。

 

「一誠!ちゃんとこっちをみなさい!!」

「は、はい!!!」

 

 その後も自然と正座をして夕麻のお説教を受ける一誠を見て、彼らは理解を深めた。

そうか、一番の良心(地雷)は彼女だったか、と。

夕麻は日常的なことをしているつもりだが、彼女の存在がどれだけ一誠の中で大きいのかを認識し、ある意味一誠より要注意人物として深く彼らの頭に記憶されることとなったのだが。

 

「そもそも迷惑をかけた人達に謝ったの!?」

「えっと……その……ご、ごめんなさぁい!!」

 

 一誠(赤龍帝)に対しサーゼクス(魔王)に向けて土下座をさせている彼女は、欠片も理解していなかった。

その後沈静化するまで約30分もの間、悪魔や兵藤夫妻は楽しげに姉弟のやり取りを眺めながら談笑していたという。

 

「ところで、ご夫妻は悪魔に興味はありませんか?」

「なに勧誘してるんですか、行き成り失礼ですよ」

「いや、だってもう見事としか言いようがなくてね」

「あらあら、悪魔ですってあなたどうしましょう?」

「ふふ、どうしようか。まぁ私は昔から小悪魔みたいだと思っていたけどね?」

「あらひどい」

 

 魔王様が何気に惚気夫妻を勧誘していた件については、蛇足としておこう。

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