兵藤一誠は意外と放浪者である。
今日も今日とてフラフラと面白いものと巡り合いたくて外を出歩いていると……。
「誰かー、悩める子羊にお恵みをー」
「どうかお願いだ~」
「………」
なんか変な格好の物乞い二人組に遭遇した。
歳は姉と同い年くらいだろうか?それくらいの二人が白いコートに身を包み、何故か背後には宗教がらみと思われる謎の絵を所持していた。
首にはロザリオ、十字架が掛けられており熱心な信教者だと分かる。分かるのだが、何故、物乞い?
「「「……」」」
疑問と興味から思わず凝視してしまう一誠、そして子供に物乞いをマジマジみられ羞恥心と屈辱感から赤くなって無言になる二人組。
数秒そのままでいたが、二人組の方が先に限界が来てしまった。
「ふ、ふふ、ふふフ……いっそ殺せぇーー!!!」
「お、落ち着いてゼノヴィア!自殺は大罪よ!?」
「落ち着いて居られるか!見ろ、あの子供の目を!あんな子供に憐れむという感情を覚えさせるような私など、斬って捨ててくれぇええええええ!!!」
「ちょ、ホント落ち着いて!ダメだって、こんなところで聖剣出しちゃダメだってばーー!!」
何やらわちゃわちゃし始めたふたり。
片方が傍らの黒い包みを開けようとし、それを必死にもう片方が止めようとしている。
包みの中から何やら眩い気配がチラチラ感じ取れるが、それ以上にこの二人の外套の内側にチラチラと黒いインナーだろうか?まるでボンテージの様な衣服が見える度に思うことがあった。
(……想い出した、姉ちゃんが言ってたっけ。ろしゅつきょーでへんたいのふしんしゃ、だ)
そう、こんな風に肌の露出が多く、ピッチリと身体に張り付いている衣服だけを着て出歩いている不審者がいたら、相手をせずに直ぐに逃げなさいと。
最近そんな変態さんが出て治安がどうのこうのというニュースを、夕ご飯の時チラッと流し見た時に言われことを思い出した。
では逃げようか?しかし、この二人は一応コートを着て身体を隠している。つまり、変態ではない……?
「??」
「あぁ……みろイリナ、あんな風に純粋な瞳でこちらを見ている少年が……少年が、私たちを憐れんで……」
「落ち着くのはいいけど、落ち込むのは止めて。ねぇゼノヴィアしっかりしてよぉ~私だって泣きたいよぉー」
ゼノヴィアという人の言い分も理解できるというか、痛感しているのだろう。もう片方のイリナと言う人物が涙目になって若干声も震えている。
取りあえずおかしな人かもしれないが、悪い人ではないようだ。そして、声からして女性。
ならば、姉のもう一つの教えに従って行動せねばならない。
「えっと、腹減ってるなら来る?うちこれから飯だし」
「「…………」」
無言。肯定したいほどに空腹が激しく、かといって子供に物乞いと言うのはとても、とても首肯するのに躊躇が伴っていた。
二つの本能と理性……というよりは、本能と羞恥心のせめぎ合いは拮抗していた。一誠の次の言葉までは。
「ちなみに今日は焼き肉なんだけど」
「「よろしくお願いします!!」」
小学生相手にとても綺麗な礼を見せた二人。
取りあえず、二人分の肉を自分の小遣いを叩いて買うことにした一誠。
焼き肉は本当だったが、二人分余計にあるかと言われるとわからないからだ。
「あはは、みろいりな。わたしは、こどもに、おにくをかわせちゃってるぞ~ッフフフフ」
「ゼノヴィアが遠い目を……まぁ気持ちは痛いほどわかるけど」
どうやら、ゼノヴィアと言う女性は感情の起伏が激しいようだと、一誠は買い物を済ませながら思った。
あと、イリナと言う女性は我慢強い。ただ、瞳から光が消えていたためもしかしたら空腹が満たされた後打ちひしがれるかもしれない。
(……ま、その時はそのときだ。うん)
先のことは先の自分に任せ、今は買い物を済ませ帰宅をすることにした。
「ただいまー」
「お、おじゃまします」
「……おじゃまします」
さて、一誠の家に入った二人が感じたのは焼き肉の準備をする家庭の音……だけではなかった。
まず
「あれ、何かうち広くなってんなー?」
家に入ったが、どう考えても外観より広い内装にも驚くが、問題はそこじゃない。
一番問題なのが、中から感じた
人間の小さな反応が二つ、堕天使の反応が一つ……そして、少なくとも上級悪魔だと分かる反応が複数。
「(え、なに?私たちは焼き肉を食べに来たのよね?焼き肉にされに来たんじゃないわよね!?)」
「(落ち着けイリナ、常在戦場だ。聖剣をいつでも出せるようにしておけ)」
「(わかってるけど、これ無理じゃない?なんというか、無理じゃない??)」
アイコンタクトとわずかな手の動きで会話をする二人。
ほんの廊下を通る数秒だが、濃密な気配、魔力、氣がこの家を充満している。
何より一番分からないのが
「(濃すぎてよく分かんないんだけど、ドラゴンもいるっぽいわよ?)」
「(あぁ、しかしどうやったらこんなに充満するんだ?日頃からドラゴンが人間の生活をしているとでも?)」
我儘で自由奔放で一定の場に留まることを知らない。
そんな存在がいる……なぜか悪魔と堕天使と一緒に、人間の家で暮らしている。
訳が分からなかった。そんな二人の疑問は、居間に辿りつくことで悪化した。
「おかえりなさい、一誠」
「あらお帰り一誠」
「おかえり、そちらの二人はどうした?」
「んーっと、友達。今日仲良くなって、晩飯一緒に喰うことにしたから。母ちゃん、これ肉ー」
「あら、よかったわね。自分で買ってきたの?」
「うん、それよりめし!二人とも腹減ってんだ!」
「はいはい。ふふ、一番お腹が空いているのは一誠じゃないのかしら?あ、ディーくん、そのお皿頂戴。サラダ盛り付けるから」
「わかりました、どうぞ」
「もぉ、お父さん?そろそろご飯なんだから、間食は控えてっていつも言ってるわよね?」
「いや、ちょっと小腹が……」
まず、少年を迎える両親と……堕天使。
さらに母親に命じられて皿を持って行く上級悪魔。堕天使に怒られる父親。
「おかえりなさいイッセー!」
「おぉ、リアスお姉さん来てたんだ」
「えぇ。というか、増築工事を頼んだから、今日からみんな一緒に暮らすのよ?」
「そーいえばそうだっけ」
「……そういうことだから、焼き肉パーティーなんですよ?」
「アハハ、そうだったなーって小猫姉ちゃん、お腹空いてる?何か今くぅってお腹が……」
「気のせいです。というか、そういうことは気付いても女性に言ってはいけませんよ」
「はーい」
上級悪魔に抱き着かれ、小柄な悪魔に頭を撫でられる少年。
悪魔の増築工事なら一晩で終わるらしく、一誠が外に出ている間に終わってしまったらしい。寧ろ数日経ってから工事した理由は、後々から一誠の家に同居したいというモノが募ったせいでもある。増築、改築、増築、改築を繰り返した結果、今の形に落ち着いたようだ。
見かけは今までの家なのだが、どうやら空間そのものを弄ったようで、内装はかなり豪華になっていた。
「一誠様、おかえりなさいませ」
「ただいまーリヴァリアさん」
リヴァリア・ククリカ、アスタロトの女王であるはずの彼女は完全に一誠に傅いていた。
ちなみに彼女だけさん付けなのは、自分の名前が長いからそのままでいいと彼女が言ったからだ。
なんなら呼び捨てで構わないと鬼気迫る勢いで一誠に告げ、現在の形に収まっている。
ちなみに呼び慣れていない頃、リ
「……そちらのお二人は?」
「今日友達になったんだけど、二人とも倒れそうなくらいお腹空かせちゃって。あ、お肉は買って来たから大丈夫だよ」
「なるほど、了解しました」
二人が只の人ではないことを一瞬で見破った彼女は、最近メキメキとその実力を上げている。
アスタロトの観測の力を自分なりに模倣し、魔法や魔力の扱い方が上手くなっているだけではない。一誠といつか
勿論、花嫁修業も同時進行中であることは言うまでもない。
「はぁ、たくこのクソガキ様は。お前そうやってぽんぽん人増やすんじゃねぇよ」
「うっさいなーディーは。イイだろ別に、何か家も広くなったみたいだしさ」
「そう言う事だからパーティーするってのに、部外者呼んでんじゃねぇって話だよ」
「アハハ、友達だっていったろー?」
「友達、ねぇ」
最近一誠に慣れてきた上級悪魔、ディオドラ・アスタロトがジロッと二人を睨み付ける。
感じる
「なにやってんですかあなたは」
「っつ~~!あのさぁ、お前僕の女王のはずだよな!?」
「えぇ、そうですよ
「うわぁ、認めながらサラッと毒吐いたよこいつ。ボクちゃん最近頑張ってると思うんですけどねー」
「ハッ」
「鼻で笑いやがった……」
まさかの関係に思わず呆けてしまうイリナとゼノヴィア。
上下関係なんてぐちゃぐちゃじゃないか、というか異種族間の持つ独特の雰囲気、 軋轢感がない。
そして、困惑する二人をさらに混乱に陥れる存在がいた。
「あー!アンタも来たのかよ!?」
「んー、まるで私に居て欲しくないような言葉だね?」
「リアスお姉さんが許したからって、俺のリベンジが無くなるわけじゃないからな。まだそんなに強くなってねぇのにさー、そんな軽く顔見せられるとなんか、こう……うずうずする」
「うずうず?」
「落ち着かないのでしょう。何時か先の約束、再戦を求めたばかりの相手と仲良く食卓を囲むということに」
「なるほど」
赤髪の男性と、銀髪のメイド服の女性。どちらも感じる力は上級悪魔の比ではない。
完全に魔王クラス。今まで彼女達が会った中で群を抜いた実力差を本能で感じ取っていた。
「本当はミルたんとレヴィアたんもよびたかったんだけどなー」
「「止めて頂戴、お願いだから」」
「えー。いや、まぁミルたんも今日は外せない修行があるらしいから、仕方ないけどさ」
リアスと夕麻に止められる一誠が思い浮かべる二人の存在。
彼らは軽いトラウマとして夕麻に、そしてリアスとその親友の脳裏に刻み込まれていた。
「ね、ねぇあの、えっと、いっせいくん?」
「ん?あ、そういや自己紹介未だだっけ。俺兵藤一誠!好きに呼んでいいよ、おねーさんたち」
「え、えぇ。私は紫藤イリナ。イリナでいいわ」
「ゼノヴィアだ」
「それでね、えっと一誠君……その、………」
イリナは何から言えばいいのか酷く悩んだ。
この家に貼られていた結界はあのバケモノ二人の仕業だろう。
というか、この家に集まっているこの集まりは一体?というか、さっき一緒に暮らすと言っていなかっただろうか?それ以前にこんなにも多種、尚且つ実力者に好かれているキミってなに?
散々悩んだイリナが絞り出した言葉は、とても単純なものだった。
「……ほ、ほんとうに、おじゃまして、だいじょうぶ?」
「全然だいじょーぶ。いいよねー?」
一誠の声にばらつきはあるが、その場にいた全員が了承を出した。
その了承も、
聖剣を出しても敵いそうにない者たちがいる中、焼き肉。二人の脳裏をある言葉が過った。
((最後の、晩餐……))
気を失わなかったことだけは褒められていいと、後々ディオドラがイイ笑顔で語ったという。
その頃のミルたんは、レヴィアたんと一緒に空を飛ぶ練習をして、跳んでいます。
魔法少女は飛ばなきゃね!頑張れ、ミルたん!