はちゃめちゃ赤龍帝   作:...

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決戦の場へ

 フリードが何時もの廃教会へと辿りつく。

だが、そこにはいつもの光景とは少し違った存在が居た。

フードを被った二人の信者……どうやら、木場とやり合っている間に教会へと辿りつかれたらしい。

廃教会には結界が張られているが、張ったのは堕天使。彼女達がもつ聖剣がこの場所まで引き寄せたのか、あるいは結界が聖剣によって弱められでもしたのだろう。

 

「おーおー、今日は何だ?獲物がワラワラと、晩餐会でもやってんのか?」

「フリード・セルゼンだな。聖剣奪取の犯人」

「そーですよぉー、オレっちみたいな半端モンに盗まれるなんて、教会は随分バカ揃いになったようで?」

「大人しく聖剣を渡してちょうだい。最悪、命は取らないわ」

「ちっ、やっすい挑発にはのりませーんってか?そのうえ態々真正面からとか、お利口なこって……ホンットバッカじゃねぇの!!」

 

 ピッとポケットに突っ込んでいた手があるスイッチを押した。

それによって起こるのは煙幕。眼を直接潰す閃光や暗闇系の呪詛は聖剣を持つ存在には効果が薄い。

聖剣を奪い、散々兆発をしていたフリードが対聖剣所持者やそれに類する存在への対抗策を考えていなかったわけではない。

 

「煙幕っ」

「毒じゃないみたいね……」

「気を付けろイリナ」

「分かってるわゼノヴィア」

 

 背中を預け合う二人に聖光の短剣が複数襲い掛かった。

 

「甘い!」

「たぁ!」

 

 簡単に弾く二人だが、今度は直上から光の矢が降り注いだ。

それを破壊の聖剣の剣圧で吹き飛ばし、ついでに煙幕も斬り裂いて散らす。

 

「何処に消えた?」

「教会とか?」

「抜けられた気配はないが……」

 

 ゼノヴィアとイリナの呟きを陰で盗み聞きしていたフリードは、思わず笑ってしまいそうになってしまう。

如何にかこらえながら、呆れたとばかりに肩の力が抜けたのを感じた。

 

(アンだけ挑発したもんだから、どんな猛者が聖剣携えてくんのかって警戒したんだがなぁ……)

 

 煙幕を張り、短剣を投げたのはフリードが身を隠すための時間稼ぎ。

通常の彼なら身を隠すので精いっぱいだが、今は天閃の聖剣がある。これによって超速で動ける彼は隠れながらササッと教会周辺に罠が無いかを確認した。

ついでに動かれないように、設置しておいた矢の罠を狙いを修正した後、自分で作動させた。

 

(先に居た癖にこれといって罠は無し、じゃぁ何か増強でもしてんのかと思ったがそれも無し。エクスカリバー頼みの格下じゃねぇか……)

 

 人の身で人外を斃すのがどれだけ難しいのか身をもって知っている彼は、その下準備も重要だと理解していた。

自分は生粋の人間だが、それでも聖剣を奪い、迫ってくる信者たちを無残な姿にしてきた。

そんな非道な奴に対し、送るのが良くも悪くもこんな真っ直ぐな二人とは。

 

(マージで教会は人手不足かぁ?バルパ―の腐れジジイは処分とか言ってかなり殺したらしいが……)

 

 はぐれ神父と呼ばれるフリードだが、流石の対応に少し教会を心配してしまうような思考をしてしまう。

 

(てか持ってんのそれ破壊と擬態だろ?だったら気配を消してるオレの警戒をするんじゃなく、居そうな場所を擬態を目にして(・・・・・・・)探索、んで見つけ次第破壊できるようにオーラを込めとくのがセオリーだってのに……バカだなぁ)

 

 警戒をしている二人だが、只周辺を気にしているだけではド三流だとフリードは吐き捨てた。

伸縮自在の日本刀とは随分と使い勝手が良いのかもしれないが、擬態は伸び縮みするのが真骨頂ではない。そんなちゃっちい聖剣があってたまるものか。

 

「ヒャッハー!隙だらけだぜー!」

「隙など、あるものか!――なに!?」

「ゼノヴィア、それ……ううん、こいつ等(・・・・)幻影よ!」

「くそ、本物は……」

 

 試しに夢幻の聖剣で造った影に突っ込ませると、破壊の聖剣で斬られた。

囲ってみれば本物を探そうと躍起になっている。

本物などいないというのに、何とも呆気ない。

 

(オレっちが正面切って相手にするような奴じゃねぇって煙幕で分かんないかねぇ?いや、真正面から斬り合うの大好きだけどネ?)

 

 今回の仕事は正面切って戦う事ではなく、聖剣奪取が目的である。

奪うだけなら正直言って斬り合って勝つのも無理ではないが、この先(・・・)がある以上、こんなところで無駄な消耗をするつもりはない。

 

(さぁて、見たところ聖剣の因子と剣の才能だけ(・・)で選ばれちまった小娘どもみたいだが、悪いねぇ)

 

 ニヤァッとこれっぽっちも悪びれた様子の無い笑みを浮かべ、思考を続け、幻惑に戦わせながら設置しておいた罠を発動させた。

同時に幻惑に彼女達を攻撃させる。さて、そうするとどうなるか?

 

「このっきゃ?!」

「イリナ気を付けろ!幻に混ざって本物の短剣が飛んでくるぞ!」

「このぉ」

 

 本物かもしれない(・・・・・・)襲い掛かる幻影。絶対に幻影だが、短剣が背後にあるかもしれない(・・・・・・)幻影。

彼女達は幻影と短剣を警戒し――透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の効果によって姿を隠したフリードを捉えられなくなる。

足音は弾かれる短剣と破壊の聖剣の破砕音によって消え失せ、そして殺害が目的ではない(・・・・・・・・・)彼に殺意があるはずもない。

 超速で、視えず、聞こえず、察せられない。

ゼノヴィアとイリナ、彼女達以上に実戦経験を持ち、用意周到に事前の準備をし……なにより、その手に持つ聖剣(武器)を使いこなすことを第一としていた彼のその一撃を、彼女達が対処することは不可能だった。

 

「ッ―……」

「ぇ?」

 

 幻影全てを吹き飛ばしかねない、破壊の聖剣を持つゼノヴィアが一番厄介だった。

だからこそまずゼノヴィアを昏倒させる。

次にイリナだが……彼女は論外だ(・・・・・・)

 

「ゼノヴィ、ァ……!?」

 

 イリナの膝がカクンと曲がり、身体から力が抜け落ちる。

何が起こったのか驚愕するイリナだが、答えを言うつもりはなくフリードは彼女の意識も物理的に落とした。

 

「さて、あっけなく残りの聖剣もゲッチュ!オレっち怖いくらいについてるねぇ……」

 

 聖剣を回収ついでに、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を使ってみることにした。

数多もの()を作りだし、散らばった短剣を回収する。慣れたら天閃の能力も合わせ、超速回収を済ませた。

 

「おー、コイツは便利だなぁ。切れ味も自在みてぇだし、色々使えそうじゃねぇか……短剣は塗り直さ(・・・・)ねぇとな」

 

 短剣は只の剣ではなく、筋弛緩剤を塗り込んだ特別性である。

煙幕に毒が無かったからこそのトラップだ。

尚且つ、聖剣が毒に対抗するとも限らない為、人体に害のない医療、手術でも使われる即効性のものを用意した。初撃を掠った上に動き続けたイリナはあっという間に薬が回るという寸法だった。

 

(さぁて……本番はこっからだな)

 

 連戦したことは問題ではない。この程度なら幾らでも斃せる自信が彼にはあった。

聖剣が目的数揃った(・・・・・・・・・)事が問題なのだ。

 

「コカビエルの旦那ー、どうするんで?」

「……」

 

 フリードの言葉に反応して現れるのは、5対の黒翼を持つ堕天使コカビエル。

彼はフンッと鼻で笑うと、当たり前のように言葉を落とした。

 

「とっとと一つにしろ(・・・・・)。余興を始めるぞ」

「へいへーい」

 

 破壊、擬態、天閃、夢幻、透明。

行方知れずの支配と潜入するには準備と時間が足りない祝福以外の5本が揃った。

この聖剣を一つにまとめるのにかかる時間は、約5分。

 

「……で、来た奴ら(・・・・)はどうするんで?」

「ふむ……」

 

 物陰に隠れていた悪魔(ソーナ)達がビクリと緊張した気配を感じさせた。

甘い甘い、ゼノヴィアとイリナに協力しようと駆けつけるのならば一緒に来るか、彼女達が戦闘不能になる前に来れなければ意味がない。

 

(チィ、どうする?ばれてますよ?つーかリアス達はどうした?)

 

 手振り素振りでディオドラが他のメンバーに伝えると、他のメンバーも同じように応える。

 

(さっき負傷した下僕を見つけて、治療中だそうです)

(ハァ?マジかよオイ)

 

 ただ重傷者である木場を治すのに、サーゼクスとグレイフィアが共に治療を行っており、リアスと小猫だけでこちらへ向かっているとか。

 

(勝てるわけねぇ……)

 

 相手は聖書に記されている伝説級の堕天使。

こちとら最近力をつけ始めた悪魔と、はちゃめちゃな存在の下僕になったことで最上級にあと一歩な感じの残念悪魔しかいない。

相性も場数も相手が何段も上だ。その上、聖剣がある。敵の聖剣使いの実力が聖剣ありきだとは思えない。

 これから手放すようだが、なにせ聖剣を奪取した人間だ。聖剣が無い程度(・・・・)で勝てるほどに弱体化するのなら苦労は無い。

 

「放っておけ」

「おろ?いーんで?」

「あぁ。むしろ見守って貰おうじゃないか、戦争が始まる瞬間をなァ。ククク」

「んじゃ移動しよっかねぇ。場所は駒王学園だ悪魔諸君!来るまでに聖剣は一つにしとくから、後は精々頑張ってくれたまへー」

 

 腹立たしいことに見逃してもらった悪魔たち。

リアス達が駆けつけ、彼らから状況を聞くまで2分、サーゼクス達が駆け付けるまで……残り10分は掛かるだろう。しかも彼らは移動していった。合流してから辿りつく頃には既に聖剣は一つになっているだろう。

 

「どうします?」

「どうって……行くしかないでしょ?サーゼクス様たちと合流している暇はないので、使い魔を放ってください。決戦場所は、駒王学園だと」

 

 サーゼクスとリアスにソーナとリヴァリアが使い魔を放つのを見送りながら、彼もこっそりと使い魔を放った。

 

(出来るなら、頼りたくないんですけどねぇ……)

 

 ボコられた一件から、最悪の想定をすることを信条とするディオドラ。

彼の行動が吉と出るか、凶と出るか……神が居ないこの世界では、誰も知りようがない。

 

 

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