はちゃめちゃ赤龍帝   作:...

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 お久しぶりです。


その龍は

 白龍皇、ヴァーリは類稀なる存在である。

言っては何だが天才で、魔力も豊富。その上神器、それも神滅具と呼ばれるモノを内に秘めている。

それだけではなく、血筋としても超特殊で、過去現在そして未来まで含めて最強の白龍皇になる存在だと自負している。

 

 では、ここでクエスチョン。

 

 彼の横に立つこの少年は、いったい何なのだろうか?

 

「『オリャリャリャリャァァー!!』」

 

 刺々しい真紅の鎧を身に纏った少年。イッセーと言った彼は態々全ての光の槍を拳と蹴りで粉砕していく。

相手との戦いを全身で楽しんでいるその様子は、まるで普通の(・・・・・・)子供のようだ(・・・・・・)

じゃれている相手が聖書の堕天使だというのに、この無邪気はいったい何なのやら。

 

(こいつが、今代の赤龍帝……)

 

 神器は人に宿る。正確には、少しでも人の血が混ざっていれば宿る可能性がある。

白龍皇は歴代最高の存在に宿った。なら、赤龍帝は?

宿命のライバルと呼ばれ並び立てられるその存在は、一体どんな奴なのだろうか。

それはヴァーリが白龍皇であると自覚してから、ずっと思っていた疑問であり、期待だった。

 

『よかったな、ヴァーリ』

「ん……まぁ、思ってた以上ではあるようだな」

『まったく、素直じゃない……それよりドライグ、お前それは何だ(・・)?』

「『ア?何ガ?』」

 

 ヴァーリの内に秘めたる龍の問いに、ポカンとした様子で(一誠)が応えた。

白龍、ヴァニシング・ドラゴンのアルビオンが「それだそれ」と再度問うた。

 

『貴様、宿主と半ば同化しかけているだろう?それにその鎧、覇龍(・・)の力を感じるぞ……?』

「なに?」

 

 覇龍とはドラゴン系神器の最終奥義のようなものだ。命がけの切り札、のはずなのだ。

勿論本来の覇龍とは程遠い姿ではあるが、この龍帝、見たところ普通に使っているように見えた。

封印を一時的且つ限定的に解放した状態であり、同時に過去の帝王達の遺志も甦り理性を侵すとんでもない代物なのだが、理性も保っているようだ。

 

「『アァ、ヨク分カラン』」

『は?』

「『正確ニハ、理解出来テナイ。タダ、何ダロウナ……ソウ、コレガ必要ナンダ(・・・・・)』」

 

 一誠は元々は人間の少年だ。

それがちょっとした些細な出来事をきっかけに、こうなっているに過ぎない。

 もっと力を、そう求めた彼に神器とドライグが応え、そして得た結論がコレだった。

神器による一時的なパワーアップではなく、神器など関係なく一誠という存在(・・・・・・・)を強化する。

覇龍すら、過去の帝王の魂すら巻き込んだそれは、無自覚に行われたにも拘らず正確に力を馴染ませていた。

 なんなら、少年の成長ぶりと無邪気さに絆され帝王達はノリノリで、自分たちの経験をプレゼント(譲渡)するくらいだ。

 

『ふむ、無意識にそうなった理由がある、ということか』

「強くなるためなんだろ?なら何でもいいじゃないか」

「『ハハ、ダヨナー!』」

 

 笑い合いながら隣り合う紅白の龍達は、そのまま堕天使の元へと飛翔していく。

決着がつくまで、そこまで時間はかかりそうになかった。

 

 

 上空で激しい戦いが起こっている中、地上では静かな睨み合いが始まっていた。

木場が聖剣を持つフリードをジッと見つめ、それを受けたフリードもため息を吐いて睨み返したのだ。

 

「あーのさァ、オタクが聖剣(コイツ)絡みで色々あったのは分かるぜ?オレッちも似たようなもんだしな?

だがよォ――だからって何もかも捨てちまう気か?」

「グッ!?」

 

 木場の襟を掴み、捻り上げた。木場のその濁った瞳を、フリードは同じく濁っていながらも鋭い瞳で射貫く。

 

「ちょっと、何を」

「あー待て待て。下僕想いなのは良いが、過保護にもほどがあるでしょ」

 

 仲間想いのリアスがフリードを止めようとしたが、それをディオドラが止める。

一見すれば聖剣を持った神父に追い詰められている悪魔だが、これは逆にチャンスでもある。

木場の聖剣に対する悪意は本物だ。しかし、余りに強すぎる思いに彼自身が振り回されている。

自暴自棄と言ってもいい暴走に、何かの区切りが必要であり、それをもしかしたら……今この場で彼は得るかもしれない。

 

「復讐心で真っ黒になって何もわかってねぇのかお前は……こんな奴を救うために、コイツ等(・・・・)は命を懸けたってのか?」

「貴様に、何が分かる!?似た境遇だって?はぐれとはいえ神父になって、あまつさえ聖剣を手にして振りかざすお前に!!!」

「残念なことに分かるねぇ!分かっちまうんだよド畜生がァァ!!」

 

 フリードの身体が聖なる光を放ち、彼の懐からも強い光が溢れ出す。

同時に、フリードの瞳からぽたぽたと涙が数滴落ちた。

 

「この力が何かわかるか、お前さんのお仲間だよ!」

「ッみんな、の?」

「あぁそうだ!言っとくがオレが泣いてんじゃねぇぞ!?因子が、込められた魂が泣いてんだ!!

当たり前だよなぁ……!あの地獄を生き抜いてくれた唯一の仲間が、誰も望んでない復讐で死にそうな目に遭ってんだからよォ!!」

 

 ギリッと歯を食いしばり、彼ら(・・)に乗っ取られないように意識を絞りながら、フリードは懐の最後の因子の塊を木場に押し付けた。

聖なる光が木場を焼くが、彼はそれを拒絶しない。出来るはずもない。

 

「ふざけんじゃねぇぞ。幾らテメェの人生だからって、託されたモンまでぶん投げるんじゃねぇよクソガキがッ」

 

 それはきっと、本当に独りで地獄を耐え抜き生きてきたフリードの、僅かな嫉妬であり羨望だった。

木場が言った通り、彼は似通っているだけでフリードと違う。

フリードには過去、仲間なんていなかった。生きて欲しいと心底から想える相手なんて誰一人いなかったのだ。

もし、今共に暮らしているような連中ともっと早く出会っていれば……彼はもっと真っ当な人生を、少なくともはぐれにならなかったかもしれない、なんて思ってしまった。

 そんなどうしようもない想いを、彼ら(・・)の言葉を伝えるついでにぶつけただけ。

どこかスッキリしたフリードは、もう用はないと木場を開放した。

 

「……今のは全部因子(そいつら)の代弁だ。あとは本人からしっかり聞きやがれ」

 

 光に包み込まれていく木場にそれだけ言い捨て、フリードは改めて上空へ視線を向ける。

聖なる遺志(過去の仲間)を引き受けるかどうかは、後は木場次第だった。

勿論、真面目で誠実で……故に歪んでいた彼がそれを受け止めない筈はない。

 

 

 こうして、此処にこの世界で唯一の禁手へと、一人の少年が至った。

聖魔剣と呼ばれるあり得ない力(・・・・・・)を得た少年は、悦ぶでも笑うでもなく……静かに涙を溢し、鎮魂を捧げるようにその両手を鼓動している胸の前で合わせていた。

そのことを、彼の仲間は静かに見ていた……誰も何もかける言葉はなく、少年が覚悟を決め直すまでの短い間、只々見守っていた。

 

 

 一方で上空の戦いも終わりが見えてきていた。

確かにあの堕天使は強い。それもドラゴンの力をその身に注ぎ込んだ結果、常軌を逸した強さを得ている。

しかし相手が悪かった。見かけ幼い二人の二天龍も十二分な実力者……しかも、コカビエルと違い彼らは成長途中(・・・・)

槍を打ち砕く動作がどんどん鮮やかに、且つ無駄が無くなっていき、あっという間にコカビエルとの接近戦へともつれ込んだ。

 

「どうしたコカビエル、もっと激しくいけるだろ?」

「『ハッハッハー!オッチャン強ェナ!!』」

「このっ何故だ、何故だ何故だ何故だァァァアアアアアアア!?!?!?」

 

 ドラゴンの力を受け入れ、容量も存在の格も上がったはずのコカビエルがまるで玩具の様に蹴散らされていく。

あまりに理不尽極まりない事実に、コカビエルは怒りの絶叫を上げた。

上げただけで……彼の勝率が皆無ということに変わりなどない。

 

「二天龍ゥゥ!!貴様らさえ、貴様らさえイナケレバァアアア!!!――ッ!?」

 

 そして叫びと疲労は限界に至り……制御出来ていたはずの力を律し損ね――堕天使は飲み込んだはずの力に飲み込まれ始めた。

内側から黒い蛇の様な存在がコカビエルを食い破り現れ、堕天使を隅から喰らい始めたのだ。

 

「ガ、ゴ、ア、ナンダ、ごれ゛バッァアアアアア!?」

「哀れだな……身の丈に合わない力を無理に取り込むから、そうなる。自業自得だ」

「グゾッヂクジョォオオ!!!」

 

 白龍の男の冷ややかな目で最期を看取られるコカビエル。

彼をどうすることなど、流石のヴァーリにもできはしない。

だってアレは二天龍すら超える存在、無限の龍神の力、その一端……下手に手を出せば食い殺されるのはこちらだ。

 

 

 そんな、どう見ても危ないものに手を出す奴など―――この場に一人しかいなかった。

 

 

「『オ、オイオッチャン!ドウシタ、大丈夫カ?!』」

「グ、ガァ?」

「『エット、ドウスリャイインダコレ!?』」

 

 冷徹な悪魔でも、弱肉強食に生きる龍でも、己が欲望に素直に破滅していた堕天使でもない。

家族を愛し、隣人を尊び、時に名すら知らない他人を憂う――そんな、只の人間がそこにいた。

 

「『ア、ナァオ前コレドウスリャイイト思ウ!?』」

「……何を言っている、赤龍帝」

「『エ、何ッテ、ホラオッチャン苦シソウダカラ』」

「………こいつを、救うつもりか?」

「『?』」

 

 何を当たり前のことを言っているのだろうと、赤龍帝は首を傾げた。

コイツは何を言っているのだろうと、白龍皇は目の前の子供を疑った。

そして色々言いたいことはあるだろうが、そんなことをしている時間は無い。

 

「ゴボッ」

「『ウワ、血ィ吐イタ!?エット、要スルニコレ邪魔ナンダナ?』」

「お、オイ待て!お前それが何なのか分かって――?!」

 

 白龍皇が止める間もなく、赤龍帝は真っ黒な蛇を鷲掴みにした。

蛇は幾重もコカビエルから放たれると、赤い腕に絡みつき――どう考えてもヤバイと直感していながらも、彼は。

 

「『知ルカァァアアアアアア!!!』」

 

 ―――全力で、殺気を向けられていた堕天使から異物を引き抜いた。

黒い蛇は赤龍帝へ牙を……剥くことはなく、懐いた小動物の様に(・・・・・・・・・)幼い彼の全身を一度這うと、籠手に着いた翡翠の水晶へと吸い込まれていった。

 

「……――ハ?」

 

 その光景を、白龍皇は呆然と見つめていた。

何が起こったのか意味が分からなかった。

しかしこれだけはハッキリしている。

 

 

 ――理由はどうあれ赤龍帝は無限の一端を制御し、手にいれてしまった。

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