RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~ 北長野総合車両所 作:元町湊
“札沼まり”と紹介された子は、軽くお辞儀をすると、
「高山君、私から呼んでおいてゴメンだけど、そろそろ仕事に戻るね」
「ああ、分かった。OJTがんばれよ」
「それはお互いにね」
そう言って厨房に戻っていった。
「高山君のクラスメイトなんですか」
「ああ、OJTをやってるとは聞いていたけど、まさか北斗星で会うなんて思っても無かったよ」
小海さんがホッとしたような顔をし、高山は本当に意外だというような顔をしていた。
今は丁度宇都宮を出たあたりだ。
俺はそんな二人と岩泉、ベルニナに向かって言った。
「さ、俺達も戻ろう。次は高山な」
「はいよ」
さ、気を引き締めていこう。
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郡山到着の少し前、部屋でごろごろしながらスマホを弄っていると、上の部屋で大きいとまではいかないが、少し物音がした。
誰かと誰かが暴れているような、そんな音。
その部屋は小海さんのいる4号室で、桜井はまだ来てない。それに、小海さんが理由も無くこんな物音を立てるはずがない。
不審に思いながらベッドから降り、小海さんの部屋に向かう。
「小海さーん、大丈夫?」
しかし中から返事は無く、不気味なほどに静かだった。
引き穴に手を掛け、思いっきり引く。
「……っ!」
するとそこには小海さんがいるだろう場所にマシンピストルを向けてる奴がいて、俺の姿を見ると、
「この女が殺されたくなければ回れ右して帰れ」
と、すました顔で言い放った。が、
「それ
通常、自分に向けられているのであれば安全装置は見えないが、今回は小海さんに向けられていて、俺からみて左に向けられていたおかげで見えた。
「はっ、誰がそんな古典的な引っ掛けにかかるか」
「古典的な引っ掛けが事実だった、なんてこと、結構あるんだよねぇ」
安全装置が外れてないなら恐れる事は何もない。
俺は階段を駆け上がり、誘拐未遂犯に近づく。
犯人は引き金を引く。が、本当に外れてない為、弾は発射されなかった。
「なっ!」
「だから言ったでしょ」
犯人は急いでスライドを引き、引き金を引こうとするが、その前に犯人の股間を拳で思いっきり殴った。
「…………!」
「運が無かったね」
慢心ダメ。ゼッタイ。
声にならない悲鳴をあげ、男はうずくまった。
股間を押さえている手を無理矢理引きずり出して手錠を嵌める。
逃げられないように足にも手錠をして、相手の落とした銃を回収、安全装置をかけた。
横にいる小海さんを見ると、ベッドの上で寝ていた。どうやら俺が来る前までに眠らされていたらしい。
「なんかおとなしいと思ったら寝てたのね……。まあ、見られなくて良かったとは思うけど。……さて」
俺は未だ
さて、これからどうしようか。
とりあえず飯田さんに連絡かな。
ポッケからスマホを取り出し、飯田さんに電話を掛ける。
さすがにこの時間に東京駅には居ないだろうから、飯田さんの携帯に直接かける。
電話はすぐに繋がった。
『もしもしー?』
「あ、宗吾です。なんか小海さんを誘拐しに来た人らしき人を1人捕まえたんですが、如何しましょう」
『煮る一択で』
「分かりました。部位ごとに煮てくので時間はかかると思いますが、終わったら北海道から郵送するので待っててください。では」
『あーちょっと待ってちょっと待って!』
「さすがに冗談ですよ。で、どうすればいいんですか?」
『今どこら辺に居るの?』
「んーとですね……」
腕時計を見ると、郡山を出発して暫く経っていた。
「郡山出たところです。次は30分後に福島ですね」
『30分で間に合うかなぁ……。分かった。じゃあ、仙台で隊員を乗り込ませるから、身柄引き渡してくれる?』
「了解しました」
『あ、それと、1人で来てる可能性は少ないから、出来ればでいいんだけど犯人グループの情報も聞き出しといてくれる?』
「了解です」
『じゃあ、よろしくー』
犯人の情報を吐かせる、か。
どうやろっかなー、なんて考えながら電話を切ってポッケにしまう。
とりあえず、何かあるかもしれないので、男の体を色々触って調べる。
すると、ポッケに携帯、内ポケットに手帳とそこに挟まれている乗車券・指定券を見つけた。
指定券を見ると、この男が乗っていたのは5号車の様で、部屋は2人用B寝台だった。
これは後で車掌さんに人数確認するとして、
「とりあえず、色々ききたい事があるんだけど……」
と言いながら男の体をうつ伏せにし、逃げられないように押さえつけて質問を始める。
「目的は分かってるから話さなくていいや。後何人居るかとその場所、依頼主を教えて」
「はっ、誰がそんなこと話s……」
「93Rなんていい物持ってるじゃん。何処で手に入れたの?」
「…………」
「電動ガンは持ってるけど、実物は初めてみたなぁ」
わざと音を立てながら93Rを弄ぶ。
「ここが安全装置で?ここがセレクター?」
いろんなところをカチャカチャ弄って、最終的に安全装置をかけた状態で男の背中に突き立てた。
「で、何人居るの?」
「……お、俺含めて2人だ」
「依頼者は?」
「し、知らない。仲介屋から頼まれたんだ」
「ふうん。この銃、どっから持ってきたの?」
「こっちに来る直前にそこらへんからパクってきた」
「アテラはイタリアから近いからねぇ」
そう言いつつ、突きつける力を強くする。
「よく出来た回答だ。でも俺の望む回答じゃない。……最初からだ。人数は?」
男は観念したのか、スラスラと話し出した。
「……はぁ、降参だ。人数は本当に2人、依頼者はアテラの国務長官殿、銃の出処はそいつに渡されただけだ。これでいいか?」
「もう1人の場所は?」
「俺と同じ部屋だ」
「そう……」
聞きたい事は一通り聞き終った。
「あ、これは興味本意なんだけど、何でこの娘を誘拐しに来たの?」
「あとで人質にするつもりだった。ここらへんがお前らの部屋だってことは分かってたから、狙いやすそうなこいつを攫っただけ」
「ふーん」
これで聞きたい事は全部だ。
このまま2人目を捕まえに行くか?
いや、それは危ない。今回はたまたま運よく捕まえられたが、次もこう行くとは思えない。
2人目は福島の隊員さんに任せるとして、俺は真偽の確認をしよう。そうしよう。
そう考え、男の両手をベッドについてるパイプへ手錠でつなぎ、小海さんを俺のいた部屋へと移し、両方の部屋に鍵を掛けてから車掌室に向かった。
ちなみに、M93Rはその威力が高いせいで、公的機関からの要請がない限りはまず作られません。なので、そこらへんからパクってきたという誘拐犯の証言は嘘になります。このことから臼井君は犯人が嘘を言っていると確信を得ています。