RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~ 北長野総合車両所 作:元町湊
本編の方は次話投稿まで今しばらくお待ちください。
「まあ、まずは聞いてくれ。 ベルニナ。お前を誘拐しようとした犯人を捕まえる為に協力してくれ」
「…………え?」
ベルニナはきょとんとした表情になってしまった。
「僕を……誘拐……?」
「大丈夫。実行犯の1人は捕獲してあるし、もう1人は次の仙台で捕獲してもらう手筈になってる。ベルニナに協力して欲しいのは、真犯人を捕まえるのに協力して欲しい」
「「「真犯人?」」」
ベルニナと高山と小海さんの声が重なる。
「そう。真犯人」
「…………誰なの?」
「ブルアーさん」
「………………」
ベルニナは悲しそうに俯いてしまった。
「何か心当たりでもあったの?」
「いいや、でもね、これ」
と言ってベルニナが差し出したのはスマホだった。
画面にはあるニュースが表示されていた。
“地中海の国、アテラで交通事故! 帝王家族四人の安否不明!?”
「これもブルアーがやったのかな……」
「可能性としてはあります」
「そうだよね……」
と、ベルニナは落ち込んでいるようだったが、暫くすると、
「うん、うん。分かった。協力する。僕は真実が知りたい」
「ありがとう。じゃあ、行こうか。時間もないし」
「え、どこに……」
「どこにってそりゃあ」
真犯人のところですよ。
そう言って俺は鍵を開けた。
◇◆◇◆◇
部屋で待機中だった岩泉も連れ、9号車の1号室までやって来た。
部屋の扉をノックし、先程と同じように呼びかける。
「今度はなんだ…………っ!」
そうして出てきた男―――ブルアーさんは、扉の目の前にいる人物を見て目を見開いた。
「やあブルアー。今日明日は品川にいるはずの君がどうしてここにいるの?」
「で、殿下!?何故ここにっ!」
「だって僕はこれから北海道に行くんだ。札幌行きの列車に乗ってて何がおかしいのかな?」
「…………」
「ああ、もちろん冗談さ。そういう意味じゃないんでしょ?何で僕が生きてるのかって話でしょ?」
「…………」
「否定も肯定もなし、ねぇ。まあ、実行犯や宗吾、はるかから話は聞いてるから君が今更何かを言ったところで僕の考えは変わらないけど」
何も言わないブルアーさんを見て、落胆したようにハァとため息を吐くとこちらを向いて、
「暫定ではありますが、現ベルニナ帝王としてお約束いたします。
ブルアーは現時刻を以て罷免いたします。
そして、この件に関わった者は全て鉄道公安隊、及び日本政府に引き渡す事をお約束いたします」
「ありがとうございます。殿下」
ベルニナに対して変に恭しく礼をし、高山から手錠を借りてブルアーさんを拘束した。
これにて一件落着かな。まだ1人捕まってないけど。
時計を見れば、仙台到着まであと20分程だった。
すぐさまスマホを取り出し、飯田さんに連絡する。
「もしもし、飯田さんですか?」
『そうよー。捕獲できた?』
「ええ、何とかできました。これから身柄を10号車に移すので、仙台の公安隊には犯人は10号車と5号車の6号室に居ると伝えてください。但し、6号室では武装している可能性があることもあわせて伝えてください」
『了解。ごくろー様でした』
「ではまた明日東京駅で」
『ん。これから先も気を付けてね?』
「分かってますよ」
電話を切ってポッケにしまうと、一気に気が抜けた。
あー、もうお腹一杯。北斗星なんかいいや。帰りたい。あ、でも仕事か。いかんいかん。
そしてまた入れなおして、ブルアーさんを10号車に移送する。
◇◆◇◆◇
「そういえば仙台の到着のときって案内放送は無いんだっけ」
「そうだな。もうおやすみ放送も流れたみたいだし、そうなんだろう」
まもなく仙台に着くというのに放送が無く、ふと思い出した事を呟くと、高山が反応した。
今はブルアーさんと実行犯の1人が拘束されている部屋で2人の監視をしている。
ちなみに、岩泉と小海さんとベルニナはロイヤルの部屋で待機してもらっている。
「にしても凄いな、臼井は」
「ん?」
「だって、1人でここまでやったんだろ?」
「いや?車掌さん達も協力してくれたからここまで出来たんだよ」
車掌さん達の凄い記憶力が無ければ、さすがにここまでで解決するのは無理だっただろう。
「それでもさ、凄いよ。俺より班長代理向いてるんじゃないか?」
「そう?じゃあ飯田さんに相談して変えてもらう?」
「え?」
高山は一瞬嬉しそうな顔をした。だが、
「ははは、冗談だよ。飯田さんが高山にするって言ったんだ。警四の班長代理は高山しかいないんだよ」
「随分と飯田さんを信頼してるんだな」
「まあ、短い付き合いでもないしな」
なんて話をしていると、列車が減速しだし、そして仙台に到着した。
すこし待っていると、扉がノックされ、外から
「仙台広域鉄道公安室、第3班班長の左沢です。犯人2名を受け取りに来ました」
「あ、はい。今開けます」
扉を開けると、自分達と同じ制服を着た隊員さんが立っていた。
「お疲れ様です。東京中央鉄道公安室、第4警戒班の臼井です」
「同じく、第4警戒班班長代理の高山です」
「警戒班という事はOJTですか。まだ学生なのに凄いですね。……っと、では、犯人2人、確かに受け取りました」
というと左沢さんは部下の隊員さんにブルアーさんと誘拐犯を連れて行くよう命じ、自分はその場に残った。
「今別の班が4、5号車に同時に突入して犯人の確保に努めています。報告があるまでここに待機との命令なので」
と言って苦笑いをこちらに見せた。
暫くすると、左沢さんの無線からノイズが聞こえ、
『犯人1名確保』
「犯人1名確保、了解。……犯人は確保されました。それでは私は失礼します」
そう言って左沢さんは敬礼して通路を出口のほうに歩いていった。
俺達もそれを敬礼して見送る。
「さて、部屋に戻るか」
「そうだね」
と言って、それぞれの部屋に向かおうとしたところ、向こうから桜井が歩いてくるのが見えた。
「あ、臼井、高山!」
「あ、桜井。やっと来たか」
「そうなんだけど、どうしたの?今の人。公安隊の人よね」
「そうだよ。まあ、夜は長いし、これから全部話してあげるよ」
「なんかあったの?高山」
「まあ、色々とね」
「なによ、ハッキリしないわね。臼井、ちゃんと全部話しなさいよ?」
「分かってるって。だってそのほうが……」
「そのほうが、何よ」
「まあいいや。とりあえず2人とも俺の部屋に入りな」
「2人ともハッキリしないわね!」
なんて言いながら桜井と高山は俺の部屋に入る。
だっての続き?―――「だってそのほうがお前の悔しがる顔が見れるし」―――なんて、言える訳ないよね。
北斗星の分はこれでおしまいです。
次からは横川の話です。