RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~ 北長野総合車両所 作:元町湊
廃車になってる話が一番多いところです。
北斗星の事件から一週間くらい、俺達は各々の学校に戻されていた。
ある日。
プルルルルルルルルルル。プルルルルルルルルルル。
滅多にならないうちの電話が鳴った。
電話番号を見ると電話の主は、海外にいる親父のようだった。
「もしもし」
『おう宗吾か。元気にしてるか?』
「うん、まあね」
『そうかそうか、それはよかった。それより、今回電話した件だが』
「あーうん。どうしたの?」
『いやな?夏休み中はそっちに帰れることになったんだ。だから、その連絡』
「あー分かった」
『詳しい日程が決まったらまた連絡するから』
「うん」
『じゃあ、またな』
「はいよー、じゃあね。仕事頑張って」
電話が切れた。
そうか、親父が帰ってくるのか。会うのは久しぶりだな。
うちの親父は一年の内に1ヶ月も日本に居ないような人だ。
まあ、それだけ頑張っているということだが、たまにはゆっくり休んで欲しい。
そんなことを考えながら夕飯を作るためにキッチンに向かっていると、また電話が鳴った。
「もしもし」
『あ、そー君?』
「あ、飯田さん。どうしましたか?」
『明日っから研修再開のお知らせ』
「分かりました。異動は無いんですね?」
『無いよ~。またよろしくね~』
「こちらこそ」
といって電話を切る。
國鉄からの連絡はいつも急だ。
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次の日、つまり研修再開の日、仕事も無く、いつもより遅めの電車で行こうとしていた俺は、飯田さんに遅刻の電話をしていた。
その理由は、いつも使っている総武快速線で人身事故があり、快速線、緩行線共に運転見合わせだからだ。
しかも、発生したばっかりで、1時間は止まっていると思う。
こればっかりはどうしようもなく、気をつけて来てね~、と飯田さんから返事を貰った。
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1時間半後、快速線、緩行線共に運転再開となり、まず快速線の1番列車が市川駅に到着した。
113系15両で、当然の如く車内は満員。乗る余地は無い。
というわけで1本見逃し。
続いて2本目の電車は、217系20両だった。
やはりこの電車も満員で、乗れる余地は無かった。
続いて3本目の電車は、珍しいことに113系5両と、217系15両の混結だった。
ここに来てやっと乗れるような余裕があったので、迷わず乗る。
結局俺は、市川駅を1時間45分遅れて出発した。
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『まもなく、終点の東京です。中央線、山手線、京浜東北線、東海道線、東北本線と、各新幹線はお乗換えです。 本日は錦糸町駅での人身事故のため、列車大幅に遅れましたことをお詫び申し上げます。横須賀線の品川、横浜、鎌倉方面へお越しのお客様は、降りましたホームの向かい側に停車中の電車をご利用ください』
俺は東京駅に2時間遅れで到着した。
引き続き西を目指す人もそうでない人も、いっせいに電車を降り、各々の目的地に向かう。
俺も走って事務所へと向かう。
今は10時半くらい。もうとっくに仕事が始まっている時間だ。
俺は急いで事務所に入り、警四の活動場所の扉を開けた。
すると、中には高山と岩泉と飯田さんがいたが、何処かいつもと空気が違うような感じがした。
「飯田さん、おはようございます」
「あ、そー君。お疲れ様」
「で、どうしたんですか?この空気」
俺が小声で訊くと、飯田さんは、
「高山君と桜井さんが喧嘩して、ね」
「あー、はい。もう分かりました」
まあ、所詮いつもの喧嘩だ。気にすることは無いだろう。
「あ、そうだ、そー君。これ行く?」
と言って飯田さんが指差した先には“鉄道公安隊高度教育研修”の文字が。
うーん、正直を言えば、行きたくないんだけどな。
「飯田さん。これって全員参加型ですか?」
「いいえ、希望者だけよ」
「何やるんですか?」
「そー君は何やるか決まってないけど……何やる?私のほうから言っておくよ?」
「いえ、今回はいいです」
「わかった。そう言っておくわ」
それでその話は終わりになった。
その日の終礼で、参加者は東京駅に7時半に集合、新幹線で安中榛名に行くらしい。
俺は皆の研修中、東京駅でお留守番、ということになった。
終礼後、高山と桜井は目を合わせることなく帰宅。それを見て、俺と小海さんと岩泉は、やれやれと思っていた。
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翌日。
皆の見送りのために俺も東京駅に7時半に来ていた。
相変わらず高山と桜井の間の空気は激マズだ。
そんな中、上野方から新幹線が入線、掃除の後にドアが開いた。
大湊室長に、行ってらっしゃいと言われ、高山たちは新幹線に乗り込んだ。
席はホームとは反対のようで、それ以降皆の姿は見れなかった。
大湊室長は、仕事があると言い、出発前にホームから降りたが、俺と飯田さんは、新幹線が見えなくなるまでホームに残っていた。
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警四の部屋に戻ってきたところで、今日からの仕事が言い渡された。
「今日からは駅構内の警戒任務が主な仕事ね。あ、そうだ。あと、みんなが研修中に、他の駅からOJTの子が来るから。仲良くしてね?」
「どこから来るんです?」
「どこだったかな?たぶんもうすぐ来るよ」
へー、どんな人が来るんでしょうかね?
と、そのとき、警四の部屋の扉が開き、そこから声が聞こえた。
「失礼します」
「はいどーぞ」
飯田さんの返事を聞くと、応援の人は中まで入ってきた。
俺は、その子に見覚えがあった。
「応援って氷見だったのか」
白銀の短い髪のその子は、名前を氷見文絵という。
氷見とは研修のときにちょっとだけ関わりがあったのだ。
「む、臼井か」
「2人とも知り合いなの?」
「研修のときに色々ありまして」
「そうなの。じゃあ、自己紹介は私だけでいいのね。
私はここ、東京中央鉄道公安室、第四警戒班の班長の飯田です。よろしくね~?」
飯田さんは、最初に俺らに自己紹介したように、氷見にも同じようにやった。
「で、今日の仕事内容だけど、まずは構内を覚えるって意味で駅構内の巡回警備ね。そー君、よろしく」
「はいはい。分かりました。 んじゃ氷見、行くぞ」
「あ、ああ」
「行ってらっしゃーい」
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「ここでは互いをあだ名で呼ぶのか?」
公安室を出てすぐ氷見が聞いてきた。
「そんなことないぞ」
「ではどうして飯田班長は……」
「ああ、うちの義姉の同期で今も昔も家によく来るんだ。それでだ」
「そうなのか。 あと、警四のメンバーは飯田班長とお前だけなのか?」
「いんや。あと4人いる。今は高度研修ってやつに行ってるが」
「そうか。なんでお前は行かなかったんだ?」
「その研修ってのが、公安隊として受けるやつらしくてな、俺は公安隊になるつもりなんて1mmたりともないから行かなかった」
「そうか」
それ以降、氷見は何も聞いてこなかった。
適度に説明、時には裏道の説明をしながら駅構内を巡回した。