機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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閑話のような話です。

そして今回、原作キャラが二名登場。
一人の出番は、随分先ですけどね。

こんな感じ?って気持ちで書きました。
口調が違っていたら申し訳ないです。



Mission - 8 それぞれの時間

エンデュミオン・クレーターへの攻撃部隊は、無事グリマルディから帰還した。だが、行きよりも数が減ってしまったというのが現実だった。宇宙で散った同胞に遺体があるはずもなく、遺体が無い状態での帰国となってしまうのだった。

 

作戦に参加した部隊には等しく休暇が与えられ、それぞれの時間を過ごしていた。

 

 

 

レオハルト・リベラントの場合

休暇一日目 夕 アプリリウス市内

 

レオハルトは休暇の時でも、数時間のMSシミュレータ訓練とトレーニングは欠かすことは無い。この習慣が、今のレオハルトの強さを作っていると言っても過言ではない。

 

レオハルトは備え付けのシャワールームで汗を流すと、建物の外へと向かう。その時、レオハルトは前から歩いてくる人物を見て歩みを止めた。

 

「おや、君は」

「初めてお目にかかります、バルトフェルド隊長。レオハルト・リベラントです」

「君が、レオハルト・リベラント君か。噂は聞いているよ。【グリマルディ戦線】では活躍したそうじゃない」

 

五月三〇日に【ZAFT】は、地中海沿岸から侵攻。当初は【スエズ攻防戦】と呼ばれていたが、戦場となったエル・アラメインから【エル・アラメイン会戦】と呼ばれるようになった。この男、アンドリュー・バルトフェルドはこの戦闘を勝利に導いた人物である。

 

この戦闘でバルトフェルドはバクゥの機動性で勝利。以後、アフリカ南部への侵攻も計画されている。

 

「【エル・アラメイン会戦】で勝利を勝ち取った、バルトフェルド隊長ほどではありません」

「褒めてくれるのは嬉しいけどねぇ……。あちらさんにも中々の人間がいたみたいで、バクゥが無かったら負けてたよ」

 

【エル・アラメイン】にてバルトフェルドと対峙したのは、地球連合軍ユーラシア連邦所属モーガン・シュバリエ。通称、【月下の狂犬】。その名の由来は、月下は夜間戦闘を得意とすることから、狂犬は立案する作戦が周囲から見たら無茶なものばかりだったからである。

 

それでもその実力は確かなものであり、彼は圧倒的物量とリニアガン・タンク部隊の機動性で当初はマーチン・ダコスタ率いるザウート部隊を翻弄していた。

 

だが、その状況もバルトフェルド率いるバクゥ部隊の出現によって一変する。バルトフェルドの奇策とバクゥの活躍によりモーガンの部隊を粉砕。見事に勝利を勝ち取っている。

 

ちなみに、この戦闘をきっかけに付けられたバルトフェルドの異名である【砂漠の虎】。これは戦意高揚のために付けられて流布されており、一般の間でも多く知れ渡っている。

 

「だから、機体のお陰で勝った僕としては、君の方が上だと思うんだけどね」

「光栄です。ですが、私よりクルーゼ隊長の方が上かと」

「うーん、クルーゼねぇ……。嫌いなんだよねぇ、僕」

 

今まで陽気な雰囲気で話していたバルトフェルドの表情が真剣なものに変わると、顎に手をやりながらバルトフェルドは苦笑する。

 

「実力は確かだと思うよ、僕も。でも、あの仮面がねぇ。何かしらの理由があるとは思うんだけど、僕にはポリシーがあってね。目を見せない奴は信用できないんだよ」

「なるほど。知り合ったばかりの方はそうかもしれませんね」

「おっと、ごめんね。君は、クルーゼとは親しいんだったね」

「いえ、お気になさらないで下さい。仰ることもわかりますので」

「いやー、君は真面目でイイねぇ。皮肉屋のクルーゼとは大違い」

 

真面目な表情はあっという間に消えると、バルトフェルドは再び陽気な笑顔を見せながらレオハルトの肩を叩いた。

 

「さて、それじゃあ僕は失礼するよ。また会えるといいね」

「平和な時にお会いしたいですね」

「同感だね。その時は、僕特製のコーヒーをご馳走するよ」

「楽しみにしています」

 

バルトフェルドと別れると、レオハルトはエレカを走らせる。向かった先は花屋。花束を購入すると、再びエレカを走らせる。

 

着いた先は墓地。レオハルトは花束を抱え、一つの墓地の前に立つ。以前訪れたのは国葬の後、クルーゼと来た時だった。

 

墓地には、フィシアの名が刻まれている。レオハルトは膝を曲げ花を手向けると、墓地に向かって敬礼をする。

 

「……」

 

言葉をかけるわけでも無く、墓石から視線を外さず不動の状態で敬礼をするレオハルト。一〇秒ほど敬礼をすると、レオハルトは踵を返した。

 

途中、買い物を済ませてレオハルトは自宅へと帰った。

 

その夜、レオハルトは一人グラスを傾けていた。普段、酒を飲まないレオハルトが晩酌をしているのは、先日の戦闘で散った同胞のためである。

 

あの大きな爆発に巻き込まれ、同じハルング隊の仲間が二人戦死した。二人とはクルーゼ同様、パイロット養成課程時代からの知り合いである。そして彼らは、よく酒を好んで飲んでいた。

 

二日酔いで訓練に参加して、教官によく怒鳴られていたこともある。だが、そんな彼らもついに命を落とした。友を悼むため、レオハルトは普段は飲まない酒を購入し、一人酒を飲み続ける。

 

「……」

 

レオハルトの視線の先には、卒業の時に撮った写真が飾られている。写真にはまだ仮面を付ける前のクルーゼ、フィシア。そして戦死した、レーンとウェードの二人。他にも、数人の仲間たちが映っている。

 

すでに、写真に映る者の三分の一ほどが命を落としている。レオハルトとて分かっている。理解もしている。だが、納得はしていない。感情と理屈は別なのだ。

 

「割り切れないな、やはり……」

 

レオハルトが普段は見せることのない脆さ。どれだけ大きな戦果を挙げようと、どれだけ多くの敵を討とうと、決して晴れることのない感情。

 

グリマルディで垣間見えた、【ブルーコスモス】への憎悪。奥底に封じていた感情が、奴らと対峙したことで溢れ出てしまった。そしてその感情のまま、MSを操り敵を討った。

 

どんなに考えたところで気分が晴れることは無く、レオハルトはウイスキーを呷った。レオハルトは電気スタンドの明かりを頼りに、静脈認証型のPCを起動させる。

 

画面に映し出されたのは、レオハルトが独自に設計した新型MS。シグーやジンHMの技術を取り込んだものである。

 

だが、レオハルトはMS設計の専門家というわけではない。これを専門の人間が見れば、無理だと言う箇所も多いだろう。だが、データ上ではシグー以上の性能を秘めていると思われる。レオハルトはもう少し内容を詰めた後、これを上に提出しようと考えている。

 

技術は停滞してはいけない。連合が、破損したジンなどを持ち帰って調べていることは周知の事実。いずれ、連合もMSを開発して実戦投入してくることは目に見えている。

 

戦争の敗北は、【プラント】の死を意味する。【ブルーコスモス】が、コーディネイターを生かしておくはずが無い。それを防ぐためにも、さらに上を目指さなければいけない。

 

MSの名はユピテル。スラスター等の推進機関はジンHMの強化版を搭載し、武装については実現できるかは別として新型を装備。レオハルトはこのMS開発が進めば、次世代の主力機になる性能を持っていると確信していた。

 

レオハルトはグラスを傾けながら、ユピテルの最後の詰めの作業に入るのだった。

 

 

 

ラウ・ル・クルーゼの場合

休暇三日目夜 某所

 

夜、クルーゼはエレカを走らせある場所に向かっていた。到着したのは、一軒の家。クルーゼはエレカを停車すると、家のインターフォンを押した。

 

「やあ、久し振りだね。さあ、入ってくれ」

 

中から現れたのは、三〇代ほどの男だった。黒い長髪にオレンジの瞳。微笑を浮かべながらクルーゼを出迎えると、男はクルーゼを自宅の中へと招き入れた。

 

「こんな時間にすまない。立場上、休暇でもやることが多くてな」

「構わないよ。隊長である君のことだからね」

 

クルーゼはソファーに腰を下ろすと、男はクルーゼの前にバーボンの入ったグラスを置いた。同様に自分もグラスを手にして、クルーゼの対面に座った。

 

「チェスでもどうだい?」

「フッ、いいだろう」

 

男は準備しておいたチェス台を置くと、二人は駒を台に並べていく。準備が終わると、勝負はクルーゼから始まる。

 

「レイは元気かね?」

「ああ、元気だとも。もっとも、君に会えなくて寂しがっていたのを除けばだがね。起こすかね?」

「ふむ……。これでいこう。構わんよ。明日、改めてまた来るさ。サプライズというやつだな」

 

勝負は進んで行きクルーゼはわずかに思案した後、ナイトを動かし男のクイーンをチェス台から退場させる。

 

「おっと、それは少々痛いね」

「顔はそう言ってないようだが?」

「そうかい?」

 

男はクルーゼの言葉にそう返すと、グラスを呷った。男はクルーゼの空になったグラスを見ると、立ち上がりボトルを手にして戻って来た。ボトルに入ったバーボンを自分とクルーゼのグラスに注ぐと、再びチェスに集中する。

 

「そういえば、先日の戦闘では大きな戦果を挙げたようだね」

「そうでもないさ。上には上がいるさ」

「君の友人の、レオハルト・リベラント君かね?」

 

男のその言葉に、クルーゼの駒へと伸ばした手が止まる。だが、それは一瞬。すぐに止めていた手を動かし、ビショップを右斜め上に前進させる。

 

クルーゼの手が一瞬止めたのを理解しているのか否か。それは分からないが、男は笑みを浮かべる。そんな男にクルーゼは一瞥をくれた後、グラスへと手を伸ばした。

 

「彼は有名人じゃないか。その容姿は言うまでもなく、何より実力の面で」

「では、彼に会ったら伝えておこう」

「ぜひ、会いたいね」

 

依然として笑みを浮かべながらの男の言葉に、クルーゼは口を開かない。クルーゼはグラスに残ったバーボンを一気に呷ると、クィーンを手にして前進させた。

 

「チェックメイト」

「……」

「……私の勝ちだな」

「そのようだね。やれやれ、初めて負けたよ」

 

男はやれやれとかぶりを振るのを見て、クルーゼは立ち上がった。

 

「さて、そろそろ私は失礼しよう」

「おや、そうかね?」

「ああ。……それで、“例のモノ”は?」

 

クルーゼのその言葉に男はポケットへと手を伸ばすと、取り出した物をクルーゼへと渡した。クルーゼが受け取ったのは、透明の四角いケース。中には白と青の錠剤が入っていた。

 

「いつもすまない」

「構わないよ。君に何かあったら、レイが悲しむ。無論、私もね」

「レイを預かってくれていることも感謝しているさ。私が戦場にいる時は、レイ一人では心配だからな」

 

クルーゼは受け取ったケースをポケットへと仕舞うと、帰宅するため玄関へと歩いて行く。クルーゼを見送るため、男もその後ろを歩く。

 

「心配性だね。血、ということかな?」

「……」

「おっと、失言だったね」

「……では、失礼する」

 

クルーゼは来た時と同様、エレカを走らせる。その表情は仮面で見ることは出来ないが、露出している口元部分には怒りが滲んでいた。

 

「……タヌキめ。油断ならん男だ」

 

エレカの中でクルーゼは、先程まで会っていた男に向けて悪態を吐く。クルーゼは以前から思っていた。腹に一物ある、油断ならない男だと。クルーゼは改めて、あの男は信用できない男だと言うことを再認識した。

 

「……だが、“コレ”もある。ふん、奴とは長い付き合いになりそうだ。……ギルバート・デュランダル」

 

 

 

パトリック・ザラの場合

【最高評議会】議事堂 国防委員長執務室

 

「では、そういうことでお願いします」

「ああ」

 

青緑服(文官)と紫服(武官)を着た二人の男は最後にそう言い残すと踵を返した。ドア付近で頭を下げると、部屋を退出した。二人が退出すると、パトリックは小さく溜め息を吐いた。

 

「……くだらん」

 

パトリックがそう呟いた時、再び部屋の扉が開いた。入って来たのは、シーゲル・クライン。現最高評議会議長を務める人物であり、温厚な性格として議会では穏健派として知られている。

 

「……シーゲル」

「パトリック、誰か来ていたようだな」

「ああ。意見の陳情書を持ってきた。丁度いい。見せに行こうと思っていたところだ」

「陳情書?」

 

パトリックは近付いてきたシーゲルに男たちが置いていった陳情書を手渡すと、それを見たシーゲルは顔を顰めた。

 

「……理由は何だ」

「これだ」

「これは?」

 

シーゲルは持っていた資料をデスクに置くと、パトリックが取り出した資料を受け取った。資料は見る者への配慮がなされており、非常に見やすいものだった。

 

「【ZAFT】の次世代主力機開発計画書だ。それを持ってきたのは、リベラントだ」

「なるほど。パイロットである彼が、これほどの物を……。稀有な才能だな」

「しかも、その設計図と資料を見た設計局の連中が絶賛したのだ。だから、それが来たのだ」

 

そう言ってパトリックは、シーゲルが置いた資料を指差した。

 

パイロットとしてもこれまでの戦闘で大きな戦果を挙げながら、MS設計にも今回大きく貢献したレオハルト。その事実に、シーゲルは感嘆の声を上げる。

 

「……なるほど、そういうことか」

「【世界樹】での戦闘の後、奴を昇進させなかったことについて一部の議員から不満が出ている。奴ではなく、何故クルーゼなのだと。そこに来て、今回の計画書が設計局に絶賛されたことが拍車をかけている」

 

クルーゼが味方の前でも仮面を付けていると言う不信感、さらには皮肉屋の性格。これらのことから、クルーゼのことをよく思っていない人間は多い。一つ一つは小さくても、積もり重なれば大きなものとなる。この考えは、文官の中にも多数見られる。

 

「なるほどな。本人が辞退したが故の、クルーゼの昇進なのだがな」

「そんなこと、奴らには関係あるまい。クルーゼが昇進したこと自体、気に入らんのだから」

「仲間だというのに、情けないことだ」

 

シーゲルは長々とつづられている陳情書を見ながら、溜め息を吐いた。シーゲルの言葉通り、仲間内でそんなことを言っているとは情けないことである。

 

コーディネイターはその数が少ない。だからこそ、有能な人間が昇進していくのは自明の理。これが数の多い連合ならば、埋もれてしまう可能性もあるかもしれない。だが、数が少ないからこそ人材の発掘が容易というのは利点だろう。

 

「そこで私は、新たに部隊を新設することにした」

「部隊を?だが、新たに部隊を新設するほどの人員はいないはずだ」

「そのとおりだ。人員が少ないのならば、単独で行動すればいいだけのこと。単独で行動できるだけの実力と、緊急時には指揮も出来る人間のみで構成する」

「緊急時には指揮をということは、権限も持たせるということか?」

「ああ。いざという時には、現地の司令官・隊長への命令も可能にするだけの権限を持たせる」

 

司令官は一つの基地を指揮する人間、隊長は一つの部隊を指揮する人間。これら二つの役職への命令権限を持つということは現場レベルでは最高権力者ということになり、非常に高い権限を有していると言える。

 

「これは以前から考えていた案だ。創設が早まっただけのこと。丁度良いだろう」

「なるほど。それならば、不満に思っている奴も満足するだろう。部隊名は?」

「特務隊【FAITH】。所属は、国防委員会直属にする。実質的に命令可能なのは、私かシーゲル。どちらかだ」

「やれやれ、また仕事が増えるな。手続きに議会の承認。やることは多いな」

 

最高評議会議長と国防委員長という重責を担う二人。その仕事量たるや、相当なものだろう。それでも、【プラント】が生き残るためには必要なことであり重要な責務である。

 

「それで、シーゲル。何の用だ」

「そうだったな。今夜の約束、忘れていないだろうな」

「……そんなことを言いに来たのか?ちゃんと覚えている」

「ならば構わんさ。私は先に行っているぞ」

「ああ」

 

今夜の約束とは、単純に食事である。クライン一家とザラ一家の。パトリックの息子は現在、未来の【ZAFT】を支える人間を育成する士官学校(アカデミー)に通っている。

 

だが、士官学校(アカデミー)には月一で休みがある。それが偶然、今日なのだ。両者の息子と娘は婚約者の関係にあり、せっかくだから一緒に食事でも、という話になったのだ。

 

シーゲルが部屋を後にすると、パトリックは革製の椅子に大きくもたれる。自然と視線は、写真立てへと向けられる。写真にはまだ幼い日の息子と、【血のバレンタイン】で命を落とした妻が映っている。

 

パトリックは身体を起こすと、残った仕事へと手を伸ばすのだった。彼もまた、久し振りの息子との再会を楽しみにしていた。何故なら、その口元にはわずかに笑みが浮かんでいたのだから。

 




お待たせしましたと言うべきなのでしょうか。
ようやく、次回から本編に突入します。

本編も多少は見ながら進めるつもりなのですが、DVDを借りなければいけないのが面倒。
Vitaだと、まともに動画も見れないし。それとも私だけか?
YouTubeにも無かったから、やっぱり借りるしか無いですね。

購入も考えましたけど、高かった……。
マジです。

それでは、次回の更新をお楽しみに。
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