機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
ついに原作突入です。
そして原作に入るということで、皆さんに先に申し上げておきます。
原作と変更点が無いところは省略します。同じところをグダグダと書いても意味ないので。
変更した箇所の関係上、書かないとマズイという時は例外です。
なので、読んでいると「原作と違くね?」というところがあるかもしれませんが、失敗ではない。……はずです。
私が変更したのかなということで納得できない場合は、感想でもメッセでも構いませんので、質問してください。
……まあ、ノリで書いてる部分もあるので、ちゃんとした回答が出来るかは不明です。
では、本編をどうぞ。
Mission - 9 偽られた平和
1月25日 L3宙域 【ZAFT】所属艦ヴェサリウス艦橋
「さて、諸君。我々がこんなところにいるのは他でもない。信じ難い情報を得たからだ」
【ZAFT】でもトップクラスの実力を誇る男、ラウ・ル・クルーゼ。この男が率いる部隊はエリート部隊として知られ、構成される人員も優秀なもので構成されている。
クルーゼは無重力状態の艦内で艦橋を浮遊しながら、正面に居る少年たちに声をかける。彼らは一ヶ月ほど前、
「ここから先にある中立国オーブの資源衛星【ヘリオポリス】にて、連合の新型機動兵器が開発されているとのことだ」
「まさか、ナチュラルにそんな技術が……」
「クルーゼ隊長。その情報の信用性と出所はどこでしょうか」
クルーゼの言葉に一番に反応したのは、オレンジの髪が印象的なラスティ・マッケンジー。
続いて、クルーゼに質問を投げかけたのはキッチリと切り揃えられた銀色の髪が特徴的なイザーク・ジュール。
「もっともな疑問だな、イザーク。情報提供者は二人だ。一人は【ヘリオポリス】に居住している、情報屋のケナフ・ルキーニというナチュラルの男だ」
「ナチュラル!?」
「隊長!ナチュラルからの情報を信用されるのですか!!」
「落ち着いてください、イザーク。最後まで隊長の話を聞きましょう」
クルーゼのナチュラルという言葉に反応したのは、ディアッカ・エルスマン。彫りの深い顔と褐色の肌をした少年である。
そしてクルーゼに噛み付いたのは、やはり激昂しやすい傾向にあるイザークだった。だが、一人の少年がイザークを諌めた。
癖っ毛のような緑色の髪と幼いを顔立ちをした少年、ニコル・アマルフィである。
「ニコルの言うとおりだ。最後まで話は聞きたまえ、イザーク」
「……申し訳ありません」
不満げな表情をしながらも、クルーゼにそう言われては何も言い返すことは出来ずイザークはおとなしく引き下がった。口元に笑みを浮かべると、クルーゼはもう一人の情報提供者の名前を口にした。
「もう一人は、レオハルト・リベラントだ」
「なっ!?」
「マジかよ……」
「!?」
イザークの驚愕の声と、ディアッカの信じられないと言うような声、そしてニコルの息を吞む姿だった。そんな彼らの反応に気を良くしたのか、クルーゼの笑みは一層深くなった。
「そう。ザラ国防委員長が直々に創設を宣言した特務隊【FAITH】に、創設と同時に同部隊への昇進が決定したエリートパイロットだ」
「何故、リベラント隊長が……」
「知る者は少ないが、彼はハッキングが得意でね。連合のメインコンピュータにハッキングを掛けたそうだ。全容を知ることは出来なかったが、開発が【ヘリオポリス】で進められていることだけは掴んだらしい」
クルーゼは艦橋の天井を押して床に足を付けて立つと、仮面のズレを修正する。対して、彼らは驚きから絶句している様子だった。
だが、その中でただ一人、それほど驚いていない様子の少年が居た。その様子を見たクルーゼは、少年へと視線を向ける。
「アスラン。君はあまり驚いていないようだね」
「はい。私はリベラント隊長とは少々縁があり、いろいろと話をさせて頂きましたので」
クルーゼの問いに答えたのは、アスラン・ザラ。
だが、驚くべきは彼の出自である。彼は【プラント】国防委員長パトリック・ザラの実子なのである。そのせいか周囲からいろいろと言われることもあったが、努力によって首席という結果を勝ち取った。
「ほぉ……」
「? 何か?」
「彼は自分のことをあまり話さないのだよ。彼がハッキングを得意としていることを知っているのは、数える程度だ。彼が自分のことを話したと言うことは、君のことを気に入ったということだろう」
「そう、ですか……」
レオハルト・リベラントという人物は、アスランたちのような若い者たちにとっては雲の上の存在と言っても過言ではない。それほどまでに彼の残した功績と、【FAITH】への加入というのは非常に大きい意味を持っているのだ。
クルーゼから初めて知る事実を言われ、アスランの頬がわずかに緩む。その顔を見咎めたイザークの顔は、アスランとは対照的に歪んだ。
「話を戻そう。私が最も信頼する友からそんな話を聞けば、信じないわけにはいくまい。彼からそんな話を聞けば、この写真の信憑性も増すというものだ」
そう言うと、クルーゼは胸ポケットから写真を取り出すと、宙域図が表示されている台に置いた。
「これは……!」
「おいおい……」
写真には灰色の機体がハッキリと写っていた。写真に写っているのは、まぎれもなく【ZAFT】が主力とするMSだった。
クルーゼとて、この写真を入手した時は疑っていた。だが、そこにレオハルトからの情報を聞いたことで写真に映る存在を信じることにした。
「しかも、奴らはMSだけでなく艦まで製造しているとのことだ。これほどの兵器、見逃すわけにはいかん。MSは奪取し、艦は爆破する」
「はっ!」
「作戦の説明に入る。諸君、まずはこれを見てくれ」
先程まで宙域図の映し出されていた台に、何かの内部構造らしきものが映し出された。
「隊長、これは……」
「これは、【ヘリオポリス】工廠の構造図だ」
「どうやってこんなものを……」
「我が友に不可能は無いということだ。諸君らはここから侵入。センサーがあるが、時間になると解除される。その先には恐らく、新造艦があると思われる。艦に爆薬を設置後、奥に進め。新型は五機ある。うち二機の場所は分かっている。ここだ。だが、残り三機の居場所が分からない」
クルーゼは不敵な笑みを浮かべると、図を指でなぞりながら説明をしていく。クルーゼの説明を、全員が真剣な面持ちで聞き入る。
「では、どうしますか」
「新型の奪取は赤服の諸君に任せる。二人は、場所が分かっている二機の奪取に向かえ。残りの三人は高台で移動する新型を探せ。それに先んじて、ジンに突入させる。すると、奴らの取る行動は自ずと見えてくる」
「誘き出すということですね」
「そのとおりだ、イザーク」
ニヤリという笑みを浮かべるイザークに、クルーゼも同様の笑みで返す。だが、クルーゼの作戦にニコルは不安そうな顔をしていた。
「作戦通りに行くでしょうか」
「行くさ。ナチュラルなんて、単純なものだからな」
ニコルの言葉に、隣に立っていたディアッカが陽気な口調で答える。新型の詳しい場所が分からない以上、誘き出させるしか手は無い。手当たり次第に行く時間は無いのだ。
「二機の奪取には……そうだな。アスラン、ラスティ。君たちに任せる。残りの三機は、イザーク、ディアッカ、ニコル。任せたぞ」
「はっ!」
「他の者はサポートに回れ。では、作戦に移る。作戦開始時刻は、二時間後だ」
クルーゼのその言葉を最後に、一斉に少年たちは艦橋を後にする。
それから間もなくして、赤服の少年たちを乗せた二隻の小型艇がナスカ級から吐き出された。小型艇はゆっくりとした速度で、モニターに映る中立とは名ばかりのコロニーへ。
クルーゼはモニターに映る【ヘリオポリス】から視線を外すと、床を蹴り自らの席へと戻っていく。その途中に見えたのは、難しい顔をする黒服の男の姿だった。
「そう難しい顔をするな、アデス」
「はぁ……。いえ、しかし……」
クルーゼが話しかけたのは、フレデリック・アデス。黒服を着ていることからも分かるように、ヴェサリウスの艦長を務めている。さらに、【グリマルディ戦線】にも出撃するなど経験豊富な人間である。
「評議会からの返答を待ってからでも遅くは「遅いな」……」
「私の勘がそう告げている。ここで潰さねばその代償、いずれ我らの命で支払わねばならなくなるぞ」
クルーゼはアデスの言葉を遮ってそう言うと、クルーゼらがここに来るきっかけとなった写真をアデスへと投げた。
アデスの言葉通り、今回の作戦への正式な許可は下りていない。この作戦に賛成しているのは、パトリックを始めとした強硬派の人間。そして、一部の議員からは条件付きで賛成。だが、残りの人間は断固反対を主張しているため、評議会からの返答待ちという状況である。
だが、クルーゼは評議会からの返答を待つことなく作戦を決行しようとしている。それは長年前線に立ち続けた者に生まれた勘ということなのか。アデスの表情は晴れることは無い。
「……」
「だが、私とてギリギリまでは待つつもりだ。それまでに返事が来なければ、私の判断でやらせてもらうさ」
クルーゼはアデスに最後にそう言うと、脚を組み頬杖をつく。漆黒の宇宙を眺めながら、クルーゼは笑みを浮かべた。
「……さて、我が友は上手くやってくれるかな」
一週間前
アプリリウス市議事堂 議長執務室
レオハルトは早朝から議事堂にやって来ると、急ぎ足で議長執務室に向かっていた。レオハルトの左胸には、羽根を模った徽章が光を放っていた。
これは、ある部隊に所属していることを示している。それは去年の年の終わりにパトリック・ザラによって発表された、部隊の新設宣言。
部隊名、特務隊【FAITH】。通称、【FAITH】。戦績・人格共に著しく高く、議長や国防委員長の指名のみで選抜される超エリート部隊。
彼、レオハルト・リベラントは部隊が創設されたと同時に、議長であるシーゲル・国防委員長であるパトリック両者の承認を以って【FAITH】への昇進が決定。【ZAFT】でも随一のエリートパイロットである。
現在では【ZAFT】でその名を知らない者はゼロと言っても過言ではない。つい最近までは設計局の人間と一緒にMS開発に力を注いでいたのだが、現在は行き詰まっている状況である。
そんなレオハルトは今日、久し振りに議事堂を訪れている。その理由は、レオハルトが脇に抱えている資料にある。
すでにレオハルトが訪れることは知らせてあるため、レオハルトは議長執務室の扉を数度ノックする。
「入りたまえ」
中からシーゲルの声が聞こえて来ると、レオハルトは扉を開けて入室する。すると、驚いたことに中にはパトリックの姿と、見覚えのある金髪で白服の後ろ姿があった。
「失礼します。特務隊、レオハルト・リベラントです」
レオハルトの入室の挨拶に反応して、背を向けていたパトリックと白服姿の人物が振り返る。予想通り、白服はレオハルトの友であるラウ・ル・クルーゼだった。
パトリックはレオハルトが突然来たことに不思議そうに顔を歪め、クルーゼは仮面の下で笑みを浮かべた。
「来たか。どうかしたのかね?急用ということだったが」
「はい。至急、見て頂きたい物が。ザラ委員長も是非ご覧になってください」
レオハルトの固い表情を見て、付き合いの長いクルーゼだけでなくシーゲルやパトリックの表情も固くなる。
「リベラント君、この資料は?」
「私が連合のメインコンピュータにハッキングを仕掛けた際、驚くべき計画が進んでいることが分かりました」
レオハルトは持参した資料をシーゲルに渡すと、シーゲルの表情が見る見るうちに変化していく。読み終わると、シーゲルは資料をパトリックへと手渡した。パトリックもシーゲル同様、表情が険しいものに変わる。
「連合の新型機動兵器……。厄介なことだ……」
「バカな!奴らにそんな技術があるはずが!」
「確かに、連合にはありません。ですが、あの国なら。オーブなら別です」
レオハルトの発した【オーブ】という単語に、三人の表情がより一層険しくなる。
正式名称は【オーブ連合首長国】。南太平洋のソロモン諸島に位置し、大小様々な島から構成される島国である。この国はC.E.七〇年二月八日に国のトップである代表首長ウズミ・ナラ・アスハによって中立宣言がされたことにより、中立国家となっている。
その中立国家の国が、連合の新型兵器の開発に手を貸しているとなれば大問題である。
「そんなバカな……。【オーブ】は中立国家だ。まさか、連合の新型を【オーブ】所属の資源衛星で開発されているなど……」
「【オーブ】も一枚岩ではないということでしょう。レオの話が本当だとすれば、私が得た情報にも信憑性が増すのでは?」
「何の話だ、ラウ」
「これだよ」
そう言うと、クルーゼはデスクに置かれていた写真を指差した。レオハルトはシーゲルやパトリックに一声掛けた後、写真を手にした。
「……情報が早いな、ラウ」
「私にも多少の情報網はあるのでね。その筋からの情報だよ」
「なるほど。クライン議長、ザラ委員長。どうなさいますか」
レオハルトはクルーゼから視線を外し、シーゲルとパトリックへと視線を移す。だが、レオハルトの問いに対する反応は鈍いものだった。
だが、その反応も当然と言える。相手は中立国。連合に新型兵器の開発協力をしているとはいえ、表向きには中立。そんな国の資源衛星に突然攻撃を仕掛ければ、非難を浴びることは目に見えている。
かといって、今回の一件を指摘したところで【オーブ】政府はシラを切ることだろう。レオハルトが調べた情報はハッキングという違法行為。クルーゼの写真にしても、合成だと言われてしまえばそれまでである。
「どうする、シーゲル」
「圧力しか無いだろうな。だが、それもどこまで通用するか……」
シーゲルは眉間を押さえながら答えると、同様にパトリックの眉間にも皺が寄っていた。これは政治的に非常に難しいと言わざるを得ない。
そんな中、レオハルトが静かに口を開いた。
「では、万が一の場合はどうしますか?」
「!」
「どういう意味だ、リベラント」
「私が調べた限りでは、奴らはOSに手こずっているようです。ですが、それも時間が解決するでしょう。我々のアドバンテージは、MSを利用しているという点です。それが崩れるとあれば、戦況にも大きく関係します」
現在、連合と【プラント】が互角に戦っているのは、MSのお陰と行っても過言ではない。だが、それも連合がMSを実戦に投入したとなれば、戦況は変化するだろう。
数で勝る連合に広くMSが普及すれば最悪の場合数で押し切られ、【プラント】が敗北する可能性も考えられる。それは、コーディネイターの全滅を意味する。
「……貴様の言うとおりだ。万が一の場合は、強硬手段に出る」
「パトリック!?」
「中立であるはずの国が連合に協力しているのだ。コロニーや民間人に被害を出さなければ、大きな問題にはなるまい」
「評議会が認めるとは思えん」
「フン!そんな呑気な連中には、状況を分からせてやる他あるまい」
パトリックは鼻息荒くシーゲルの言葉にそう返すと、シーゲルは小さく溜め息を吐いた。
「……わかった。二人の言うことも一理ある。議会を納得させるしかあるまい」
「クルーゼ。強硬手段に出る場合は、貴様の部隊を使う。いつでも出撃出来るようにしておけ」
「はっ!」
「リベラント君、君も来たまえ。前線に立つ人間の意見が、一番分かり易いだろう」
「了解しました」
去り際に二人にそう言い残すと、シーゲルとパトリックは急ぎ足で部屋を出ていった。二人を見送ると、レオハルトとクルーゼも部屋を後にした。
「さて、私はこれで失礼する。部隊を召集しなければいけない。何とか作戦を承認させてくれ」
「最善は尽くす」
「期待しているよ」
二人は別れると、クルーゼは万が一の時のために。レオハルトは議会の承認を得るため、シーゲルたちの後を追うのだった。
そして、現在。
アプリリウス市議事堂 最高評議会議会室
一週間前から毎日続けられている最高評議会議員による会議。会議の議題は勿論、ヘリオポリスで開発中の新型機動兵器、及び建造中の新型艦への対応。
先日、レオハルトやクルーゼ、シーゲルにパトリックの四人が話しあった通り、【オーブ】に対して圧力を掛けてはいるのだが、当初の予測通り【オーブ】政府からの返答は知らぬ存ぜぬの繰り返し。
中身の無い押し問答を繰り返すだけで、まったく意味の無いものだった。そのため、パトリックを始めとした一部議員からは強硬論が飛び出していた。
「強硬手段に出るしかない!ヘリオポリスに極秘裏に侵入し、艦は爆破し機動兵器は奪取するべきだ!」
「賛成だ!最悪の事態があってからでは遅いのだ!」
「反対だ!情報が事実だとしても、仮にも相手は中立国!そんなことをすれば、宣戦布告と受け取られかねん!連合と【オーブ】を相手にする余裕は、我々には無いのだぞ!」
「そうだ!そもそも、その情報が事実かどうかも疑わしい!」
議会は依然として紛糾し、結論がまとまる気配は無い。パトリックは目を閉じて黙したままで、シーゲルも難しい表情をしている。
「……不毛だな」
怒声が飛び交う議場に響く、低音の声。だが、そのたった一言で議場は水を打ったように静まり返った。
必然的に、議場の視線は声を発した人間へと向けられる。彼らの視線の先に居るのはは、他の者たちに比べて一際目立つ存在。
血のように紅い髪、赤い軍服。そして、左胸に光る【FAITH】の徽章。今では【ZAFT】に知らぬ者無しと言われるほどの人物、レオハルト・リベラント。
そんな無機質で呟かれた言葉に反応し、一斉に視線を浴びるレオハルト。
「どういう意味かね、リベラント隊長」
「言葉通りの意味です。これ以上続けても、是か否かの押し問答。無意味です」
「……」
歯に衣も着せぬその言葉に、議員たちから一斉に睨まれることになったレオハルト。だが、そんな睨みもレオハルトは、どこ吹く風といった様子だった。
「ふん。前線に居る君には分からんだろうな。そう簡単に決断できるものではないのだよ」
「後ろにいるばかりのあなたには分からないでしょうね。戦場で命を落とす者たちの無念が」
一人の議員がレオハルトに嘲笑混じりの皮肉を言えば、レオハルトは視線も向けずに辛辣な皮肉を口にする。
これが、戦場に身を置く者とそうじゃない者の違い。どちらも間違っておらず、どちらも正しい。だからこそ、他の議員たちは口を閉ざす。
「やめんか、二人とも。言い争いをしている暇など無いのだぞ」
「……失礼しました」
「申し訳ありません」
シーゲルの諌める言葉に、議員はレオハルトを一睨みしてから謝罪すると、レオハルトは無表情のまま頭を下げた。
「リベラント隊長。君の意見はどうかね?」
「作戦の承認を求めます。【オーブ】は連合に技術協力、さらには開発場所まで提供しています。中立国家のすることではありません。目的さえ誤らなければ、【オーブ】も強くは非難できないでしょう」
今の連合にMSを開発する技術は無い。それは、連合の施設では無く【オーブ】管理下のコロニーで行っていることが何よりの証拠。無論、理由はそれだけではないだろう。中立国のコロニーということで、万が一の時のため保険。つまり、攻撃を躊躇させる手段ということだろう。
だが、【オーブ】は代表首長であるウズミ・ナラ・アスハによって中立宣言がされている。その中立国家が連合の新型機動兵器に技術協力をしていたとなれば、大問題となることは確実。この事実を巧く使えば、【オーブ】も【プラント】を一方的に非難することは出来ないはず。
「作戦指揮を執るクルーゼ隊長も、【ヘリオポリス】や民間人へ危害を加えようとは思っていないはずです」
「だが、万が一ということもある。間違えましたじゃ済まない」
「……」
レオハルトに反論する形で口を開いたのは、シーゲルと同じく穏健派議員として知られるユーリ・アマルフィ。クルーゼ隊に所属するニコル・アマルフィの実の父親である。
普段は温和なその表情は、議題が議題だけに今日は険しい。
「そうだ!その際、【オーブ】が連合側で参戦を表明したらどうするのだ!」
「【オーブ】には三大理念があるだろう!その理念に従うあの国に、戦争参加は有り得ん!!」
「それが絶対だと言いきれる保証など無いだろう!詭弁を重ねて、例外措置だと言ってきたらどうする!!」
【オーブ】の三大理念とは、『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、また他国同士の争いに介入しない』のこと。つまり、ただの中立ではなく永世中立国を貫くと言うことを宣言したのである。
レオハルトの介入により一度は落ち着いたが、再び紛糾する様相を呈してきた。強硬派の中でも一際声を張り上げるのは、エザリア・ジュール。
イザーク・ジュールの実の母であり、パトリックを除けば女性ながら強硬派の中でも筆頭格であり、パトリックの補佐的立場にある。
「……」
「……」
収拾のつかない会議を見て、パトリックはレオハルトへと視線を向けると小さく頷いた。レオハルトはその頷きを見ると、静かに席を立ち会議室を退室する。
レオハルトは空き部屋に入ると、小型端末を取り出しクルーゼ隊の旗艦であるヴェサリウスへと通信をつなげた。
「ラウ」
「ようやくか。もう始めてしまおうかと思っていたよ。それで、結果は?」
「残念ながらな。収拾がつかない状況だ」
「やはりな。さすがに、こればっかりは簡単には行かんか」
小型端末から伸びるホログラムに映るクルーゼは、レオハルトから会議の様子を聞き皮肉めいた笑みを浮かべる。
この結果は事前に予想していたことだった。公にGoサインを出すことは出来ない。だが、パトリックは秘密裏にクルーゼへとGoサインを出す。
「ということは、予想通りということか」
「ああ。ザラ委員長のGoサインが出た。クライン議長も黙認と言ったところだろう。だが、【ヘリオポリス】は破壊するなよ」
「無論だ、レオ。あくまでも目的は、新型機動兵器の奪取・及び新造艦の破壊。【ヘリオポリス】の破壊は任務外だ」
「ならいい。健闘を祈る」
「フッ……。君の期待は裏切れんな。頑張らせてもらおう」
クルーゼの笑みを最後に、レオハルトは通信を切った。
小型端末をしまうと、レオハルトはその場を離れるのだった。
【ヘリオポリス】への極秘作戦開始から数時間後。
議事堂内の個室を借り煮詰まっていたユピテルの開発を進めるため、コーヒー片手にPCのキーを黙々と叩き続けていた。だが、不意にその手が止まるとレオハルトは小さく溜め息を吐いた。
「(やはり足りない。現在の【ZAFT】では、ユピテルの開発まで辿りつけない。あと一手が足りない……)」
現在、ユピテルの開発は煮詰まってしまっている。その理由は、ユピテルの武装にある。ユピテルに装備する予定の武装は、ほとんどがビーム兵器。現存するMSにはまだ本格的な実装は現実化していない。
ジンは装備する武装によっては使用することも可能だが、それもエネルギーの関係上、そう何回も使うことは出来ない。
これらからも分かるように、これらの武装を造るほどの技術力はある。だが、その過程が見えない現状にある。設計局の人間も尽力してくれているが、難しいものは難しいのが現実なのだ。
「リベラント隊長」
レオハルトがどうしたものかと考えていると、不意に部屋の扉がノックされる。レオハルトが返事をすると、緑服を着た女性が部屋に入って来た。
「クライン議長とザラ委員長が、議長執務室でお待ちです」
「わかった」
レオハルトは手早く荷物を片付けると、席を立ち二人の待つ議長執務室に向かった。議長執務室に入ると、シーゲルとパトリックが険しい表情でレオハルトを待っていた。
「お待たせしました」
「来たか、リベラント」
「すまんな。緊急事態が起きたのだよ」
「【ヘリオポリス】の件ですか?」
レオハルトがそう聞くと、シーゲルは険しい表情のまま小さく頷いた。次の瞬間、シーゲルの口から発せられたのは予想を遙かに超えるものだった。
「【ヘリオポリス】が崩壊した……」
「!? 崩壊、ですか……?」
「ああ、戦闘に耐えきれなかったようだ。幸い、民間人は脱出したようだが……」
今回の作戦、評議会からの正式なGoサインは出ていない。そのため、表向きにはクルーゼの独断行動になってしまう。レオハルトは勿論、パトリックとしても【ヘリオポリス】の破壊はまったくの計算外と言っていい。
だが、結果はこの通り。【ヘリオポリス】の崩壊という結末になってしまった。いくら【ヘリオポリス】で連合の新型機動兵器が開発されていたとはいえ、仮にも中立である【オーブ】管理下にあるコロニーの破壊。
【ヘリオポリス】の背後関係は別として、中立国のコロニーを破壊したとなれば非難は免れない。すると必然的に、非難の声は作戦を指揮したクルーゼに向けられることになる。
「クルーゼ隊については?」
「五機の新型のうち、四機の奪取に成功。だが、残りの一機と新造艦の破壊は失敗。現在、敵新造艦を追跡中とのことだ。部隊からも四人の戦死者が出ており、ジンも四機失っている」
「……なるほど。クルーゼ隊長は、新型を実戦投入するつもりですか」
「恐らくな。奴の部隊には、奪取したMS以外に余剰戦力はジン数機のみ。奪取した機体を投入するしか無いだろう」
「今はまだ、この話はどこにも漏れていない。が、いつまでも隠しておくわけにはいかない。直に他の議員にも知れ、クルーゼ隊長を召喚して査問会を開いて責任を問うことになる」
そう言うと、シーゲルは額に手を当て溜め息を吐いた。同様に、パトリックも眉間に皺を寄せたまま黙したままである。
二人の悩みの種は、クルーゼを快く思わない連中による口撃。最悪の場合、クルーゼを現在の立場から引き摺り下ろす可能性もある。というか、その可能性大である。
こういう現状があるということは、レオハルトも承知している。肌で感じているほどだ。だからと言って、むざむざクルーゼを解任させるわけにはいかないということは三人の共通認識だった。
「どうされるおつもりですか?」
「無罪放免、というわけにはいかないだろう。何らかの責を負ってもらうことになる」
「……」
シーゲルは厳しい表情でそう答えるが、パトリックはシーゲルに険しい視線を送っている。このことから、二人の意見が一致しているわけではないということをレオハルトは理解した。
「……では、失礼します」
必要なことを聞き終えたレオハルトは、敬礼をすると二人に背を向けると足早に部屋を後にした。
レオハルトは、クルーゼに対して事前に忠告した言葉も意味は無かったかと考えながら、すれ違う人間に敬礼されながら通路を歩く。
「さて、どうなることか……」
レオハルトは通路を歩きながら、これからの情勢に思い浮かべる。未来のことは分からない。ただ、一つだけはっきりしていることがある。
それは、コーディネイターとナチュラル。【プラント】と連合。両者の戦争は、新たな局面を迎える。それだけである。
同時刻 ヴェサリウス艦内 隊長執務室
【ヘリオポリス】崩壊後、クルーゼは奪った新型四機を実戦投入し、敵の新造艦を追跡することを決定。だが、状況が状況だけにまともに位置を掴むことが出来ないため、現在は策敵を密にして航行している。
戦闘後、クルーゼはアスラン・ザラを自身の部屋に来るように言っていた。その理由は、【ヘリオポリス】崩壊のきっかけとなった最後の戦闘で、アスランが待機命令を無視して奪取した新型MS、X303-
その理由を聞くためクルーゼはアスランを呼び出し、話をした。そしてアスランの話す理由を聞き、クルーゼは納得した。同時に、驚きもした。アスランの口から飛び出した、予想外の人物の名に。
アスランから満足いく言葉を聞いたクルーゼは、アスランとの話を終わらせた。アスランが出て行った部屋で、クルーゼは自らの口元に浮かぶ笑みを止めることが出来なかった。
「……まさか、生きていたとはな。とうに死んだと思っていたが……。……いや、これも宿縁か。面白いとは思わないか?なあ、レオ」
クルーゼはゆっくり仮面へと手を伸ばすと、仮面を外し宙で手を放した。クルーゼは不敵な笑みを浮かべながら、右手で仮面を弄ぶのだった。
SEEDのDVDの一巻が安かったので買って、観ながら書きました。
だけど、思ったより使わなかった……。
ちょっとショックです。
今回は一話部分でしたが、第二話から第六話からは原作どおりに進めますのでカットします。
次はクルーゼの査問会、そしてラクス・クラインなどが中心になると思いますので、第七話・八話になるかと。
DVD買わなきゃ書けそうにないな。特にクルーゼの査問会のシーン。
まあ正直、そんなのあったか?って感じなんですけど、SEEDの各話のあらすじが書かれているサイトを見ると、あるみたいなんですよね。
はぁ……。
私のPCが元気なら、こんなことは無かったんですけどね……。
久し振りのせいで喋りすぎました。
では、また次回。