機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
今回は7話で、次は8話です。
PSNでレンタルして書きました。8話もレンタルしてます。
なので、来週中には更新できると思います。多分。
本編と並行して、オリMSの更新もする予定です。
では、本編をどうぞ。
レオハルトは昨日行われたユピテルの性能評価実験の後、設計局と一緒にユピテルのロールアウトの最終調整を行っていた。
レオハルトは一人で三つのキーボードを巧みに叩き、画面に表示されている事柄を一つずつ確実に解決していく。ユピテルほどの高性能機になるとデータも膨大になるため、それらを整理していく。
「リベラント隊長、どうですか?」
「順調だ。この分なら早めに終わりそうだな」
「いえ、リベラント隊長のご協力のお陰です。もしかしたら、明日にも完成するかもしれません」
「それは吉報だな。……すまないが、後は任せる」
「はい」
レオハルトは現在の時間を確かめると、開いていた画面を閉じ立ち上がった。時計の針は、間もなくクルーゼの査問会が始まる時間を指していた。
レオハルトはシーゲルから、査問会の見学を許されている。無論、レオハルトが【FAITH】とはいえ特例である。見学が許された代わりに、発言は一切許可しないという制限付きである。
レオハルトは急ぎ足で評議会議事堂に入るとエレベーターへと乗りこんだ。上階へのボタンを押そうとした時、視界の端にある人物を捉えた。
「久しいな、レオ」
現れたのは、今日の査問会の主役であるクルーゼだった。その傍にはアスランの姿もあり、レオハルトに気付くと背筋を伸ばし敬礼をした。
「大活躍だな、ラウ」
「手厳しいな、レオ」
レオハルトは礼を制すと、アスランは戸惑いながらも右手を下ろした。二人がエレベーターに乗ったことを確認すると、レオハルトは査問会が行われる最上階のボタンを押した。
半円形のソファに座るクルーゼに向けて、レオハルトは何とも辛辣な皮肉を口にした。だが、クルーゼはわずかに笑みを浮かべ受け流すだけだった。
「久し振りだな、アスラン」
「はっ。リベラント隊長もお元気そうで」
「どうだった。初めての任務は」
「……」
レオハルトの言葉に、アスランは苦い顔を浮かべるだけ。その理由を知るクルーゼは、二人には見られないように唇の端を釣り上げる。
「……初めての実戦だ。思うこともあっただろう。誰もが通る道だ」
「はい……」
だが、アスランが抱える想いを知らないレオハルトは、単に初任務にして重要。そしてコロニー崩壊という結果になってしまったことを悔いていると考えたレオハルトは、それ以上は何も言うことは無かった。
そしてついに、査問会が始まった。
「ではこれより、オーブ連合首長国領ヘリオポリス崩壊についての、臨時査問会を始める。まずはラウ・ル・クルーゼ。君の報告から聞こう」
レオハルトは評議会議員の座る円卓上のテーブルから離れた場所に立つと、壁に背を預け評議会の矢面に立つクルーゼに視線を向ける。
「はい。報告をするにあたり、ご覧頂きたいものがあります」
クルーゼの言葉と共に、各議員の正面にあるモニターに映像が表示される。その映像は、クルーゼが指示して撮った戦闘映像である。
その中には、連合軍新造艦【アークエンジェル】の出現や最後の一機、【ストライク】が巨大な砲を放った瞬間がおさめられていた。
「これは……!」
「バカな……。コロニーに穴を開けるとは……」
「それほどの火力をMSに……」
予想通りの議員の反応を前に、クルーゼは胸中で笑みを見せる。
「ご覧のように、奪取しきれなかった最後の一機はこれほどの火力を有しております。コロニーに穴を開けるほどの攻撃。直接的な原因ではありませんが、まったく影響が無いとも言い切れません。では、次の映像をご覧ください」
映像が切り替わると、映し出されたのは最終攻撃の際の映像。ストライクがジンをサーベルで両断し、アークエンジェルの発射したミサイルが地表やシャフトに直撃する映像。
「(……)」
レオハルトの眉間に皺が寄るが、そのことに誰も気付くこと無くクルーゼの話は進んで行く。映像の最後に映し出されたのは、アークエンジェルの発射した主砲と思われるビームがシャフトに命中し【ヘリオポリス】は崩壊。
「これは……」
「どういうことだ。この映像を見る限り、【ヘリオポリス】が崩壊したのは奴ら、連合のせいではないか!」
「奴らの攻撃がシャフトを貫いたことが原因ではないか!」
「……以上の経過でご理解頂けたと思いますが、我々の行動は決して【ヘリオポリス】自体を攻撃した者では無く、あの崩壊の最大原因はむしろ地球軍にあるものとご報告致します」
クルーゼは自身の報告をそう締めくくると、最後に敬礼をすると共に出席したアスランの隣に腰を下ろした。
「やはり、【オーブ】は地球軍に与していたのか。リベラント隊長の読み通り……」
「条約を無視したのは、あちらの方ですぞ」
「だが、アスハ代表は」
「地球に住む者の言葉など、アテになるものか」
議員たちはそう口々に話し始める。議員の頭からは徐々にクルーゼの査問会という意識は無くなりつつあり、ただ連合の開発した新型MSに怒りを抱くだけとなりつつあった。
「しかし、クルーゼ隊長。その地球軍のMS、果たしてそこまでの犠牲を払ってでも手に入れる価値のあった物なのかね?」
「その驚異的な性能については、実際のその一機に乗り、さらには取り逃がした最後の一機と交戦経験もある、アスラン・ザラより報告させた頂きたく思います」
不意に問われる、パトリックからの問い。その問いに、クルーゼは立ち上がるとそう返答した。パトリックはシーゲルへと確認の視線を向ける。
「アスラン・ザラよりの報告を許可する」
シーゲルの許可が出たことにより、アスランは立ち上がると先程のクルーゼと同じ立ち位置まで歩いて行く。短く敬礼をすると、再び各議員のモニターに映像が映し出される。
映し出されたのは、奪取後のヴェサリウスの格納庫の映像。映し出されたのは、現在の【ZAFT】主力機であるジン。だが、その隣にそびえるのはジンとは似ても似つかないMS。
奪取に成功した四機のうちの一機、GAT-X303
「まず、
映像では
「そして特徴的な武装といえるのが、≪580mm複列位相エネルギー砲 スキュラ≫と呼ばれる武装です。先程の映像でご覧頂いたように、この武装も最後の一機同様、今まで無かった強力な火力を持つ武装と断言出来ます」
事前に台本が用意されたわけでもないのに、アスランは
「さらに、同様に奪取した他の三機も、それぞれ驚異的な性能を有した強力なMSであると考えます。以上です」
報告を終え、アスランは敬礼をすると後ろに下がり、先程と同じ場所に腰を下ろした。
アスランの報告と同時に、議員たちからはナチュラルへの怒りの声が上がる。だが、一部の穏健派からは冷静な発言が出た。だが、それもエザリアの言葉によって一蹴。穏健派は口をつぐんだ。
次第に議員たちの言葉によって議会場は騒がしくなり、シーゲルが仕方なく諌める言葉を掛ける。だが、騒ぎは中々収まらず、その様子をクルーゼは不敵な笑みを浮かべて眺めていた。
すでに彼らの頭に、今回自分たちが集まったのはクルーゼの査問会ということは頭から無く、意識はこれほどの機体を開発したナチュラルに向けられていた。
「……戦いたがる者などおらん。我らの誰が、好んで戦場に出たがる。平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい。我らの願いはそれだけだったのです」
シーゲルによってようやく静まりかえった議会場。その議会場に、パトリックの低く訴えるような声が響く。
「だが、その願いを無残にも打ち砕いたのは誰です!自分たちだけの欲望と都合のためだけに、我々コーディネイターを縛り、利用し続けてきたのは。我らは忘れない。【血のバレンタイン】、【ユニウスセブン】の悲劇を!!」
その場に立ち上がり、両手を大きく広げて演説を始める。パトリックが訴えるは、ただナチュラルへの怒りと憎しみを。我らの敵はナチュラル、悪いのはナチュラルだと。
「戦わなければ護れないなら、戦うしかないのです!」
パトリックはその言葉を口にすると、黙って議員たちを見渡す。強硬派の議員たちは厳しい表情で頷く。考えが一致した瞬間だった。
その様子を見たシーゲルは、静かに肩を落とす。仕方ないこととはいえ、シーゲルはこのまま戦争状態が続くことは望んでいない。出来るならば、今すぐにでも終わらしたいとさえ思っている。
だが、それは現在の状況を見るとシーゲルのみと言っても過言ではない。表向きには肯定しないまでも、ただ黙って口を閉ざす穏健派の人間たち。その沈黙が肯定を示す、何よりの証拠だった。
現在はお互いに銃を向け合っている状況。その状況で、自ら銃を下ろし握手を求めるなど有り得ない。パトリックは、相手が銃を下ろすまで戦おうというつもりなのだ。
「(やはりこうなったか……。……俺も同類か)」
結果は分かったので、レオハルトは静かに立ち上がると議会場を立ち去る。
共同墓地
陽も落ち始めた夕方。アスランは一人、墓地にいた。
アスランは持ってきた花束を墓石に手向ける。墓石にはレノア・ザラと記されている。アスランの実の母であり、【ユニウスセブン】で亡くなった一人である。
「……」
『戦わなければ護れないなら、戦うしかない』。
アスランの脳裏によぎるのは、父であるパトリックの言葉。アスランも分かっている。アスランが【ZAFT】に志願したのも、【ユニウスセブン】がキッカケだ。
彼自身、【プラント】を護りたいと願った。だが、その気持ちに矛盾し、アスランも戦争などしたくない。参加もしたくない。
だが、パトリックの言葉が真理であるのもまた事実。この二つの相反する気持ちがアスランを苦しめるが、アスランは迷いを振り切り戦うことを決意した。
だが、そんなアスランに迷いが生まれた。それは、敵として現れた親友の存在。同じコーディネイターである親友が、連合の新型MSに乗って自分たちの前に立ちはだかったのだ。
迷いを振り切ったアスランの心に、親友の存在が棘として奥深くに突き刺さる。
墓石から視線を上げ周りを見ると、遠くからでも分かる紅い髪に赤服の人物の姿が目に入る。見間違えるはずなど無かった。【ZAFT】に知らぬ者無しと言われ、アスランの憧れと言っても過言ではない存在。
「リベラント隊長」
「……アスランか」
アスランは憧れの存在であるレオハルトに近付き、静かに声をかける。レオハルトは墓石から視線を外すことはない。
「そうか。アスランの母親も、亡くなっているんだったな」
「はい……。リベラント隊長も、どなたかを?」
「お前の母と同じ、【ユニウスセブン】でな。……好きだった女性だ。……居なくなってから気付くなんて、ひどい話だ」
「……」
アスランは墓石へと視線を向けると、同様に花が供えられていた。供えられている花は、一種類のみ。名はアヤメ。
「アスラン。この花はアヤメ。花言葉を知っているか?」
「いえ……」
「『信じる者の幸福』だそうだ。あいつは、ナチュラルとの共存を本気で信じていた。信じていたら、きっと叶うと。だから、あいつはこの花が好きだったらしい」
「……」
「信じていた相手に殺されるとは、とんだ皮肉だ」
レオハルトはそう言って色々な感情が入り混じった笑みを浮かべると、サングラスを掛けアスランに背を向けた。
「しばらくは休暇なのだろう?ゆっくり休め。……迷いを抱えていてもな」
「……っ!……はい」
去っていくレオハルトの背を見送りながら、アスランの心は分厚い雲が覆われていた。だが、それでもアスランは前に進むことだろう。
立ち止まる暇などなく、振り返る時間も無い。前に進むしかない。たとえ、どんな迷いを持っていたとしても。
「ありがとうございます、ザラ国防委員長閣下」
「……貴様が流したあの映像、巧く出来ていたな」
「頼れる友がおりますので」
「……シーゲルはわずかに疑っていたようだがな。どれほど手を加えた?」
「ほう、さすがは議長ですな。ですが、それも確信では無いでしょう。しかし、手を加えたとは心外です。余計な情報を消したまでです。必要ではありませんか?政治の世界には」
「確かにな。貴様の映像と、アスランの流した映像。あの二つで、穏健派の連中は口を閉ざした。その点では、大きな役割を果たしたと言えるだろう」
「光栄です」
「『奴』は、『こちら』の人間か?」
「どちらとも言えませんな。彼はあくまでも【プラント】、【ZAFT】の人間として行動するでしょう」
「なるほどな。【プラント】に利する場合は、敵対は無いか」
「恐らくは。……では、私は失礼します」
「ああ」
今回はちょっと短めだったと思います。
ちょっと雑になってしまったかもしれません。
それでも、楽しんで頂ければ嬉しいです。