機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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8話だけだと何か微妙だったので、9話も一緒に書きました。

今回も主人公が敵と会話していますが、アスランとキラもしていましたので大丈夫でしょう。
そして、主人公機も戦闘です。

戦闘描写が稚拙な部分もあると思いますが、楽しんで頂けたらと思います。

では、本文をどうぞ。


Mission - 12 歪む正義

査問会の翌日。【プラント】中をあるニュースにより激震が走った。

 

【ユニウスセブン】追悼記念式典のために【プラント】を出たラクス・クラインが、消息を絶ったのだ。

 

ラクス・クラインは歌手という立場でありながら、その圧倒的な歌唱力と容姿で【プラント】市民から絶大な人気と影響力を持っている。

 

その彼女の影響力は、実の父である最高評議会議長であるシーゲル・クラインと良い勝負である。そんな彼女が消息を絶ったとあれば、【ZAFT】が動く。

 

捜索隊に指名されたのは、ラクス・クラインの婚約者でもあるアスラン・ザラも所属するクルーゼ隊。婚約者でもあるアスランが、本国でゆっくりと休暇を楽しんでいるのも体裁が悪い。

 

そのため、クルーゼ隊にラクス・クライン捜索任務の白羽の矢が立ったということだ。そのため、ヴェサリウスは当初の出港時間より大幅に早まることになった。

 

アスランがヴェサリウスへと続く十二番ゲートに到着すると、ゲートの入口にはクルーゼとパトリックの姿があった。

 

アスランは敬礼をしたまま通り過ぎようとするが、パトリックに呼び止められ縁を掴んで身体を止めるとクルーゼの隣に着地した。

 

「ラクス嬢のことは聞いておろうな?」

「はい。しかし、隊長。まさか、ヴェサリウスが?」

「おいおい、冷たい男だな君は。無論、我々は彼女の捜索に向かうのさ」

「でも、まだ何かあったと決まったわけでは。民間船ですし」

「公表はされてないが、すでに捜索に向かったユン・ロー隊の偵察型ジンも戻らんのだ」

 

パトリックのその言葉に、アスランの表情が変わる。MSが捜索に行ったまま戻らないとなると、当然だが話は変わってくる。

 

偵察型という名称が示す通り、この機体の用途は偵察が主である。だが、最低限の武装は装備しており、部隊に攻撃を受けたという報告も入って無いことから、それらの行動を取る暇も無く撃墜されたということになる。

 

この宇宙で【プラント】に敵対するのは、やはり連合が真っ先に思い浮かぶだろう。単純に海賊という線も考えられるが、どちらにしろ良いことにはなっていないだろう。

 

「【ユニウスセブン】は地球の引力に引かれ、今はデブリ帯の中にある。嫌な位置なのだよ。ガモフは【アルテミス】で足つきをロストしたままだしな」

「まさか……!」

「ラクス嬢とお前が定められた者同士であることは、【プラント】中が知っている。なのに、お前がいるクルーゼ隊が、ここで休暇というわけにもいくまい。彼女はアイドルなのだ。頼むぞ、クルーゼ、アスラン」

「はっ」

 

【アルテミス】、通称【傘のアルテミス】。【光波防御帯】と呼ばれるビームも実体弾も通さない無敵のシールドを持つ要塞で、ユーラシア連邦の管轄下に置かれていた。

 

だが、無敵のシールドも味方が開発したG兵器の前には無力。シールドは何の意味も為さず、【アルテミス】は陥落した。

 

パトリックはそう言い残すと、踵を返し戻って行く。その背を見送りながら、アスランはパトリックの言葉の意味を考えていた。

 

「彼女を助けて、ヒーローのように戻れと言うことですか?」

「もしくは、その亡骸を号泣しながら抱いて戻れ、かな」

「!」

 

クルーゼの冷徹な言葉に、アスランはハッとしてクルーゼを見上げた。

 

「どちらにしろ、君が行かなくては話にならないとお考えなのさ。ザラ委員長は。それに、保険もある。安心したまえ」

 

そう言うと、クルーゼはアスランを残し先にヴェサリウスへと入って行ってしまった。クルーゼの背中を、アスランは険しい目付きで見送りながら最後の言葉が気になっていた。

 

「保険……?」

 

 

 

 

 

 

定刻通り、ヴェサリウスは一八〇〇に出港。ラクス・クライン捜索に向けて発進した。

 

命令があるまでは特にすることも無く、暇になったアスランはAEGIS(イージス)を見に行くことにした。格納庫に着くと、そこには見慣れない機体があった。

 

「あのMSは……」

 

漆黒の姿をしながらも、所々に銀と紅のラインが入った見慣れぬ機体。ジンのカスタム機とは程遠く、シグーとも同様に程遠い。

 

アスランは近くの整備員を捕まえ、あのMSについて話を聞くことにした。

 

「すまない。あのMSは……」

「ああ、あの機体ですか?あれは、リベラント隊長の専用機です。リベラント隊長が設計したもので、ロールアウトしたばかりだそうです」

「リベラント隊長の!?」

「ええ。聞くところによると、同行出来るよう申し出たとか」

「(何故、リベラント隊長が……)ありがとう、助かった」

「いえ、では」

 

整備員に礼を言うと、アスランは再びレオハルトのものだというMSを見上げた。何故、ラクス捜索のために出撃したヴェサリウスにレオハルトが乗っているのか。

 

「(隊長の言っていた保険とは、リベラント隊長のことなのか?)」

 

疑問を抱えながら、アスランはレオハルトに話を聞くためその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

その時、レオハルトはクルーゼの部屋で話をしていた。

 

「しかし、まさか君が同行を申し出るとはな」

JUPPITER(ユピテル)を実戦で動かしてみたくてな」

「おや?我々の任務はラクス・クライン捜索のはずだが」

「とぼけるな。分かっているだろう」

 

今回、レオハルトがヴェサリウスに乗艦した理由はただ一つ。ロールアウトしたユピテルの実戦投入である。

 

「聞くところによると、お前たちが【足つき】と呼んでいる連合の新造艦。奴らは、【ヘリオポリス】でお前たちの襲撃によって、万全の態勢で出港したとは考えにくい。さらに、【アルテミス】ではガモフの攻撃により補給もままならなかった可能性が高い」

「ふむ、なるほど」

「水や弾薬はこれまでの戦闘や時間の経過で限界が近いだろう。となると、補給をするため奴らの取る行動は一つ。デブリ帯にある戦艦から弾薬を補給。そして、水は【ユニウスセブン】から調達するしかない」

 

レオハルトが自身の推測を述べると、クルーゼは笑みを浮かべる。これは、クルーゼも予測していたこと。クルーゼは友が同じ考えでいると言うことに満足していた。

 

「さすがは【FAITH】だな、レオ」

「よく言う。……戦闘になれば、俺は好きにやらせてもらう」

「無論だ。私に、【FAITH】である君への命令権限は無いからな。むしろ、命令される側だ」

「するつもりはない。隊長はお前だ。指揮はお前がしろ」

「そう言うと思ったよ。好きにしたまえ。それに、君について行ける者などおらんよ」

「そうさせてもらう」

 

レオハルトはクルーゼの部屋を後にすると、格納庫に向かった。

 

理由は勿論、出撃に備えてである。レオハルトは確信している。必ず戦闘になり、出撃することになると。

 

「リベラント隊長!」

 

格納庫に向かっていると突然声を掛けられ、レオハルトは声のした方へと視線を向けた。そこにはアスランがおり、アスランはレオハルトの前で床に立つと疑問をぶつけた。

 

「アスラン」

「リベラント隊長。何故、ヴェサリウスに?」

「それか。格納庫に用がある。移動しながらでいいか?」

「はっ、お供します!」

 

生真面目なアスランの答えにレオハルトは内心苦笑しながら、アスランと共に格納庫へと向かう。

 

「さて、俺が一緒に来た理由だったな。簡単なことだ。ロールアウトしたばかりの俺の専用機を、実戦で試すためだ」

「戦闘が起きると?ですが、我々は」

「考えが浅いな、アスラン。これまでの報告によると、【足つき】は一度もまともな補給を受けていない。さらに、【足つき】と最後の一機は連合にとって大事な存在だ。俺たちは軍人だ、アスラン。ラクス・クライン捜索の任を受けているとはいえな」

「……連合が、【足つき】のために補給部隊を派遣すると?」

「十中八九な。補給、出迎えと言ったところか」

「(……確かに、リベラント隊長の言うとおりだ。そう考えると、戦闘に発展する可能性が高い。もしかしたら、また“あいつ”と……)」

 

アスランが思考の海に沈んでいる間に、二人は格納庫に到着。レオハルトはJUPPITER(ユピテル)の最終確認をする。アスランも我に返ると、同じように自身の乗機となったAEGIS(イージス)へと向かうのだった。

 

JUPPITER(ユピテル)のコックピットでOSの設定をいじっていると、クルーゼから通信が入る。

 

「レオ、地球軍の艦隊を発見した。現在、追尾中だ」

「来たか。仕掛けるんだろ?」

「無論だ、レオ。我々は、軍人なのだからな。どうする?君も出撃()るかね?」

 

クルーゼの問いに、レオハルトはわずかに口角を上げることで応える。その笑みに、クルーゼも同様に笑みを浮かべる。

 

「ブリーフィングを行う。艦橋に来てくれ」

「わかった」

 

レオハルトはアスランにも声をかけると、共に艦橋に向かう。艦橋には、ヴェサリウスに乗艦している二人のパイロットがすでに来ており、クルーゼやアデスと一緒に大型モニターを囲むようにして立っていた。

 

「さて、では始めるか。アデス」

「はっ。これは、地球軍艦艇の予想航路です」

「ラコー二とポルトの隊の合流が、予定より遅れている。もしあれが、【足つき】に補給を運ぶ艦ならば、このまま見逃すわけにはいかん。もっとも、【FAITH】の彼は確信しているようだがな」

 

そう言うと、クルーゼは宙域図へと視線を落としているレオハルトへと視線を向ける。クルーゼは普段と何ら変わらないレオハルトの様子に笑みを零すと、複雑そうな顔をしているアスランへと視線を向けた。

 

「不服かね、アスラン?」

「いえ……。我々は、軍人。そういうことですね?」

「レオに言われたのかね?まぁ、そういうことだ。だが無論、ラクス・クライン嬢の捜索を放棄したわけではないということは明言しておこう」

「了解しました」

 

その後、ブリーフィングは滞りなく進み、敵艦艇への攻撃が決定。ヴェサリウスは、戦闘態勢へと移行した。

 

それからもヴェサリウスは敵に気取られないように追跡を続け、ついに攻撃を行うタイミングに入る。

 

「イエロー90マーク6に【足つき】を捕捉しました」

「さて、頃合いだな」

「仕掛けますか?」

「ああ。MS、発進させろ」

「はっ!MS、各機発進せよ!」

 

アデスの声と同時に、格納庫が一気に慌ただしくなる。まずはジン二機が出撃し、続いてアスランのAEGIS(イージス)が出撃。

 

そして最後に出撃するのは、レオハルトのJUPPITER(ユピテル)がカタパルトに移動する。

 

「レオ。暴れるのはいいが、部下の分も残しておいてくれ」

「善処しよう。レオハルト・リベラント、出るぞ」

 

戦場へと解き放たれた漆黒のMS。レオハルトは先に出撃した三機の前に位置取りする。

 

「リベラント隊長、どうしますか?」

「各機、連携しつつ敵を撃破。命を無駄にするな!」

「はっ!」

 

レオハルトはアスランたちに簡潔な指示を出すと、フットペダルを踏み込む。瞬間、抑えていたスピードが爆発すると敵艦へと距離を詰める。

 

一瞬そのスピードに驚くが、アスランは気を取り直しその後を追いかける。

 

その頃、【足つき】こと【アークエンジェル】でも【ZAFT】の存在は察知していた。

 

「イエロー257マーク40にナスカ級!数四!熱紋照合。ジン二、それと、待ってください。AEGIS(イージス)!X303 AEGIS(イージス)です!」

「では、あのナスカ級だと言うの!?」

 

“あの”ナスカ級。【ヘリオポリス】襲撃後から、追撃してきた艦ということに気付く連合側。だが、ここで疑問が浮かぶ。ジン二機とAEGIS(イージス)、では残りの一機は?ということだ。

 

「最後の一機は!?」

「該当機無し!UNKNOWN(アンノウン)です!!」

「新型だというの……!?」

 

【アークエンジェル】にデータが無いのも当然。最後の一機は、ロールアウトしたばかりの新型MSなのだから。だが、普通の新型MSではない。

 

MSも一級であり、パイロットは超一流だと言うことである。

 

敵艦から次々と吐き出されるMAメビウス。間断なく放たれる砲火。だが、JUPPITER(ユピテル)に死角は無い。

 

レオハルトはさらに一段階スピードを上げると、それだけでJUPPITER(ユピテル)の速度にメビウスの照準はまったく定まらない。

 

「くそっ!速すぎる!!」

「鈍いな」

 

レオハルトは小さくそう呟くと、腰から実剣を抜くと両手に構える。MA-M212 天鳥船(アメノトリフネ)。元々はジンHM(ハイマニューバ)に装備されていたものを、JUPPITER(ユピテル)専用に開発した実剣である。

 

レオハルトは天鳥船(アメノトリフネ)を手に、狼狽するメビウスを両断する。すぐさま次の敵との距離を0にすると、剣を突き刺し撃墜。

 

コックピットに鳴り響くアラート音。レオハルトは背後から迫って来るミサイルから距離を取るが、しつこく追いかけて来るミサイル。

 

レオハルトは敵艦を迂回しながら回避すると、ミサイルは敵艦の横っ腹に命中。レオハルトは機体を急反転すると、敵艦の艦橋に迫る。

 

「敵UNKNOWN(アンノウン)、接近!」

「迎撃!」

「間に合いません!!」

 

レオハルトは実剣で艦橋を薙ぎ払うと、撃沈を見届けることも無く離脱。背後から響く巨大な爆発音などすでにレオハルトの頭には無い。

 

「脆すぎる……。これでは、JUPPITER(ユピテル)の肩慣らしには程遠い。……!」

 

レオハルトが連合のあまりの弱さに嘆いていると、突然ジン一機の反応がロスト。レーダーを確認すると、艦影一、敵機二を捕捉していた。

 

「レオ」

 

敵の存在を確認した瞬間、クルーゼから通信が入る。

 

「本命のご登場だ。沈めてくれ」

「了解した」

 

レオハルトがクルーゼと話している間に、すでにアスランは敵MSと戦闘に入っていた。レオハルトは周囲を飛び回るメビウスに右手の天鳥船(アメノトリフネ)を投擲することで撃墜すると、友軍のジンが相手をしているMAメビウス・ゼロへと向かう。

 

メビウス・ゼロはガンバレルを分離させてジンを沈めようとした瞬間、レオハルトが援護に入る。空いた右手に40mmビームライフルを手にすると、メビウス・ゼロに向けて射撃。

 

「ちいっ!」

 

現在の連合では、メビウス・ゼロを扱える者はたった一人。【グリマルディ戦線】の生き残りにして、MAでジンを撃墜するという偉業を成し遂げた男。

 

【エンデュミオンの鷹】ことムウ・ラ・フラガはレオハルトの銃撃を、ガンバレルを素早く回収し離脱。だが、レオハルトは攻撃を緩めることなくビームを精確に撃って行く。

 

「リベラント隊長!」

「こいつは俺が引き受ける」

「申し訳ありません……」

 

ムウの攻撃によって左腕を破損したジンは、重突撃銃で敵機を牽制しながらヴェサリウスへと帰還していく。その様子を尻目に、レオハルトはムウへと攻勢を仕掛ける。

 

「(何だ、この奇妙な違和感は……)」

 

ムウ操るメビウス・ゼロへと攻撃を仕掛けながら、レオハルトは奇妙な感覚に襲われていた。今まで感じたことのない、何とも表現しがたい感覚である。あえて表現すると、それが奇妙なのだ。

 

「お前、ラウ・ル・クルーゼか!」

「連合にラウの知り合いがいたとはな。驚きだ」

 

突然聞こえてくる声に、レオハルトは驚くことも無く対応する。だが、対照的に声を掛けたムウは驚いていた。

 

「クルーゼじゃない?」

「一応名乗っておこうか。俺はレオハルト・リベラント」

「あらら、意外と律儀だこと。俺も名乗らないわけにはいかないね、こりゃ。俺はムウ・ラ・フラガ」

「……高名な【エンデュミオンの鷹】が相手とは。本気でやらなければいけないな」

「それはこっちのセリフでしょう。【ZAFT】のトップエースに本気でやられたら、すぐ終わっちゃうって。気楽に行こうよ」

「何となく嫌な予感するんでな。早めに終わらせよう」

 

そう言うと、レオハルトはフットペダルを踏み込むと同時に操縦桿を手前に引き戻す。ムウのガンバレルやリニアガンの猛攻から距離を取っていたレオハルトは、真正面からムウに立ち向かっていく。

 

ムウは目を見開いて驚きつつもすぐにガンバレルで対処するが、レオハルトは機体をわずかにずらすことで回避。レオハルトは左手に持っていた天鳥船(アメノトリフネ)をガンバレルに向け投擲。

 

「……っ!!」

 

突然のことにムウは回避行動を取ることが間に合わず、ガンバレルが一基大破。レオハルトは右手にビームライフルを手にしながら、左手の指先から真紅のビームクローを顕現させる。

 

「ビームサーベル!?」

「驚いている暇があるのか?」

「無いよ!クソッタレが!!」

 

ガンバレルを回収して距離を取ろうと試みるムウ。だが、レオハルトはすでに【グリマルディ戦線】でメビウス・ゼロとの戦い方は心得ている。

 

「悪手だな」

 

レオハルトは五本の指のビームクローをガンバレルに突き刺し一基破壊すると、構えたビームライフルの引き金を二度引く。発射されたビームは、吸い込まれるように残りのガンバレル二基を貫く。

 

「マジかよ、このヤロウ!」

「……」

 

最後の悪あがきとばかりに、ムウは機体を反転させるとリニアガンの銃口をレオハルトへと向け引き金を引く。だが、放たれた攻撃はJUPPITER(ユピテル)にはカスリもしない。

 

「速すぎでしょーが!!」

 

レオハルトは素早くサイドに回り込むと、ビームライフルでリニアガンを貫き破壊。ムウは仕方なく戦線を離れていくが、レオハルトは追撃に向かわず本命である【足つき】へと機体を向ける。

 

その時、艦への攻撃を行っていたナスカ級の主砲が、連合の最後の艦を貫いた。レオハルトはそちらにわずかに視線を向け、次にアスランと戦闘を繰り広げる敵機へと向ける。

 

「(あの動きは……)」

 

若干の疑問を覚えながらも今は戦闘中だと頭を切り替えると、【足つき】へと視線を移すと撃沈へと動き出す。

 

「こちらは地球連合軍所属艦【アークエンジェル】。当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している」

「(なに!?)」

「……」

 

突然聞こえてきた敵艦からの全周波放送。その中で告げられた一言に、アスランは驚きのあまり動きを止めてしまい、レオハルトも同様に機体を停止させた。

 

保護していると言う証拠のためか、ヴェサリウスのメインモニターにはラクスが背後に写り込んでいる映像が映し出される。その事実に、アデスは思わず声を上げた。

 

「偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが。以降、当艦へ攻撃が加えられ場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、当方は自由意思でこの件を処理することをお伝えする」

 

それはつまり、攻撃を加えればラクス・クラインを殺害するということ。ラクス・クラインが死亡すれば、心置きなく攻撃を加えることは可能だ。

 

だが、彼女が死なせてしまった場合のデメリットを考えれば、プラスよりマイナスの方が大きいと言わざるを得ない。

 

彼女は【プラント】の象徴とも言うべき存在であり、議長であるシーゲルの実の娘でもある。万が一のことがあれば、責任を取るでは済まされない。軍事法廷に掛けられ、死刑となるだろう。

 

「卑怯な!!」

 

伝えられた通告にアスランは拳を振り上げると、モニターを思いっ切り殴り付ける。自身の婚約者を人質に取られてしまったのだから、当然ともいえる反応である。

 

「格好の悪いことだな。援護に来て不利になると、これか」

「ラウ」

「分かっているさ、レオ。攻撃中止。総員、帰投しろ」

 

クルーゼはそう指示を出すと、レオハルトは機体を反転させヴェサリウスへと向かう。アスランは強く唇を噛み締めながら、相対する【ストライク】を睨み付けるのだった。

 




ちなみに、今回のユピテルの武装ですが。
天鳥船(アメノトリフネ)、自分でも結構気に入っています。

次回も週末には更新する予定です。
では。
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