機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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お待たせしました。

最近、やけに順調に進んでいるので怖くなってきた作者です。
まあ、調子がいいんでしょう。

では、本文をどうぞ。


Mission - 13 歌姫の帰還

「救助した民間人を人質に取る。そんな卑怯者と共に戦うのが、お前の正義か!キラ!!」

「アスラン……」

「彼女は助けだす!必ずな!!」

 

同じコーディネイターでありながら連合の新型機動兵器、最後の一機のパイロットであるキラ・ヤマト。その彼は、アスランの月の幼年学校に通っていた頃の親友。互いのことを知り尽くした親友である。

 

戦場で再会という残酷な事実の前にも、その関係は変わらない。だからこそ、アスランは分からない。そんな親友が何故、民間人を人質に取るという暴挙を犯す者達に味方するのか。

 

「どうした、アスラン。帰投するぞ」

「……はい」

 

なかなか動かないアスランに気付き、レオハルトが声をかける。アスランは絞り出すようにして答えると、レオハルトの後を追い帰投した。

 

ヴェサリウスに帰投すると、レオハルトとアスランはMSを整備員に任せ、そのまま艦橋に向かう。アデスも含めた四人で会議が始まる。

 

「このまま後を追ったところで、ラクス嬢が向こうに居られてはどうにもならんな」

「連中も月艦隊との合流を目指すだろうしな」

「しかし、このままみすみすラクス様を艦隊には」

 

アデスの言うとおり、ラクスが敵の手に落ちている以上、レオハルトたちに手を出すことは出来ない。手を出せばラクスの身に危険が及んでしまう。

 

かといって、このまま彼女が月艦隊、あるいは月基地に到着すれば連合軍は歓喜するだろう。現最高評議会議長の娘である彼女の利用価値は計り知れない。

 

「ガモフの位置は?どのくらいでこちらに合流できる」

「現在、6マーク509イプション0コンマ3です。合流には、七時間はかかるかと」

「それでは手を打つ前に合流されてしまうか。……難しいな」

 

何とも歯がゆく手をこまねいているしかない現状に、アスランは苛立ちを抑えることが出来ない。

 

「レオ、何か手はないかね?」

「無茶を言うな、ラウ。俺にだって出来ないことはある」

「さすがに、この状況では君でも無理か。現状維持しか無いということか」

「ヘタに手を出すわけにもいかない」

「そうだな。MSは万全にしておけ。いつでも出れるようにな」

 

まともな方策も無いまま、会議は終了。解散となった。

 

クルーゼは艦橋を離れると、一時的な休息のため部屋に戻った。

 

クルーゼがシャワーを浴びてシャワー室から出ると、部屋にはレオハルトが待っていた。

 

「邪魔しているぞ」

「レオ。……っ!」

 

レオハルトはクルーゼに背を向けた状態でソファに座っていた。クルーゼは足を踏み出した瞬間、あることに気付く。ついさっきまでシャワーを浴びていたため、仮面を付けていない。

 

クルーゼにとって、素顔は多くある秘密の一つ。クルーゼは思わず顔を背けるが、レオハルトはいつも通りの声で話しかける。

 

「心配するな。……素顔を見る気はない」

「……それは助かる。……それで、何の用かね?ロックを破ってまでの用ということか?」

 

【ZAFT】に所属している艦の個室には、それぞれ扉を外部から開けさせないためのロックがかかっている。だが、レオハルトはハッキングなどの情報工学のプロ。あの程度のロック、数秒もあれば破れてしまう。

 

「聞きたいことがあってな」

「何かな?」

「最後の一機、【ストライク】と言ったか。あれに乗っているのは、本当にナチュラルか?」

「……何故、そう思うのかね?」

「アスランとの戦闘を見てそう思った。あれは、ナチュラルの動きでは無い」

 

戦闘中、わずかな時間とはいえレオハルトは【ストライク】の動きを見た。互いの機体が互角ならば、最後はパイロットの腕が勝利を左右する。

 

ここで問題なのは、【G兵器】の当初のOSはヒドイものだった。そのOSを、この短い期間で連合が完成させた可能性は皆無と言っていい。

 

そのOSをコーディネイターと互角に戦える程度に構築し、操縦できる者。考えられるのは、コーディネイターだけ。

 

「……」

 

推測とはいえ、ほぼ確信に近いレオハルトの考えを聞き、クルーゼは口を閉ざす。頭に掛けたタオルで濡れた髪を拭きながら、何かを思いついたようにクルーゼは笑みを浮かべた。

 

「そういえば、君には言っていなかったな。君の言うとおり、あれに乗っているのはコーディネイターだ。しかも、まだ子どもだ。アスランと同い年の」

「……その情報を削除したのは、誰の指示だ?ザラ委員長か?」

「鋭いな、君は。隠し事は出来んようだ。その少年はアスランの昔の友人らしくてな。名は……キラ・ヤマトという」

「……戦争によって再会するとはな。皮肉なことだ」

 

レオハルトは立ち上がると、そのままドアへと歩いて行く。

 

「もういいのかね?」

「聞きたいことは聞いた。充分だ」

 

そう言い残しレオハルトは部屋を後にすると、一時的に割り当てられている部屋に入る。部屋にロックが掛かったのを確認し、服を脱ぎ捨てシャワー室へと入った。

 

「何故…………」

 

熱いシャワーを頭の上から浴びながら、レオハルトは下を向いたまま動かない。振り上げた拳で壁を殴ると、レオハルトはゆっくりと顔を上げた。その顔に感情は無く、能面のように無表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

時計の針が夜中を指した頃、突如【アークエンジェル】から【ストライク】が発進。それを確認したヴェサリウスでは、すぐに戦闘態勢へ移行。パイロットは発進準備に入る。

 

それはレオハルトやアスランも例外ではなく、シートに身体を預けると機体を起動させていく。

 

「こちら地球連合軍【アークエンジェル】所属のMS、【ストライク】。ラクス・クラインを同行。引き渡す。ただし、ナスカ級は艦を停止。AEGIS(イージス)のパイロットが単独で来ることが条件だ。この条件が破られた場合、彼女の命は保証しない」

 

全周波放送で聞こえてくる、【ストライク】パイロットからの声。切り札ともいえる存在、ラクスを返還するという。予想もしていなかった行動に、アデスは混乱する。

 

「どういうつもりだ、【足つき】め」

「隊長、行かせてください」

 

アデスが裏に隠された真意を考えていると、モニターにアスランが映り込む。

 

「敵の真意はまだ分からん。本当にラクス様が乗っているかどうかも」

「行かせてやれ」

 

アデスがアスランの言葉に反論した時、アスランとモニターを分割する形でレオハルトが割り込んでくる。

 

「もしラクス嬢が乗っていなかったとして、こんなことをするメリットは何だ。不意打ちか?無理だな。【足つき】とはかなり離れている。有効射撃は難しい。AEGIS(イージス)の撃破か?違うな。ラクス嬢の身柄とMS一機。どちらにメリットがあるかは分かるだろう」

「ですが、リベラント隊長!」

「……わかった。許可する」

「ありがとうございます!」

 

アスランはクルーゼの許可に笑顔を見せながら礼を言うと、モニターから消える。アデスは許可を出したクルーゼへと顔を向ける。

 

「よろしいのですか?」

「チャンスであることも確かさ。レオの言うことにも一理ある。……フッ、向こうのパイロットもまだ幼いようだな」

 

後半部分は小声で呟くと、クルーゼはモニターに映るレオハルトへと視線を向ける。

 

「レオ、行けるか?」

「ああ」

「では、任せよう。アデス、艦を停止させろ。あとは、レオに任せよう」

 

アスランが出撃した後、レオハルトはカタパルトへと移動。いつでも出撃出来る状態になると、ヴェサリウスはエンジンを停止した。

 

ヴェサリウスやレオハルトから映像を見ることは出来ないが、管制官がレーダーで監視している。

 

「敵MS、離れます!」

「エンジン始動だ、アデス!レオ!」

「レオハルト・リベラント、出撃()るぞ!」

 

瞬間、ヴェサリウスは停止させていたエンジンを点火。それによって、カタパルトにもエネルギーが供給されると、レオハルトのJUPPITER(ユピテル)がヴェサリウスから出撃する。

 

「ナスカ級より、UNKNOWN(アンノウン)出撃!」

「(UNKNOWN?ってことは、あいつか!死んじゃうんじゃないの、俺!)」

 

JUPPITER(ユピテル)が出撃したことはすぐに【アークエンジェル】にも察知され、すぐにムウのメビウス・ゼロが出撃する。

 

だが、先の戦闘でガンバレルをすべて潰されたゼロ。当然ガンバレルの修理は終わっておらず、万全の状態に仕上げるには時間が少なすぎる。そのため、武装は応急処置程度しか終わっていないリニアガンのみでの出撃である。

 

「リベラント隊長!?」

「アスラン、すぐに帰投しろ。奴らは俺が討つ」

「ですが……!!」

 

シグーを軽く上回る速度でAEGIS(イージス)を通り過ぎると、レオハルトは【ストライク】へと向かって行く。

 

「……」

 

レオハルトは操縦桿を強く握り締めつつ、【ストライク】をその瞳で見据える。

 

「レオハルト・リベラント隊長」

「?」

「追悼慰霊団代表のいる私の居る場所を、戦場にするおつもりですか?」

「(ちっ!こんな時に何を!)」

 

アスランと共にAEGIS(イージス)に乗っていたラクスは、全周波放送のボタンを押しレオハルトに呼びかける。ヴェサリウスの艦橋で、ラクスの言葉にクルーゼは舌打ちをする。

 

「そんなことは許しません。すぐに戦闘行動を中止してください」

「お断りします。敵が目の前にいれば、戦うのが軍人です。それに、民間人であるあなたの命令を聞く必要も無い。私は【FAITH】。クライン議長閣下、ザラ国防委員長以外の人間の命令を聞く必要はありません」

「それは……」

「アスラン、早く帰投しろ。まともに戦えないだろう」

 

レオハルトはラクスの言葉に真っ向から反論して論破すると、アスランに早く帰投するように促す。レオハルトは両手を左右の腰へと伸ばすと、JUPPITER(ユピテル)の主武装、天鳥船(アメノトリフネ)を引き抜く。

 

現在の天鳥船(アメノトリフネ)ではPS(フェイズシフト)装甲を斬ることは出来ないため、機体を操作し天鳥船(アメノトリフネ)へとエネルギーを供給。天鳥船(アメノトリフネ)の刃の部分が、ビームと変化する。

 

「(ここで潰しておきたいところだが……。後々、この件が厄介なことになりかねんか。仕方ない)……レオ」

「……」

「ここは私に免じて、退いてくれないか?」

「命令か?」

「いや、友としての願いだ」

「……」

 

レオハルトは操縦桿を手前に戻しJUPPITER(ユピテル)を反転させると、先に離脱していたアスランと並行して帰投していく。

 

「貸しだぞ、ラウ」

「やれやれ、大きな借りを作ってしまったよ」

 

サブモニターに映るクルーゼにそう声をかけると、通信を切ったクルーゼの姿が消える。レオハルトがふと視線を落とすと、右手が震えていることに気付く。

 

「…………」

 

レオハルトは右手を強く握り締めると、離れていくモニター上の【ストライク】へと拳を振るった。レオハルトは操縦桿を握り直すと、小さく呟いた。

 

「……次は、討つ」

 

手の震えは、いつの間にか治まっていた。

 




今回の話で、新たな謎を皆さんの中に投下出来たのではないかと思います。

……まあ、なんとなく分かっちゃった、って人もいるかもしれないですけど。
出来れば、その予想を覆したいところですね。

次の更新ですが、分かりません。
あまり遅くならないように更新したいと思います。
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