機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
今回は短めです。話もほとんど進んでないです。
次回は、初っ端から戦闘で行きます。
ヴェサリウスへと帰投後、アスランはラクスを部屋に案内し、レオハルトは軍服に着替えると艦橋に向かった。
「ラウ」
艦橋に入ると、レオハルトは椅子に腰を下ろしているクルーゼに声をかける。
「すまないな、レオ。せっかくのチャンスを」
「俺は【FAITH】という立場上何とでもなるが、お前はそういうわけにはいかないからな。貸しだ」
「大きい貸しになりそうだ。いずれ返そう」
「期待しないで待っている」
レオハルトは小さく笑みを見せると、クルーゼは話題を変える。
「我々はこれから、ラコーニの部隊と合流予定だ。ラクス嬢を引き渡した後は、再び【足つき】攻撃のためにガモフ、ツイーグラーと合流する。君はどうする?」
「ザラ委員長から命じられたラクス・クライン捜索はすでに果たしている。ここからは、俺の好きにさせてもらう」
「そう言うと思ったよ。了解した」
レオハルトはこれからの自分の方針をクルーゼに伝え了承すると、レオハルトは艦橋を後にする。
レオハルトは艦橋を出て仮部屋へと向かっていると、正面からアスランが現れた。その表情は険しく、婚約者と語らった後とは思えなかった。
「……リベラント隊長」
「ラクス嬢はいいのか?」
「はい……。リベラント隊長、少しお時間いいですか?」
「……入れ」
レオハルトはアスランを部屋へと招き入れると、冷蔵庫からミネラルウォーターの入ったボトルをアスランに一本手渡す。
「それで、何の用だ」
「…………」
レオハルトの問いにも、アスランは俯いてしまい口を開かない。それほど言いにくいのか、口にするのも憚られることなのか。だが、レオハルトはアスランの言いたいことに察しがついていた。
「……先程の出撃のことか?」
「……はい」
アスランと【ストライク】との間に行われた、ラクス・クラインの引き渡し。その際、レオハルトは引き渡しが完了してすぐに出撃。敵撃墜へと動いた。
これはアスランにしてみたら予想外であり、自身たちの信頼を汚された気分になっていた。
「あれは、【ストライク】のパイロットとの取引でした。裏は無いと確信していました。なのに……」
「【ストライク】のパイロットが、お前の友人だからか?」
「!」
「アスラン。俺たちは何だ」
「……軍人です」
レオハルトの問いに、アスランは困惑しながらも答える。レオハルトから厳しい視線を向けられ、アスランはわずかにたじろぐ。
「敵は討つ。それが俺たちの仕事だ。戦争に信頼と優しさを求めるな。その優しさは、お前の欠点だ。その優しさは、いずれ誰かを殺すぞ」
「っ!!」
「それがお前なのか他の人間なのかは知らないがな。覚悟を決めろ。それが出来ないなら、【ZAFT】を辞めろ。それが、お前のためだ」
「……」
戦争は汚いものだ。戦争に綺麗事など吐いていられない。言えるとしたら、戦争を知らない人間だけだ。
自分を、友を、家族を、愛する者を。そして、故郷を。それらを護るため、レオハルトは自らの手を血で汚す。すでにレオハルトの手は、真っ赤だ。いや、手どころか全身だ。
頭の先から足のつま先まで、これまで討ってきた者達の返り血で穢れている。いまさら、この罪から逃れようとは思っていない。それならば、後の世のために手を汚す者が一人でも少なくなるようにと、それだけを願いレオハルトはMSに乗る。
レオハルトはベッドサイドに置かれていたケースからカプセルを手にすると、ミネラルウォーターで流し込む。
「……それは?」
「ただのビタミン剤だ。それより、よく考えろ」
「はい……」
アスランは肩を落とし部屋を出て行くと、レオハルトは小さく溜め息を吐いた。
アスランが優しい人間だということは、レオハルトも理解している。仮にアスランが一般人だったら、長所と言えるだろう。だが、その情けが、自身の命を。もしかしたら、仲間の命を危険にさらす可能性もある。戦争と戦場には、優しさは不要な感情なのだ。
「……ゴホッ、ゴホッ!!……後味の悪いビタミン剤だ」
それから数時間程で、ラクスの出迎えのために待機していたラコーニ隊との
小型艇の周辺にはラクスの見送りのために大勢の兵が集まっており、アスランと共にやって来るラクスへと敬礼をしていた。
小型艇の入口にはクルーゼとレオハルトが立っており、敬礼をしてラクスを出迎える。
「クルーゼ隊長、リベラント隊長。色々とお世話を掛けました」
「お身柄は、ラコーニが責任を持ってお送りするとのことです」
「ヴェサリウスは、追悼式典には戻られますの?」
「さあ。それは分かりませんが」
「リベラント隊長はどうです?」
「……難しいかと思います」
ラクスの問いに、レオハルトの脳裏に【ユニウスセブン】で散ったフィアナのことがよぎる。だが、レオハルトはそれを払うと否定の言葉を返す。
「戦果も重要なことでしょうが、犠牲になる者のこともどうかお忘れなきように」
「肝に銘じましょう」
「クルーゼ隊長に同じく、肝に銘じます」
「何と戦わねばならないのか。戦争は難しいですわね」
ラクスの言葉に二人は同じ言葉を返すと、ラクスは横に立つアスランへと顔を向ける。その言葉に、アスランの表情が曇る。
【プラント】の敵は連合。では、連合に味方する自らの親友も敵なのか?その答えが出ることはなく、アスランの思考は堂々巡りとなる。
「では、またお会い出来る時を楽しみにしておりますわ」
ラクスが小型艇に入って行くのを見届けると、レオハルトらは艦内へと戻る。艦底部から吐き出され、ラコーニのローラシア級へと向かって行く小型艇を見送る三人。
「何と戦わねば、か。……イザークのことは聞いたな」
「……はい」
「【ストライク】。討たねば、次に討たれるのは君かもしれんぞ」
アスランにそう言い残し、クルーゼは艦橋へと戻って行く。その後を追うように、レオハルトもその場を離れる。離れて行くその背を見送りながら、アスランは迷いを断ち切れないでいた。
そして、クルーゼの口にしたイザークのこと。それは、【足つき】が艦隊と合流を目前にした時、ガモフは
だが、【ストライク】の攻撃により
「意地の悪いことを言うな」
クルーゼに追いつくと、レオハルトはそう声をかける。だが、クルーゼは深い笑みを浮かべるだけ。これがラウ・ル・クルーゼという男なのだ。そのせいで、昔から色々とあったものである。
「だから皮肉屋と言われるんだ、お前は。悪い癖だぞ」
「生憎と、これが私でね。もう治らんさ」
「だろうな。俺もそう思う」
「ふふっ。君も私と同じではないか」
「お前と長く一緒にいたせいで、
「謝った方が良いかな?」
「いや、必要無い。お前に謝られると、何か裏があると勘繰ってしまう」
レオハルトの笑みを浮かべながらの言葉に、クルーゼも同様に笑みを浮かべる。互いに顔を見合わせると、自然と笑い声が漏れる二人。
今の二人は【ZAFT】のエースではなく、以前からの友人。親友に戻っている。戦艦の中だというのに、そこに張り詰めた雰囲気など微塵も無く感じられなかった。
その後も、ヴェサリウスはガモフやツィーグラーとの合流を目指し航行。
そして、ようやく両艦と合流。クルーゼは動き出す。
「ツイーグラーとガモフ、合流しました」
「発見されてはいないな?」
「艦隊は大分降りていますからね」
クルーゼが捉えた獲物。それは、艦隊と合流した【足つき】。獲物は大きい。
クルーゼはアデスの座る椅子を軽く押し身体を反転させると、艦長席の後ろにある設置型モニターへと視線を向ける。
「月本部へと向かうと思っていたが。奴ら、そのまま【足つき】を地球へ降ろすつもりだな」
「降下先はアラスカだな」
不意に聞こえる第三者の声。二人が視線を声のした方へと向けると、レオハルトが艦橋に入って来たところだった。
「【ストライク】の実動データを元に、MS量産に向けて動き出すつもりだろう」
「ふむ……。出来れば、こちらの庭にいるうちに沈めたいものだが。どうかな?」
「ツイーグラーにジンが六機。こちらに、
「智将ハルバートン。そろそろ退場してもらおうか」
ヴェサリウスはラコーニと合流した際、ジンとパイロットを補給要員として迎え入れいてる。三隻合計して、戦力は十四機。そのうち、四機が最新鋭と言って問題ないMS。パイロットも優秀。
連合側は、相当な数のMAが無ければ厳しい状況と言えるだろう。
「レオ。MS部隊の指揮は任せていいかな?」
「いざとなればやろう。だが、それまでは各々の判断でやらせろ。命令が無ければ何も出来ない有象無象はいないだろ、【ZAFT】には」
「ふっ、確かに。では、万が一の時は任せる。出撃は十分後だ」
「了解した」
レオハルトは艦橋を出ると、そのままいつでも行けるようにパイロット更衣室に向かう。その途中、艦内放送で戦闘があることが告げられる。
基本、レオハルトはクルーゼと同様、パイロットスーツを着ることはない。というより、着たのは数える程度、片手で足りるほどだ。
そのレオハルトが、今回は久し振りにパイロットスーツへと袖を通す。今度の敵は艦隊である。今までの戦闘と比べて、艦の数も多くMAの数も違う。
今回の戦闘、レオハルトはスピードが重要だと考えている。敵は現在、通常より低い位置にある。作戦の際にも話していたように、本命である【アークエンジェル】は地球へと降下するのが目的だろう。
普通のMSでは大気圏を単体で降下出来ることも無い。深追いし過ぎると、地球の引力で引っ張られてしまう。
素早く敵艦隊を沈め、【アークエンジェル】を撃沈させる。もたもたしていると、敵は地球へと逃げてしまう。だからこそ、必要なのはスピード。それが鍵を握っている。
そのため、レオハルトは今回の戦闘では
「違和感だな……。まあ、仕方ないか」
自動ドアが開く甲高い音に視線を向けると、そこにはアスランが立っていた。アスランはレオハルトに気付くと、複雑そうな顔を浮かべる。
レオハルトの三つ隣のロッカーを開けると、取り出したパイロットスーツへと着替え始める。レオハルトは何も声をかけず、部屋を後にした。
レオハルトは更衣室の隣にある、格納庫へとすぐ行けるパイロット待機室のソファへと腰を下ろした。待機室に設置されているモニターには、小さく敵の姿が映っていた。そこには、【アークエンジェル】の姿も小さく映し出されていた。
「…………」
「……リベラント隊長」
振り返ると、そこにはパイロットスーツへと着替え終わったアスラン。その表情には暗いものがありつつも、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「リベラント隊長。俺は決めました。前に進むと」
「……そうか。なら、進め」
「はい」
今のこの状況で、彼らにゆっくり悩んでいる時間は無い。迷いを抱えつつも、アスランは前を向いて進むと決めた。
人間は神では無い。人間に未来を知る術は無い。いつかはこの時の決断を後悔するかもしれない。それでも、アスランは前に進むと決めたのだ。
「MS、発進は三分後。パイロットは搭乗機へ。各機、システムチェック」
艦内に流れる放送で出撃が近いことを知る。二人は格納庫へと向かうと、それぞれのMSのコックピットへと入る。MSを起動させると、各々がシステムに異常が無いかを入念に調べる。
「さて、作戦開始だ」
クルーゼの呟きと共にヴェサリウス、ガモフ、ツイーグラーからジンが次々と出撃。その時、レオハルトの耳にアデスの叫び声が届く。
「どうした、ラウ」
「イザークが出撃すると言って聞かないらしい。強引にMSに搭乗したようだ」
「どうするんだ?」
「ふむ。レオ、任せる」
先の戦闘の怪我でイザークは右目を包帯で覆っており、見えるのは左目だけ。戦闘では明らかに不利。だが、イザークは周囲の制止を振り切り出撃しようとしている。
イザークにとって問題なのは、【ストライク】の攻撃によって負傷した怪我ではない。イザークのプライドが許さないのである。今のイザークの最優先事項は、【ストライク】の撃破。それだけである。
レオハルトが丸投げの言葉に反論しようとするも、ラウはいち早く通信を切断してシャットアウトしてしまった。
「……イザーク」
「リベラント隊長!俺は大丈夫です!!出撃させてください!!」
サブモニターに映るイザークは、包帯を巻いた姿ながらもその瞳からは闘争心が溢れんばかりに噴き出していた。
「行けるんだな?」
「この程度の傷、問題ありません!!」
「言葉はいい。戦場で示せ」
「はい!!」
通信を切ると丁度アスランが出撃したため、最後となったレオハルトがカタパルトへと移動。
「レオハルト・リベラント、
次回の更新は、また来週。
もしかしたら、さらに来週かもしれないです。
問題は、本編の舞台が地球に移ってからですよね。
どうしましょうね。
あまり飛びすぎるのもどうかと思いますし。
じっくり考えます。