機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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前回申した通り、閑話です。
そして、短めです。

次は本編を進めます。


Mission - 17 深まる謎と憎悪

ムウ・ラ・フラガ side

 

完膚なきまでに叩きのめされ、仕方なく俺は【アークエンジェル】へと帰投した。

 

ジンと交戦していると突然乱入してきた、【ZAFT】の新型MS。当然、こちら側にデータなど無く、油断も過信も無かったつもりだった。

 

だが、結果は散々なものだった。ゼロのコックピットから降りた俺は、傷だらけの愛機へと視線を移す。

 

「大尉、無事ですかい?」

 

ちょっとした感傷に浸っていた俺に話しかけてきたのは、整備員をまとめるコジロー・マードック軍曹だ。

 

俺は軍曹を一瞥した後、再びゼロに視線を戻す。

 

「ああ、何とかな。まったく、とんでもない奴だったよ」

「大尉を瞬殺するとは、確かにとんでもないですな」

 

軍曹の発した瞬殺の言葉にショックを受けつつも、俺は先ほどの戦闘を反芻する。

 

ゼロの象徴とも言うべきガンバレルをあっという間に破壊され、残った最後のリニアガンも破壊された。俺に止めを刺さなかったのは、その必要が無かったからだろう。

 

武装も無い状態で戦場をうろつけば直にジンに墜とされる。【アークエンジェル】に帰還しても同じこと。奴らの目的は【アークエンジェル】の撃沈だ。つまり、艦が撃沈すれば、必然的に俺もお終いだ。

 

だが、その心配は無さそうだ。

 

「偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが。以降、当艦へ攻撃が加えられ場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、当方は自由意思でこの件を処理することをお伝えする」

 

俺たちが保護している、ラクス・クライン。プラント最高評議会現議長シーゲル・クラインの娘。……こんなことを言われちゃあ、【ZAFT】は手を引くしかないでしょう。

 

【ZAFT】のトップエースがいるこの状況だ。まあ、艦長や副長は知らないだろうけど。その判断は間違ってはいないんだけどねぇ。

 

「やれやれ、やっちいまいましたな」

「……まあ、仕方ないことではあるな」

「坊主は納得しないでしょうな」

「むしろ、納得しない方がいい。あいつは軍人じゃないんだ、こんな汚いやり方に反感を覚えて当たり前だ」

「……ですな」

 

軍曹とたった今聞こえてきた放送について考える。俺も軍曹も、納得はしていない。だが、これしか方法が無かったということは理解できる。

 

「【ストライク】、帰投します」

「坊主のお帰りだ」

「やれやれ、怒られるな」

「大尉の仕事ですな。いい兄貴分として」

「勘弁して欲しいよ」

 

その後、予想通り坊主からさっきの放送について問い詰められるが、俺たちの無力のせいだと言って黙らせる。

 

まったく、坊主には酷だなこりゃ。

 

 

 

 

 

俺は奴のことを一応耳に入れておこうかと思い、艦長の下に向かった。あとは、あの件についてもな。

 

もしかしたら居ないかとも思ったが、無駄足にならずに済んだようだ。

 

「あら、大尉?どうかしましたか」

「大丈夫かと思ってな」

「……キラ君は、何か言っていましたか?」

「……こんな卑怯なことをするのが、地球軍っていう軍隊なんですか、って言われたよ」

「そう言われても、仕方ないことをしました。キラ君の言うことも当然だわ」

 

聞いた話だと副長の独断だって聞いたが、彼女を一方的に非難するわけにもいかない。あの選択が最良だったかはわからないが、最善の手だったことは間違いだろう。

 

俺たちの感情は別にしてな……。

 

「しかし、俺も大人げねぇな。坊主に、俺たちの力が無いからだって言っちまったよ。あいつは、俺たちに協力してくれているだけなのにな」

「……」

「坊主には重荷ばっか背負わせちまってるからな。正規の軍人の俺が、あんな簡単に退いてちゃあな」

「大尉が完全に封殺された敵。相当な腕ですね」

「相当な腕も何も、【ZAFT】のトップエースさんだったよ」

「? 話されたんですか?」

「えっ?いや、まあ、ちょっとな……。あの機体のパイロットはレオハルト・リベラントだよ。名前くらいは聞いたことがあるだろ?」

 

レオハルト・リベラント。

 

奴のことは俺たち連合内部でも有名だ。【世界樹】、【ヤキン・ドゥーエ】、【グリマルディ】。これら三つの大戦場を渡り歩き、多大な戦果を挙げた【ZAFT】を代表するエースパイロット、と聞いている。

 

すべては軍の諜報部が調べた情報だが、戦ってみたところあながち間違いではないようだ。

 

「レオハルト・リベラント。我が軍では、【黒鷹(コクヨウ)】と呼ばれている青年ですね」

「ああ。確か、年齢は21だったな。まだ若いのにあれほどの実力とは、恐れ入るよ。まるで相手にならなかった」

「そんな人物がいるなんて……。Xナンバーだけでも厄介なのに。どうしたらいいのかしら……」

「……まぁ、そう思い詰めない。疲れてるでしょ?疲れてる時に悩んでも、いい考えは出てこないぜ。休むことも大事ってね」

「ええ、ありがとうございます」

 

艦長の笑顔を見届けると、俺は艦長室を後にした。

 

しかし……。

俺には一つ気になっていることがある。

 

俺は何故か、クルーゼのヤロウの居場所が判る。理由は分からん。だが、問題はそこじゃない。いや、いいわけではないんだが、それはもう諦めている。

 

問題なのは、今回の戦闘でもクルーゼの気配を感じたが、結果はヤツではなくレオハルト・リベラントだったという点だ。

 

どういうことだ?俺とクルーゼ、俺とあいつにどんな関係があるって言うんだ。

 

今になって考えてみると、クルーゼの時とはどこか違かったようにも思える。何ていうかこう、ノイズが混じっているというか、不純物が混じり合っているような……。

 

「……あ~っ!!くそっ!止めだ、止めだ!考えたってしょうがねぇや。……飯でも食うか」

 

俺は考えることを放棄すると、丁度見えてきた食堂へと足を向けるのだった。

 

ムウ・ラ・フラガ side end

 

??? side

 

某年某月某日

 

「気を付けてね」

「お母さんたちもね。今はまだ大丈夫だけど、コーディネイターとナチュラルの関係は日に日に悪化しているわ」

 

母の心配の言葉に、私は逆に母と父に心配の言葉を掛ける。

 

私はこれから【ZAFT】に入隊するため【プラント】に向かうが、両親は各地の紛争地帯や貧困地域を回り医師として活動する。

 

離れ離れになってしまうが、医師としての活動が両親にとってかけがえのないことなのだ。私自身、医師としてコーディネイターやナチュラルということは関係なく、医師として活動する姿は私にとっても誇りである。

 

「お母さんたちは大丈夫よ。あなたの方が心配だわ」

「大丈夫。お父さんも気を付けてね?」

「……ああ」

 

私の言葉に、昔から不器用で無口な父はそっぽを向いて短く返事をするだけだ。でも、私の父親はこういう人なのだ。

 

だからと言って、優しくないと思ったことは無い。厳しく、そして優しく私を育ててくれた、自慢の父である。

 

「そろそろ時間。それじゃあね、お父さん、お母さん」

「ええ。頑張ってきなさい」

「うん」

「……気を付けてな」

「えっ?」

 

そろそろ宇宙に上がるシャトルの時間に気付き踵を返すと、背中から父の優しげな声が聞こえる。自然と、私の両目から涙が流れる。

 

でも、私は振り返らない。涙を拭い、私は搭乗ゲートをくぐる。

 

 

 

 

それから一年。

 

予定通り、私は【ZAFT】への入隊を果たした。エリートの証である赤服を着て。

 

配属されたのは、【ZAFT】でも有数のエリート部隊。異動した人物の代わりとして、私が配属されることになった。その人の代わりとなるだけの仕事が出来るかどうかは不安だが、やるしかない。

 

そして同時期に、【プラント】は【オペレーション・ウロボロス】を発動。核を撃ち込まれ壊滅した【ユニウスセブン】の報復として、核分裂を抑制する【Nジャマー】を地球各地に投下した。

 

正直、この作戦には疑問を感じている。対戦国のみでいいのではないだろうかと感じてしまう。だが、将来の芽を摘むこともあるのだろうと考え、私は口をつぐんだ。

 

だが、それが間違いだったと知ることになる。

 

核分裂を抑制されたことで、地球では暖を取るためのあらゆる物資の奪い合いが始まった。その被害に、地球で医師活動をしていた両親も巻き込まれた。

 

両親をやったのは、懸命に助けたナチュラル。コーディネイターという理由で、真っ先に狙われたそうだ。一緒に活動していた医師の人たちから聞いた。

 

その人たちも、命からがら逃げ出したという。その人たちを責めるつもりはない。まずは自分の命なのだから。

 

でも!!

 

両親に大恩がありながら、奴らは!!

 

発端は、【ユニウスセブン】に核を撃ち込んだ連合!きっかけを作ったのは、【Nジャマー】を無差別に地球に撃ち込んだ【プラント】!!

 

ナチュラルもコーディネイターも関係ない!!コーディネイターを化け物と罵る【ブルーコスモス】、【Nジャマー】によって死んでいった命に興味を示さないコーディネイター!!

 

これほどまでに憎んだのは初めてだ!許せない!許せない!!許せない!!!

 

狂っている!腐っている!この世界に住む人間は!!今の人類に、何の価値がある!!

 

そんなものは無い。裁きを下すものがいないなら、私が!

 

そんな時、私の前に悪魔が舞い降りた。

 

「猛々しく燃え盛る憎しみの炎。人類を恨む者の瞳だ。そうだろう?……どうだろう?共に、人類に復讐しようではないか」

 

差し出される手。悪魔のささやき。

 

私は、その手を取った。人類への復讐のために。

 

??? side

 

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