機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
良かったです。
前話のあとがきで前後編にするかもしれないと言いましたが、よく考えたらする必要が無いことに気付きました。
この回にそこまで盛り上がる山場も無いので、軽く行きます。
それと、作戦に参加するMSの数を変更しました。
レオハルトがジブラルタル基地に戻った翌日。
ハーヴィッツの言葉通り、リスボン基地攻略作戦の準備が完了。その後、作戦に参加する人員の休憩を取り、その時がやってきた。
今回の作戦のために編成されたのはボズゴロフ級五、ディン六、ジン六、グーン八。総数、二〇。そして、レオハルトの
ちなみに、ハーヴィッツはウォンの代わりに指揮を執る副指令の補佐としてジブラルタルで留守番をしている。
すべての機体は潜水母艦ボズゴロフ級五隻に格納され出港した。全艦は潜航可能深度ギリギリまで一気に潜ると、リスボン基地に進路を取った。
念には念を入れ、全艦は目的地まで静かに航行するためゆっくりと移動。ユーラシアの警戒範囲ギリギリまで四時間ほどで到着すると、レオハルトは全艦に停止を命じた。
「さて、着いたな。作戦開始予定時刻まで、あと一時間か」
「ふむ。さて、まずは情報収集ですかな」
「ええ。無人偵察機を飛ばしましょう」
「情報は命ですからな。旗艦リエンツィより、僚艦アイーダへ。作戦開始時刻までに、情報収集を行う。無人偵察機を飛ばせ」
「僚艦アイーダより、旗艦リエンツィへ。命令、了解。無人偵察機を飛ばす」
ウォンは通信で僚艦の一隻である“アイーダ”に命令を出すと、“アイーダ”は海面まで浮上し無人偵察機を三機、垂直射出した。
この無人偵察機、通称【ヌル】には自立思考のAIが搭載されており、その思考は同時に射出された他の【ヌル】と常にリンクしている。さらに、収集したデータはリアルタイムで旗艦に送られてくる。
そのため、射出された三機は同じ場所を撮影することなく、効率良く情報収集することが可能になっている。このAIは各設計局が合同で開発しており、C.E.71に入ってから【ZAFT】地上軍で実用化が始まっている。
ちなみに、【ヌル】は地球の大気中にある微粒子などで異常を起こさないよう特別に改良されており、宇宙では【ゼーロ】と名付けられた無人偵察機が存在している。
「映像はクリアですね」
「目立った動きは無いようですな。今のところは」
それから、レオハルトらは【ヌル】を十五分ほど飛ばして情報収集を行った。結果、敵に動きは無く、こちらの動きにも気付いていない可能性が高いということが判明した。
そのため、レオハルトは次に行動に移る。
「各艦につなげてくれ」
レオハルトがそう言うと、オペレータがすぐに他の五隻のボズゴロフ級との通信を開く。
「こちら旗艦リエンツィ。今回の作戦の指揮を執る、特務隊レオハルト・リベラントだ。作戦を確認する。作戦開始と同時に、僚艦“シャールカ”“ファルスタッフ”よりグーン発進。グーンの攻撃と同時に、全艦で敵基地に魚雷を発射」
レオハルトの言葉は各艦に流され、それを通して艦内放送として流されている。レオハルトは視線の先に見える、データ化されたリスボン基地映像を見据える。
「間髪入れず、“アイーダ”“マノン”よりディン発進。ディンは敵機体が格納されていると思われる施設の破壊を行え。続けて、ジン出撃。敵基地に上陸し、基地を攻撃。何か質問は?」
「敵基地はどうするかね?」
「【ZAFT】にカーペンタリア、ジブラルタル以外に基地を持つ余力は無い。故に、完全破壊だ。奴らが再建する気も起きないほどにな」
「了解です」
「他には無いな?以上だ」
レオハルトはモニターに映る各艦の艦長からの質問が無いことを確認すると、話を終わらせ最後の準備に取り掛かるよう指示を出す。
「では、ウォン総司令。後方の指揮は任せます」
「了解しました」
レオハルトは踵を返しその場を後にすると、
すると、その先には今回の作戦にレオハルトが参加させたディアッカが立っていた。レオハルトはディアッカを一瞥すると、何も言わずにそのまま横を通り過ぎる。
だが、ディアッカは何も言わずにレオハルトの後を追いかける。
「何か用か、ディアッカ」
「いえ、その……」
「イザークのことが聞きたいのか?」
「…………はい」
レオハルトに図星を突かれ、ディアッカは言葉を失い顔をそらす。だが、意を決しレオハルトの背に顔を向けると、レオハルトの問いに肯定した。
「ディアッカ。お前は、ナチュラルの民間人を殺せと言われたらどうする?」
「えっ?」
「嬉々として殺すか?躊躇いながらも殺すか?それとも、拒否するか?」
「…………」
レオハルトから問われた言葉に、ディアッカは本当に言葉を失った。今まで考えたことも無かったことに、ディアッカは言葉を失う。
レオハルトは立ち止まり振り返ると、同じく立ち止ったディアッカを正面から見据える。
「もし嬉々として殺すなら、お前は軍人ではない。ただの人殺しだ。拒否しても、お前は軍人ではない。命令違反として、処罰されるだろう。最悪、銃殺刑だ」
「……」
「ナチュラルだろうと民間人は民間人だ。俺たちまで民間人を手に掛けていては、【ユニウスセブン】を核攻撃した奴らと同じだ。俺は、そんな屑共とは違う。お前はどうだ?」
「……俺も、そんな奴らと同じにはなりたくないです」
「ならいい」
レオハルトは小さく笑みを浮かべると、踵を返し再び歩き始めた。だが、ディアッカは立ち去るレオハルトを呼び止め、その背に問いかける。
「……民間人を殺せと言われたとき、リベラント隊長はどうされるのですか?」
「…………俺にも分からん。その時に考えるさ。後悔しない選択をな。それと、イザークのことなら心配するな。謹慎が解けたら、以前の通りだ」
レオハルトは背中越しにディアッカの問いに答えると、そのまま
赤いランプが照らす通路を歩きながら、レオハルトは自問自答する。
「(俺は、どうするんだろうな……。だが、恐らく俺は……)」
「作戦開始五分前。各員、搭乗機へ。最終チェックに移行せよ」
ついに作戦開始時間が迫り、MSで発進するパイロットたちは各々の搭乗機へ走る。
それはレオハルトやディアッカも例外ではなく、自分の機体のコックピットに体を滑り込ませる。
レオハルトの両手が素早く動き、キーボードのキーを高速で叩いていく。
「システムチェック終了。全システム、オールグリーン。ディアッカ、どうだ?」
「問題ありません。いつでも行けます」
発進準備は整い、後は作戦開始を待つだけ。それぞれがパイロットスーツに身を包んでコックピットで時を待つ中、レオハルトは苦手なパイロットスーツは着ていない。
軍服でコックピットに座っている状況である。この方が、レオハルトとしてはやり易いのである。
「リベラント隊長、時間です」
「了解。“シャールカ”“ファルスタッフ”、グーン発進させろ!“アイーダ”“マノン”“リエンツィ”、対空ミサイルポッド用意!グーンの沿岸部への攻撃と同時に、全艦魚雷発射!」
時間が午前五時を指すと同時に、レオハルトの号令で【ZAFT】は動いた。
次々とグーンが出撃していき、リスボン基地へと向かっていく。
「全艦、魚雷装填。目標、敵基地!……発射!!」
ウォンは全艦に魚雷装填を命じると、グーンの攻撃と同時に発射を命じた。発射された魚雷は寸分違わず、リスボン基地の港に直撃。停泊していた艦船や、沿岸部を蹂躙していく。
「続けて、対空ミサイルポッド発射準備。目標、敵基地!敵の上空にばら撒いてやれ!発射!!」
ウォンの号令で、すべてのボズゴロフ級から同時に対空ミサイルポッドが発射。ボズゴロフ級一隻につき十二発発射するので、総数六〇発のミサイルが敵基地に降り注ぐ。
「“アイーダ”“マノン”、ディン出撃!“シャールカ”“ファルスタッフ”、浮上!ジン出撃!」
奇襲攻撃に成功した余韻にも浸るはずもなく、レオハルト次の指示を出す。
浮上した“アイーダ”“マノン”よりディン六機が垂直出撃すると、グーンを発進させたばかりの“シャールカ”“ファルスタッフ”も浮上。ジンを垂直出撃させる。
だが、ジンはディンのように大気圏航行は出来ない。それを助ける形で開発されたのが、“グゥル”。正式名称、【モビルスーツ支援空中機動飛翔体】。
大気圏内で飛行できないMSを補助する、
ジンの出撃に続いて発射されたグゥルに乗り、ジンも敵基地へと飛んでいく。
「リベラント隊長、奇襲攻撃は成功。だが、敵もそこまでバカではないようだ。態勢を立て直し、反撃を始めてきた。まだ損害は出ていないが、攻めあぐねているようだ。さて、どうする?リベラント隊長」
「私とディアッカが
「了解。総員に通達!」
ハーヴィッツの報告を聞くと、ウォンから次なる一手を聞かれるレオハルト。レオハルトは即座に頭の中で答えを導き出すと、ウォンの問いに答える。
ウォンも同じ考えだったのか、わずかに笑みを零しオペレータに全員に通達するように指示を出す。
「ディアッカ。敵は殲滅、基地も焼け野原にして構わない」
「了解!」
「リベラント隊長、いつでもどうぞ!」
「レオハルト・リベラント、
レオハルトにとっては、初の大気圏での戦闘。
すぐ後ろでは、同様にディアッカも“グゥル”に飛び乗ったところだった。推力によってリスボン基地に飛び立つレオハルトに続き、ディアッカもその後を追う。
リスボン基地はディンやジン、グーンの攻撃によって大分破壊されていた。だが、連合も各所に設置された対MSミサイルや、対MSミサイルを搭載したトラックなどがミサイルで反撃を開始。
当初の予測通り、ミサイルの配置数が非常に多く、少しずつではあるが【ZAFT】側にも損害が出始めていた。
「ディアッカ、敵機は他に任せろ。俺たちは敵のミサイル発射システムや砲塔を狙え」
「了解!」
徐々に近づくリスボン基地を前に、新たな敵が現れたとばかりにリスボン基地に設置されている“地対空75mmバルカン砲塔システム”がレオハルトに照準を向けられる。
だが、レオハルトは敵が撃つよりも先に引き金を引き、逆に破壊する。そしてディアッカは、地上の一角に対MSミサイル搭載トラックが固まっているところを見つけると、そこに両肩に装備されているミサイルを発射する。
レオハルトは“グゥル”に装備されているミサイルを発射し、トーチカを破壊。さらに、ビームライフルの照準を向け、“ヘルダートタイプ・ミサイルランチャー”を破壊。さらに、山の斜面に築かれた“50mmガトリング砲台”を撃破。
ディアッカも同様に次々と敵砲台を潰しているが、本当に減っているのかと思うほどである。依然として迫ってくるミサイルは多く、【ZAFT】のMSに襲い掛かる。
レオハルトは友軍のディンに迫る40mmミサイルをビームライフルで撃ち落とすと、ミサイルの発射元へと視線を移す。
「武装が足りないのは問題だな!」
レオハルトはそう不満を漏らすと、砲台を破壊。続けて、右に銃口を向けミサイルランチャーを破壊する。
射撃武装の少ない
さらには、上の二つを連結させた“対装甲散弾砲”―—ガンランチャーを前に、収束火線ライフルを後に連結した広域制圧モード――で、損害が軽微である場所を面制圧していく。
「ウォン総司令、こちらの被害は!」
「ジン二、中波。ディン一、小破です。グーンに損害は無し」
戦闘開始からすでに一時間以上経過しており、パイロットの疲弊も始まっている。さらに、敵の攻撃の手数も多い。
如何にコーディネイターといえど、すべての攻撃を避けることが出来るわけではない。少しずつではあるが、【ZAFT】にも被害が出始めていた。
「(まだ許容範囲か。だが、時間を掛けすぎると押し切られるか可能性があるか)敵司令部が見つからない。傍受の状況は?」
「間もなくです。……敵司令部の場所が判明しました」
「データをディアッカに送ってください。ディアッカ」
「了解!……位置データ、受信しました!」
ディアッカに敵の通信によって発生する電波から発信源を特定し、その結果判明した敵司令部の位置情報が大火力を有するディアッカに送られる。
ディアッカは二つの武装を連結させると、“超高インパルス長射程狙撃ライフル”――収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを後に連結した高威力・精密狙撃モード――を構える。
射撃体勢に移ったディアッカにミサイルが襲い掛かる。だが、それも直前でレオハルトがシャットアウト。ディアッカにミサイルを一発も通さない。
四方から飛んでくるミサイルを確実に迎撃していくレオハルト。だが、背後から飛んできたミサイルを見逃してしまい、ディアッカへと向かっていく。
だが、レオハルトの行動は早かった。レオハルトは飛び上がると、“グゥル”をミサイル目掛けて飛ばしミサイルに当たる瞬間、“グゥル”をビームライフルで貫いた。
“グゥル”が爆発したことで、残りのミサイルも誘爆。レオハルトは機体のすべてのスラスターを噴射し地上へと無事に着陸する。
「撃て、ディアッカ!」
「了解!」
そして、スコープを除くディアッカは、照準が定まるとその引き金を引いた。
「グゥレイト!やったぜ!」
そう言うとディアッカは、両肩部のミサイルを指定ポイントに撃ち込む。さらにダメ押しとして、ポイント付近にビームライフルを撃ち込んでいく。
ディアッカの過剰とも言える攻撃に、山は至る所で崖崩れが起き崩壊。崖崩れによって出来た大量の土砂が基地を飲み込んでいく。
「……こちらレオハルト・リベラント。これより、殲滅戦に移行する。損害が激しいものは後退。軽微な機体は残敵の掃討に動け」
レオハルトは静かにそう告げると、禍根の芽を潰すために動き始めるのだった。
三〇分ほどで殲滅作戦は終了し、見つけた範囲での掃討は終了した。最後にレオハルトは残った部隊で基地全域を攻撃して、基地の再建する可能性を潰すという徹底振りだった。
“グゥル”を失ったことで飛行能力を失ったレオハルトは、生き残ったディン二機に支えられつつ“リエンツィ”に帰投。同様に、他の残存部隊も所属艦に帰投した。
今回の戦闘の結果、失ったのはジン三、ディン二である。グーンについては、地上には上がらず時々海面に姿を見せつつ攻撃を続けたため、損害は無しとなった。
“リエンツィ”に帰投したレオハルトは、ウォンと共に今回の作戦について総合的な判断を下していた。
「損害は五機か。少ないと見るか、多いと見るか。どう見る、ウォン総司令」
「充分、許容範囲でしょう。初撃の奇襲が効いたことで、敵の数が少なかったことが幸いでしたな。もっとも、他の兵器の数が想定外に多かったですが」
「その点に関しては、私の責任です。評議会への報告書には、書き漏らしの無いようお願いします」
「真面目ですな。そこが、リベラント隊長の長所ですかな」
真面目なその言葉にウォンは少し驚いた顔をした後、苦笑混じりにそう言葉をつづけた。レオハルトは頭を下げて礼を言うと、レオハルトは報告書の製作に戻る。
だが、そんなレオハルトをウォンは険しい視線で見ていた。
「(だが、それ故に危険な部分もある。真面目な性格が裏目に出ないと良いが……)」
「何か?」
「ああ、いや、申し訳ない。すぐに本国に戻るのかね?」
「その予定です」
「そうか。今回の作戦では、世話になりましたな」
「いえ、こちらこそお世話になりました」
それを最後に二人は言葉を交わさず、黙々と報告書の作成に取り掛かるのだった。
その後、レオハルトはすぐに【プラント】本国へと帰還すると、その足で報告のためシーゲルの元に向かった。
「……うむ。よく分かった。損害については、許容範囲と言えるだろう。よくやってくれた、リベラント隊長」
「ありがとうございます」
レオハルトから渡された報告書を読み終わると、シーゲルは報告書を置き満足そうな笑みを浮かべる。報告書はウォンとレオハルトの二人で作成されたもので、枚数は五枚ほどである。
「それで、イザーク・ジュールはどうだった?ショックを受けていたかな?」
「ショックというより、戸惑っていると言った方が正しいでしょう。意図せずとも摘み取ってしまった、民間人の命。決して軽いものではありません」
「そうだな。ナチュラルもコーディネイターも変わらない、一つの命だ。彼に答えは出せそうかな?立ち直れそうかね?」
「さて、どうでしょうか。誰かが教える答えに意味はありません。それが出せなければ、潰れるでしょうね。ですが、イザークなら大丈夫でしょう。私が言うのも何ですが」
シーゲルの問いにレオハルトはそう答えると、シーゲルはなるほどと言った表情で頷く。
誰かに答えを教えてもらったとしても、それは他人の考えである。最終的には自分の考えで納得しなければ、それがいつか自分を苦しめる足枷となるかもしれない。
「信じるしかないな」
「ええ」
「何はともあれ、任務ご苦労だった。三日の休暇を与える。充分に休息をとってくれ」
「ありがとうございます」
「……そうだ。一応、君の耳にも入れておこう。バルトフェルド隊長が、【足つき】に敗れたそうだ。片手片足を失う重傷らしい。彼の副官から連絡があった。しばらくは、戦線復帰は無理とのことだ」
「……そうですか。では、失礼します」
レオハルトは敬礼をすると、足早に部屋を後にした。通路を歩きながら、レオハルトはシーゲルの最後の言葉を反芻する。
「(……だから言ったのだ。勝てないと。だが、バルトフェルド隊長を凌ぐまでになったか。さすがは、【カケラ】の持ち主といったところか。いや、それだけでは無いか。だが、所詮は【カケラ】だ。【源】を持つ者には……勝てない)」
人がまばらな通路を歩きながら、レオハルトは思考する。レオハルトの頭にあるのは、“彼”のこと。
レオハルトの口角が上がり不敵な笑みを浮かべながら、その瞳は紅金に妖しく輝いていた。
オリ話はどうでしたでしょうか。
戦闘描写がちょっと雑っぽくなってしまったかもしれません。
申し訳ないです。
そして、最後で再び謎を投下。
【カケラ】とは!【源】とは!
その意味は、小説の後半で明らかに!って感じですね。