機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
最近はいつもこれで始まっている気がします。
申し訳ないです。
そして、待たせてしまった割にはほとんど進んでないです。
次の更新がいつになるのかも不明です。
気長に待って頂けると嬉しいです。
近々迫る【オペレーション・スピットブレイク】のため、クルーゼは部下のアスランやニコルと共に地球のジブラルタル基地へと降下した。
クルーゼは二人よりも早く地上に降り立つと、ディアッカの待つ部屋に向かった。イザークはまだ謹慎中ではあるが、後二日で謹慎も解ける。だが、さらにあと一週間はMSに登場することは禁じられている。
「久し振りだな、ディアッカ。無事で何よりだ」
「はっ、お久し振りです」
部屋に入って早々、敬礼して待っていたディアッカにクルーゼはそう声を掛ける。クルーゼは軽く手を挙げて合図すると、ディアッカは敬礼を止め腰を下ろした。
「失礼します」
「お久し」
その時、遅れてアスランとニコルが部屋に到着。ディアッカは久し振りに再会した仲間にいつも通りの口調で、軽く手を挙げて挨拶をする。
「? ディアッカ、イザークは?」
「あいつは謹慎中だ。まぁ、もうじき解けるけどな」
「謹慎!?」
「イザークが!?」
ディアッカの何でもないような口調に一瞬流してしまいそうになるが、アスランとニコルは驚きの声を上げる。二人の視線は、自分たちの隊長であるクルーゼへと向けられる。
「謹慎理由は、先の【低軌道会戦】でのことが理由だ。イザークが撃墜したシャトルには、民間人が乗っていたそうだ。さらには、【FAITH】であるレオの制止命令を無視しての戦闘の強行。その結果、評議会はイザークに二週間の謹慎と一週間のMS搭乗禁止命令を下した」
クルーゼは二人に視線を移しそう言うと、部屋に沈黙が流れる。クルーゼは小さく笑みを浮かべると、沈黙を打ち破るために口を開いた。
「そう心配することは無い。後二日で謹慎も解ける。だが、MSにはまだ乗れないがな。緊急時を除けば、だが」
クルーゼは仮面のズレを右手で直すと、話題を変えるべく表情を引き締めた。
「さて、本題に入るとしよう。ディアッカ、君は【足つき】の追撃をしたいのかな?」
「そのとおりです、隊長」
「ふむ。だが、すでにカーペンタリア基地の任務に移行している」
「違います、隊長。奴らを討つのは、我々の任務です!宇宙で討ちきれなかった、我々の!」
今までにないディアッカに、アスランとニコルは目を丸くして驚いている。ディアッカの言葉に、クルーゼは顎に手を当て思案する。
そんなクルーゼにダメ押しするかのように、ディアッカは友の意思も伝える。
「この意見には、イザークも同感と言っていました。ですから、隊長!」
「君たちはどうかな?」
「異存はありません」
「アスラン。君はどうかな?」
ニコルはすぐにディアッカの考えに同意するが、アスランは口を真一文字に結び口をつぐんだままである。クルーゼは内心笑みを浮かべながら、アスランに答えを求める。
「……異存ありません」
「ふっ、いいだろう。そこまで言うなら、君たちだけでやってみるか。アスラン、ニコル、ディアッカ。そして、謹慎明けのイザークを加えた四人で隊を結成。指揮はそうだな……アスラン。君に任せよう」
「えっ?」
「カーペンタリアで母艦を受領出来るよう手配しよう。ただちに移動準備に入れ」
「隊長、私が?」
「いろいろと因縁のある相手だ。難しいとは思うが君に期待しているよ、アスラン」
クルーゼはアスランの肩に手を置きそう言い残すと、そのまま部屋を出て行ってしまった。
アスランはクルーゼの言葉を心で噛み締めながら、表情を歪める。宇宙の時と同様、アスランは再び親友と激突することが決定してしまった。
だが、アスランは心に決めたのだ。自分の一番の友を、その手で討つと。
アスランは迷いに蓋をすると、移動準備に取り掛かるのだった。
それから二日経ち、ついにイザークの謹慎が解けた。
この二週間、イザークは五畳ほどの部屋で生活を送っていた。トイレやシャワールームなども備え付けられた部屋である。この部屋には、計七つの監視カメラが設置されており、部屋全体をカバー出来るようになっている。
そんな部屋で四六時中監視される生活を過ごしたイザーク。
この二週間、イザークには考える時間が十分すぎるほどあった。だが逆に、時間があるからこそいろいろな方向に考えがいってしまったとも言える。
だが、とうとうイザークは明確な答えを導き出すことは出来なかった。
イザークを待っていたのは、ジブラルタル基地総司令補佐のハーヴィッツだった。通路を歩きながら、イザークは自分が謹慎中の情報をハーヴィッツから聞かされる。
「では、先にカーペンタリアに?」
「そうです。あなたのMSもすでにカーペンタリアです。あなたはまだ、MSには乗れませんから。移動もお仲間がやってくれることでしょう」
「…………」
「あなたも、すぐにカーペンタリアに向かってもらいます。あちらで準備と敵の追跡をしているうちに、一週間は掛かるでしょう。晴れて、元通りです」
ハーヴィッツに横目でそう言われ、イザークは心の中で否定する。
元通りなどではない、と。
今までは、ただナチュラルを敵と見定めて来た。だが、それもレオハルトの言葉で亀裂が生まれ、疑問を持ってしまった。
イザークの心は、晴れないままである。
「ところで、どこに向かっているのですか?」
「リベラント隊長から通信が入っているのです」
そう言われ、イザークは驚きで目を見開いた。レオハルトが自分に何の用なのか、と。それとも、まだ残っている一週間のMS搭乗禁止の念押しのためだろうか。
イザークは疑問に感じつつもハーヴィッツの後を追い、ある一室に通された。
「私は仕事があるのでこれで。案内は、別の者にさせます」
ハーヴィッツはそう言い残しイザークの返事も聞かずに歩き去っていくと、イザークはモニターの正面に腰を下ろした。
空間に映し出されているホログラムにはレオハルトが映し出されており、その左胸にはきらりと光る【FAITH】の徽章が光っていた。
イザークの瞳に映るレオハルトの表情は、お世辞にも良いとは言えないものだった。だが、
レオハルトとしてはそんなつもりは毛頭ない。真面目な表情をしているだけである。
「謹慎が解けたな、イザーク」
「……はい」
「謹慎中、何を考えていた」
そう問われ、イザークは口を閉ざす。当然、何も考えていなかったわけではない。むしろ、考え過ぎていたほどだ。
だが、謹慎中に考えていたことは到底一言で言い表せるものではなかった。
「一言では言えません」
「……そうか。恐らく、俺もそう答えるだろう。だが、その様子では“答え”は導き出せなかったか」
「……今まで私は、ナチュラルすべてを敵と見定めて来ました。軍人・民間人、関係無くです」
イザークはそう信じていたし、実際そう考えているコーディネイターが大半を占めるだろう。だが、それを一概に責めることは出来ない。
【プラント】の理事国である大西洋連邦などからの不当な要求に続き、【ユニウスセブン】での核攻撃が決定打となってしまった。家族や友人など、親しい人間を失った人間も多い。
そのため、ナチュラルを敵視し憎悪することは仕方ないことではある。それはレオハルトも肯定しているし、そんな彼らを否定するつもりも無い。
だが、ナチュラルすべてが【ユニウスセブン】の核攻撃に協力したのかと問われると、それは否だとレオハルトは考える。
正しくは、民間人が核攻撃したなどという事実を知っているはずがない。さすがに、そんな杜撰な情報体制はしていないだろう。
その一方で、ナチュラルがコーディネイターに敵対意識を持っていることは隠しようのない事実。ナチュラルに対して寛容なレオハルトとはいえ、自分や友軍に害を加えるなら民間人とはいえ容赦するつもりはない。
「教えてください、リベラント隊長。私は、どうすればいいのですか」
「他人に答えを求めるなよ、イザーク。自分で答えを探せ」
「…………」
「すぐに答えを出す必要は無い。今、お前に出来ることは何だ」
「……MS搭乗禁止令が解く一週間を待ち、【足つき】を追撃し討つことです」
「ならば、今は出来ることに尽力しろ。……お前なら出来るはずだ。答えも、【足つき】撃沈も。焦ることは無い。以上だ」
レオハルトは最後に一瞬だけ笑みを浮かべイザークに励ましの言葉を掛けると、そのまま通信を切ってしまう。
イザークは何を言われたのか分からず通信を切られた後も、レオハルトの最後の言葉を理解するのに時間が掛かってしまった。
「……やってやりますよ、リベラント隊長。やってみせようじゃないですか。【足つき】は俺がこの手で討ちますよ」
イザークはニヤリと笑みを浮かべそう呟くと、部屋を出て待っていた案内人に準備していた中型輸送機ヴァルファスに乗りカーペンタリア基地に飛び立つのだった。
某日某所
男にとって、あの日はいつも通りだった。男は毎月の定例会議を終え執務室に戻り一息吐き、誰かの悪態を口にする。
「あのジジイ共め……。目的を忘れて、すっかり調子に乗ってますね。僕たちの目的はコーディネイターの抹殺だというのに。一度、手綱を握り直す必要がありますね」
男は小声でそう呟き、先ほどまであっていた者達への文句を口にする。
男が言う“ジジイ共”が考えるのは自分たちの利益ばかり。男を含めた彼らがすべきなのは、コーディネイターの抹殺。
普通の人間にしてみたら、危険な考えの言葉である。だが、一部の者たちにしてみたら普通の考え方なのだ。彼ら、【ブルーコスモス】にとっては。
「MSの量産体制の確立に、その後は施設の拡充。やることは山ほどありますね」
男は冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを取り出し、キャップを外すと喋り疲れた喉を潤す。
男は椅子に腰を下ろし仕事用のPCの電源を入れると、キツく締めていたネクタイを緩めながらまた息を吐く。
男はPCの脇に置いていたミネラルウォーターを手にすると、再び一口飲む。だが、そこで男はある異変に気が付いた。
普段ならすぐに起動するはずなのに、今日に限って画面は暗いまま。男がPCの不調を疑い始めた時、男は驚愕に顔を染める。
「さて、初めましてと言うべきかな?」
「!?」
突然、どこからともなく声が聞こえてくる。男はすぐに周囲を見渡すが、特に異常は見られない。いや、自分が気付かないだけなのかと男が考え直した時、再び謎の声が聞こえる。
「フフッ。驚かしてしまったかな?まあ、当然か。少々ハッキングさせてもらったよ」
PCの画面は依然として何も映さないが、男は声がPCからだということに気付く。男は“声の主”の皮肉った口調に眉をしかめつつも、深呼吸すると椅子に深く座り直す。
「少々、ですか。そんな柔なセキュリティはしていないはずなんですが。見直す必要がありそうですね。注意喚起のためにこんなことを?」
「そうだ、と言ったら信じるほど、愚かな人間なのかな?ムルタ・アズラエル理事」
「…………」
ムルタ・アズラエル。連合軍上層部にも浸透しつつある【ブルーコスモス】盟主を務める男で、徹底した反コーディネイター思想の持ち主である。
そう問われれば、アズラエルは否定の言葉を口にするだろう。だが、“声の主”もそう答えることを確信している。
強固に築いたセキュリティを突破するほどのハッキング技術を持つ謎の人物。アズラエルは見えない相手の評価を奇妙な人物から、厄介な人物へと修正する。
「ただの酔狂な人間、というわけでは無さそうですね。用件を聞きましょうか」
「たいしたことではありませんよ。ただ、理事のお手伝いが出来ればと思いまして」
「僕の願い、ですか」
「ええ。コーディネイター抹殺のご協力がしたい。そのために、【プラント】に勝ってもらいたいのです」
先程まで若干の腹芸を見せたかと思えば、今度はあまりにも直接的な言葉。アズラエルは少し驚きつつも、それを表には出さず冷静を装う。
「……なるほど。しかし、どんな協力をして頂けるのですか?」
「【プラント】の機密情報をお教えしますよ」
「!!……あなた、何者ですか?【プラント】の機密情報を知るなど、並大抵のことじゃありませんよ。【プラント】上層部の人間か、あるいはそれに近しい人間ということですか?」
「さすがはアズラエル理事。見事なご推察で」
アズラエルは“声の主”と話してみて、相手の人間についてある程度の予想を固める。“声の主”は【プラント】上層部、つまりは【最高評議会】のメンバー。あるいは、それに近しい人間。
だが、近しいとはいえ階級の低い人間が評議会の人間に近付くことなど不可能も同然。どちらにしろ、“声の主”自身も高い地位に就いていることが予想できる。
「(隊長は確実ですかねぇ。創設されたばかりの特務隊という線も考えられますね。その線ならまだ人数が絞れるので容易ですが、隊長だと難しいですか……)」
アズラエルがそう頭の中で結論付けていると、“声の主”は含み笑いをする。アズラエルは“声の主”のその態度に顔をしかめるが、“声の主”はそれを理解しているのか含み笑いが止まる様子は無い。
「私の正体をお考えですか?私だけが理事のことを知っているというのも、フェアではないようだ。私は――――――。以後、お見知りおきを」
「……フフッ。ハッハッハッハッ!これはこれは、まさかあなたとは。確かに、あなたなら機密情報を知ることも可能ですね。【プラント】の重要人物に近い、あなたなら」
「私を信用して頂くために、手始めに情報をご提供しましょう」
「ほぉ。ですが、何故あなたが?」
「理由、ですか。理事に必要なのは、【プラント】の確かな情報では?」
その言葉にアズラエルは口を閉ざす。確かに、理由を知れば信憑性は高まる。だが、それが真実だという証拠も無く、その裏を取る時間も無い。
つまり、どちらにしても理由を聞く意味が無い。何より、深く聞いてへそを曲げられても面倒である。アズラエルは素早くそう考え、肯定の言葉を口にする。
「ご理解頂けて何よりです」
「それで、情報とは?」
「【最高評議会】は先日、ある作戦を可決しました。目標はパナマ。ですが、それは表向きの理由。本命は
「(……これが本当なら、大問題ですね。地上だけでなく、宇宙からも部隊が降下してくるとは。それほどの規模の部隊から奇襲を受ければ、
“声の主”から予想以上の機密情報に、アズラエルは一瞬言葉を失う。だが、すぐに頭を切り替えると、アズラエルは今後の方針を考え始める。
「私に妙案があります」
「妙案?」
「ええ。もちろん、それを実行するかは理事のお気持ち次第ですが」
そう言って、“声の主”はニヤリと口角を吊り上げ笑みを浮かべるのだった。
「思ったより簡単だったよ。もっとも、彼は彼で私を使い潰した後で消すつもりだろうがな」
「愚問ですね。反コーディネイターを掲げる【ブルーコスモス】なのですから。所詮は一時的な利害の一致」
某日、【プラント】内のある場所で彼らはいた。
たった今通信を終えた男は椅子に背を預けながら呟くと、その後ろから聞こえてくる声に男は椅子を回転させて向かい合う。
新たな声は小さいながらもよく通る、高い声だった。そのことから女性なのではと判断出来るが、この両者の間に甘い雰囲気は微塵も感じられなかった。
「利用しているのはお互い様だからな。まあいい、種は蒔いた」
「アズラエルに話した妙案。使う保証は無いのではありませんか?」
声に違わず、やはり女性だった。だが、姿は部屋がない光によって見ることは出来ない。女性がそう問うと、男は否定の言葉を口にした。
「使うさ。必ずな。大西洋連邦にとって、友軍とはいえユーラシア連邦と友好とは言い難い。利権に群がるハイエナ共は、すでに戦争が終わった後のことを考えているのだよ」
「理解出来ませんね。先のことを蔑ろにするわけにはいかないけど、目の前を疎かにするのも愚かだわ」
「保身に長けているからこそ、奴らは生き残ってきたのさ。所詮、人間は自分が一番なのだよ。それが人間というものだよ。君がよく知っているのではないかな?」
男のその言葉に、女性は唇を強く噛み締め怒りを露わにする。だが、男は焦る様子も無く、笑みを浮かべて眺めたままである。
その皮肉った様子が、女性の怒りを増すことになる。
「口を慎みなさい。協力しているとはいえ、私たちも利害だけのつながりよ。私の目的を果たす前に、あなたを先に殺してもいいのよ」
「それは怖い。ヘタなことは言えないな」
「……あなたは私が殺すわ」
女性は最後に吐き捨てるように言い残すと、足早に立ち去ってしまった。その背を男は小さく笑い声を挙げながら見送ると、額に手を当てながら虚空を見上げる。
「破滅に進む世界を前に、君はどうするのかな。非常に興味深いよ。……レオ」