機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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はい、更新です。

今回も、私の予想以上に更新することが出来ました。
この調子を、出来るだけ長く維持したいものです。

そして今回、『ASTRAY R』のキャラが出ているのですが、『ASTRAY R』を知らないのでそのキャラは完全なオリジナルです。

本物と違う、というコメントは控えて頂けると嬉しいです。

どんなキャラかなと考えてみたところ、書いてあるようなキャラが一番に思い浮かびました。
我ながら、若干引くキャラです。

でも、不思議と嫌いじゃないです。

次回の更新は、出来れば今週中。
遅くても、来週には更新したいです。



Mission - 24 偽りのユダ

「何故、ここに居る!パイロットは……!!」

 

有り得ない現実に驚きつつも、あるはずの無い機体が目の前にいるのもまた事実。

 

レオハルトが驚きで固まっていると、Freedom(フリーダム)は大きく背部のウイングを広げる。続けて、両肩・両腰から装備が向けられる。

 

「!! マズい!!」

 

レオハルトがFreedom(フリーダム)のその行動から、何をするのかを悟る。だが、すでに時遅く、Freedom(フリーダム)のマルチロックオンシステムが働き、一度に多数のMSを撃墜する。

 

正しくは撃墜ではない。正確に言うと、戦闘不能である。機体を爆散させずに、MSが戦闘不可能に陥る箇所を精確に射抜いているのだ。恐るべき技量。並の技量ではないことは確実だった。

 

「(撃墜ではなく、戦闘不能に追い込む。それが、お前の出した答えか)」

 

レオハルトが苛立たしげに胸中で呟く間も、Freedom(フリーダム)は【ZAFT】の攻撃はすべてシャットアウトし、逆に敵を撃破していく。

 

だがその時、レオハルトは耳を疑った。

 

「【ZAFT】・連合、両軍に伝えます。アラスカ基地は間もなく【サイクロプス】を作動させ、自爆します」

「なっ!?」

 

レオハルトはFreedom(フリーダム)のパイロットからのその言葉を聞き、反射的にアラスカ基地へと視線を移す。外にいる友軍もいるが、大部分は内部に侵攻している。

 

「(くそっ、そういうことか!基地を囮にして俺たちを誘い込み、さらには戦争終結後を見据えて、ユーラシアの戦力をそぎ落とすつもりか!確かに、それならユーラシア連邦の部隊しかいないのも頷ける)」

 

たった一人、連合の状況に不信感を抱いていたレオハルトを除き、他の人間はそうもいかない。謎のMSに乗っているとはいえ、Freedom(フリーダム)は【アークエンジェル】を援護している。

 

敵を援護しているなら、援護しているMSもまた敵。今回の作戦の指揮を執るボズゴロフ級の艦長は警告を一蹴する。

 

【ZAFT】兵が次々と攻撃を仕掛けていく中、ラミリアは傍観に徹し【アークエンジェル】から発進した敵戦闘機と戦闘していたイザークは、レオハルトの脇に機体を寄せる。

 

「リベラント隊長。どうしますか?」

「(冷静になることを覚えたか。良い傾向だ)イザークか。……あいつは強いぞ?」

「やらせてください、俺に」

「……冷静にな。いざとなれば、俺も援護に入る」

「了解!」

 

イザークは今まで、互角の敵としか戦闘をしてこなかった。無論、演習では各上とやることがあったかもしれない。だが、命のやり取りをする戦場という場所では無いはずである。

 

もしそんな相手がいれば、イザークはここにはいないだろう。今までの戦闘を考えるに、Freedom(フリーダム)は敵を撃墜するようなことはしない。戦闘不能に追い込むだけである。

 

だからこそ、レオハルトはイザークの経験のためにも戦うことを許可した。

 

レオハルトの許可を得るや否や、イザークの動きは早かった。

 

「はぁああああ!!」

 

イザークは牽制でビームを撃つと、Freedom(フリーダム)はシールドで防御。イザークはビームライフルをマウントすると、右手にビームサーベルを手にする。

 

DUEL(デュエル)!!」

「墜ちろぉーっ!!」

 

イザークがビームサーベルを振るうが、Freedom(フリーダム)はわずかに後退し回避。Freedom(フリーダム)は両腰に装備されている“MMI-M15クスィフィアス レール砲”を発射。

 

弾丸を高速射出することが可能なレール砲が、イザークを襲う。だが、イザークも素早く反応しシールドで防ぐが、大きな衝撃がイザークを襲う。

 

「ぐあっ!!」

 

Freedom(フリーダム)は左腰から“MA-M01ラケルタ ビームサーベル”を抜くと、イザークへと斬りかかる。

 

イザークはすぐに体勢を立て直すと、Freedom(フリーダム)とビームサーベルと切り結ぶ。

 

「すぐに撤退しろ。死にたいのか!」

「貴様を討った後でな!」

 

イザークはFreedom(フリーダム)のパイロットの言葉にそう反論すると、“シヴァ”の銃口をFreedom(フリーダム)の頭部に向けて発射した。

 

だが、Freedom(フリーダム)は頭を傾けて避けると、Freedom(フリーダム)DUEL(デュエル)の腹部を蹴り上げ、距離を取る。

 

Freedom(フリーダム)は宙返りをすると、イザークへと襲い掛かる。

 

だが、寸前のところでレオハルトがビームを放ち、Freedom(フリーダム)を攻撃。イザークへの攻撃を止めさせると、続けてビームを撃ち込んでいく。

 

「このMS……!!」

「(ちっ!当たる気配がしない。強奪された機体がここにあり、俺の不信感も奴の言葉で納得出来た。ウソを言っているとは考えにくい。……潮時か)」

 

レオハルトはFreedom(フリーダム)へ攻撃を仕掛けるも、Freedom(フリーダム)はすべての攻撃を軽々と回避している。他にも、多数のMSを相手取っているのだ。

 

レオハルトは現状の戦力ではFreedom(フリーダム)を討ち取ることは不可能と判断すると、レオハルトはすぐに行動に移った。

 

「特務隊【FAITH】、レオハルト・リベラントだ。【FAITH】権限を行使し、現時刻を以て私が指揮を執る。全部隊に通達。現戦闘宙域より離脱せよ。異論は認めない。即座に撤退を開始せよ」

 

レオハルトがオープンチャンネルでそう呼びかけると、【ZAFT】は即座に反転。撤退を開始した。

 

だが、撤退を開始して数分後にそれは起きた。

 

ついに【サイクロプス】が起動。【サイクロプス】とは、簡単に言えば巨大な電子レンジである。電子レンジと同じマイクロ波を放射し、さらにマイクロ波の強度を増加。周囲一帯にマイクロ波加熱を発生させることが出来る。

 

大抵の生物は半分以上が水分で構成されているため、起動した【サイクロプス】の有効範囲内にいる生物は、体内にある水分が急激に加熱・沸騰させられ、更に水蒸気が全身の皮膚を突き破って爆発し、最終的には破裂死に至ってしまう。

 

レオハルトが早期に撤退命令を出したとはいえ、すべてのMSが有効範囲内から逃げられたわけではない。逃げ遅れたMSのパイロットは、マイクロ波によって体内の水分が加熱・沸騰させられ、コックピットで破裂死してしまった。

 

「急げ!急げ!!」

 

レオハルトが声を張り上げるが、それでも急速に迫るマイクロ波から逃げることが出来ず機体が大破する機体も現れた。

 

だが、直前でFreedom(フリーダム)が手を掴むと、手を引っ張って離脱していく。

 

「……」

 

レオハルトはその様子を横目で確認しつつも、レオハルトも可能な限り友軍を救助しつつ離脱していく。

 

ようやくマイクロ波が収束し爆発が収まると、レオハルトは“グゥル”から地上を見下ろす。

 

そこには着陸した【アークエンジェル】やFreedom(フリーダム)が居り、傍にはFreedom(フリーダム)が救助したジン。そしてパイロットと思われる男が横たわっていた。

 

そして、男を心配そうに見る【ZAFT】の赤のパイロットスーツを着た少年。レオハルトは“グゥル”から飛び降り、スラスターを操りながら静かに着地する。膝をつき、手を差し出した状態で停止する。

 

「【ZAFT】!?」

「おいおい、あの機体はまさか……!」

 

突然の【ZAFT】の登場に【アークエンジェル】艦長マリュー・ラミアスを始めとしたクルーは慌て、ムウは見覚えのある機体に表情を歪ませる。

 

「……戦闘の意思は無い。そこの【ZAFT】兵を返還してもらいたい。本国で葬らせてもらう」

「そう言われても……」

「それじゃあ、降りて来てもらえるかい?【ZAFT】のエースさん」

「いいだろう」

 

レオハルトはコックピットを出ると、ラダーを使って地上に降り立つ。クルーたちは目の前に現れたレオハルトに警戒心を露わにするも、ムウはそこまででは無かった。

 

ムウはレオハルトへと歩み寄ると、数mの距離を開け二人は立ち止まった。

 

「ヘルメットは取ってもらえないのかな?」

「……」

 

ムウが軽い口調で尋ねると、レオハルトは両手をヘルメットへと掛ける。ヘルメットを取ると、紅の髪とレオハルトの素顔が太陽の下にさらされる。

 

「あらら。思ったより若いな、【黒鷹(コクヨウ)】さんは」

「連合では、俺のことをそう呼んでいるらしいな。興味は無いが」

「クールだこと」

「【エンデュミオンの鷹】と話すために来たわけではない。彼を返還してもらおう」

「俺たちが葬るより、故郷で葬られた方がいいだろうな」

 

ムウがそう言うと、レオハルトはFreedom(フリーダム)パイロット、キラ・ヤマトの隣で息を引き取った男性パイロットへと歩いていく。

 

「…………」

「……前に、一度お会いしましたよね。アフリカで」

「…………」

 

キラが恐る恐ると言った感じで話しかけてくるが、レオハルトは何も答えない。男を抱え上げると、レオハルトは踵を返し機体に歩いていく。

 

レオハルトは男をJUPPITER(ユピテル)の差し出した両手に乗せると、ラダーに捕まりコックピットへと戻っていく。

 

「……死んだと思っていたが、生きていたとはな」

 

コックピットに入る寸前、レオハルトはキラを見ながら呟くとヘルメットを被りコックピットへと身体を滑り込ませた。

 

レオハルトはフットペダルを強く踏み込み飛び上ると、空中で制止していた“グゥル”に飛び乗り友軍と合流。

 

レオハルト指揮の下、レオハルトは残存部隊を素早くまとめるとカーペンタリア基地に帰還。カーペンタリア基地にて、レオハルトは本国と連絡を取ることにした。

 

「レオ」

「ラウか」

「さすがだな、レオ。冷静に状況を判断して撤退し、残存部隊を即座にまとめ上げるとは」

「……お前は、何をしていたんだ」

 

パトリックとの連絡を取ろうとする道中、レオハルトはクルーゼに呼び止められた。笑みを浮かべながらレオハルトを称賛すると、クルーゼは踵を返して歩き去ろうとする。

 

その背中に、レオハルトは静かに問いかけた。

 

「どういう意味かな、レオ」

「言葉通りの意味だ。戦闘でも見かけなかったからな」

「戦闘は君に任して、私は楽をさせてもらったよ。敵情視察を行った後は、艦にいたよ」

「……そうか」

 

レオハルトは厳しい表情で歩き去ると、クルーゼがその背を見送る。だが、クルーゼもすぐに背を向けると、お互い逆の方向に歩き始めた。

 

「やれやれ、さすがは我が友だ。すぐに異常を察知し、撤退を命じるとは。計画では、もう少し数を減らせると思ったのだがな。まぁいい。ハプニングがあった方が、楽しめるというものだ。結果は同じなのだから」

 

レオハルトは本国のパトリックに一通りの報告を行うと、すぐに本国帰還の命令を受けJUPPITER(ユピテル)と共に本国へ帰還するのだった。

 

 

 

 

 

レオハルトが【プラント】本国のアプリリウス市に到着した時、議事堂内はいつもとそれほど変わらない様子だった。

 

だが、それは時間が経ったからである。【オペレーション・スピットブレイク】が失敗したという情報が流れた直後は、大混乱に陥っていた。

 

だが、それもカーペンタリアに帰還したレオハルトの報告により混乱も沈静化し、次の作戦に向けて準備を進めている。

 

レオハルトの足は一目散にパトリックへと向けられる。エレベーターで一気に最上階まで上がり通路を歩いていると、正面から歩いて来る人物を見て表情に嫌悪感が浮かぶ。

 

「これはこれは、リベラント隊長。地球では大変でしたな。ですが、それも仕方ありません。作戦内容が漏洩していたのですから、あなたのせいなどではありませんよ」

「……気安く俺に話しかけるな」

「これは手厳しい。あなたは私を嫌いなようですが、私はあなたのことが好きなのですがね」

 

人を小馬鹿にしたような態度と口調。本人に自覚があるのかどうかは不明だが、無くてこれならある意味才能である。

 

この男はアッシュ・グレイ。【プラント特殊防衛部隊】隊長で、実力だけなら【FAITH】に任命されるほどの実力の持ち主である。

 

「貴様が何故ここに居る。貴様の興味は戦場だけだろう」

「仰る通り。ですが、ザラ議長から特命を受けまして。シーゲル・クライン、及びクライン派の抹殺という命令を受けました。ラクス・クラインに関しては、どうやら逃げられたようで」

「……貴様がそんな命令を引き受けるとはな」

「これは心外です。私も軍の人間です。命令されたら拒めませんよ。……もっとも、元議長という人物を殺せる機会に魅力を感じたのも事実ですがね。クフフフッ」

「(クズが……)」

 

不気味な笑い声を上げるアッシュに、レオハルトは侮蔑の視線を向ける。この男が軍に居る理由はたった一つ。

 

『合法的に人を殺せるから』。これだけである。【プラント】を護りたいやパトリックへの忠誠心など、そんな気持ちは微塵も無い。

 

「おや?クフフッ、そんな眼で見ないで下さいよ。……興奮しちゃうじゃないですか」

「…………」

「では、私はそろそろ失礼します。獲物の捜索をしなければいけませんので」

 

オマケにドMの変態である。

アッシュはシーゲルのことを獲物と表現すると、不気味な笑い声を上げながら立ち去っていく。

 

レオハルトはアッシュと会ったことで嫌悪感を覚えながら急ぎ足で歩き始めると、パトリックの待つ部屋へと向かった。

 

「失礼します。特務隊、レオハルト・リベラントです」

「来たか。地球ではご苦労だった。貴様の撤退の判断が早かったお陰で、被害は最小限だ」

「ありがとうございます。ですが、最小限とはいえ無視できない被害でした」

「その通りだ。忌々しいことにな。地上部隊の戦力が低下したことは否めん」

 

アラスカ基地で爆発した【サイクロプス】の被害は、無視できない結果に終わってしまった。レオハルトが早期に撤退を命じたとはいえ、残っていた部隊すべてが撤退出来たわけではない。

 

さらには、突然戦闘に乱入したFreedom(フリーダム)によって大破に追い込まれた者も多い。撃墜されたわけではないとはいえ、あの状況で救助することが出来るわけも無かった。大半は【サイクロプス】に巻き込まれて死亡してしまった。

 

「クラインのことは聞いているな」

「ラクス・クラインが、Freedom(フリーダム)強奪の手引きをしたと」

「その通りだ。監視カメラにも映像が残っている。シーゲルについても行方不明で、現在捜索中だ。ラクス・クラインについては、一度は発見したが逃亡を許してしまった」

「……ザラ議長。【司法局】を動かしたと聞きました」

 

【司法局】。

 

レオハルトの所属する【FAITH】と同様、一般的な【プラント】の命令系統の外側に存在する組織である。

 

命令権限は【最高評議会議長】のみに許されており、【プラント】の法律を無視し【最高評議会議長】の命令という、ある種の“法律”で行動する。

 

評議会議員などの【プラント】要人の拘束に動くことが主な任務。彼らには特別権限が許可されており、拘束を無視した場合は武力行使も許されている超法規的部隊なのである。

 

「そうだ。クライン共がスピットブレイクの情報を漏洩させたことは確実。だというのに、カナーバらは私を批判する始末だ。この状況で私を批判するなど、愚の骨頂だ!

「……」

「司法局を動かして拘束し、クラインらとのつながりを調査する。貴様には、シーゲル・クラインの捜索を命じる」

「拘束ですか?」

「必要無い。発見次第、射殺しろ」

「……っ!射殺、ですか……」

「そうだ。生かして拘束したところで無意味だ。膿は取り出さなければいかんのだ。【プラント】の勝利のために!いいな、リベラント」

「……了解しました」

 

パトリックからの予想にもしなかった命令。前議長を射殺しろという命令に、レオハルトは一瞬驚愕に表情が歪む。

 

だが、すぐに平静を取り戻しパトリックに聞き返すと、パトリックは険しい表情で肯定した。レオハルトは左手で握り拳を作りながら、右手で敬礼をすると踵を返す。

 

「ザラ議長。一つ、質問してよろしいでしょうか」

「何だ」

「アッシュ・グレイを任務に投入した理由を教えて頂きたいのですが」

「……貴様の言いたいことは分かる。確かに、大きな難のある人間だ。だが、同時に実力は高い。あんな性格でなければ、【FAITH】に任命するほどにな。貴様なら理解してくれると思うが」

「……任務に向かいます。では」

 

それ以上は何も言わず、レオハルトは足早にその場を立ち去る。パトリックの部屋を出ると、白服の男が立っていた。

 

「バル」

「ん?おおっ、話は終わったみたいだな」

「何か用か」

「急いでるみてぇだな。任務か?」

「クライン前議長の抹殺命令を受けた」

「おおっ、そりゃ怖ぇ。……本気だな、ザラ議長は」

 

バルドリッヒは冗談っぽく両手で身体を抱きながらそう言うと、すぐに真面目な顔でそう呟いた。その言葉にはレオハルトは何も言わずエレベーターに乗り込むと、一階のボタンを押した。

 

「うぉーい!」

 

エレベーターのドアが閉まる寸前、バルドリッヒはギリギリで身体を滑り込ませて入ると、何事も無かったように半円形のソファーに腰を下ろすレオハルトに視線を向ける。

 

「あまり気乗りしてないみてぇだな」

「……ああ。クライン前議長が【プラント】を裏切って何の得がある。【プラント】が不利になるだけだ」

「確かにな。だが、今のザラ議長には言っても無駄だろうな。【司法局】まで動かしちまったんだ」

「……それで、お前は何しに来たんだ。その話をしに来たのか」

「おかしいか?久し振りに、ダンナに会おうと思ってな」

 

そう笑顔で話すバルドリッヒだが、腕組みをして右腕の下からわずかに覗く左手に一枚の紙を握らせる。

 

「……じゃ、幸運を祈ってるぜ」

 

レオハルトも何も言わずにそれを受け取り握り締めると、一階に到着したエレベーターを降り別々の方向に歩いていく。

 

議事堂を出てレオハルトはエレカに乗り込むと、バルドリッヒから渡された紙を開く。

 

「…………」

 

紙には、アプリリウス市内の三つの住所が書かれていた。そして、それぞれの住所の末尾にはS・Cと書かれていた。

 

「(S・C……。……シーゲル・クライン。仕事が早い。バルに感謝だな)」

 

エレベーター内には監視カメラが仕掛けられているため、大っぴらにこんな手紙を渡すことは出来ない。そのため、バルドリッヒはカメラの死角を利用してこの紙を渡してきた。

 

レオハルトがシーゲルと個人的に親しかったことは、バルドリッヒなら容易に調べることが出来るし知ることが可能。だからこそ、レオハルトに一番に知らせて話す機会をくれたのだ。

 

「……」

 

レオハルトはエレカの灰皿に紙を押し込むと、ライターで火を点け証拠隠滅を図る。エンジンを入れ、レオハルトはエレカを走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

深夜、レオハルトは拳銃を二丁装備して武装すると、バルドリッヒから知らされた一つの住所にエレカを走らせる。

 

昼間のうちに三つの場所を回り、レオハルトはある程度の目星をつけていた。出口が多く、侵入者を見つけやすい場所。

 

出口が多いということは敵の侵入口が多いことも表すが、同時に逃走経路が多いということだ。侵入者を察知しやすいということは、待ち伏せをしやすいということ。

 

レオハルトは離れた場所でエレカを止めると、闇に紛れながら近づいていく。

 

レオハルトが目星をつけたのは、アプリリウス中心部から離れた一件のレストラン。すでにレストランは放棄されており、内装も手付かずの状態だった。

 

「(クライン前議長の性格からして、付近に配慮して爆発物などを仕掛けることはしていないはず。つまり、居るのは人間と侵入を察知するトラップのみ)」

 

レオハルトは両手に黒手袋をはめると、消音器(サイレンサー)を付けた銃を取り出し静かに接近する。

 

まずレオハルトは建物の周囲を捜索し、万が一のため自身の逃走経路・逃走方法を確保するために動き出した。

 

準備が終わると、レオハルトは裏口に回り込む。壁に背を預けつつ静かにドアを開け、ゆっくりと身体を下げていき屈む。砂を適当に掴むと入り口に向けて砂を投げる。

 

「(……赤外線は仕掛けられていないか。誘われている?……行くしかないか)」

 

レオハルトは立ち上がると、慎重に奥へと進んでいく。一つ一つ部屋を調べていくが、人影は無い。むしろ、人の気配さえ感じられない。

 

最後の広い部屋に入ると、レオハルトは陰に隠れながら進み調べていく。誰も居ない現状に、レオハルトは自らのミスを想像する。

 

瞬間、部屋の照明が灯される。

 

「!?」

 

すぐにレオハルトは陰に潜み屈み、姿を隠す。

 

「よく来たね、リベラント君」

 

聞き覚えのある声に、レオハルトは驚く。同時に、周囲から一斉に人の気配が現れる。レオハルトは自分の存在がバレている以上、隠れていることに意味は無いと判断し姿を現す。

 

「来ると思ったよ。パトリックも本気ということか」

「そういうことです。ザラ議長は、あなたやラクス・クライン、クライン派の抹殺を命令しました」

 

レオハルトの視線の先には、今や追われる身となったシーゲル・クラインの姿があった。レオハルトは数mの間を空け、立ち止まった。

 

「君も、私が裏切ったと思うかね?」

「重要なのは、周囲の認識。ラクス・クラインはFreedom(フリーダム)強奪の手引きをしました。あの機体には、【Nジャマーキャンセラー】を搭載しているというのに」

「……」

「それと時を同じくして、あなたも姿を消した。スピットブレイクの失敗に続き、今回の強奪事件。関連付けするのも仕方ないことと言えるでしょう」

「だが、私は【プラント】を裏切ってなどいない」

「言ったでしょう。周囲の認識が重要だと。本人が何を言おうと、周囲が黒だと言えば黒になってしまうこともある。それが、人間でしょう」

 

本人がある事柄についてどれだけ否定しようと、周囲の人間が一度でも受け入れてしまえばそれを覆すことは難しい。火のない所に煙は立たぬということわざもあるように、一概に否定することも出来ないということもある。

 

だからこそ、レオハルトはシーゲル個人の認識を重要視していない。問題なのは、【プラント】のトップであるパトリックがそう断言し、各部署にそういう通達をしているということだ。

 

まだ未公表だが、いずれクライン親子の国家反逆罪が公表され、情報操作が行われることだろう。

 

「それに、一概に違うとは思えない」

「どういう意味かな」

「……ジャンク屋を使って、解体されて廃棄されるはずだったドレッドノート(勇敢なる者)を地球に向けて輸送した」

「……」

「どういうおつもりですか。あの機体には、未完成とはいえ【Nジャマーキャンセラー】が搭載されていました。万が一、連合の手に渡れば奴らはまた核を手にすることになる」

 

バルドリッヒから提供された情報。解体されたMSとはすなわち、数ヶ月前にデータ収集機として開発されたドレッドノート(勇敢なる者)

 

あの機体には【Nジャマーキャンセラー】が搭載されていた。これは名称の通り、【Nジャマー】の効果を打ち消すことが出来る。

 

これを解析すれば、【Nジャマー】の効果を受けない核を開発することが出来る。コーディネイター抹殺を目指す【ブルーコスモス】にしてみたら、最高の兵器だと歓喜し嬉々として使うことは容易に想像出来る。

 

すなわち、シーゲルの取った行動は【プラント】に大きな脅威を与えることになった。

 

「アレがあれば、【Nジャマー】によって発生したエネルギー問題を解決することが出来る。そしたら!」

「そのためなら、自国を危険にさらしてもいいのか!!」

 

レオハルトはそう怒声を上げ、シーゲルに問い詰める。わずかに怯むも、シーゲルは表情を引き締め反論する。

 

「私のしたことで多くの民間人が犠牲になったのだ!君も承知しているだろう!」

「何度も言わせるな!貴様のそれは自己満足だ!自らの偽善のために、自国を危険にさらすな!国のトップを務めた人間が、そんなことをして許されるものか!!」

「私を諌めてくれたのは君だろう!」

「俺を言い訳に使うつもりか!自らの偽善に言葉を上塗りするな!答えは一つだ!貴様の行動は、【プラント】を危険にさらした!それだけだ!!」

 

室内に反響する両者の声。レオハルトは銃を引き抜き、シーゲルに照準を合わせる。瞬間、周囲にあった気配が殺気立ち、一斉にレオハルトに銃口を向けられる。

 

レオハルトは軽く周囲を見渡し敵の位置を確認すると、シーゲルに視線を戻す。

 

「(八人か)……貴様は大きな罪を犯した。許されることではない」

「私を撃つ気かね?私を殺したところで、何も変わらんぞ。私は作戦の漏洩などしていないのだから」

「泥を被ってもらう。この時期にスパイ探しなどやっている暇は無い。貴様らに泥を被せれば、とりあえず混乱は沈静化するだろう。……一時的であったとしてもな」

「自らの意思ではなく、パトリックの意思で動くつもりかね。リベラント君」

「俺の意思だ」

 

レオハルトは目を閉じると、左手に持っていたスイッチを押し建物の照明を落とす。レオハルトは事前に目を閉じてはいたが、不思議なくらいによく見えていた。

 

レオハルトは持っていたスイッチを放り投げると、左手にも銃を手にする。両側に銃口を向け、同時に引き金を引く。

 

一発で額を射抜くと、次なる敵に狙いを定める。引き金を二度引き絶命させると、次々と敵を打ち殺していく。

 

数秒足らずでシーゲルの護衛を始末し終えると、部屋の照明が再び灯る。明かりが点くと、シーゲルは周囲を見渡し驚愕の表情をする。

 

レオハルトは左手の銃をホルスターに収めると、右手の銃のマガジンを交換しスライドを引く。

 

「……今の停電も、君の仕業かね?」

「当然だ。敵の渦中へ飛び込むのに、無策で行くわけが無い」

「私の優秀な護衛が、この有り様とはな……。ここまでやるとは、予想外だったよ」

「後悔したところで遅い。貴様の運命は、決まっている」

 

観念したように立つシーゲルの頭に照準を合わせると、レオハルトはゆっくりと引き金を引く。銃口から吐き出された鉛の弾は、精確にシーゲルの頭を貫く。頭を貫かれたシーゲルは、力無く後ろに倒れ込んだ。

 

 

 

 

建物の外に出ると、闇に溶け込む黒い戦闘服に身を包んだ諜報部特殊部隊の姿があった。その中にバルドリッヒの姿を見つけ、レオハルトは歩み寄っていく。

 

「バル、来てたのか」

「周囲の掃討だよ。ダンナも終わったみたいだな。……殺ったのか?」

「ああ。中にシーゲル・クライン、護衛の死体が転がってる。回収を頼む」

「了解」

 

バルドリッヒは部下に指示を出すと、数人が中へと走っていく。それを見届けると、レオハルトは背を向け歩き出した。

 

「……大丈夫か、ダンナ」

「任務をこなしただけだ。心配される必要は無い」

 

バルドリッヒにそう言い残し、レオハルトは深夜のアプリリウスに消えていった。

 

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