機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~   作:Pledge

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お待たせしました。

あるご指摘により、主人公の機体名をFinis(フィニス)に変更しました。
混乱させてしまい申し訳ありません。

思ったより長くなっています。
続けて書くとかなり長くなるので、二つに分けることにします。

今回でも、レオハルトの隠された真実です。
これも、レオハルトの出生を思いついた時から考えていたものです。

ご都合主義感満載ですが、最後まで突っ走ります。
感想を書いて頂く方は、出来れば後書きもお願いします。


Mission - 31 死の運命

C.E.48年某月某日

 

「何故だ、ユーレン!!」

「愚問だ、フォード。欠陥品に用は無い」

「ユーレン!!勝手に創り出しておきながら、その言い草は何だ!!口が過ぎるぞ!!」

「もういいだろう。私は忙しいんだ」

「ユーレン!話は終わっていないぞ!!ユーレン!!」

 

ある一室で、一人の男の怒号が響き渡る。だが、怒りの矛先を向けられている男性はどこ吹く風といった様子で、まったく気にしていない。

 

怒りが向けられているのは、ユーレン・ヒビキ。【GARM R&D社】L4コロニー 【メンデル】内研究所ヒビキ研究室主任研究員の肩書を持つ研究者である。

 

対して、激怒の声を荒げたのはハルフォード・ヒュバーノ。同社同研究所同研究室の副主任を務める男で、特に遺伝子関係に特に造詣が深い男である。同時に、ユーレンの友人でもある。

 

【GARM R&D社】とはコーディネイター作成を一大産業とする遺伝子企業で、【メンデル】もそのための研究施設の一つである。

 

だが、この施設にはより先進的なコーディネイターを作成するという目的があり、そのための研究も多く行われている。

 

そして今回、ハルフォードが激怒している理由。それは、ユーレンのある態度にある。

 

すべては研究段階のためすべてが巧くいくわけではなく、失敗もある。むしろ、失敗する個体の方が多い。その失敗した個体を、ユーレンが何の感情も無く廃棄しているということに憤りを覚えているのだ。

 

こんな研究を行っていようと、命へと敬意を忘れるべきではないというのがハルフォードの持論である。だが、ユーレンはその持論とはズレた考えを持っている。

 

自分たちが行っている研究は、間違いなく人類の進歩に役立つ。そのために犠牲が出ることは仕方ないことであり、ある意味では必要な犠牲と割り切っているのだ。

 

真っ向からぶつかる両者の考え。だからこそ、このようにぶつかり合うことが度々あるのだ。

 

ユーレンは一方的に話を切り上げると、引き止めるハルフォードを無視して部屋を出て行く。ハルフォードも話をする相手が居なくなってしまった以上、ハルフォードも部屋を出る。

 

部屋から出ると、そこに立っていた人物はハルフォードの妻、リレイナ・ヒュバーノだった。

 

「リレイナ」

「声、廊下の先まで聞こえてたわよ。……駄目だったみたいね」

「……残念ながらな」

「そう……」

 

リレイナの問いに、ハルフォードはやや肩を落としながら答える。

 

ハルフォードは思う。以前は、あんな男ではなかったと。何が友を変えたのか。何故、友は変わってしまったのか。

 

何故という疑問ばかりがハルフォードの頭の中をぐるぐる回るが、いつまで経っても答えが出ることは無かった。

 

 

 

 

 

それから来る日も来る日も、研究を続いた。

 

だが、この研究は容易に達成出来るものではない。幾度もの失敗と、成功を繰り返した。成功したとしても、ユーレンの納得するレベルには程遠く、一般的なコーディネイターとは何ら遜色ない数値。

 

こんな研究成果を報告したところで、当然ながら上が納得するはずもない。

 

そんな時、ユーレンから呼び出され新しいコーディネイターの作成方法を提案された。

それを聞き、ハルフォードはすぐに反論の言葉を上げる。

 

「ユーレン!そんなこと!それに、成功するとは!」

「成功か失敗かでは無い」

「何?」

「実験だ。良いデータが取れる」

 

だが、返ってきた答えにハルフォードは耳を疑う。成功させるためではなく、実験のためだけに命を作り出す。

 

そんなことが許されるのかとハルフォードは言葉を失い、怒りで頭に血が昇っていく。

 

「ユーレン……!お前、人の命を何だと……」

「犠牲失くして進歩は無い。人類の進歩のためには、必要な犠牲だ」

 

冷徹な笑みを浮かべながら呟くユーレン。人を人と思わず、命に対して何の感情も抱いていない。ただ、“モノ”として見ているのだ。

 

そんなユーレンを、ハルフォードは恐怖の眼差しで見つめる。

 

「後戻りは許されんのだ。お前もだ、フォード」

 

ハルフォードは思う。今にして思えば、どんな手を使ってでもユーレンを止めるべきだったのだ。たとえ、ユーレンをこの手に掛けたとしても。

 

 

 

 

ユーレンがハルフォードに聞かせた、新たな方法。異なる遺伝子を配合して一つにし、後に一般出産させる方法。

 

野菜のように、より病気に強くより環境に強くなる。それらのことを、人間で実現させるというのだ。

 

二人の人間の遺伝子を組み合わせ一つにし、後は通常通り精子・卵子と組み合わせて受精させる。こんなことが可能なのだろうか。

 

ハルフォードは大きな疑問に襲われるが、ユーレンにしてみればそんなことは関係無いのだ。ユーレンの言葉を借りれば、研究結果のためなのだから。

 

研究を行うためには、やはり資金が必要になる。お金が湧き水のように湧き出てくるはずが無いので、資金の用意もユーレンに一任されることになった。

 

会社も他にやることがあるため、【メンデル】だけに資金を提供し続けるわけにはいかないのだ。

 

そんな時持ちかけられたのが、有力家であるフラガ家からの依頼。依頼内容は、自身のクローン作製。ハルフォードは反対した。研究のために必要だとはいえ、そんなことをするものではないと。

 

だが、ハルフォードの提言がユーレンに届くことは無かった。

 

ユーレンはクローン作製と引き換えに莫大な資金を手に入れ、遺伝子配合計画を進める。同時並行として、彼が以前から考えていた【人工子宮】も進め始めた。

 

そして、資金援助を受けてから二ヶ月経ったある日。ついに成功した。

 

ユーレンは自身の精子とアル・ダ・フラガの精子を遺伝子配合して一つにすると、妻であるヴィア・ヒビキの卵子と体外受精させた。その後、妻であるヴィア・ヒビキの子宮に戻した。そして、一人の男児が生まれた。

 

その“子ども”は研究が五十一番目だったこともあり、便宜的に【No.051(ゼロファイブワン)】と呼ばれるようになった。

 

子どもはややくすみがかったブロンドの髪だった。遺伝子配合を行ったのはヒュバート夫妻とリベラント夫妻の四人。

 

生まれてきた“子ども”は、ややくすみがかった金髪でアル・ダ・フラガの特徴が出ていることが分かる。

 

「何とかうまくいったな。成功かどうかは、経過観察を見て判断するとしよう」

 

ユーレンはヴィアが抱える“子ども”を見下ろしながらそう言い放つと、部屋を足早に出て行く。ヴィアは悲しそうな瞳でユーレンを見送ると、抱える“子ども”に視線を落とした。

 

それからはあっという間だった。

 

“子ども”はヴィアが忙しかったこともあり、ヒュバート夫妻が預かり育てることになった。“子ども”はすくすくと成長したが、同時に異常だった。

 

四歳、一般的に考えればまだまだ子どもの年齢。だが、あの“子ども”は違った。四歳だというのに、その知能は凄まじかった。

 

四歳にして有名工学系の大学問題を解き、我々が舌を巻くほどのことを考え非常に高い運動能力を発揮した。

 

“子ども”の予想以上の“結果”に、開発者のユーレンは狂喜したのだ。ハルフォードだけでなく、研究室の人間が恐怖するほどに。

 

ユーレンは“子ども”を、コーディネイターを超えるコーディネイター。【ネオ・コーディネイター】と命名した。

 

コーディネイターを超えるコーディネイター。それを聞き、ハルフォードは納得する。通常のコーディネイターを遥かに超える能力を秘めているのだから、そう考えるのも当然だった。

 

だが、運命は皮肉だった。才能と引き換えに、“子ども”は大事なものを失って生まれてきてしまったのだ。

 

「冗談ではない!これでは、あのクローンと同じではないか!!失敗だ!」

 

新たに発覚した“子ども”の欠点を知り、ユーレンは激怒した。机を拳で叩きつけ、激しく声を荒げる。

 

遺伝子配合を行ったヒュバート夫妻らもその事実を知り、激しく後悔した。まだ小さい“子ども”

に、何て残酷な運命を背負わせてしまったんだと。

 

だが、ユーレンのその言葉はハルフォードにとって。いや、彼を息子のように想う彼らにとって看過できない発言だった。

 

ハルフォードは机を両手で叩き立ち上がると、ユーレンに向けて声を荒げる。

 

「ユーレン!我々が身勝手な理由で創り出した命だぞ!!傲慢が過ぎるぞ!!」

「黙れ、フォード!!とんだ綺麗事を抜かすものだ!!遺伝子配合を行ったのは誰だ!!他の誰でもない、貴様だろう!!」

「その通りだ!!だが、指揮しているのは誰だ!!」

「人類の未来のためだ!!多少の犠牲は仕方なかろう!!」

 

その言葉で、ハルフォードは理解した。どれだけ言葉を紡ごうと、どれだけ言葉を投げかけても、ユーレンにはすでに届かないということを。

 

いつかは分かってくれるとわずかに抱いていた希望も、呆気なく砕けたしまった。ハルフォードは言葉に意味は無いと悟り、静かに椅子に座りなおした。

 

“子ども”にはこの研究所でユーレンの指示により、近接戦闘訓練に銃器やナイフの扱いなど、ありとあらゆる軍事訓練を叩き込まれた。

 

その情報量は凄まじかったが、“子ども”はその頭脳ですべてをマスターしてしまった。ハルフォードは才能に喜びを覚えつつも、心の奥底ではわずかな恐怖を覚えてしまった。

 

ハルフォードにとってそれは抱いてはならぬ感情であり、自分を殴り飛ばしたい感情に襲われていた。

 

“子ども”はほとんどの者からは依然としてナンバリングで呼ばれているが、ヒュバート夫妻はZEPHYR(ゼファー)と名付け、一部の人間たちもその名前で呼び始めた。

 

意味は、優しい風。誰にでも優しく、傷付いた人を優しい風で癒せる人間に。そういう意味が込められている。

 

ハルフォードたちが名前を呼ぶたび、ゼファーは嬉しそうに笑みを浮かべる。その純粋無垢な笑顔に、ハルフォードたちは癒されてきた。

 

だが同時に、チクリと痛む罪悪感を覚えるのだ。

 

「(我々のせいで、ゼファーには重く厳しい運命を背負わせてしまった。これが、どれだけ罪深いことか。ゼファーだけではなく、あのクローンの子どもにも)」

 

クローン技術は禁止されているため、技術などまだまだ未熟。そんな未熟な技術で、完璧なクローンなど不可能だ。それ故、テロメアが短いという短命な寿命を背負わせる結果になってしまった。

 

我々は、親になってはいけない。命ある限り、ゼファーのために。

それが、ヒュバート夫妻の共通の想いだった。

 

 

 

 

ユーレンは遺伝子配合計画のこれまでの失敗例と、ゼファーの結果を考慮して計画を廃止し、【人工子宮】に本腰を入れ始めた。

 

遺伝子研究の第一人者でもあった二つの夫妻は、【人工子宮】の研究からは外れることになった。自分たちだけで十分という理由だった。

 

だが、それはヒュバート夫妻にとって好都合だった。ゼファーの傍にいることが出来るという点では。

 

そして数か月後。日々行われるゼファーの訓練の合間、不意に自身の名前を呼ばれハルフォードは本から視線をゼファーに移す。

 

「ヒュバート博士。僕に兄弟が出来るって本当なの?」

 

部屋でくつろいでいると、唐突にそう問いかけられた。ハルフォードは、ゼファーにはのことは博士と呼ばせている。自らの罪を忘れないためだ。

 

最近、ついに【人工子宮】が成功したとハルフォードは人伝に聞いていた。ユーレンが絶対の自信を持っているようとも。

 

そして、ヴィアの胎内に戻され近いうちに出産するというのも聞いていた。だが、ゼファーに彼らと接触する機会は無いはずたった。

 

「誰に聞いたんだ、ゼファー」

「ヒビキ博士」

「!? ……何て言われたんだ?」

「ただ、兄弟が生まれるって」

 

ヒビキ博士。ゼファーがそう呼ぶのは、この世でただ一人だった。ユーレン・ヒビキだけである。ヴィアは、ヴィアおばさんと呼んでいることから、ハルフォードは直感的にユーレンだと理解する。

 

ハルフォードの問いに、幼いゼファーの顔が一瞬揺らぐ。その揺らぎを、ハルフォードは見逃さなかった。

 

長い時間接してきたハルフォード。高い頭脳を有しているとはいえ、まだまだ嘘は隠しきれなかった。

 

「(どうせ、ゼファーの欠点を指摘し今度は完璧の子どもが生まれるとか言ったのだろう。だが、やはりゼファーは聡い子だ。自分のことより、私のことを気遣っている)」

 

ハルフォードはゼファーをリレイナに任せると、足早に部屋を後にする。部屋を出てすぐに、ハルフォードはウェーガー・リベラントと遭遇した。

 

ウェーガーはハルフォードの弟子のような存在であり、遺伝子関連に詳しい。ハルフォードと同じくゼファーの遺伝子配合に関わり、ゼファーもよく懐いている優男である。

 

「鼻息が荒いですね。どちらへ?」

「ユーレンのところだ。どうやら、ゼファーにくだらないことを言ったようだ」

「なるほど。すでにご存知でしたか」

「何?知っているのか?」

 

ハルフォードがそう問いかけると、ウェーガーは周囲を軽く見渡しハルフォードの耳に口を寄せる。

 

「大体予想通りかと。どうやら、お前と違って完璧な子どもが生まれるとか言ったらしいです。私もその場所にいた研究員から聞いただけですが」

「ユーレンめ……!」

「怒るのは分かりますが、部屋に戻りましょう。ヒビキ主任に何を言っても、無駄ですよ。残念ですが……」

 

最後の部分は、表情を曇らせながらそう呟くウェーガー。

その言葉に、ハルフォードは何も言うことが出来なかった。

 

 

 

 

「この子たちが、僕の弟と妹?」

「ええ、そうよ」

 

ある日、ハルフォードやゼファーの元をヴィアが訪れていた。理由は血縁上はゼファーの弟妹となる、双子をゼファーと合わせるためだ。

 

とはいえ、このことはユーレンには秘密だった。このことを知れば、また面倒なことになることはヴィアも承知している。だからこそ、ヴィア自ら会いに行ったのだ。

 

ヴィアの腕に抱かれる双子の男女を、ゼファーは興味深そうに眺めている。恐る恐る手を伸ばすと、男児がその小さい手でゼファーの手を握る。

 

「名前は何て言うの?」

 

ゼファーがそう問うと、ヴィアは優しい笑みを浮かべながら答える。

 

「男の子がキラで、女の子がカガリ。ゼファーもお兄ちゃんね」

 

 

 

 

 

 

「っ……!?」

 

瞬間、レオハルトは意識を取り戻す。レオハルトの意識はほんの数十秒、あるいは数秒間だけ瞬時に切り替わっていく物語の世界に居たようだった。

 

レオハルトは意識を取り戻すと、眼前に迫るProvidence(プロヴィデンス)を見て息を飲む。

 

回避行動も迎撃も間に合わず、強烈な蹴りを入れられ激しい衝撃に襲われながらもレオハルトは必死にモニターに目を向ける。

 

「どうした、レオ!動きが鈍っているぞ!!それとも、研究所でのことでも思い出していたのかね!?」

「……その口を閉じろ、ラウ!」

 

クルーゼは回収していたドラグーンを再び解き放つと、レオハルトに無数に降り注ぐビームのを浴びせる。だが、レオハルトはその間を縫うようにして避けながら、レオハルトは意識をわずかにキラへと向ける。

 

「僕の……兄……?あの時の人が……?」

 

最低限の操作しか出来ず、キラは茫然とする。ムウからは【ZAFT】のトップエースとして聞かされ、アフリカでは銃を向けて来た人間が実の兄。そんな衝撃的な事実を聞かされれば、混乱するのも無理はない。

 

そんな状態にあっても、クルーゼはキラとレオを相手にドラグーンで攻撃を仕掛けていく。その攻撃に容赦は無く、撃墜するという意思で攻撃を加えている。

 

「ククッ。かなり混乱しているようだな。敵だと思っていた人間が、自分の兄なのだからな!」

「どういうつもりだ、ラウ!」

「教えた理由かね?決まっている!私も君も!彼を生み出す過程で生まれた存在だ!私たちのことを、彼は知る義務がある!自らの存在の罪深さと共にな!!」

 

クルーゼはドラグーンを回収すると、右手にしている大型ビームライフル“MA-M221 ユーディキウム ビームライフル”を構え引き金を引く。

 

レオハルトはビームをシールドで防ぐと、反撃とばかりにレシェフを放つ。同時にドラグーンを分離させ、量子通信で操り攻撃を仕掛けていく。

 

レオハルトはクルーゼがビームを避ける方向を予測し、その予測に従いドラグーン攻撃を仕掛けていく。長い付き合いだからこそ分かる、クルーゼの癖。

 

だが、それは逆もまた然り。クルーゼはレオハルトなら自分の動きを予測して攻撃してくるはずだと読み、そして見事それは当たった。

 

緻密に配置されたドラグーンの攻撃をクルーゼは躱していくが、不意に横から放たれたFreedom(フリーダム)の“M100バラエーナ プラズマ収束ビーム砲”を、スラスター噴射で動き回避する。

 

「何を……何を言っているんだあなたは!僕の罪って……。何を言っているんだ!!」

「君は人類の夢、最高のコーディネイターだ。君が生まれるまでの間に、一体どれだけの命が失われたと思う!君という存在を生み出すために、どれほどの重い運命を背負わされたと思う!!」

 

クルーゼはそう叫ぶと、回収していたドラグーンを一斉に解き放つ。

 

レオハルトとキラ。強者の二人に向けられたドラグーン。一人より二人よりになった方がドラグーンの攻撃が弱くなるのは当然だが、クルーゼはそんなことを感じさせることなく攻撃を加えていく。

 

「フン!言っても詮無きことか!!何も知らず、何も知ろうとせず、ただ己の見たいことだけを見てきた子どもに!!真実を知った私の、私たちの絶望の一片も分かるはずが無い!!」

「ラウ!!」

 

レオハルトはレシェフをマウントしテュルフィングを抜くと、Finis(フィニス)は他の三機体より増設されたスラスターによって実現した、高速機動によりビームを紙一重で躱す。

 

その機動は誰が見ても無茶なものであり、【ネオ・コーディネイター】と呼ばれるレオハルトの超反射神経と超人的な身体能力だからこそ可能となる動き。

 

クルーゼはレオハルトの動きに気付くとすべてのドラグーンをキラの攻撃に回し、レオハルトには自身がぶつかることに決める。

 

“MA-V05A 複合兵装防盾システム”の先端から巨大なビームサーベルが顕現すると、両者のビームサーベルが激しくぶつかり合う。

 

「余計なことを言うな、ラウ!!」

「何故だ、レオ!君も絶望しただろう!!望まぬ生を受けながら、残酷な運命を背負わされている事実に!!それもすべて、己の我欲のままに名誉を欲したユーレン・ヒビキのせいだろう!!」

「背負う運命が、回帰させようとする理由か!」

「回帰?……レイン・エルミーラが言っていたのかね?ハッ!おめでたいことだ!本当に信じていたはな!人類など必要ないのだよ!!傲慢にして無知、欲の塊であるヒトなど!!」

 

クルーゼはレインに目的は回帰だと告げていた。現在の人類を排し、新たな人類に未来を託す。すべてを破壊し、いつか生まれる新たな人類にコーディネイターやナチュラルも無い。

 

そうなれば、レインが味わった悲劇も無い。新たな人類にこそ、新たな可能性がありより良い未来が築かれることになると。

 

その目的の元に利害が一致し、協力し合っていたクルーゼとレイン。だが、実際はクルーゼにそんなつもりは欠片も無い。

 

クルーゼは単純に、自らに残酷な運命を背負わせた人類すべてを憎み、人類すべてに裁きを下すために動いたに過ぎない。そこに人類の未来のことなど、何の興味も無い。

 

「私たちは同じだ!たった一人の、同じ境遇と視点を持つ者だ!!私は、私を創ったアル・ダ・フラガとユーレン・ヒビキが憎い!その結果を招いたのは、世界に満ち溢れる人類の競争だ!!だから、私はすべてを滅ぼすのだよ!!」

 

ラウ・ル・クルーゼ。

 

レオハルトやキラと同じく【メンデル】で誕生したアル・ダ・フラガのクローン。だが、生まれてきたクルーゼは問題を抱えて産まれて来た。

 

しかし、ヒビキ博士は体細胞クローニングの宿命であるテロメア遺伝子の減少短縮問題を技術的に解決出来ていなかった。そのため、ラウは余命が短く早期に老いが訪れるという【失敗作】として誕生させられてしまった。

 

テロメア遺伝子の減少短縮による老化と短命。さらには、細胞分裂を抑制する薬品を服用し、老化した素顔を見せたくないがため仮面で被っていた。

 

アルがクルーゼを創らせた動機は、一人息子であるムウに納得できなかったため、代わりの後継者が欲したため。

 

だが、産まれてきたクルーゼは【失敗作】の烙印を押されフラガ家を追い出される。だが、クルーゼは屋敷に火を放ち、逃げ遅れたアル・ダ・フラガは死亡するという結果に終わった。

 

レオハルトとクルーゼは互いに機体を押し合ううちに、機体の場所が入れ替わり同時に後方へと距離を取る。距離を取ったその先で、キラがラケルタでクルーゼへと斬りかかる。

 

だが、クルーゼはキラの攻撃を避けるとキラに回し蹴りを喰らわせる。キラはシールドで防ぐが、伝わってくる衝撃で機体はバランスを崩してしまう。

 

“MA-V05A 複合兵装防盾システム”に内蔵されている二門のビーム砲でキラへと追撃を掛ける。だが、その寸前でレオハルトはラグナロクを撃ち邪魔をする。

 

「敵とはいえ、やはり弟ということか!優しいことだな、レオ!!」

「何のことだ!俺はお前を討つ!それだけだ!!」

 

クルーゼはドラグーンを一時回収すると、ユーディキウムでレオハルトを、ビーム砲でキラを同時に狙い攻撃を加える。連続で放たれる攻撃に二人は右に左に動き回り回避していく。

 

「何故だ、レオ!何故、君は憎しみを捨て去ることが出来た!!以前の君は、もっと鋭かった!誰も寄せ付けず、常に殺気を放ち、人類を憎む瞳をしていたはずだ!!」

「…………」

「私と同じ。いや、ある意味では私以上に残酷な運命を背負う君が!!」

「残酷な運命……?一体……」

 

キラの口から、思わず口から洩れた言葉。その言葉に、クルーゼの口角が自然と釣り上がる。

 

「君には知る義務がある!君の兄が、どんな残酷な運命を背負わされているのか!教えてあげたらどうだね、レオ!」

「言う必要も無ければ、知る必要も無い!」

 

攻撃の隙を狙い、レオハルトはドラグーンを分離させると二人を同時に攻撃していく。ドラグーンで攻撃しつつ、レシェフやアスカロンで追加の攻撃を加える。

 

だが、そのどれもが致命的どころか見事に防がれる。

 

「では、代わりに私が教えよう!彼はな、私と似ているのだよ!遺伝子配合も、所詮はユーレン・ヒビキが思い付きで行ったに過ぎない!そんな思い付きの研究だ!前例などあるはずもない!産まれた彼にも、間もなくテロメアに異常が発見された!!」

「異常……?」

「言うな、ラウ!!」

 

レオハルトを以てしても苛烈という他無いドラグーン攻撃。回避に精一杯で、クルーゼを制止する余裕などなかった。ただ、思いを口にするだけしかなかった。

 

「彼は私以上と言ってもいい!!ある年齢を過ぎると急速に老化が進行し、その後は一年ほどで死に至るのだよ!!」

「そんな……」

「“ある年齢”というのも推測できず、いつ“ある年齢”が来るのかも分からない!これほどの恐怖があるか!!それが、君の兄が背負う残酷な運命だ!!いや、その程度の言葉で語るのもおこがましい!!」

 

クルーゼによって明かされる、二つ目の真実。

 

だが、その真実はあまりにも残酷なものだった。その真実の衝撃さにキラは言葉を失い、レオハルトは視線が険しくなり唇を噛み締める。

 

レオハルトにとって、これだけは知られたくなかった真実。これは自分が背負うことであり、キラは当然ながら他人が背負うものではないと考えているからだ。

 

「長く生きられず、近い将来に必ず死ぬことが決定付けられた運命!この事実を知った時の絶望を理解できるのは、私だけだ!私だけが、レオを理解することが出来る!!レオ、私と共にこの腐った人類に終止符を打とうではないか!!」

 




今回、クルーゼがレオハルトを理解できるのは自分だけだと言っている描写があります。

レイもいますが彼はクルーゼとは年が離れているし、クルーゼとレオハルトとの関係性も違います。
クルーゼとレオハルトは長い間苦楽を共にして、いろいろなことを体験してきた仲です。

ある意味、レイ以上のつながりが生まれたと考えています。

だから、クルーゼは理解できるのは自分だけだという言葉を言わせてみました。
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