機動戦士ガンダムSeeD~Another SeeD Story~ 作:Pledge
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長きに渡る戦争は、地球軍はタカ派の最有力者である【ブルーコスモス】盟主ムルタ・アズラエル、ウィリアム・サザーランド等の死亡。【プラント】も強硬派のトップ、パトリック・ザラが死亡したことが決定的となった。
【第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦】の最中、パトリックによって軟禁状態にあったクライン派であったアイリーン・カナーバらはラミリア・オリンベルの協力を得て脱走。
その後、エザリア・ジュールらザラ派を拘束し一掃。臨時で起ち上げた暫定最高評議会にアイリーン・カナーバを議長に据え、戦後処理に臨むことになった。
停戦中の【プラント】と地球軍、及び【プラント】理事国家。互いに長き渡った戦争によって失った資源や物資を回復することに専念し始めるのだった。
ヤキンでの戦闘が停戦後、機体から救難信号を出していたレオハルトは別の隊の人間によって救出された。
すぐに本国に運ばれると、思ったより傷が深く細かな破片が突き刺さっていたレオハルトはそのまま緊急手術を受けることになった。手術は無事に終わり、レオハルトはそのまま入院。
入院していたレオハルトは一ヶ月ほどでようやく退院。低下した運動能力は要リハビリ、自分のトレーニングが必要とのことだった。退院したレオハルトは、頭に包帯を巻いた状態で墓地に立っていた。
仲間たちの墓を回り、レオハルトは仲間の安らかな眠りを祈る。
「……やっと終わった、長い戦争も。お前たちの犠牲も、無駄では無かった」
ここは戦死や戦争被害を受けて命を落とした者たちの墓地。クルーゼのしたことを考えれば、ここに埋葬されることは無いだろう。戦犯者は、別の場所に戦犯者として名前を連ねることになるだろう。
レオハルトは墓地を後にすると、久し振りの自宅に足を踏み入れる。レオハルトの予想通り、部屋には至る所に埃が堆積しており、掃除が大変だということで溜め息を吐く。
だが、レオハルトは掃除を後回しにして家の奥へと歩いていく。
専用のPCが置いてある部屋に入ると、レオハルトは懐から携帯を取り出す。携帯を操作し特定の番号を押すと、本棚がゆっくり横に動いていく。
レオハルトの持つ携帯を使い特定の番号を押せば動く、秘密の場所。本棚が動いたそこには、一台のPCが。普段使っているPCよりさらに特別製なのだ。
レオハルトはPCを掴むと、机の上のものをどかしその場に置き起動。ある人物と通信をつなげる。
「待っていたよ」
「出来ればしたくなかったですよ。ですが、完全に膿を出し尽くすには必要な手であることも理解している。それだけです」
「それで構わないよ。僕としても、【プラント】が混乱することは本意ではない。……こうなった今でもね」
ホログラムで表示される男の言葉に、レオハルトは何も言わない。レオハルトは気を取り直し、本題に入る。
「あの日の言葉通り、限りなくクロだろう。だが、もっと確実な証拠が欲しい。その証拠集めの協力、してくれるんですね?」
「もちろんだよ。でも、確実な証拠ねぇ……。彼が何重もスパイしていたことは確実だ。僕たちクライン派、【プラント】のタカ派、死んだクルーゼ。そして、君だ。もしかしたら、まだあるかもしれない」
「……」
「カナーバ議員の監禁場所を調べて教えてくれたのも彼だ。それでも?」
「地球軍のスパイかとも思ったが、それなら地球軍はもっと優位に戦えていたはず。だが、そんな感じは無かった。なら、奴の目的は。本当の所属は」
レオハルトと謎の男による“彼”に対しての話し合い。内部の人間ではなく、外部の人間との話し合い。腕組みをする男に、レオハルトは最大の疑問をぶつける。
「うーん、さすがにそこまでは分からないよ。僕たちでもね。本人に聞くしかないんじゃないの?」
「素直に答えてくれるかどうか」
「そりゃそうだ。さて、まあそういうわけだよ。情報収集は僕たちでもやるから、また連絡するよ」
「次で最後になるのを祈っていますよ」
「手厳しいね」
レオハルトの皮肉に、男は肩をすくめて見せると通信回線が切断される。
レオハルトは頬杖をつき、思案にふける。
「(奥深くまで侵入しているクライン派も掴めないか。シロは有り得ない。クロのはず。当然だが、奴もプロだからな。……何はともあれ、出来れば早めに“処理”したいところだ)」
レオハルトはPCを元の場所に戻すと同じ手順で本棚を動かして隠すと、そのまま部屋を後にする。レオハルトの瞳には、正体の見えない敵が映っている。
それから二週間ほどで頭の包帯も取れ、持ち前の驚異的な回復力で身体の傷も完治したレオハルト。まず行ったのは、なまった身体を鍛え直すためトレーニングだった。
徐々にトレーニングメニューをキツくしていき、二ヶ月ほどでレオハルトは以前の身体を取り戻すに至った。
レオハルトがトレーニングに励んでいる間、【プラント】暫定評議会は敵対した国家群との条約締結に向けて動いていた。しばらくは外相会談が続いた後、ついにトップによる講和会議が開かれることになった。
場所は【南アフリカ統一機構】首都ナイロビ。南部アフリカ、東アフリカの国々による統一国家である。会議が行われた場所から、この会議は【ナイロビ講和会議】と呼ばれることになる。
だが、条約内容は一向にまとまらず、どちらも引かない状況。会議が長期化していたその間に、争いが起こってしまう。
C.E.71年11月。大西洋連邦に併合されていた、ブラジル・ラテンアメリカ諸国による連邦国家、【南アメリカ合衆国】が分離独立を宣言したことで大西洋連邦との間に、【南アメリカ独立戦争】が勃発した。
【南アメリカ合衆国】は前年の2月に大西洋連邦によって併合され、今回の大戦で大西洋連邦の戦力が削られた隙を狙い、行動を起こしたのだ。
だが、その間も会議は行われるが内容は遅々として進まない状況だった。会議がまったく進展しない状況の中、【スカンジナビア王国】外相リンデマンからある提案が出された。
それは、『お互いの国力に応じた軍事制限』を基本とする、通称【リンデマン・プラン】だった。国力、つまりは人口が多い方が有利となるのである。
人口では大きく劣る【プラント】には完全に不利な内容。だが、技術的な自信やその他の部分で相手側から譲歩を得られたこと、さらに悲劇の地である【ユニウスセブン】で条約締結が行われることになり、【プラント】暫定評議会は受け入れてしまったのだった。
条約の主な内容としては、【リンデマン・プラン】の遵守・及び【リンデマン・プラン】の査察に対して無制限・無条件での受け入れ。
MS・兵器等への【
【プラント】が地球上に持つ占領地の無条件放棄。つまり、【プラント】はジブラルタル・カーペンタリア以外の基地を保有禁止。
戦犯は国家ごとに裁判を開き、処罰を下すこと。国際法廷は開かない。
地上の国境線および国家を戦前のC.E.70年2月10日の状態に復旧すること。
条約内容には他にもいくつか盛り込まれているが、主な内容としては上記のものだった。
そして、C.E.72年3月10日。ついにこの日が来たのである。
かつての悲劇の地、【ユニウスセブン】にてナイロビ講和会議にて決定した条約が締結された。条約締結の地から、この条約は【ユニウス条約】と呼ばれることになる。
条約が締結され、条約内容が効果を発揮されたことで【プラント】は依然として独立戦争の最中である南アメリカに目を向けた。
条約には地上の国境線および国家をC.E.70年2月10日の状態に復旧すると記載されている。その当時は【南アメリカ合衆国】は独立国として存在していたが、大西洋連邦によって併合されてしまった。
つまり、【南アメリカ合衆国】は独立して然るべき国家なのだ。そう理論を展開し、【プラント】は独立戦争への軍事介入を宣言。【南アメリカ合衆国】に加勢するため、【ZAFT】を派遣したのだった。
だが、当然ながらそんなことは建前である。その真意は、対立する両国家群の戦力調査、そして【南アメリカ合衆国】に“貸し”を作るためであった。役立つかどうかは不明だが、無いよりある方がいいことは間違いない。
それから二週間ほどで独立戦争は終結。晴れて、【南アメリカ合衆国】は独立国として復帰を果たしたのだった。
独立戦争終結と書かれ【ZAFT】のMSが一面を飾る新聞を読み終え、レオハルトはホログラムに映る男へと視線を移す。
「やれやれ、戦争が終わってようやく独立戦争も終結。忙しいねぇ、まったく」
「忙しいのは、そちらも同じでしょう?もっとも、忙しいの意味合いが多少違うようですが」
「いやぁ~、相変わらず手厳しいね。クルーゼの性格が
「これが元々の性格ですが」
数ヶ月ぶりに行われている、男との接触。画面越しではあるが、秘密の会話を二人は行う。
「本題に入ろうか。結論から言うと、今以上の情報は出てこなかった。確実な証拠に辿り着くものは、綺麗に消されていたよ」
「そうですか……」
「手詰まりだよ。さて、どうするかね?」
男の問いに、レオハルトは黙り込み目をやや伏せ気味に考え込む。だが、すぐに目を上げ男に視線を向ける。
「……協力、感謝します。私たちの関係もこれで終わりです」
「おや、つれないな。どうするか教えてくれてもいいじゃないか」
「ギブアンドテイクの関係は終わりました。私は【ジェネシス】の機密データを、そちらは【プラント】のスパイの情報を。これ以上、求める情報はありません」
「ドライだねぇ、君は」
「褒め言葉として受け取っておきますよ。それでは失礼します……バルトフェルド隊長」
「もう隊長じゃないよ。今はただの、コーヒー好きのおじさんってとこだね」
【ZAFT】北アフリカ駐留軍元司令官アンドリュー・バルトフェルド。
戦争終盤ではクライン派に属し、クライン派の旗艦【エターナル】艦長として【オーブ】や【アークエンジェル】と共に戦争終結に導いた立役者の一人。現在は【プラント】から離れ、【オーブ】に亡命している。
今では敵と言ってもいい人物との最後の取引を終え、レオハルトはこれからの方針を考えるのだった。
【ユニウス条約】締結から二週間後。
【ユニウス条約】の不平等さに激怒した市民やその他の人間から非難を浴びることになり、暫定評議会は解散。アイリーン・カナーバの推薦と投票により、新たにギルバート・デュランダルが新議長に就任。
そして、デュランダル新議長の下、アプリリウス市上級裁判所にて【ユニウス条約】にも含まれていた戦犯裁判が開かれることになった。
デュランダルが新議長となった初めての仕事。デュランダルは議長執務室の椅子に腰掛けながら、戦犯者名簿に目を通していた。
「問題無いね。このまま進めるとしよう」
「かしこまりました。ですが、よろしいのですか?」
「何がだね?」
「……レオハルト・リベラントです。そこに自分の名前が無いことに、彼は納得いかないと思いますが」
名簿に目を通し終わり、デュランダルはデスクを挟んだ反対側に立つ文官に名簿を返す。文官はその名簿を受け取りつつ、問いかける。
デュランダルは心底わからないといった表情で聞き返すと、文官はストレートな質問を投げかける。
「恐らくそうだろうね。いや、むしろそれが狙いなのだよ」
「お考えがあるようですね。申し訳ありません。私が口を挟むことでは無かったようです」
「いや、構わないよ。それが君たちの仕事なのだからね」
「ありがとうございます。では、失礼します」
文官は名簿を小脇に抱え、踵を返しそのまま部屋を後にする。その背を見送ると、デュランダルは引き出しに入れておいた資料を取り出す。
「久し振りじゃないか。君には、レイも会いたがっていたよ。再会が楽しみだよ……ゼファー」
では、よろしければ次回作もよろしくお願いします。