暗殺教室の戦闘員 〜異世界からの侵略×超生物の出現~ 作:汐音 アイリ
更新していない間何をしてたかっていえば、まあいろいろやってましたが。
一番は、とあるカードゲームのオリジナルカードを作ってみてました。
バランス調整って難しいんだね、という当たり前のことを学びました。
「どうかしましたか、幸先輩?」
「んー?」
黒江ちゃんこと、黒江双葉が首を傾げながら私を見る。
訓練室でプログラムの近界民相手に戦っている黒江ちゃんを眺めていただけなのだが、何かおかしな所があっただろうか。
「私、何か変なふうに見えた?」
「いえ……ただ、いつもより厳しくないので。
かといって、指摘するところがないわけでもなさそうですし」
彼女の言う通り、私は指導をしながらも別のことも考えていた。
バレていないつもりだったのだが、黒江ちゃんは案外鋭い。
「師匠と弟子の関係と、教師と生徒の関係の違いについて考えていたの」
「関係の、違い?……師匠と弟子の方が、心の距離が近い気がしますけど」
あくまでイメージだが、教師よりも師匠の方が近しい存在になりそうである。
教師は不特定多数を相手に教えるが、師匠は自身が選んだ相手にだけ自分の教えを授ける。
それに、弟子がひとり立ちしても師匠には関わる機会があるし。
「だよね。……家族として接すると、公私の区別がつかなくなるってわけでもなさそうだし」
思い返すのは、理事長と交わした言葉だった。
喧嘩をしているわけでもなさそうなのに、理事長と彼の息子の間には常に距離がある。
『なぜ、会長を浅野くんと呼ぶんですか?
家族なんだから、下の名前で呼んでも怒られたりしないと思いますが』
『教師と生徒、という関係だからね』
『師匠と弟子じゃ、ダメなんですか?』
『私は、教師だからね』
「それは置いといて……黒江ちゃんも、かなり強くなったよね!」
「そうですか?幸先輩にはまだ勝てませんけれど」
「そこら辺はほら、師匠としての意地ってやつかな?
でも、ほかの人相手ならかなり勝てると思うよ」
初めは『弧月』に振り回されていたのに、今では『旋空』も『韋駄天』も使いこなしている。
『バイパー』を避ける練習の成果も出てきて、動きも素早く、鋭くなってきていた。
「そうは言っても、幸先輩に勝てないと悔しいですよ」
ちょっと拗ねた様子の黒江ちゃんが可愛くて、衝動的に頭を撫で回してしまった。
……そう。彼女は強くなっている。
でもそれは、私が彼女の元々持つ力を上手いこと引き出しただけだ。
私が黒江ちゃんにしてあげられたことは少ない。
弟子をもつことなんて初めてで、手探り状態でやってきているけれど、きちんと「師匠」ができているだろうか。
最近、ずっと不安だった。
◇◆◇
「ってことがあってね」
「ふーん。 幸も大変だな」
私の前でジュースを飲みながら告げるのは出水公平。
太刀川隊の
彼も最近弟子ができたので、私たちは似たような立場にあった。
「
「いやー、やっぱり幸相手の時とは全然違う。ちゃんとした説明を求められるし」
かつて
といっても、「教える」というより「アドバイス」といった感じで結構ゆるいものだ。
私はリアルタイムで『バイパー』の弾道をひくコツを、公平は合成弾の作り方を教えあったのだ。
お互いに基礎はクリアしていることや、なんとなく似た感覚を持っていることもあって、割と言葉を略しても伝わったのだが、他人相手ではそうはいかない。
「そっちはどうなんだ?確か……黒江双葉だろ?」
「あぁ……黒江ちゃん、ね」
訓練の様子を思い出す。
……ふむ。
「まあ、結局のところ新人さんだから。大したアドバイスはできていないよ」
はぁ、と2人でため息をつく。
本来なら、弟子をとるような年齢でもないのだ。
ただ、ボーダーという特殊な組織に身を置いているから、そうなっているわけで。
ボーダーの人間に妙に悟ったような、達観したような人が多いのは、このせいだろうか。
「ほんっと、東さんのすごさを今更ながらに実感したわ」
「師匠って難しいね……。なんかこのままだと気分落ち込んじゃいそうだし、もう模擬戦やる?」
その言葉を聞いた瞬間、公平の瞳がギラギラと好戦的な光を宿す。
悩んでいた一高校生の姿からは一変、そこにいるのはA級1位部隊の名を背負う戦闘員だ。
「それ、いいな。 幸との一対一は久しぶりだし。10本勝負でいいな?」
「もちろん」
私たちの視線がバチバチと火花を散らし、周囲の人がサッと散っていった。
そのまま模擬戦に突入したのだが、結局他の隊員も乱入してきて、最終的にはバトルロイヤルになった。
何度も何度もメンバーを変えて対戦し、日付けを越す前にようやく解散した。
……解散したのだが。
私は興奮冷めやらぬ兄と共に、個人戦に切り替えてずっと対戦していた。
わりと恒例の流れである。
ちなみに、痛覚は100%反映している。
なぜ痛覚100%なのかは割愛するが、ときどきこのように痛覚100%で行われる試合が、私が「鍛錬=自分をいじめることだと思っている人間」といわれる一因だった。
その対戦が終わったのは、朝の4時だった。
ゲームや読書に夢中になると時間を忘れるのと同じで、「いつの間にかこんな時間」というやつだ。
合間に休憩は挟んでいたのだが、不思議と時間は気にしていなかった。
対戦にばかり意識がいっていたせいもあるが、結局のところ楽しくてやめられなかった、というのが正しい。
換装を解いてから、ようやく「何やってんだろ」と我に返ったが、既に身体は疲れ果てていた。
気づかないうちに溜め込んでいたストレスを発散したかったのかもしれない。
だから、気分は変にスッキリしていた。